成人の日あたり 膝丸までいる 連隊戦後、一周年より前くらい 髪は切った後か
本編は多分何事もなく終わっている
兄者の外見は演練で見てる 別√ではあっても参加しないというか存在を知らされない
男装して短刀鯰尾って言われるパターンも考えたけど…うん
審神者会議なるものがあるらしい。
所属支部の区別なく審神者が軍本部に集まり、会議と交流を行うのだとかなんとか。その参加資格は刀剣を最低でも二部隊分以上所有しており、審神者が本丸を離れても刀剣のみで防衛できる状態であること、らしい。
毎年年に一度、この時期に開催されるものであり、参加自体は数年に一度程度でいいらしい。まあ、流石に全ての審神者を一度に会せるだけのキャパシティは会場にないということだろう。審神者でないものも参加するのだという話だし。素質のないお偉いさんだとか、或いは逆に審神者候補生と刀剣の顔合わせの場も兼ねているのだとかなんとか。
そう、刀剣も護衛の名目で連れていく事になっている。最低一振り、最高三振り。会場では刀を抜くことが基本的に出来ず、戦装束ではないフォーマルな服装の着用が義務付けられているそうだが。
「それで、誰を伴うのかは決まっているのかい」
「とりあえず前田君は連れていきたいなって」
懐刀だし。
「はったりを利かせるためにも、俺はどうだい。練度も上限に達しているし、不足はないと思うんだが」
「悪くはないと思うが、室内だからなあ。まあ、会場自体は広いんだろうが…練度は勿論高い方が良いんだろうが、
それと、普段和装の鶴丸さんは洋装いけるんだろうか。僕ネクタイの結び方とかよく知らないのだが。
「それなら、僕や長谷部あたりかい」
「いや、歌仙さんは本丸の代理指揮権預かっててもらいたいんだ。長谷部さんも同じく」
「…信頼してくれるのは光栄だけれど」
「なら誰を候補に考えてるんだい」
「いや…折角だし、厚君と双子コーデやりたいなって。身長同じだし」
「…君、まさか男装する気かい。折角の着飾る機会に」
「俺自分が着飾るの好きじゃねーもん。
正直面倒だから参加したくないんだが、そうもいかないんだよな、悲しい事に。
「主は刀心がわからない…」
まあわからないが酷い言い草である。
「双子こおでとやらはぺあるっくとは違うのか」
「膝君と兄者さんみたいなのが双子コーデだって聞いたけど」
詳しくは知らん。広義のペアルックなのかもしれない。
「なら俺と主でペアルックがいい」
「目立てと?」
そもそもどんな服にする気なんだお前。フォーマルってのは伝えたよな?伝わってるよな?
「鶴丸殿、それは流石に看過しかねるのだが」
「刀剣男士の戦装束を西洋のドレスにアレンジしたものが出回ってるそうじゃないか。あれがいい」
「僕はそんな自分の外見に自信がある人のための衣装なんて絶対嫌だからね」
そういうのは可愛い女の子に着せるべきであって僕みたいなのじゃ様にならないものだ。…背低いし胸小さいし。
「君が男装していくというからだろう」
「普段とそう変わらないだろう。何が悪いというんだ」
「主が余所の奴に男と思われるのは嫌だ」
「何の不都合もないと思うんだが」
「主を理解してほしいとは言わないが、誤解されるのは嫌だ」
「そもそも人は誤解するものだよ」
何か気付いたら鳥太刀コンビと前田君連れて初期刀ドレスで参加する事になっていた。解せぬ。
「ほら主、そういう不細工な顔しないの」
「俺着飾るの嫌いだって言ってるじゃんかぁ…」
「でも、どうせならうちの主はこんなに可愛くてかっこいい人なんだぞ、って見せびらかしたいんだよね、俺らは」
「そうそう。エスコートできないならせめてばっちり武装させてよ」
…いや、化粧は女の戦装束とか言うけどね。
「…君ら面白がってるだろう」
俺こんなの絶対似合わないし様になってないと思うし寧ろ罰ゲームの女装的なアレに見えるんじゃないか。パンツスーツがいいよう、せめて完全装備の和装とかさあ…。
「こういうひらひらふわふわはハイティーンくらいの子に着せとくべきだと思うんだよね。僕みたいないい年した大人じゃなくてさあ…」
「俺は別にいいと思うけどなぁ。どうせなら俺がモチーフのやつ着てほしいけど、歌仙のも悪くないんじゃない。それに主、良くも悪くも年相応に見えないし」
「いっとくがそれ褒め言葉にならないからな?」
「もっと若い子の方がいいって主様が思うなら、ちょっと幼めな感じでまとめる?大人っぽくしようかと思ってたけど」
「そうねー、甘めにしてみよっか」
「主君は僕がエスコートいたします」
「…おう、頼む」
「そんな顔してちゃ折角の可愛い格好が台無しだぜ、主」
「どうせなのだから笑ってくれ。記念撮影もしたい」
「本当自由だなお前」
「そもそも主は何がそんなに気に入らないんだ?」
「この格好は全くもって万一の備えの欠片もない。端的に言うと足元が不安だ。走るとか絶対無理だぞ」
ヒールだし。
「えっと、でも、攻撃力は高いと思いますよ!」
「前田君、そういうフォローは頑張らなくていいからね」
「…うう、ひとおおいこわいかえりたい」
「主君、僕が傍についていますからご安心ください」
「主、そこまで警戒しなくてもいいんじゃないか?」
「主、俺たちがいるのだから何を心配する必要もないだろう」
「だからこういうのは僕のキャラじゃないしいい年こいてとか変な目で見られてないか気になるしそもそも僕スタイルよくないし見目がいいわけじゃないし目立つの嫌いだしもうだめだぼくはしぬんだもうやだぁ」
「主君は十分可愛らしいですし、余所の人間の目など気にする必要はありませんよ。前田の言葉は信じられませんか、主君」
「…うん」
「…ふむ、此処はお姫様抱っこでもしてやろうか?」
「ノーセンキュー」
「もし逃げたり戦ったりするような事態になれば抗議は受け付けられないがな。…いや、その場合、刀が抜けるか否かの方が問題か」
受付で渡された呪術器具により、三振りの本体は封じられ抜けない状態になっている。器具と、場に敷かれた術式の組あわせによるものらしいので、どちらかで解除すれば解けるらしいが。
「これ、なんか窮屈なんだよな。しまってないはずの首が絞まってるような心地がするというか」
会場は一瞬でパニックに変わった。その会場に集まっていたのが、審神者になって五年未満、短ければ半年ほどの新人を卒業するかしないか程度のものばかりだったのも悪く働いた。修羅場に慣れていないものの方が多く、すぐ自体に対応できなかったのだ。
会場の中に時空の歪みが生じ、遡行軍が現れ、審神者たちを襲い始めた時、刀剣たちは勿論即座に主を守ろうと動いたものの方が多かったが、すぐ動けた審神者は一握りだった。
彼女は違和感を嗅ぎとって振り返り、出現した遡行軍を目にした一拍後には指揮官の顔になっていた。
「前田君、鶴丸さん、鶯丸さん」
「お守りいたします」
「全く、こんな驚きは求めていないんだがな」
「主、けして俺たちから離れないように」
「…練度は恐らく厚樫山程度だな。油断はするなよ」
「当然だ」
「主こそ、気を付けてくれよ」
「刀は…抜けないようですね」
「暫くは回避に専念するしかなさそうだな」
「主、失礼する」
「へ?うひゃあ?!」
鶯丸が彼女を抱き上げる。
「とりあえず、この場から離脱しよう。刀を抜かずにどうにかするには場も悪い」
「まあそれは確かにな」
混乱に陥っていたのはその会場のみに限った事ではなく、軍本部全体が混乱状態にあるようだった。どうも、本部の幾つもの部屋に歪みが生まれ遡行軍が攻めてきているらしい。要するに、襲撃を受けているという事だ。
「刀の封は、まだ解かれないのか!」
「これは指揮系統が完全に駄目になっていそうだな。どうにかこちらで術具に干渉する方が早いくらいなんじゃないか」
「…一応止めるべきなんだろうがなあ」
穢刀は刀剣男士の刃でなければ倒せない。戦う時に殴ったり蹴ったりすることもあるとはいえ、それは牽制のようなものであり、斬らずにどうにかすることはできない。
「…俺たちが検非違使に遭遇したりしたら大惨事なんだよなあ」
検非違使はその場の一番練度の高いものと同練度になる。彼女の三振りはいずれもカンストしているのだから、当然相手もカンストレベルになるということになる。
「そもそもいるのか?」
「いない、が、これが収まるまでに捕捉されないとも限らない。…これだけ派手な騒ぎになれば別口からの乱入がないとはとても言いきれない」
「悪魔の証明ってやつだな」
そしてこの状況でそれがありえないなどという楽観はけしてできない。そもそも、検非違使がどうやって審神者や刀剣、遡行軍の居場所を捕捉しているのかははっきりしていない。である以上、どうあってやってくるかはわからない。勿論来ない可能性もあるといえばあるのだ。期待するべきではないが。
「…さて、どうしたもんかね」
「まあ、余所にも練度カンストした刀はいるだろうし、低練度のやつには必要以上に近づかない、ということでいいんじゃないか」
「…なんか、気分が悪くなってきた」
「大丈夫ですか、主君」
「なんか、頭痛もするんだ…今更、戦場で怖気づいたりしないはずなんだけど」
「今回はいつもと状況が違う。無理は禁物だ」
「…早く此処から出て本丸に戻りたいところだが」
「うー…」
顔をしかめて呻いた後、彼女は歌い始める。
「♪~」
前田は知っている。彼女は、調子が悪い時にも己の限界を確かめるために歌うのだと。その歌声は、しっかりとした力を持ち、僅かに周囲の空間を浄化している。
「♪~」
鶴丸も鶯丸もこんな時に何故歌っているんだ、などと思いはしない。彼女の歌を彼らは好んでいる。どうせなら戦場でなく本丸で穏やかに耳を傾けたいものだが。
「♪~」
「へっ?わっ?!」
「主?!」
背を預けた筈の壁が存在せず、彼女はバランスを崩して倒れ込んだ。
「いってぇ……何だ?」
先程より、ほんの少しだけ呼吸が楽になったような心地がする。辺りを見回し、彼女は眉をしかめた。
そこは広い部屋だった。目の前には扉がある。おそらく、隠し扉か何かに運悪くよりかかってしまったのだろう。…閉じた覚えもないのに閉まっているが。その扉は、内と外を隔絶するためのもののようだと彼女は感じた。
「…って、呆けてる場合じゃない。戻らなきゃ」
そう呟いて立ち上がろうとした時、足首がずきりと痛んだ。どうやら捻ったらしい。
「っ…くっそ、こんな時に…流石に湿布とかは常備してないぞ。とりあえず、テーピングか?」
応急セットは一応、収納に入っている。問題は悠長にしている暇があるのか、だ。彼女は改めて部屋の中を見る。灯りの点いていない室内は薄暗いが、いわゆる足元灯らしいものが壁に沿っていくつか設置されているようだ。いや、正確には、展示台のようなものの下部にライトが設置されているのか。そして、いくつもある台には、刀剣が掛台に置かれて安置されている。それも、しっかり拵えを付けた上から封印措置がされて状態でだ。
「…何だ、此処」
それは、異様な光景のように彼女の目に映った。それと同時に、刀封じの術式がなかなか解除されない理由の内一つがこれであるのではないかという事を直感した。要するに、関わるべきじゃないものである。
彼女は眉をしかめ、差し当たってこの場に危険はないらしい、と応急セットからテープを取り出して靴を脱いだ。
「♪~」
気を紛らわせるために唄を口ずさむのは彼女にとっては最早癖である。テーピングの手つきは迷いなくしっかりしているが、声は僅かに震えていた。
「♪~」
「――よぅ、歌の上手いお嬢ちゃん」
扉の方を向いて処置をしていた彼女の背後に誰かが降り立った気配がした。無視したいのはやまやまだが、こういう場合、無視するのは拙い。特に、即座に逃げられない場合は。彼女はゆっくりと振り返り、首を傾げる。
「…僕の事か?」
「ああ。…見たところ、審神者だろう?少し頼みがあるんだが」
にぃと妖しい笑みを浮かべるのは、獅子王。ただし、常のように背負っている鵺は見当たらない。
「…聞く義理はないな」
「そんな薄情な事言わなくてもいいだろ?何も、死ねとか言ってるわけじゃないんだ」
「可能な限り急いで合流しないとうちのが心配する」
「…すんなり此処から出られると思ってるんだ?」
「・・・」
「そんな顔すんなって。結界の綻びから強引に引っ張ったから、ちゃんと対処しないと怪我するぜ、ってことだから」
「結界」
まあ、碌でもない場所なのはわかっていた。
「それに、今此処の外は危ないんだろ?此処にいれば多分安全だぜ」
「生憎、自分の部下を危険に放りこんで、自分は安全な所で待ってるってのは主義じゃないんだ。僕だけ安全なところにいても意味がない」
「ちっちゃいのに豪気だなぁ、お前。…けど、その状態で合流しても足手まといになるだけなんじゃないか?」
「…いや、そもそも僕は自分で刀をもって戦える類じゃない。呪術による戦闘はできないこともないが」
「ふーん。で、本題なんだが」
「(僕は聞くと言ってないぞ)」
「歌って欲しいんだ」
「…は?」
「曲は何でもいい。お嬢ちゃんは、ただ、俺たちが"満足"するまで歌ってくれればそれでいい。…簡単だろ?」
「んな曖昧な頼み、引き受けられない。どんだけ歌わされるかわかったもんじゃないし」
「って言われても、具体的なことは言えないんだよなあ」
「そもそも僕が歌ったからって君らに何の得がある。聞きたいだけならもっと他に上手いやつがいるだろ」
「お嬢ちゃんだから頼んでるんだって。自分じゃわからないのかもしれないが、君の歌は俺たちに益がある。な、頼む」
獅子王は彼女の手首を掴む。
「聞いてくれたら、俺たちの方でも君の望みを何か叶えてやるからさ」
「(断らせる気ないやつだこれ)………歌えばいいんだろう、歌えば」
彼女は肩をすくめた。獅子王はニィと笑って彼女を抱え上げる。
「床に座ってたんじゃ冷たいだろ。こっちの方に椅子があるからな」
「…お構いなく」
「遠慮すんなって」
幾つもの刀の横を通り過ぎて部屋の奥、布と木で出来た椅子が置かれていた。獅子王は彼女をそこに降ろす。
「できれば、気分がよくなる歌が良いな」
「…と、言われてもなあ」
彼女は少し考え、歌い始める。
「♪~」
「御苦労だったな、童子」
「助かったよ、ありがとう。いい子いい子」
顕現した髭切が彼女の頭を撫でる。その太刀の封が、解けている。元々封がなかった、とは彼の台詞からして考えにくい。
「…どういたしまして」
流石に喉がからからになっている。水筒の茶を飲んだ。
どうやら、その場の刀剣の封印が全て外れているようだ。外れているようだ、というか、彼女が外してしまった、というのが正確なところなのだろうが。
「それじゃあまあ、久しぶりの鬼退治といこうか」
「まあ、堕ちぬ程度に暴れようか」
「久しぶりの実戦だからと羽目を外しすぎるなよ、兄者」
「…犠牲となったものの冥福を祈りましょう」
「僕も戦えないし、後方支援かな?…切れ味が戻せたら良かったんだけど」
「…無理をして折れてしまうよりはいい」
一気にその場は賑やかになった。幾振りか、見知らぬ刀があるように彼女は思う。まあ、自分の本丸にいる刀しか彼女は知らないのだが。
「で、お嬢ちゃんの望みを言ってくれないか?」
「と、言われてもな。君らに頼むようなことは特に思い付かない。僕はさっさとうちのと合流したい」
「こういう場合、謙虚過ぎるのも考えものだぜ?…そうだな。じゃあ、嬢ちゃんの保護者の所まで連れてってやるよ。ま、足代わりってやつだな」
「・・・」
「主!」
「…そちらは」
「怪我はし…てるじゃないか!俺たちがついていながら、済まない。痛、くないわけないな。処置はもうしているのか、俺に何かできることはあるか?」
「おちつけ」
「賑やかだなあ。嬢ちゃん余程この鶴丸に慕われてるんだな」
「…主を返してもらえないか」
「別に人質とかじゃないんだからそんなカッカすんなって。俺は一応この子に危害を加える予定はないぜ?」
「大切な主を信用できない相手に預けておくつもりはない」
「嫌われたもんだな、俺も」
獅子王は彼女を鶯丸に渡す。
「…状況を教えてくれるか?」
「膠着状態、ってやつだな。穴塞ぐのに手間取ってるらしいし、刀封じもまだ解けてない」
「一応、非戦闘員の脱出は完了したらしいのですが」
「こちらの陣営にも幾らか被害が出ているようだ。主も心してくれ」
「まあ、主に危害を加えさせたりはしないがな」
「随分な大事になってるんだなぁ。ま。上が無能ばっかりじゃ仕方ないよな」
「…まあ、この状態じゃあ指揮する人間が無能扱いされるのも仕方のないことだな」
「せめて抜刀許可を迅速に出してくれればな」