若干ギャグに振ってるようなそうでもないような しかしこいつ穢れたり堕ちたり意外としなさそうだ
「俺は小鳥っていいます。よろしく」
そう言って笑う少女とは反対に、青年は表情を強張らせ、押し黙った。
「…あれ、どうしたの?おーい?」
「近付くな」
少女はぴたりと伸ばそうとした手を止める。青年はすっと顔を背ける。
「…いや。お前は、お前が、小鳥だというのなら…俺に近付かない方がいい。死にたくはないだろう?」
少女は目を瞬かせ、ゆるく首を傾げた。
「ちょっと意味がわからないんだけど」
「…少なくとも俺は、好んでお前を殺したくはない」
「論理の飛躍があった気がするな?或いは情報の断絶かもしれないけど」
いっそ無邪気とすら言える純粋さで首を傾げる少女に、青年はますます苦しそうに目を伏せる。
「…俺の霊力は怪異や病魔を退けるが、苛烈過ぎて小動物には耐えられん。鳥は俺に近付かない。蔵の屋根に止まった烏が死ぬほどだからな」
「ん?んん?…あんた、俺の事馬鹿にしてる?っていうか、小動物って言った?俺、そこまで言われる程ちっさくない!…そりゃ、大きくはないけど…そんな言われる程ちっさくないもん。標準やや小さめくらいだもん」
「え、いや…」
しどろもどろになった青年を、少女は強い瞳で見上げる。
「霊力とかよくわかんないけど、勝手に人を殺さないでくれるかな。っていうか、名前くらいちゃんと教えてくれたっていいでしょ。挨拶の基本だよ」
「…。…すまない」
青年は散々迷った末に言葉を紡ぐ。
「俺は、大典太光世という。三池派が太刀、天下五剣の一振だ」
「んと…名前長いけどなんて呼べばいいの?大典太?光世?」
「…あんたの好きにすればいい」
「えーと…じゃあ、光世。いや、光世君?光世さん?」
「…敬称は、なくていい。俺は刀剣で、あんたは審神者…だろう?」
「いや…まあ、審神者…なんだけど、正直俺、審神者が何するもんなのかよくわかってない」
「えっ」
「碌な説明を受けずに此処に来たからな。てっきり、此処で色々教わるもんかと思ってたけど」
「……俺は、教えられないぞ。詳しくない」
「…こんのすけ、いないみたいだしなあ」
青年は気拙そうな顔をする。
「…俺の所為、だな。俺のようなものがあるから」
「?どういうことだ?」
「…俺の主だった審神者は、死の間際に俺を呪った。だから、俺は此処に隔離されている」
「呪い?」
「…確かに、良い主と胸を張って言えるような人間ではなかったが、主をあそこまで追い詰めたのは俺も原因なんだろう。俺がいたから、主は…」
「話が見えないんだけど。その呪い?であんたは隔離されてて?なら、俺は何で此処にいるのさ」
「…本丸の機能と、刀剣男士が実体化を保つためには、審神者の霊力が必要になるからな。それで、軍の奴らが寄越したんだろう」
「んー…つまり俺は電池扱いなわけだ。おっけ把握」
「…不快には、思わないのか」
「僕、別に大きな志とかがあって審神者になったわけじゃないからね。話の流れ的な何かというか。正直、普通のとこに配属されてても、ちゃんと審神者できるのか自分でも半信半疑というか。零感だから審神者に本当になれるとも思ってなかったしさ」
「・・・」
青年は少女をじっと見る。正直、こんな所に寄越されるには惜しい、稀有な才を持っているように見える。少なくとも、十把一絡げの底辺レベルの審神者ではない。
「…あんたは、此処にいるべきじゃないと思う」
「って言われても、
「…すまない」
「なんであんたが謝るのさ。あんたが封鎖した訳じゃないだろ」
「封鎖されたのは俺が原因だ」
「己でどうにもできないことまで責任負おうとしなくていい、って言ってんの。別に僕は謝罪を求めてる訳じゃないしさ。っていうか、正直無駄に卑屈になられるとウザい」
「…すまない」
「だから、そうやって謝って解決しようとすんなっての。俺謝れなんて一回も言ってないだろ」
「しかし…」
「悪いことしたら謝るのは確かに大事だぞ?けど、悪いことしてないなら、謝る必要なんてないんだよ。自分に非がないなら堂々としてろ。他人の泥まで被ることはない」
「・・・」
青年は少女が眩しいと思う。そして、それ以上に、なにか惹かれるものがあるのを感じた。なんというか、この人に縋ってしまいたいと思うような、なにか。救いを求めたくなってしまうような。けれど、そうしてはいけないとも、思うのだ。それは、許されるべきではないと。