「つ」る丸国永だ、と彼が名乗り終わるより前に、小鳥は光世にひょいと抱えられ彼から引き離された。
「・・・」
口には出さないが、その目は雄弁に語っている、これは俺のだ、手を出すな、と。
「どうした、光世」
首を傾げた小鳥の言葉にも答えず、光世は鶴丸を睨んでいる。
「いやいや、天下五剣サマは気難しいねぇ」
皮肉気にそう言って鶴丸は肩をすくめた。
「てんがごけん」
「ただでさえ顕現数が少ないんだ。使いものになってくれるんだろうな?」
「…今まで俺を封印していたのはそちらだろう」
「おいおい、俺を政府の犬と一緒にしないでくれよ。どちらかといえば君の同僚だぞ?なにしろ、今日からこの本丸に配属されることになった刀だからな」
「…何?」
「本日付でこの本丸の凍結は解かれました。可能であれば、通常通りの任務をこなすようにと」
こんのすけの言葉に光世は眉をしかめる。小鳥はきょとんとした後、光世を見上げる。
「光世ー」
「…小鳥に碌な知識も与えず此処に寄越したくせに、普通の審神者のように働け、と」
「…小鳥様の扱いが不適切だったことは認めますが、審神者は年中人手不足なのです。問題なく仕事をこなせる方を遊ばせておく理由はありません」
「面の皮の厚いことだ」
「みーつーよー」
「…何だ、小鳥」
「そろそろ降ろしてほしいんだけど」
「・・・」
「俺別に政府を恨んでたりとかはないぜ?ちゃんと先に指示してくれよ、とは思ったけど」
「へぇ、恨んでないのかい。こんな所に押し込められて」
「別に。自分一人きりってわけじゃなかったし、出歩けないことが苦になる性質でもないから」
「・・・」
鶴丸は訝しげな顔をする。小鳥と光世が二人で過ごしている時の雰囲気は、一線を越えた男女のそれと言っていい。しかし、鶴丸の神としての勘やなんかが小鳥は処女だと言っている。意味がわからない。
「…いや、もしかしてアレか。大典太の方が処女散らしてるのか?」
意外だが、ありえないとまでは言えない。
「で、実際のところどうなんだ。お前がネコということでいいのか?」
「ネコ…?」
本気で困惑している様子の光世に鶴丸はおや、という顔をする。
「小鳥が処女な以上、一線を越えてるならタチネコ逆転でヤったってことだろ?いや、他人のプレイにケチを付けるつもりはないがな。そういう嗜好のやつもいるだろうし」
「???…お前は何を言っているんだ。俺は太刀だぞ」
「いや、だから夜は小鳥がタチなんだろう?」
「夜になったからといって何故小鳥が太刀に変わると思うんだ。小鳥は人間だぞ」
「ん、んんー…?」
なんかおかしい。
「…君、小鳥とまぐわってるよな?」
指で輪を作って突き刺すジェスチャー
「…。…それがなんだ。というか、その手は何だ」
「…ああ、成程…箱入りなんだな、君…」
「…?」
「で、君は不満はないのかい」
「そもそも僕性欲ないからなあ。光世がそれで満足なら別に」
「…その反応は、知っててやってるな」
「情報化社会の現代、エロ本くらい簡単に見れるよ。ちょっと如何わしいこと書かれてると卑猥な広告も湧いてくるし」
「…欲求不満なら相手になるのもいいかと思ったんだがな」
「性欲処理ならお見世にいってどうぞ」
「いや?俺も淡白な性質だから然程溜まってるわけじゃないが…」
鶴丸は小鳥の頬に手を触れる。
「君を抱けるなら、抱きたい」
「俺非性愛者なんでカラダ目当てはノーセンキューです」
「…少しくらいぐらっときたっていいだろう」
「自信過剰だな。僕は顔だけで惚れるようなチョロインじゃない」
(前田に色々聞いてしまった光世)
「…切腹しよう」
「えっ…そ、それは流石に大袈裟ではありませんか?」
「…話しにくいことを話させてしまってすまなかったな、前田。小鳥のことは頼む」
「頼まないでください。あなたは小鳥様の守刀になったのでしょう?簡単にそれを放棄しても良いのですか」
「それは…」
「それに、小鳥様はなかなか苛烈な方のようですし、嫌な事は嫌とはっきり仰られるのでは?そうされなかったということは、小鳥様は大典太様を憎からず思っておいでなのでしょう」
「・・・」
前田の言いたいことはわからないではない。小鳥は本当に、自由で心の強い人間なのだ。それで己が不利になるとしても、己の気持ちを偽ることはしない。
「小鳥様のことは、僕よりあなたの方がよくわかっているはずでは?」
「…すまない、取り乱した」
「いえ。誰しも慌てることはあるものですから。…しかし、己の行動に問題があったと思うなら、きちんと話し合うべきでは?」
「…そうだな」