本丸で暮らし始めて数日が経った。
物資(食材とか)は大体専用の取り寄せシステムで賄っている。通販とはまた違う。管轄も違うらしい。
食事は基本的に赤鴉が主体で、一振りが手伝うという形で落ち着いた。ちなみにオール電化型システムキッチンである。対面式ではない。
本丸そのものは、武家屋敷風の平屋で、生活スペースと刀や戦いに関する場所は別棟になっている。
ちなみに、各々の自室は赤鴉のみ少し離れた部屋で、アマノを真ん中に隣り合った一人部屋三部屋である。
掃除洗濯、屋敷の維持管理は主に式たちがやっている。式の統括はこんのすけがしている。どの本丸にもいる、鍛刀や手入れの式は勿論、赤鴉の増やした雑多な、人ならざる姿の式たちもこんのすけが統括している。まあ、最上級権限は主たる赤鴉にあるのだが。
また、この本丸の特殊な事情から、通称をくろのすけという色違いのこんのすけもいる。権限や機能が違うらしい。今の所それが発揮されたことはなく、毒舌な方と認識されているだけだが。ちなみにアマノと仲が悪い。
「おや、御一人で厨に立ってどうしたのですか、主さま」
「ん、ああ、くろのすけ。…いや、式の子たちに随分世話になってる気がしてね。お礼したいと考えた結果、お菓子を作ることにしたわけさ。彼らは食事は完全に嗜好品なんだろう?甘いものは嫌いじゃないようだし」
「ええ、まあ…撫でてやるくらいでも喜ぶと思いますが」
「僕の都合で邪魔をしてしまう事になるかもしれないだろう、それだと。それに、会う頻度がかなり個体差あるし」
その点、お菓子なら好きな時に食べてもらえるし皆に同じように配れる。
「はあ…」
「勿論くろのすけも仲間外れにしたりしないぞ」
「いえ。そのような心配をしていたわけではないのですが…というか、私には別に…」
「いや、くろのすけはなんとなく甘やかしたいんだ、なんとなく」
「・・・」
「今目立った仕事がないということは、これから苦労するということだろう?」
「…まあ、私の仕事は対刀剣男士のことですからね」
「正直、普通の本丸を運営させてくれた方が良かったんじゃないかとは思うけど」
「…その点に関しては、私は半分同意…といったところですかね。初っ端から天叢雲剣と数珠丸恒次を引き当てるような主さまに一般的な本丸が築けるとは思えません、良くも悪くも」
「そりゃどういうこっちゃ」
「ところで、最初に受け入れる刀剣と、それが何時来るかが大体決まりましたので報告いたします」
「へぇ。何時来るの?」
「三日後です。来るのは」
くろのすけが名を告げようとした時、赤鴉はそれを遮る。
「いや、名前聞いても何も判らないからいいよ。何時からと何振りかくらいで」
「主さま…」
「いや、だって知らん人に自分のこと知られてたらキモいじゃん」
「刀剣たちは己の事を知られていない方ががっかりしますよ。…というか、主さまには現在顕現が確認されている刀剣の資料はお渡ししたはずですが」
「何を隠そう、俺が学生時代に最も苦手としていて、ちゃんとしたテスト勉強しないと平均点取れなかった科目が歴史だ。嫌いじゃないどころか寧ろわくわくして好きなんだが、地名と年号と人名が覚えられん」
「それでよく歴史好き名乗れますね」
「好きと得手不得手は必ずしも一致しないもんだ。仕方ない」
「…とにかく、一度くらいは全ての資料に目を通しておいてくださいよ、主さま。頭いいんですから多少なりと頭に残るでしょう」
「いやあ、僕は興味のないことは覚えられん性質だからな。ついでに言えば、手に入らんものにも興味はない」
「…手に入るものなら興味持つんですか」
「ものによるかな。俺は面白いものが好きだ」
「・・・」
過ごしやすくなるよう、少しずつ小物を揃えている。資料室の蔵書もその一つだ。赤鴉が過去に読んで面白かったり興味深かったりした書物や、オンラインストアであらすじを見て読みたいと思った本なんかが収められている。また、図鑑・辞書や専門書などの実用書の類もある。
「…若干面白みが足りないな」
「書庫なんてそんなもんじゃないのか、大将」
「いや。本屋も図書館もわくわくする場所だ。…うーん、もっと視覚に訴えてくる系とかエロ本とか混ぜるか」
「視覚に訴える、ってのがどういうのか知らないけど、春本は止めた方が良いと思うぜ、大将」
「何で?楽しいじゃん。見つけた時の反応が」
「大将…」
「あはは。まあ、巨乳水着グラビアとか、ライトなのにしとくから」