刀剣たちと過ごす日々   作:ペンギン隊長

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三日後


雨の降る庭3

 

 

 

 

「こちらが本日よりこの本丸で預かることになった刀剣…歌仙兼定と宗三左文字です」

「俺は此処の審神者の赤鴉。厚と恒次は面識あるのかな。こっちは初期刀のアマノ。暫くよろしくな。そっちは何て呼んだらいい?」

「…残念ながら数珠丸殿と面識はないな。それに、僕の知っている厚藤四郎はそのような大仰な鎧は着ていなかったね」

「何しろ、御大が控えてるところに降りてこなきゃならなかったからな。普通の躯じゃ強度が足りなかったんだ。まあ、いわゆる極ってやつだな。大将の霊力を潤沢に引き出せたからこその荒技だってのは自覚してる」

やり方がアレだっただけで、元々"厚藤四郎"に備わった力ではあるのだが。

「ん?てことは、あの時の鍛刀って失敗する可能性があったってことか?」

「…まあ、耐えられずに折れた可能性はあったんじゃねーかな…」

「そっか、頑張ってくれてありがとな」頭撫で撫で

「わ、大将、顔合わせの場でそういうのはやめろよな」

「俺、やろうと思った時にやらないと忘れちゃうからさ。…っと、で、結局なんて呼んだらいいんだ?無難に歌仙さんと宗三さん?」

「…それで構わない」

「ええ、構いません。…珍しい刀、それもあの天下五剣を侍らせているような方は僕になど興味を持たないでしょうけど」

「宗三」

赤鴉はぽかんとしている。

「…恒次、てんがごけんって何だ?」

「主様、私ちゃんと資料に目を通してくださいと申し上げましたよね?!」

「失礼な。一応目は通したぞ。注釈とかなかったからどうでもいいことかなって流したわからない単語が複数あるだけだ」

「そこは調べましょうよ?!」

「データあさるならともかく、書類とか書籍とかは時間食うからやだ。別に知らなくてもいいなら後回しにしたい」

ちなみに本は読み始めると関係ないもんまで読んで気が付いたら時間が過ぎてる、の意である。本を読む事自体は大好きだ。

「そうですね。…天下五剣とは、要するに、日本中の刀の内から優れた刀を五振り選ぶならどれか、というものです。今、刀剣男士となっている内では、私と三日月殿が当てはまります」

「室町頃のおっさんが勝手に選んで言ってるだけだし、大将は三大美女とか三大珍味とかみたいなもんだと思っておけばいいと思うぜ」

「成程」

「三大美女はともかく、珍味を例に出すのはどうなのでしょうか、厚藤四郎」

「だって正直、御大が居る時点で序列とかほとんど無意味だろ」

「私は、わけ隔てなく接してくださった方が嬉しいですが」

「他人からの評価で何で俺から見た価値を変えなきゃならんのさ。俺今んとこ厚藤四郎が一番好みだぞ」

本体的な意味で。

「俺も国宝の名刀だからな。…って、やば」

「主、初期刀殿が拗ねますよ」

「だってアマノの本体派手なんだもん。俺、シンプルでまっすぐなのの方が好きなの」

武器である以上、切れ味とかもポイントだろうけど、今の所見る機会がないし。

「というか、しいて順番つけるならって話で嫌いではないよ」

「…大将、多分美術刀より実戦刀の方が好きだよな。この本丸には向かないだろうけど」

「それは実際、見たり会ったりしなきゃわからん」

「…まあ、主さまは価値観が独特ですからね」ぼそっ

 

 

 

「滞在中の私室は客間か空き室から好きに選んで使ってくれ。…あ、式を一体ずつ付けておこう。爪紅と藤袴に頼んでいいかな」

赤鴉に問われて姿を現したのは、赤い袍をまとった猫の面をつけた式と、薄紅の袍をまとった犬の面をつけた式だった。了解というように頷いて歌仙と宗三に一礼する。

「後…何か言っとくべきことってあるっけ?」

 

 

 

「求められてたのは医者っていうよかカウンセラーかぁ…ははっ、余計向いてねぇよ」

「一刻程でそうと察せられる主ならば、務まるのではありませんか」

「いや、俺人間嫌いだから他の奴の人間嫌いに何か言える立場じゃねーのよ。下手につっつくと逆効果だろうしなぁ」

「・・・」

「まあ、実害がなければいいか。どちらにせよ、俺は俺の出来ることしかできないしな。…恒次は晩御飯何が良いと思う?」

「…昼餉を作っている時に尋ねることではないと思いますが…主の食べたいもので良いのでは?」

「特にピンとくるものがない」

正直な所、赤鴉、アマノ、厚は食事に対するスタンスは概ね食えりゃあそれでいい、というレベルである。数珠丸は過度は慎むべきである、といったところか。好き嫌いをしないわけではないのだが、拘りというものに乏しい。

「やっぱ洋食かなぁ。和食作る勇気がない」

ちなみに昼食はチャーハンとスープと杏仁豆腐である。

 

 

 

「雅じゃない…」

「僕は嫌いじゃありませんけどね、こういうのも」

「屋敷や式は趣や雅を感じるのに、料理に限って何故彩りを気にしないんだ」

「…。…いや、そんなこと言われても」

赤鴉は目を泳がせる。まあ、主な理由は、赤鴉の好き嫌いが激しいからだろう。特に野菜は嫌いなものの方が多いくらいだ。これでも子供の頃から比べればマシになってきたと言えるのだから、酷い偏食具合である。

「…さては君、偏食家だろう」

「…昨今は別に好き嫌いしたって死なないもんね。いいじゃん、ジャンクフードで済ませず自炊してるし薄めの味付けだから健康的だし」

「仮にも本丸の厨を預かる身でなんだいその志の低さは。それは最低限度の話だろう」

「うちに俺以外に料理できる奴がいると思うてか」

「・・・」

歌仙はこの本丸の刀剣三振りを見る。

「…。…確かに、全面的に任せるには不安があるだろうね」

「だろ?」

「手伝いならばできるのですが」

「手伝うのと主導して作るのはまた別でしょう。僕は経験ありませんが」

「慣れればどうにかなるもんだと思うけどな」

 

 

 

とりあえず滞在してる内は歌仙が料理する方向で固まった。勉強兼ねて赤鴉と誰か一振りも参加するのだが。

「書庫の蔵書はどの程度は読んだものなんだい」

「え?んー…実用書系は必要になった時に読もうと思って後回しになってて、此処に来てから手に入れた本はまだ三冊くらいしか読んでないけど、後は全部一度は読んでるはずだから…まあ七割八割…かなぁ」

「…ということは一定の教養はあるのかな」

「…これでも一応義務教育は修了している身なんだが」

「最高学府にはいっていないということだろう。どちらにしても知識の偏りは否めないようだし」

「それは否定しないが、大学行かなかったのは必要性を感じなかったからだし、刀に関する深い知識は一般常識ではないからな」

「昨今は刀を持つには制限があるというから、一般常識とは言わないが…審神者としては常識じゃないのかい」

「知らないと支障があるか、益があるのでなければ常識とは認めない」

「天下五剣の称号は名誉あるものですが、なければないで困るわけではありませんからね。…人間で言えばミスコン優勝経験のようなものでしょうか」

「わかるようなわからないような…」

「主の理解がそれでいいのかい、数珠丸殿」

「私は今の扱いで構いませんので。…主に鍛刀され顕現された最初の二振りの一つ、十二分に特別だと自負しています」

「…鍛刀?数珠丸殿は現在鍛刀できないはずだと思うのだけれど」

「初期刀殿が初期刀殿ですからね。対抗できるのは私か三日月殿くらいのものです」

練度差を作れれば、と注釈がつくが。

 

 

 

「できることをやらないのは、怠慢というのではないのかい」

「何でも完璧にこなそうとしても中途半端になるかどっかで破綻するだけだよ。適度に力を抜かなきゃね。…めりはりは大事だって言うし」

「…それは一定の真理ではあるだろうけれどね」

赤鴉は器用に歌仙の手つきを真似して飾り切りする。数珠丸は別の作業をしているが、彼も割と器用なのが判っている。

「大体、余程見た目が悪くない限り、重要なのは味だろう。味が同じなら食べる分には同じだし」

「同田貫のようなことを言わないでくれるかい、雅じゃない」

「別に誰かを真似ているつもりはないんだが」

「なお悪いよ。いいかい、食事というのは生き物が生を繋ぐために必要なものであると同時に、季節や日々の移り変わりを実感できる風流さも兼ね備える事が出来るものなんだ。季節の物を彩りよくいただく、これこそ雅というものだろう」

「言いたい事はわからないではないけど、此処に季節などないようなものだろう。畑も何植えてもすぐ育つし」

「だからこそ少しでも季節を感じられる料理を作るんじゃないか。それと、一応本丸には景趣というものがあって季節を任意で変えられるそうだよ。あまり風流ではない行為だけれどね」

「…成程」

赤鴉が納得したところで飾り切りが終わる。

「…まあ、手間がかかるのは否定しないけれどね、此処はまだ十分回る数だろう」

「通常は一部隊六振りで四部隊組めるそうですからね。最低でも24の刀剣を揃えなければ一人前となりませんか」

「既に確認された刀剣は50を越えたからね。そこまでいくと、一振り一振り皿に雅に盛りつけようとしていれば時間が幾らあっても足りないし…雅を解さぬ不作法者が全くいないわけではないからね」

「正直、俺は見た目可愛くとか拘るならお菓子作るかなー。日持ちするのなら暫く残しておいてもいいし」

 

 

 

 

 




初期刀じゃなかった歌仙
自害し損ねたとかかなって思わなくもない 生き残れたというか、生き残ってしまったというか 刀解希望者が主 後に普通の審神者じゃ浄化しきれない勢とか来る
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