刀剣たちと過ごす日々   作:ペンギン隊長

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二振りの選択 
本丸内では一カ月前後、外では三日くらい


雨の降る庭4

 

「そろそろ次へ進めるようになったのではありませんか?」

黒狐は問う。やはり刀解を望むのか、それともいずれかの審神者との再契約を望むのか、と。

 

 

 

「それなんだが…此処に…赤鴉と再契約を結ぶ、というのは、許されるのかい?」

「主さまと、ですか?…まあ、本契約を結べるのであれば、それもありですが。この本丸の特性上、戦力が整うまで膨大な時間がかかることは自明の理ですし。政府も特に止めはしないと思いますよ」

アマノという突出した刀剣男士、くろのすけという特殊な式がいるとはいえ、一定の戦力があるに越した事はない。それは万一本丸に攻め込まれた時の備えであり、更に多くの刀剣を預かる為の安全策だ。ある意味で、預かり刀は危険分子に他ならないのだから。

「…赤鴉は承知してくれるかな」

「主さまは特に拒否などはされないと思います。デメリットがあるわけではありませんし」

逆に、去る場合も大して反応はしないだろう。そういうものだと思っているのだから。

「他が何か言うわけだ」

「他というか…天叢雲剣ですね。アレは主さまに異様に執着していますので。アレに比べれば悪名高い三条派など可愛らしいものですよ」

「…あの方が刀剣男士として、しかも初期刀として降りている時点で異常事態だからね…。というか、政府もあの方を従えることなど想定していないだろう?」

「その結果がこの本丸ですからね。寧ろ、アレを制御できる審神者がいるはずがない前提というか…」

「大体、あの方は剣であって刀ではないだろうに」

「そもそもアレの生まれた頃に刀という概念がないでしょう」

 

 

 

「僕は、此処を出ますよ。…残っても、僕では助けにはなれないですし。もう少し腕が立て(れんどがあれ)ばまだ良かったでしょうけど」

「気持ちに変化はないと?」

「そうですね…まあ、怠惰でない相手であれば、再契約するのも悪くはないかと、思わなくもないですよ。僕に選ぶ権利があるかはわかりませんけど」

「まあ、断る権利はありますよ」

 

 

 

 

「僕は歌仙兼定。風流を愛す文系名刀さ。どうぞよろしく」

「え、あ、はい…?」

「他ならぬ君と、再契約を結びたいと思ってね。君は雅を全く解さないというわけではないし」

「…過大評価じゃないかな。僕は美醜とかはよくわからないし」

「おや、君の気質は芸術家のそれなのではないかと感じたのだけれど、違ったかな」

「芸術家名乗れる程の作品を作れたことはないな。どうにも僕には集中力が足りない。そもそも、胸張って納得のできる丸も描けないのに、芸術家にはなれないよ」

「・・・」

歌仙は思わずまじまじと赤鴉を見た。赤鴉は僅かに眉をしかめる。

「…何だよ」

「…いや、君は十二分に器用だから、そんなストイックに作品を向きあうタイプだとは思わなくてね。気ままにやりたいようにやれればいいと思っているものだと」

「自分の中に明確な何かがあればそれでいいだろうけど、僕にはそういうの、ないからね」

「…まあ確かに、君は何か確かな信念などがあって此処に居るわけではなさそうだしね」

「いやあ、我ながらどうかと思うが、僕が此処に居るのは八割方その場のノリと勢いで行動した結果だね。行き当たりばったりってやつだ」

「…審神者とはそんな気軽になれるものだったかい」

「僕もまさか本当になるとは思ってなかったんだ。霊感とかないし」

「…次からはよく考えて行動したまえよ」

「いや、別に後悔はしてないから、その場のノリとか勘とかで道を選ぶのも別に悪くないかなって。こんな俺でも、誰かの役に立てるのなら、それはそれで僥倖だしね」

「…君は、随分楽観的というか、お人好しというか…」

「人生は有限なんだ、有意義に使うに越した事はないだろ」

 

 

 

 

「…ああ、あの子も結局は籠の小鳥なんだ」

宗三はぽつりと呟く。

神域のごとく清らか過ぎる場所で過ごしていた影響か、現世が少し生き苦しく感じる。けれど、過ごしている内にまたこちらに適応していくのだろう。そういうものだ。

「…籠の内で歌っている方が幸せな鳥ももしかしたらいるかもしれませんし、あの子が不幸だと決めつけられはしませんが」

しかし、生きている内に箱庭(ほんまる)を出る事はおそらくもう叶わず、死後も魂を神の箱庭に囚われることが決まっているというのは、傍目に見て幸せなことに思えない。なによりあの子は、好奇心の強い人間のようだった。そのような人間が、悠久不変の箱庭に閉じ込められるというのは、地獄だろう。

 

 

 

 

 




蛇足なんで多分書かないが、宗三は多分"短刀しか鍛刀出来ない本丸"とかに引き取られる感じのアレ
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