刀剣たちと過ごす日々   作:ペンギン隊長

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出かけるにあたって仮契約をした


君は知らない2

 

 

 

はぐれないように手を繋いで、僕と大包平は妖横町にやってきた。成程、住民や行き交う人々の姿に目をつぶれば、古き良き田舎の商店街である。人間に見えるものと明らかに人間でないもの、人のふりをしているらしいものが入り混じっているが。その大半は妖で、いくらかは刀剣、そしてもしかしたら人間もいるのかもしれない。

使用通貨は古銭や小判の類らしい。まあ、電子マネーは使えないだろうな…。寧ろ使えたらすごい。

「何をそんなにきょろきょろしているんだ?」

「いや…俺、こういうところに来るの初めてだし」

「そうか」

なんかどうにも大包平は俺のことを幼い子供か何かだと思っている節がある。これでもとっくに成人しているんだが。…いや、何か千年くらい前に作られた刀の付喪神って話だし、そういう視点で見ると俺なんぞ生まれたばかりの子供みたいなものなのかもしれないが。若干釈然としないものはある。

「歩き疲れたのならそこの茶屋にでも入るか」

「そういうんでもないけどさ」

いや、入りたくないという意味ではないが。

「疲れた時は甘いものを食べると良いというんだろう?」

「まあ、そういう話は聞くね」

真偽のほどは定かではないが。まあ、全くの与太話でもないだろう。どちらにせよプラシーボってのもあるし。

「嫌か?」

「嫌じゃないけど」

「なら行くぞ」

「うん」

ところで僕、茶屋のシステムを知らないのだが。

 

 

 

串に刺さっていない団子とは、なかなか新鮮だ。味は普通に美味しい。若干食べづらいが。お茶もまあ、普通に美味しいと思う。

「・・・」

大包平が何かじっと見てくるのだけ不可解だが。何なの。俺が何かした?

「…俺の顔に何か付いてる?」

「…いや。…いや、しいて言えば、そうだな。まともに人間を見るのが久しぶりだから、だな」

「これまでに本丸に来たのって、まともな人間じゃなかったの?」

「まともな人間もいたかもしれないが、正気を喪っていた時もあったからな」

あー、そういう?

「ものを食べてる時にじーっと見られるのはちょっと居心地が悪いかな…」

「…それはすまない」

そう言って苦笑いのような顔をしながらも、彼にやめるつもりはなさそうである。己がそこまで見て面白いものだとは思わないのだが。…まあ、彼の趣味はわからないし、まだ付き合いが短いから、彼にとっては見るところがあるのかもしれない。

「そういえば、大包平は料理できるの?」

「そういうお前はどうなんだ?」

「僕は、まあ…システムキッチンとか電化製品とかがあれば、食べられるものは作れるよ」

「そうか。俺は筑前煮なら作れるぞ」

「…ちくぜんに、って何だっけ?」

聞いたことはあるような気がするが。んー…煮物、だっけ?

「肉と野菜の煮物だ。機会があれば作ってやってもいい」

「機会があればね」

このでかい男がお勝手場で小さな鍋を持って料理をしていたら、ちょっと面白いかもしれない。不似合いってほどでもない気はするけど。

「…いや、機会は作るものだな。作ってやる」

そう言って大包平はにいっと笑う。何だ突然。

「…妖横町に肉を商っている店はあっただろうか…」

何だろ、話してたら食べたくなったとか、そういうのかな?

 

 

 

実のところ、食材の良し悪しはわからない。拘ったことないし。新鮮なものがいいとか熟成したものの方がいいとか、色々あるらしいのは知っている。食材ごとに見分ける方法は違うだろうし。まあ、余程古いものじゃなきゃ大丈夫なんじゃね?

「…とりあえず、ご飯とみそ汁があればどうにかなるかな」

主菜もまあ、あるに越したことはないだろうが。焼き魚とか、それぐらいは、まあ…いけるはず。いけるといいなあ。一応、本丸の厨も見たが、しばらく使ってなくて荒れてる感じだった。とりあえず、竈とかではなかった。なんとかなると思いたい。家電は動くかわからん。動けばラッキーくらいに見とくべきかもしれない。

炊飯器なしにうまいことご飯炊けるかなあ…。

「どうした、難しい顔をして」

「やり方は一応知ってるけど、実際土鍋とかでご飯を炊いたことってないからさぁ…」

「失敗を恐れてすくんでいては何もできんだろう。まずはやってみればいい」

「それはそうなんだけど」

やっぱり事前の準備はしっかりやりたいよね…。つっても、できることがあるかっていうと、うーん…。…ないか。しいて言えば、リカバリー用のあれそれを備えとくぐらいで。

 

 

 

「鶯丸…知刃が、他者を観察するのが楽しいと言っていた意味がわかった気がする」

「あー、良かったね…?」

正直、そんなこと言われても困るのだが。というか鶯丸is誰。

「お前を見ているのは楽しいと言っている」

「何が楽しいのかさっぱりわからないのだが?」

「観察される側はそう思うものだ」

なるほど???

「別に、悪い意味で言っているわけじゃない」

「と、言われてもな…」

ぽんぽんと頭を撫でられた。滅茶苦茶子供扱いされてる気がする。…嫌ってほどじゃないけど。否、でも、やっぱり釈然としないところはあるというか…。ちょっともやもやする。もやもやしてる事にももやもやする。

 

 

 




妖のいる場所だと事前に聞いていたのでちゃんと見える
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