大包平はなんというか、兄ちゃん感がある。いや、俺に兄はいないから、概念的な意味で。真面目で、わりと面倒見がよくて、自信家で、偶に人の話を聞かないで突っ走るところがある。人格的に善人で、なんか頼りたくなる。
何でこの本丸に閉じ込められてるものやら、さっぱりわからない。最初に会った時やたらと危惧していた穢れによる正気喪失も俺の知っている限りでは発生していない。
まあ、本来の大包平がどんな刀剣男士なのか知らないから、この大包平が"どう"なのか俺には判断がつかないのだが。でも俺は、まあ、この大包平のことは割と好きだ。likeの意味だが。
「…好みなのかって言われると、多分べつにそうでもないんだよな…」
というか、三次元に興味はない。客観的に見て、一般的にはイケメンと言われる類だろうなあ、とか思うだけで。
まあ分類的には面食いだろうなあ、とは思うんだけど、三次元の人間相手にかっこいいと思ったことないんだよね。好みじゃないというか。どうせ見るなら面が良い方がいいというか、不快に思わない顔が良いとは思う。デブとか嫌いなんだよね。自己管理ができてない感じで。
大包平はまあ、顔を合わせることが不快とか苦痛とかじゃない。なんというか…親戚のにーちゃんって感じ。距離感的にもそんな感じな気がする。全く他人行儀ってことはないんだけど、家族って感じでもない。でもなんとなく親しみはある。
うん、まあ、僕の中で大包平は親戚のにーちゃん的な相手なんだと思う。
本丸は、なんというかかつては人が住んでいたお化け屋敷って感じだ。人の暮らしていた跡みたいなのが、いくらかあるんだけど、概ね埃に埋もれている。一部埃のたまり具合が違うのは、これまでの審神者が手を入れたところなんだろう。
「…そういえば、何でここには大包平しかいないんだろう」
元からそうということはありえない。普通なら初期刀として打刀を降ろすものらしいので。大包平は太刀だと言っていた。僕みたいに、初期刀として打刀じゃないものを降ろしてしまう例がないわけじゃないが…どうあれ、本丸には審神者と大包平以外の、多分刀の痕跡が多数ある。ただ、単純に顕現が解けているだけ、という風ではない。少なくとも、私が見て回った限りでは、他の刀はなかった。見つけにくいところに隠されている可能性もなくはないのだが。
いや。そういえば、最初の時、大包平以外の刀は皆折れたのだとは言っていたか。その経緯までは言ってなかったが。
折れた、か。何かしら、尋常でないことがあったのだろう。審神者としての知識に乏しい俺にはさっぱりだが。
全く興味がないといえば嘘になるが、今のところどうしても知らなきゃならない理由もないし、特に追求したい気持ちもない。知ってどうなるとも思えないし。だから、まあ、大包平が話す気がないのなら、俺は触れないでおこうと思う。
「俺の矜持にかけて、お前に美味しいと言わせる。今決めた」
「何でそこでむきになるの???」
別に不味いとは思っていない。好みにぴったりの味ではないな、というだけで。
「何故かと言われれば、それは…悔しいからだろう。これでも、自信作だったからな」
何かというと、筑前煮の話である。ちなみに鶏肉の代わりに魚を使ったアレンジメニューだった。
いや…美味しいは美味しいんじゃない?嫌いじゃあないよ。どっちかというと好きだと思う。好物とまではいかないけど。良いおかずだと思う、うん。
「大包平は、なんというか…凝り性だね?」
「そういう小鳥は、偏食だな。好き嫌いが多いというか」
「…否定しないけど」
正直、野菜は嫌いなものの方が多いし、脂っこいの苦手だし、辛いのも苦いのも酸っぱいのも好きじゃないし、かといって甘すぎるのも駄目だし、まあ、子供舌なんだけど。
「偏食していると大きくなれないぞ」
「知ってますー」
今更である。この年で成長期が来るわけないし寧ろ来たら怖い。私に身体的成長の余地はもう多分ないと思う。んー…いや、真ん中の妹はまだ成長してるとか言ってたかな…。
「知ってるなら改善しろ」
「改善する意義が見いだせない」
べつに上昇志向とかは持ち合わせてないしな…。食べ物とか、美味しく食べられる人が美味しく食べればいいと思うわけで。そもそも食事は必要な栄養さえ取れれば問題なく、美味しければベターなわけで。
僕は別に困ってないし。
「あr…審神者は、自身の健康管理も仕事の内だぞ」
「むぅ…健康優良児だったことのない僕に、無茶を言う…」
なんだかんだで、完全に病院と縁が切れてた時期がない。今は通院してないけど。物理的にできないし。一生モノの持病が付いてるし。
「…健康の基本は食事と生活態度からだろう」
「それはよく言われるけどねー」