刀剣たちと過ごす日々   作:ペンギン隊長

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満月庭If 山鳥毛√ 
通常個体より目の赤みが強いというか紅色で髪は灰銀、アルビノみある
山鳥毛が実装されて数年経ってる世界線
事案


小鳥の巣1

 

 

 

 

(ゲート)をくぐってすぐ、そこに、何か大きくて黒いものがいた。何ぞ。

「ええと…」

先住民、なのだろうか?挨拶するべき?

「僕は、本日付けでこの本丸に配属されることになった、審神者で、小鳥といいます」

「小鳥…小鳥と、そう言ったか」

黒いものから、低い男性の声がした。

「うん」

「私の元に、小鳥と名付けた審神者を寄越すとは…軍部はまだ懲りないらしい」

そんなこと言われても、号は自分で決めたわけじゃないし、配属先も選んでないし、言われるままに来ただけだぞ俺は。

「…。…雛鳥、死にたくないのであれば今すぐ踵を返して戻れ。これは私からの慈悲だ」

「戻れ、って言われても…」

門に振り返る。

ぶっちゃけ、俺、これの操作法詳しくないのだが。正確に言うと、元の場所の座標指定コードを知らない。

…何か不穏な気配がしてきたな。本当に帰りたい。

コンソールを操作しようと歩み寄ってみると、なんかこれ操作を受け付けないのだが?

「…これ、動かないんだけど」

「む」

黒いのもコンソールに寄ってきて、何やら操作しようとしたが、反応がなくて舌打ちの音がした。

「雛鳥を寄越してすぐ再凍結したのか。まったく、度し難い」

「凍結…?」

「…この本丸は私を封じるために(でいり)が凍結されている。次に開くのは、雛鳥が死んだ時だろうな」

「えええ…」

そんなの全然聞いてないのだが?

いや、まあ、実質生贄的な?扱いなら、説明されないのもそういうことなんだろうが。

「…そういえば、この本丸って死因になるものがゴロゴロしてるような危ない場所なの?」

「――…。…私は祟りだ。今は偶々精神が安定しているが、狂乱することもある。それに、人の子は閉鎖環境に一人で置かれれば容易く狂う」

ええと、つまり…このヒト?に殺される可能性と、狂死する可能性がある…ってこと?うーん…。

「でも、僕は此処から出られないんだよね」

「…そうだな。私は出してやれない」

「んー…できれば、苦しかったり痛かったりする死に方はしたくないなぁ」

まあ、ナノマシンが正常に働けば、一定以上の痛覚とかは遮断されたりするはずではあるが。狭間ではナノマシンがエラーを起こすことも偶にあるらしいので、確実性はない。いや、そんな必要ないのが一番いいんだけどな。

「そういえば、あなたは何ていうヒトなんだ?俺はあなたを何と呼べばいい?」

「…私は山鳥毛。見ての通り、刀剣男士だ。呼び名は君の好きにしろ」

「山鳥毛さん。…見ての通り、と言われても、僕には、何かもやっとした黒くて大きな塊に見えるんだけど…」

いや、でもなんか少し…白っぽくなってきた、ような?

「…君の反応は、目の前に得体のしれない黒い塊がいるのを目にした人の子の反応ではなかった気がするが」

「よくわからないけど先住民か何かかなって」

「・・・」

なんか頭抱えられてる気がする。失敬な。

「害意を感じなかったし」

「…相手が私でなければ、君は下手をすれば死ぬより悲惨なことになっていたぞ」

死ぬより悲惨なこと、とは。

「そうかなぁ」

「君は危機感がなさすぎる」

「そんなこと言われても…俺、零感だし元々一般人だし。死ぬとか言われてもよくわからないし」

「…審神者は軍人だろう。講習で教えられなかったのか。審神者の殉死の中には、怪異に目を付けられたことによる死が一定数含まれていると」

「講習?んー…此処に来る前に、呪術は一通り教えてもらったけど、審神者が何をどうすればいいかは、本丸でこんのすけが教えてくれる、って」

「…この本丸にこんのすけはいない。以前の審神者が壊して、代わりが来ていないからな。…まあ、本来であれば、凍結中の本丸にこんのすけも審神者も配属されるはずはないのだがな…」

「じゃあ、なんで俺、此処にいるの?」

「…私の顕現を解かせないためだろう。顕現を解いて長期間放置されれば、練度が下がるし、場合によっては錆もする。…もっとも、本丸の凍結は本来であれば、祟刀の霊力が尽きて顕現が解けるのを待つ策だが」

んー…軍は一枚岩じゃない、ってことかな?

「…ところで雛鳥、講習を受けていないなら、初期刀は。正式な採用試験であれば、最終試験は降神であるはずだが」

「んー…。…えっとね、試験の時降ろしたヒト?なんか、拙かったみたいで…鍛刀禁止って言われてる。そのヒトも降ろしたままじゃなくて還ってもらったし」

「…。…それは困った」

「?」

「…この本丸に、現在所属している刀剣は私一振りだ。初期刀がいないとなると、雛鳥を任せられる刃材がいない」

「そうするとどうなるの?」

「人の子は食事が必要だろう。調達できるとすれば妖横町だが、人の子一人では帰ってこられなくなる可能性があるというか、雛鳥は確実に匂引される。私は現状、あそこには行けん」

「どうして?」

「見て…わからないんだったな。祟りであるのもそうだが、今、私は外を出歩ける状態ではなくてな」

「…よくわからないけど、積んでるってこと?」

(ゲート)が動かなければ戦場に出ることもできないしな。刃材調達のしようがない」

つまり、今あるものでどうにかしないとならない、ってことだよね。えーと…

「…つまり、山鳥毛さんがたたり?じゃなくなって、外を出歩ける状態になればいいってこと?」

「――」

「僕も流石に飢え死にはしたくないかな…苦しいらしいし」

「…一度祟りと化した刀が、一朝一夕に戻ることはない。それに、万一の時の雛鳥のリスクが大きすぎる」

「山鳥毛さん、初対面の俺の心配しすぎでは」

まあ、それだけ優しい刀ということなんだろうけど。

「…雛鳥があまりにも危うすぎるだけだ。私でなくとも、良心を備えた刀であればそう言う」

「そうかなぁ」

だって今、差し迫った命の危険かっていうとアレだし。焦って何が解決するわけでもなし。ていうか、わかんないことだらけなんだけど。

「私は。その気になればいつでも君を殺せるのだぞ」

「でも、今のところ殺すつもりないでしょう?」

溜息が聞こえた。何でだ。

「…雛鳥は、刀剣男士がどのようなものかわかっているか」

「ううん…そもそも、刀剣自体そんなに詳しくない」

審神者の採用試験もなんとなく受けたらなんか受かっちゃっただけだしなー。

「つまり君は、ほとんど何も知らずに此処にいるわけだ」

「…そうなるけど」

望んでそうなったわけじゃないので、俺を叱ったりはしないでほしいのだが。お説教は嫌だ。

「君は、此処ではない真っ当な本丸に配属されるべきだった」

そんなこと言われても。

「いや、言っても詮無いことはわかっている。まさか雛鳥も、望んで幼い命を散らしに来たわけではないだろう」

「そりゃ、僕も積極的に死にたいとは思ってないけど」

でも絶対死にたくないかっていうとそうでもない。寧ろ、長生きはしたくない。

大きな手で、頭を撫でられたような感触がした。

「雛鳥のことは、私が何とかしてやる。それが、せめてもの…否。私の自己満足だな」

血と埃で汚れた白い服の男のヒト。その左腕は、肘から先が斬り落とされたようになくなっている。

「山鳥毛さん…?」

「雛鳥。確か、本丸の離れはシェルターになっているはずだ。そこに行って、助けが来るまで隠れていなさい」

「何を…する気なの?何か、危ないこと?」

「…雛鳥が気にすることはない。私は少々、血に濡れすぎた。ここいらで償っておかねばならない、というだけだ」

「よくわからないけど、碌でもないこと考えてるのはわかった。刀ってそもそも人が人を斬るためのものでしょ。償いって…自己満足で誰も喜ばないやつじゃない?」

「ああ。そうかもしれないな。…だが、それで君が困ることもあるまい。…君は、私のことを何も知らないのだから」

「知らないけどっ…山鳥毛さんが優しいヒトなのは、わかる。だから、嫌だ。今もあなたは、苦しそうなのに…これ以上、痛かったり、苦しかったり、してほしくない」

「苦しそう?」

俺はただ、彼の左腕を掴む。

「…黒い塊に見えるんじゃなかったのか?」

「さっきはっきり見えるようになった。大怪我してるからで歩けないってこと?治らないの?」

「…これでも中傷ってところだ。手入れを受ければ綺麗に直る。刀剣男士は、折れない限り、手入れさえすればどんな傷でも直るからな。だが、手入れでは穢れは祓えないし、祟りから戻ることもない」

「じゃあ手入れをしよう」

「ちゃんと私の話を聞いていたか、雛鳥。祟りは手入れではどうにもならない。私が正気を失った時、負傷している今の状態ならまだしも、万全であれば、雛鳥はひとたまりもないぞ。君は私に対抗する手段を有していないのだから」

「そりゃあ、僕の覚えてる呪術は治癒と強化とビームくらいだけど…そんな理由で怪我をしてるヒトをそのままにするのは嫌だ。…それが、もうずっと前からのものだとしても」

「雛鳥」

「やだ。山鳥毛さんと一緒に居る」

「…仕方のない子だ」

ひょいと足が宙に浮いた。

「本当に君は危機感に欠けている。私はこれでも雛鳥をひねり殺せるのだぞ」

「でも殺すつもりないでしょ」

赤い瞳がすぐ傍に見える。片手で抱き上げられたようだ。

「確かに、私は雛鳥に危害を加えるつもりはない。だが、祟りとはそういう問題ではないのだ。…いや、寧ろこう言おう。私は君を殺したくない。だから、君は安全なところにいてくれ」

「やーだー」

「君が死ぬか、私が折れる(しぬ)かであれば、君が生き残る方を選ぶべきだろう」

「何でその二者択一なの!ふたりとも生き残れる選択肢だってあるはずでしょ。何で最悪のケースしか考えないの」

「なら、雛鳥は私を浄化できるのか?」

「そんなの、どうやってやるかわからないし、わからない」

「祟りを戻せるとすれば、よほど強力な浄化によるものだ。雛鳥には荷が重い。君は、己が生き残ることだけ考えていればいい」

「何も試してないのに、無理だって切り捨てるのは嫌だ」

「…存外頑固だな、君は。君こそ、初対面の私に対して力を尽くす理由もないだろうに」

「だって、今、何もしなかったら、僕は絶対後悔するって、そう思うから。死ぬかもしれない(とりかえしがつかない)なら、なおさらだよ」

これは、純粋に俺のエゴだ。彼のことなんて、何も知らないのだから、気遣いようがない。俺はただ、彼の死や献身を背負いたくないのだ。

 

 

 

 




特に愛情深い個体だからこそ祟りになったしわざと腕をぶった切られた
主と認めるにはまだ値しないが庇護対象ではある、みたいな 親鳥×雛鳥ってロリコンというよりペドでは

2はエロなのでRサイド
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