刀剣たちと過ごす日々   作:ペンギン隊長

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山鳥毛視点
事後



小鳥の巣3

 

 

 

式たちの間で情報が共有されたのか、湯殿は使えたし、脱衣所に雛鳥の着替えが用意されていた。本丸の管理権限はまだ更新されていないはずだが。

「雛鳥、非常に言いづらいのだが…私の中の祟りが、いくらか薄らいだようだ。祟りから完全に戻ったわけではないが…」

「…せっくすしたから?」

「いや…直接的にはそうかもしれないが、おそらく、君の霊力は浄化に特化したものなのだろう。それを大量に取り込んだ結果なのではないか」

腕の中の雛鳥が、少しぼうっとした目で私を見上げる。そういえば、雛鳥の眼鏡を置いてきてしまった。取りに行く必要がある。

「だから、おそらく…こうして、契約の経路(パス)を通じて供給される霊力からでも、少しずつ浄化されていくと思う」

それで間に合うかはわからないが。

「とりあえず、今は本丸の管理権限を書き換えるだけにしておこう」

「ん…本丸についたら、一番にしなさいって、言われてた…」

「そうか…」

引継ぎに出す指示としては間違ったことではない。引継ぎ先がこの本丸だというのが問題だっただけで。

「確か、執務室にメインコンピューターが置かれていたはずだ」

 

 

 

途中手入れ部屋に寄って眼鏡を拾って、この本丸が稼働していた時には執務室として使われていた部屋にやってきた。しばらく放置されていただけあって少し埃っぽい。

「こちらの操作の仕方はわかるか?」

「うん…この型のコンピューターなら、大体見当はつくかな…」

その言葉に偽りはなかったようで、雛鳥は少し迷いつつも管理権限の書き換えを完了した。それと同時に、雛鳥の垂れ流していた余剰霊力の大部分が本丸に流れ始める。

 

 

 

「…大丈夫か?雛鳥」

「ん、たぶん…」

今更だが、本人は元一般人だと言っていたが、これだけ急激に霊力を消費して大丈夫なのか。術師の事情には詳しくないが、人の子は刀剣男士より作りが脆いのは知っている。雛鳥が突然倒れたりはしないか。

…まあ、雛鳥の霊力を無暗に貪ったのは私なのだが。

「ちょっと眠いけど」

「眠いなら無理せず眠れ、と言いたいが、使える寝床があるかが問題か。式たちなら知っているか?」

また雛鳥を抱き上げて式の誘導する方へ向かう。

そういえばこの子のこれだけ軽いのは問題ないやつなのか。確か肉付きは悪かったが、骨はどうだ。力を込めたら折れてしまったりしないか。飯をしっかり食わせてやらないといけないやつか。しかし、私は料理は酒のつまみ程度にしか作れないからな…。

「…さんちゃん、何で難しい顔してるの?」

「…雛鳥は軽すぎやしないか。きちんと食事はとっているか」

「僕別に標準やや軽めかな、程度だし、ご飯はそれなりに食べるよ。…燃費悪いかもしれないけど。あなたが力持ちなだけじゃないかな…」

「…14貫くらいか。もう2貫くらいは筋肉をつけた方がいいのではないか?」

「尺貫法わかんないからノーコメントで…」

雛鳥はむぅ、と頬を膨らませた。そういえば人の女児はあまり躯が重くなるのを好まないものだったか。

「雛鳥は短刀たちとそう変わらないだろう」

「もしかすると、基地ですれ違ったりしたことはあるかもしれないけど、俺が面識のある刀剣男士ってあなたしかいないんだよね…」

「そういえば刀剣そのものについてもあまり知らないと言っていたな」

その内、間が空いた時にでも、雛鳥の知識を確かめて、必要な知識を教える必要があるか。

式が此処だ、と示した部屋は、たしか本丸が正しく稼働していた時はいずれかの刀剣の私室として使われていたであろう部屋だった。それが誰だったのかはわからない。残っている私物も、ぱっと見た限り個刃の特定ができるほどのものではない。

式が布団を用意してくれたので、雛鳥をそこに寝かせる。

「…寝かしつけようとしてくれなくて大丈夫だけど」

「そうか?」

外した眼鏡を枕元に置いて、雛鳥は寝返りをうつ。

「そもそも、時間帯が眠る時間という感じではないというか。明るいし」

「この本丸に夜はない。日が出ることもない。本丸内の疑似環境制御システムあたりにエラーが出ているらしくてな」

「マジで」

詳しくないが、そのようなことを式たちが言っていた覚えがある。

「…そういえば、俺の前にもこの本丸に配属された審神者がいるんだよね?…全員死んでるの?」

「…さて。…そうだな…私を手懐けようとして祟りで死んだのが二人、特に言われもなく祟りに殺されたのが、三人…四人、一番長くもったのが、初期刀と一年いたもので、妖横町を経由して何処かに去った。まあ、あの主従は図太かったから、おそらく余所で元気に生きているだろう」

後は、何らかの理由で自害しているのが見つかったのが、三度ほどあったか。あと気付いたらいなくなっていて、新しい審神者が送られてきたのが二度あったな。

…改めて数えると、多いな。私が原因となって死ぬことになった審神者たちは。軍部が送り込んでくるのも悪いのだが。

「んー…つまり僕は幸運だったんだね。殺されてないし」

「…雛鳥よ。確かに、たまたま良い結果になった、と言えるかもしれないが、もっと危機感をもって慎重に動くように。毎度そううまくいくとは限らないのだから」

それも、殺さずに済んだからマシなだけで、私が危害を加えていないとは言えない。上出来とはとても言えないのだ。

 

 

 

雛鳥が寝付いたので、席を外すことにしたが、どうしたものか。契約相手を持つのが久々過ぎて、何をどうすればいいものやら。

「…なにか、雛鳥の食べられるものを用意しておくか」

そもそもこの本丸に人の子が食べて問題のないものがどの程度残っているかという話だが。…備蓄食料の一つ二つくらいは残っているだろう、たぶん。

厨に入ろうとしたら、式に、料理なら自分たちがやるから任せろ、とやんわり追い出された。解せぬ。

「私も簡単な料理くらいならできるのだが…」

たしかに、胸を張って得意だと言えるほどの腕はないが。

…何?瘴気が完全に抜けるまでは安全のため料理は駄目?

…そうか。確かに、霊力が料理に籠ることがあるのなら、穢れが料理に混ざることもありうるか。

「では仕方ないな…ならばどうしたものか…」

雛鳥が目を覚ました時に必要になるもの…むう。

審神者に必要な知識に関する資料でも探しておくか。おそらく、初代の使っていた部屋か、書庫に何かあるだろう。雛鳥の教材にできる易しいものかはともかく。

雛鳥はそもそも基礎的な知識が欠けているようだからな…。

 

 

 

 

 

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