神と祀られ物理的に封じられてる鬼丸 物理で封じられてないと余所に行きそうだし…
お化け屋敷みたいな本丸に配属されて三日目。やはり、此処には俺以外には式の子たちしかいないし、こんのすけはいないようだ。
…鍛刀禁止、初期刀なし、引継ぎなし、ってただの無理ゲーでは?軽く掃除しつつ、本丸内を回ってみた感じ、いくつか、折れた刃物みたいなものがあったので、この本丸に元々いた刀剣男士とやらは折れているようだ。
「うーん…俺はどうしたらいいんだ…?」
行けばわかる、こんのすけに聞けばいい、とは何だったのか。俺なんか騙されてたのか?式の子たちは自分の職能関係以外はよくわからないようだしな…。まあ、俺は俺のやれることをやるしかない、か…。
「…ん?どうした」
式の子の内の一人に、こちらに来てくれと呼ばれたので、向かう。ついていくと、なんか隠し通路があって、地下に繋がっているようだった。
「え、なんなの、これ」
…何?このままだと備蓄食料がなくなるから、補充が必要?審神者が出かける時は帯刀するか、近侍として刀剣男士の同行が必要?マジで?
「…で、何で地下室?買い出しって通販不可?」
通販不可かー、そっかー…。
地下室に、刀剣が一振りいるから、他にどうしようもないし、紹介する、と。
「え、何、ヤバい刀なの?」
ヤバいかどうかは俺次第?そっかー。
まあともかく、行ってみるしかないようなので、行くわけである、まる。
式の子は地下は専門外らしく、案内はしてくれなかった。僕のソロアタである。いや、なんか何かいる気配とかは全然ないし、ダンジョンとかではないが。どっちかというと…んー…神殿?いや、ゲームでしか知らんけど。
「…♪~」
暗い中、一人で探索とかやだなー。歌でも歌って気を紛らわせないとやってられない。俺そもそも探し物とか苦手だし。
どういう仕組みなのだか、人が近づくと灯る燭台が照らす地下通路を歌を口ずさみながら歩いていく。人感センサーか?
「♪~」
静かすぎる場所って苦手なんだよなー、僕。話し相手とかもいないし。いや、そう話し好きかっていうと、そういうわけでもないと思うけど、大家族育ちだから、誰の声もしないと不安になるというか…。
しばらく歩くと、開けた場所に出た。大部屋状になっていたようで、俺が一歩足を踏み入れると、通路と同じように壁にかかっていた燭台が奥まで順に灯っていった。ここは"祭壇"なんだな、と何となく思う。
大部屋といっても、これまでの通路と比べて広いというだけで、滅茶苦茶広い、というほどでもない。うーん…変則的ではあるが、十六畳くらい?極端な長方形、奥に向かって長く伸びている形のようだ。等間隔に柱があって、間に注連縄が渡されている。一番奥に、人影があった。
「・・・」
確実に人ではない。人なら生きていない。燭台が人感センサーならあの人影は人認識されてない。いや、動くものに反応するってパターンかもしれないが。
…まあ、素直に考えると、式の子の言ってた刀剣だろうか。とりあえず、近づいてみる。
人影は、近寄ってみると白髪長身の青年の姿をしていた。魔法陣的なものが描かれた縁台の上に胡坐をかいて座っている。背後に台があって、赤い鞘に納められ、札と注連縄が厳重に掛けられた刀が置かれている。青年自体も刀と同じように札と注連縄が掛けられている。よく見ると、後ろ手に縛られているようだ。目元は札と眼帯で見えない。
うーん、めっちゃ封印されてるっぽい…。
「…おれに、何か用か」
「ぴゃっ。…あ、えっと、こんにちは…」
話の出来る相手、なのかな…?なんか、頭に立派な角生えてるけど…。
「・・・」
「僕は審神者の小鳥。あなたは?」
「・・・」
「とりあえず、どう呼んだらいいかだけでも教えてくれると助かるんだけど…」
「…鬼丸国綱だ。…何処かに、鬼が出たのか?」
「え、鬼?…僕は見てないと思うけど…。…鬼丸さんって呼んだらいいの?」
聞いたことあるような、ないような。鬼を斬った刀、とかなのかな。
「そうか…。…呼び名は好きにしろ」
「じゃあ鬼丸さん。…えっとね、僕、買い出しに行かなきゃいけないんだけど、審神者って外出する時、刀剣を伴わなきゃいけないから、式の子が仕方ないから紹介するって」
「…は?」
「僕、初期刀いないし、鍛刀も禁じられてるんだよね」
「…おれに、買い出しの付き添いをしろと?」
「そうなるかな…」
でも死活問題なので許してほしい。
「…まあいい。ならばこの縛めを解け。審神者ならできるだろう」
「わかった」
といっても、どう手をつけたらいいのかな?この注連縄っぽいの、千切ったりして大丈夫なやつ?まあ、千切れないように気を付けて外すとすごい時間かかりそうな気はする…。
俺に外せというからには、鬼丸さん自身には外せないものなんだろうし…。
んー…あ、そうだ。刀で切ろう。
鬼丸さんの後ろの刀にかかっている縄を外し、鞘から出すのに邪魔な位置に貼られたお札を剥がす。
「よい、しょっ…」
「…おい、何をしている」
「ん?縄、解くより切った方が早いかなって」
なんか、手首の所の縄、すごい複雑な結び方に見える。解き方わかんないぞ、これ。やっぱ切るしかないのでは。
「…あんた、刀を扱った経験は」
「え、んー、ないけど」
振るう以前に、縁は特になかったんだよね。依代刀は特に触らなかったし、試験の時に来てくれたの、"刀"じゃなかったし…ん、もしやこれが初では?
「…いいか、ゆっくりその刀を刀掛けに戻せ」
「え、でもまだ縄切ってない」
「戻せ」
「切らずにその縄解ける自信ないんだけど」
「
「傷つけないように気を付けるから」
「あんたの指がうっかり落ちたら困ると言ってるんだ」
「…。…んー、そんだけすごい切れ味なら、斬れてもすぐくっつけたらくっつくんじゃないかな」
「人間は刀剣男士とは躯の作りが違うだろうが」
「指ならイケる。それ以上は流石に難しいかなぁ…要は細胞が壊れなければいいわけだけど」
切断された指を接着しなおした話に関しては、詳細は忘れたが、200年くらい前の時点で記録があったような。まあ、断面が汚くてくっつけられなかったって話もあっただろうけど。それにまあ、治癒呪術があるし。
「というか、僕がうっかりする前提で話さないでほしい」
「おれがおかしいみたいな言い方をするな」
「ええ…」
どうしたものか。んー…。
「刀掛けの位置が高いんだよな…」
「不吉なことを言うな。…もういい。自分でどうにかするから、それはその場に置いて離れろ。…多少は封も緩んだようだしな」
「むぅ。何かそういわれると意地でも自分でやりたくなる」
「ガキか、あんたは」
「ガキじゃないです、一応ちゃんと成人したオトナです!」
…しかし、この刀、僕片手じゃ持てないな。どうやって鞘から抜いたらいいんだ?
…。
そうか、こういう時こそバフだな。身体強化をすればいいんだ。
「よし」
「何ら、良し、じゃない。頼むから大人しくしててくれ」
自分に身体強化をかけ、刀を鞘から抜く。初めて間近で見る刀は、成程、美術品として扱われることもあるというのも頷ける、美しいものだった。艶やかな金属が、光を受けて輝く。
「…きれい」
「っ…。…絶対に、刃に触れたりするなよ。挑発などではないからな」
おっと。俺は別に刀を見物するために抜いたわけじゃないのだ。やることやらなきゃ。
鬼丸さんの手首を縛っている縄は、ほとんど刃が触れただけ、特に力を入れてないのにすぱっと切れた。成程、すごい切れ味だ…。
刀を鞘に戻して、縄を解こうと思ったら、鬼丸さんは自分で縄を外していた。ただ、角にかけられた縄や眼帯のところの札なんかはそのままだ。
「…。…やっぱり子供じゃないか」
「子供じゃないですー!!」
そっちがやたらとでかいだけだし!!…まあ、僕の背が低いのも事実ではあるけどさ…。
「刀」
「ん」
鬼丸さんは刀を受け取ると、様子を確かめるように回したり抜いたりなんやかんやした後、腰に装備した。
「…で、買い出しに付き合えという話だったが」
「具体的に何処で何をどれだけ買ってくればいいのかはまだ聞いてない」
あ、これから聞く、って言うべきだったかな。
「…あんた一人でお使いに出したら帰ってこられなくなりそうだな…」
「むぅ。まだ本丸内も全部知らないし、周りがどうなってるか未探索なだけだもん」
まだ配属三日目だしな。
「…面倒だから逸れるなよ」
「え、うん」
鬼丸さんが話はそれで終わりだと言わんばかりに歩いていくので、追いかける。歩調はそうでもないけど、歩幅の違いで結局一緒に歩くの大変そうだな…。
隠し通路の入り口のところで式の子が待っていてくれたようだった。
「鬼丸さん連れてきたよー」
それで、次はどうしたらいいのかな。
妖横町?食材は、俺が食べたいもののやつでいい?…いや、好きなのって言われても若干困るんだけど。僕あんまり食に執着はないというか…好き嫌いはあるけど。
いや、お小遣い渡されましても!
「貨幣価値がさっぱりなのだが…」
小判、だよね?いや、本当、価値というか、大体何がどれくらい買えるものかがわからないというか…。
「…おれひとりで買い出しに行った方がマシな予感がする」
完全には否定できない…。
「なに、お前は酒しか買ってこないだろうからダメ?…酒飲み連中と一緒にするな。肴の材料になるものくらいは買ってくる」
酒買ってくるのは否定しないんだ…。
「あいつらもつまみは買ってくるからそう変わらん?そうか…」