刀剣たちと過ごす日々   作:ペンギン隊長

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満月庭If七星剣√If終庭軸If丙子椒林剣√ 七星剣対策で連れてこられた椒林剣が小鳥に一目惚れしちゃうやつ
七星剣が一目惚れする相手って椒林剣も一目惚れするかドン引きするくらい相性悪いかの二択な気がする


夜と朝の境界

 

門をくぐって踏み入れた本丸が完全に真夜中であるのを見て、そこが七星剣の神域と化していることを丙子椒林剣は一目で理解した。そして当然この訪問が感知されているであろうことも。そうでなくとも七星剣は耳聡い。自分の領域に異変があれば気付かないわけがなかった。

「こんのすけ」

「人間大の生命反応は二つしかないようです。記録上、複数体の刀剣がまだ残っているはずなのですが…」

「此処は七星剣の神域になっているようですからね。折れないまでも顕現が解けるということはありうるのでしょう」

「え、神域ですか?!では、此処に送られた審神者様は…」

「それはまだわかりません。彼は法を破られることを嫌いますが、己自身が破ることも良しとしないはずです」

とはいえ、生身の人間が神域に閉じ込められていれば、何らかの変調を起こさない方がおかしい。どのような状態でも不思議はなかった。そもそもこの本丸の七星剣は祟りと化したという記録がある。人間に対する忌避感情を持っていてもおかしくない。

「ひとまず七星剣を探してみましょう。あちらと話をつけねばどうにもできませんからね」

椒林剣は屋敷の戸を開けて訪問を知らせる。

「お邪魔しますよ、七星剣。私たちは軍からの交渉役として来ました」

先導するように廊下に灯りがともる。椒林剣は静かにそれを追いかけた。他者の気配が全くないわけではないが、本丸は静まり返っている。連れてこられたのは大広間らしき一室だった。上座に七星剣が不機嫌な様子で座っている。

「久しいな、丙子椒林」

「ええ、お久しぶりです、七星剣。祟りと化しているということでしたが…狂乱はしていないようですね」

「蛮族が気に入らぬからと己まで蛮族に落ちるわけにはいかんからな。…それにこのところは蛮族と関わることもなかった」

「最後にこの本丸に送り込まれた審神者は」

「おれに差し出されたものをおれがどう扱おうと問題はなかろう」

椒林剣は真実を見抜こうと七星剣をじっと見る。露悪的な言い方はしているが、七星剣は理不尽なことはしない剣である。法に厳格になっているなら尚更。つまり審神者がどう振舞っていたのか次第、ということでもあるのだが。

「軍はこの本丸の凍結を解く方針です。つきましては、その審神者に審神者としての役目を果たさせよということになります」

こんのすけの言葉に、七星剣がじろりとそちらを見た。こんのすけは怯えたように毛を逆立たせる。

「…あれは確かに家に帰りたがっていたが」

「あなたは帰したくないと?」

「神が一度迎え入れたものを手放すとでも?」

その発言で椒林剣は七星剣が審神者を気に入っているらしいことは理解した。そもそも気に入らない相手が立ち去ろうとも気にしないだろう。手元から離したくないのであれば、それは気に入っているのだろう。ある意味それはとても厄介だった。

「人の子の望みを叶えてやろうとする神もいるでしょう」

「喪わない前提であればな」

「放せば戻ってこない、とあなたは思っているのですね」

七星剣は視線を逸らす。

「…此処は時間が止まっている。不用意に出入りすれば障りがあるだろう」

「それは…」

元々、本丸と現世の時間の流れは一致しているとは限らない。凍結された本丸なら尚更だ。後から入った者であっても、時間を過ごせば影響は受けるだろう。何も起こらないと思う方がおかしい。

「…ん」

七星剣がふっと手を上げ、そちら側の戸が、がたりと音を立てた。しばらくガタガタ揺れた後、声がした。

「七星剣!戸が開かないんだけど!」

「客が来ている。身なりを整えてからにしろ」

「人前に出られない格好で歩き回ったりしないですけど???というか、客って…僕が蚊帳の外にされるのおかしくない?本丸が出入りできる状態になってるってことでしょ?」

「・・・」

「七星剣」

「審神者さまですね?」

七星剣に気に入られている時点で善良なのは間違いなかったが、てっきり淑やかな人間だと思っていたので、そうでもなさそうなので椒林剣は驚いた。だいぶ自我が強そう。

「んー…じゃあ僕、門を確認してこようかな。仲間外れにされるみたいだしっ」

「…待て。…入っていい。こちらに来い」

「どうも」

戸を開けて入ってきたのは、年若い少女であるように見えた。薄く笑んだまま、静かに歩いて、七星剣の傍に座った。椒林剣は知らずそれを目で追いかけていた。

「…だから嫌だったのだが」

少女は椒林剣を見てゆるく首を傾げた。

「お客さんって、刀剣男士、なの?」

「私は丙子椒林剣。七星剣と同じく聖徳太子の佩剣であった剣です」

「僕は小鳥だよ」

「これはおれの妻だ」

「手籠めにしたのですか?」

「ひょえ」

七星剣は小鳥を抱き寄せる。小鳥はよくわかっていなかったが、明らかに椒林剣に対する牽制であった。その双方の過剰な反応は、椒林剣が一目で恋に落ちてしまったことを物語っていた。いや、正確には恋ではないかもしれないが。

小鳥はかけられた言葉に赤面する。

「拒まれてはいない」

「只人が刀剣男士に抵抗できるわけがないでしょう。しかも此処は卿の神域ではありませんか」

「合意を取ってから抱いたとも」

「…い、嫌ではなかったけど、強引だったのは否めないし恋愛関係ではないかなっ…」

「…?」

「これはおれのものだとしっかり印をつけただけだ」

「たぶん他にもやりようがあると思うんだよね…」

小鳥は大人しく七星剣の腕の中に納まっている。

「…やはり手籠めにしたということなのでは?」

「それで何の問題がある。これをおれの元に寄越したのはそちらだろう」

「卿はそれで己は法を犯していないと胸を張って言えるのですか」

「夜這いの作法は守ったが」

七星剣は目を細める。

「そもそもお前が咎めたいのはそういうことではあるまい。欲するものが他者のものになっていることが気に入らぬということだろう」

「それは…」

口ごもる椒林剣に小鳥がきょとんとする。

「え、何、どういうこと?」

「わからぬなら黙っていろ」

「丙子椒林剣」

「………一目でとても好ましい人の子だと感じたのは事実です。ですが、それ以上のことは…」

「つまり、あなたとこの七星剣は好みが一致しているということですか」

「……そうですね」

小鳥は戸惑った様子で七星剣と椒林剣の顔を見比べる。

「えっ何で」

「…俗に言う一目惚れ、ですかね…」

「…好ましいところが多く、厭わしいところはなかったということだ」

「刀剣男士は人に好意的なものですが…小鳥様は特に好かれやすい資質を持っているのかもしれませんね」

「つまりこれは、いわゆるモテ期」

「違いますね…」

「違うの?」

「神霊に好かれやすいのだろう」

「別にそんなことないと思うんだけどな…?僕、審神者になるまで霊感とかない一般人だったし、そんなこと思ったことないよ」

「…。…よく無事に生き延びていたものだ」

「何で???」

小鳥は一切気にした様子がないが、七星剣は祟刀である。いつ殺されても不思議はない。気に入られやすいということは目に留まりやすいということでもある。そして好意を持たれているからといって、人に望ましいことがあるとは限らないのが神霊である。場合によってはそれこそ神隠しされる。まあこの本丸は実質七星剣の神域なのだが。

「ともかく…政府の辞令としては、この本丸を正常化して、小鳥様に審神者としての通常業務をさせよ、ということになるのですが」

「…んー。それが俺の役目なら、できることはやるけど。七星剣は此処に俺の役目はないって言ってたし…いや、政府の人はこんのすけの指示に従えばいいって言ってたっけ?」

「…ええと。小鳥様はどのような経緯で審神者に就任されましたか?研修は受けていらっしゃいますか?」

「どのような、って言われても…普通に、応募して採用試験受けたよ。それで、採用が決まった後に呪術講座があって、次の日に行けばわかるからってこの本丸に送られてきたの」

「…黒被害者用の審神者講座の手配をいたしますね…」

「正規の就任法で来たらしいのに何故そのようなことに…?」

小鳥はあれ、俺何かおかしいの?という顔をしている。

「・・・」

「七星剣、審神者本人は特に否やはないようですよ」

「…それはそうだろう。これは蛮族ではない」

「神域の展開は止められますか?場合によっては私が強制的に閉じますが」

本丸を正常化させようというなら当然そういうことになる。特定刀剣の神域化した本丸というのは正常ではない。

「…どのような影響が出るかわからん」

「引き延ばせば余計に影響が大きくなるだけでしょう。すぐに対応できる準備をしておけば良いだけでは?」

「…それもまた一つの見方ではある、か」

七星剣は立ち上がって祭壇に刺さっていた自らの本体を引き抜き、納刀した。刃が鞘の内に隠されると共に神域が納められ、元の本丸に戻る。レイヤーを一つ消されたように本丸全体を包んでいた闇が薄まり、空間に光が差し込む。建物自体は然程変化していなかったらしく、目立って変わった様子はない。

「目がチカチカする…」

「暗闇に視覚が順応していたということでしょうか。違和感があるようなら、眼科の検査予約を取りますか?いえどちらにしても小鳥様には健康診断を受けていただく必要がありますが…」

「この本丸の審神者は小鳥が務めるのだよな?」

「え、は…はい。小鳥様の支障がなければそういうことになるでしょう」

「その言葉、違えるなよ」

「ひぇ…」

「ところでこんのすけ、私もこの本丸に移籍したいのですが」

「えっ。それは…その、こんのすけの権限で決めることはできないのですが…特にあなたは二つ名持ちですし…」

「正確に言うと、私は小鳥と契約を結びたいのです」

「えっ。あ、僕を好ましく思ったから、ってやつ?」

「ええ。嫌ですか?」

「よく知らない相手だから何とも言えないかなあ。それに、断った場合、他の同じ刀剣と契約するのは拙いでしょ?」

「それは多分祟りますね」

「え、こわ…」

まあ椒林剣の依代刀はなかなか手に入らないのだが。

「…。通常通り審神者の仕事をさせようと思えば、他の刀剣の契約は必要な事だからな…」

七星剣は椒林剣への牽制を少し緩めた。椒林剣は小鳥の手を取る。

「刃事課に手続きをさせてきますから、待っていてくださいね」

「あっはい」

仮契約が結ばれ、椒林剣は満足げに微笑する。小鳥は未だまぶしそうに目を細めている。

「おさわりは契約の範囲外だぞ」

「それはあなたの基準でしょう。私は触れあう事は悪くないと考えています」

「小鳥は、おれの、妻だが?」

「…結婚した覚えはないかなっ」

「お前は今更他の者に嫁げるとでも?」

「そもそも僕結婚願望ないし、恋愛感情もピンとこないし、そういうのよくわかんないっていうか…」

小鳥は視線を彷徨わせる。

「行政手続きも結婚式的なものもしてないし、誓ってないし?現代基準で多めに見積もっても事実婚に入るか入らないかくらいじゃないかなって」

何ならセフレ未満ぐらいだと思っている。

「…当世の妻問いについてはよく知らん」

「ならば私が口説いても問題ありませんね」

「・・・」

小鳥は理解が追い付いていない顔をしている。

「…正直、何を求められているのかよくわかっていなくてぇ…」

「何を求めているのか、ですか。ふむ…」

「何を…求めているのだろうな」

「えっ」

「この空気で口を挟むのは無粋かもしれないのですが、七星剣、この本丸の他の刀剣男士はどうなっているのですか?記録上、あなた以外にも所属している刀剣がいるはずだと思うのですが」

「…顕現が解けた状態で本丸内にあるのではないか?少なくともおれの神域の中で折れた刀はない」

「では、本丸内を探索して刀剣たちを探すことにいたしましょう、小鳥さま。契約を結ぶかどうかはともかく、放置しておくのはよろしくありませんので」

「わかった。えーと、狐さん」

「こんのすけでございます。差支えなければ、私がこの本丸の担当管狐となることになっております」

「こんのすけさん」

「七星剣のことは呼び捨てにされていますよね?」

「だって七星剣は遠慮すると押し切られるし」

「我の強い刀剣は大体そうですよ」

「そうなんだ…」

小鳥は立ち上がって部屋の外を見回す。暗かった時とだいぶ印象が違うようで興味深そうにしている。

「見つけたら、此処に持ってきたらいいのかな」

「その場で再顕現するなどしてもいいかもしれませんが、その辺は臨機応変にですね」

 

 

 




たぶん元は神秘部あたりの所属 
小鳥が七星剣に対して塩めなのは本能的なアレというかみかちゃんに対する塩対応がスライドしてきてる感じのやつ
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