刀剣たちと過ごす日々   作:ペンギン隊長

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罪業本丸では一度冷たい対応からの和解、からの本性やってるので割と刀剣不信は根深い まああそこが特殊なのはなんとなくわかってきてはいるが 多分一番的確なのは保健所から引き取ってきた保護犬の仔犬 朝尊も末っ子扱いされてる まあ新々刀だし顕現一年程度だし


あめ穏やかにして花宿り2

 

「いらっしゃい、アトリちゃん。みんな歓迎しているよ」

清浄で明るい本丸に迎え入れられて、花鶏はほっとしたように息を吐いた。朝尊は花鶏を降ろそうとして思い直して抱え直す。

『俺も人の子を抱っこしたいな』

「今日は勘弁してあげてくれたまえ。本当に怯えていたのだから」

「何事ですか?」

『取るに足らん横やりだ。こんのすけが入れ替えたから暫くは静かだろう』

花鶏は肥前を再顕現する。肥前も深く息を吐いた。

「しばらくは俺たちも本丸から出ない方が無難か?」

少ししてこんのすけが姿を現わした。

「再契約は慣れてから順次、という予定でしたが、念のために今日中に可能な方は再契約か仮契約をしてしまいましょう。全刀は花鶏様にも負担がかかってしまいますので、ざっと十振り程度は」

「…よほど特殊な事情がなきゃ二重契約は難しいからな」

「ええ、ええ。ではまず本丸の管理者登録から参りましょう」

こんのすけがさんにんを執務室に先導する。何振りかも追従した。

「空いている部屋をいくつか掃除したから、好きな部屋を選んでもらっていいよ。どんな部屋がいい?中庭にすぐ出られる部屋、高い位置にあって光と風の良く通る部屋、逆に光の入りづらい部屋、奥まった部屋」

「朝にちゃんと日差しの入る部屋の方がいいと思うよ。主は目が覚めた時に暗いと不安になってしまうようだから」

「防衛上の都合…は、考えてないわけないか。主が好きなところを選べよ」

「執務室が先ですってば。荷解きはその後です。本丸内の案内も必要でしょうが」

「花を飾りたいんだけど、アトリちゃんはどんな花が好きかな?本丸で育てているものならすぐ持ってこられるんだけど」

「福島光忠、ステイっ」

「………お花、飾らないからわからない。見るのは好き」

「じゃあ、俺のセンスで見繕ってこようかな」

福島は花を切りにいった。何でそんなにウキウキしているかといえば、演習場で花鶏を見初めた刀剣は三日月と福島だからである。ちなみに現場には他に和泉守、堀川、同田貫、厚がいた。厚はこの本丸の初代初鍛刀で総務番長をしている、またちゃんと人間に通じる言葉で日常会話をできることが演習に参加する条件になっている。まあ一定以上の審神者として声を聞くスキルがあれば神霊言語で話しかけられても内容はわかるのだが、演習場のスタッフは審神者ではない者もいるので。ちなみに万屋街も話し言葉がほぼ神霊言語になってしまう者は人間語を話せる者と連れ立っていくことになっている。

執務室では事務方と勘定方が書類を捌いていた。

「おや。てっきり、今日は紹介だけで終わるかと思っていたけれど…いの一番で来たんだね」

「何かトラブルが起きとーと?」

「刃権や人権を軽視するタイプの職員が、書類上の所属はそのままにこの本丸に着任する審神者を他の方と入れ替えて花鶏様を黒本丸に幽閉されようとしてきたのです。相手方の本丸の刀剣もかなり乗り気でしたから、早急に名実共にこの本丸の審神者になっておいていただかないと連れ攫われかねません」

「それは穏やかじゃないな」

「管理者登録のやり方はわかるかい?」

執務室のメインコンピューターにアクセスしてこんのすけや刀剣たちに手伝ってもらいながら花鶏は管理者登録を更新する。霊力供給が変更される。

「主、虚脱症状などは起こっていないかい?」

「ない」

「霊力負担を考えると、契約を結ぶのは極めていない方から試した方がよろしいでしょうか。初期の本丸は余裕で維持できるだけの霊力量はあるという話ではありましたが」

『俺は後回しにされるということか?』

「あー、まあ三日月さんは今回主体的に動いていたし例外でいいんじゃないか。あと福島と…陸奥と水心子、それに自主的に申し出てきたやつってとこかな。俺は花鶏さんが慣れてから改めてにしよう」

「陸奥守は極めてるはずだけど」

「同郷の刀と仲良くやってる審神者なら快く契約してくれるだろ」

「肥前くんはともかく、僕は同郷と言われても刀工に依った顕現をしているので前の主の話などということはできないのだがね」

抱っこを止めて自分で立つと花鶏が短刀の大きい方位の体格だということがよくわかった。三日月が目線を合わせてその手を取り、にっこりと笑って言う。

「俺は三日月宗近。これからよろしく頼もう、主」

「うん」

契約を結んだところで、ミニブーケを手にした福島がきた。

「再契約の時間かい?だったら次は、俺としてもらっていいかな」

福島は膝を折って花鶏にブーケを差し出す。

「俺は福島光忠。呼び名は君の好きなように。可愛く福ちゃん、って呼んでくれてもいいよ」

「福ちゃん」

「この花はゼラニウム。ピンクのゼラニウムの花言葉は約束。こっちはラナンキュラス。紫色の場合の花言葉は幸福。それからこちらはスイートピー。花言葉は門出だよ」

「ん…このまま花瓶に入れたらいい?」

花鶏はガラスの花瓶を生成する。

「水…(入れたら持ち歩くには重いか…)」

「執務机に飾っておくかい?審神者しか扱えない書類もあるから、此処でする仕事もあるわけだし」

 

「…(主、女児扱いされてねぇか…?)」

花鶏は一応成人済みのはずだ。まあ振舞いが立派な社会人のそれではないことも事実ではあるが。求められるように振る舞っている節もあるので、子供扱いをされている内は子供のように振る舞うだろう。本人たちがそれでいいならそれでもいいのかもしれない。

花瓶は机に置かれ、本丸内を案内されることになった。黎明期に築かれ今まで審神者が代替わりしながら続いている本丸であるだけあって、それなりに規模が大きく、何度も改築されている。そもそも所属する刀剣が相応に多いので、百近い刀剣が共同生活を送るのに必要な生活設備を備えている。そこに娯楽や防衛のための設備やら、なんやら加わっているので、ちょっとした核シェルターくらいのスペックはある。畑などもあるので一定期間の籠城はできるのだろう。

【その子が新しいこの本丸の主?随分小さいんだね。名前は何て言うんだい?】

「兄者、人の子に話しかける時は神霊言語ではなく人間語にするようにいつも言われているだろう」

「ああ、そうだったね」

「…僕は花鶏」

「アトリちゃんか」

髭切が花鶏の頭を撫でる。花鶏は人見知りするように朝尊の後ろに隠れた。

「ありゃ」

「おや、怖かったのかな?」

「…いきなり頭は駄目」

「駄目かー」

髭切は特に機嫌を損ねたりはしていないようでほけほけ笑っている

 

他にも色んな刀剣と行き会って多少声をかけられたり自己紹介したりしつつ本丸内を巡り、花鶏の私室は南と西に窓のある角部屋に決まった。隣室は朝尊と肥前。向かいは一文字則宗が使っているらしい。部屋が決まったところで一旦荷解きの時間とした。とりあえず寝る場所位は確保しておかねばなので。朝尊たちが自分のをやらないといけないので福島が手伝いを申し出たが、花鶏は首を振った。

「太刀だし、力仕事なら任せてくれていいんだけど」

「そんなに持ってきてない」

職員寮で暮らしている間もあまり私物が増えなかったこともあり、花鶏が部屋に置くものは本当に最低限という感じでしかない。布団と大きな縫いぐるみ、書き物机、小さな収納棚程度だ。まあ過ごす内に必要になれば増えるだろう。

「…女の子の部屋としては殺風景すぎるんじゃないかい?」

「?」

「花鶏様はあまり部屋に物を置かないのですね」

「必要だったら置く。収納に入れて持ちあるく方が安全便利」

「ああ、そういう…」

花鶏が黒本丸から保護された審神者だということを、こんのすけ始め配属のための手続きや調整に関わった者は知っている。つまり、その経験から来る習慣なのだろう、と。実際の所、私物を持ち歩く習慣はそれ以前からのものだが。私物を置かないのも、実家に子供部屋などなくて感覚がつかめないだけである。まあ前の本丸が私物を置ける環境じゃなかったのもそうなのだが。

 

とりあえず初日に契約を結んだのは三日月、福島、陸奥守、水心子、清麿、北谷、白山、大千鳥、和泉守、堀川の十振りだ。霊力を急に大量に使うと体調を崩す可能性があるのでセーブした形だ。まあ実際、花鶏が体調を崩したりはしていないが。

夕方には花鶏と土佐コンビの歓迎会が開かれた。改めて自己紹介などあって恐らくこの本丸にいる者全てと顔を合わせた。夕食に酒が入ると場はにわかに騒がしくなり、すぐどんちゃん騒ぎになった。この本丸の刀剣は神霊の性質が強い者が多い。宴に酒が出ないわけがなかった。ちなみに肥前はワクだが朝尊は下戸である。花鶏は酒を飲まない朝尊にくっついている。

『花鶏は酒は飲まぬのか?』

「好きじゃない。苦いのも辛いのもあんまり」

出ている酒は大体日本酒である。果実酒なんかもいくつか混ざっているが、大体米酒が多い。

「無理に飲ませんなよ。…つってもうちの主は割と偏食だから嫌なもんは絶対口を付けないだろうが」

「あはは、無理に飲ませるくらいなら自分で飲むよー」

「酒好きは自分の取り分が減るのを好かんき、大丈夫ぜよ」

「そうか…?」

肥前は信じきれないという顔をしているが、花鶏はそこまで酒の警戒はしていない。そもそも単に酒の味を好かないだけで酒に弱いわけではない。少量なら飲んでも平気である。

 

適当に解散して私室に引っ込んで眠って、花鶏は夜中に目を覚ました。動揺したようにあたりを見回し、そこが夢の続きではないことに大きく息を吐く。しかし、そのまま眠ることができずに、ぬいぐるみを抱えて部屋から出た。そして隣室に静かに入る。

「…朝尊」

「…うん?まだ夜中だよ、主」

「こわいゆめ、みた…」

二人部屋なので肥前と朝尊は布団を並べて眠っていた。朝尊は身を起こして花鶏を手招く。花鶏は朝尊の傍にちょこんと座った。

「何が恐ろしかったのだね?」

「…あの本丸の、地下室で…うごけなくて、どこにもいけなくて…体がいたくて…」

「…過去の記憶が何らかの要因で蘇ったか、顔を合わせてしまったから、薄っすらとでも再び縁が繋がりかけているのか…朝になってからこんのすけや他の刀たちにでも相談してみようか」

「うん…」

「差し当って…君自身は、どうすれば再び眠れそうだと思うんだい?」

朝尊の問いに花鶏は困った顔をして、沈黙の後に朝尊の袖を掴む。

「いっしょにねていい…?」

「人間は他者の体温や心音を感じることで安心することができるのだったか。主がそれで安眠できるのならそうしようか」

「ん…」

「いいかい、肥前くん」

「…布団をくっつけて川の字で寝るってか。…まあ仕方ねえか」

元々花鶏は不安定だった時期は添い寝こそしていなかったものの、同じ部屋で布団を並べて眠ることはあった。他者の気配がするだけでも不安が和らぐらしい。

 

 

 

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