転神組は高次霊に近いので寝食の必要が薄い 私室も休む場所というよりコレクションルームになりがち
初代の刀はなんやかんや人の子大好きな神さまなので全体的に人の子かわいいかわいい勢 ただし性欲はない 刀剣男士は神霊言語もある程度はわかる
「ちょっと距離感がおかしいのでは?」
「うん?」
こんのすけの指摘に朝尊と花鶏はよくわかっていない顔をした。肥前は溜息をついた。
「お互いに思うところがないからこれなんだよ。主もセクハラは普通に逃げる」
まあ実のところふたりともベタベタしたがるタイプというわけではないので、花鶏が不安になっているというのもあるのだが。
「ああ…これは単に主が不安を引きずっているだけだよ。昨日のことで夢見が悪かったようでね。かの本丸に僕はいないから」
「昨日の…アレですか。保護された時に縁切りされていても、顔を合わせてしまって、しかもあの執着具合ですからね…悪縁が再び繋がっていないとも限りませんか」
「ああ、そのことも相談しようと思っていたんだよ。ずっと僕が添い寝するわけにもいかないからね」
「添い寝、したんですか」
「眠れないらしかったからね」
「なーんもやましいことはねえんだよ。二人部屋だしな」
なんならさんにんで並んでぐっすりである。
「食事の席であまり行儀の悪いことはしないようにね。…人の子はきちんと食事をしないと身体を壊すのだろう?それで足りるのかい」
「一度に沢山食わせるよりも、回数分けて色々食わせる方が合計ではよく食うよ。…ま、こいつは色々と偏食の気があるから嫌がるかもだが」
「十分多いよ」
厨組が張り切ったのか、朝食に出されたのは立派な和定食だった。花鶏はご飯とみそ汁が一杯ずつとおかずが少し、くらいで十分なタイプなので普段食べてる量よりちょっと多い。
「運動量次第じゃないかな?政府ではデスク勤務の方が多かったからね。動き回るならたっぷり食べた方がいいだろう」
縁切りなどの話になるとやはり神刀や古刀の力を借りたいということになった。
「難しいね」
「改めてじっくり見てみると…縁がかなり入り組んでいますね。今の状態では、悪縁だけを綺麗に切り離すというのは難しいでしょう」
「ひとまず、この本丸の者で守りを固めれば当面の時間稼ぎはできるでしょうが…根本的に解決しようと思えばやはり…」
「まずこの本丸の刀剣との契約が先でしょー。今のままじゃ縁がもつれて余計なところまで切っちまいそうだしさあ」
そんな感じですぐにどうこうできないというのが現在の結論となった。日に何振りかずつでも契約を進めていってそれからと。一回本丸外の縁を全部切り離してまっさらにするという案も出はしたが、それをやると長義とも縁が切れるので花鶏は嫌がった。まあ端末のアドレスを交換しているし、むずび直しもできなくはないが、現状だといつになるかわかったものではない。あと本人はすっぽ抜けているが、実家の家族との縁なんかもそう。
「悪夢に関しては、守り刀を置きましょうか。契約を結んだものの本体を枕元に置いて寝れば縁の弱い干渉は断てるでしょう」
引継ぎが居着かない本丸だけあって、審神者が碌に指示を出せなくても運営がある程度回る仕組みができていた。初代からいる刀剣は数十年単位で顕現しているというのもあるだろう。ほぼほぼ、審神者の仕事は審神者でなければできない手続きくらいのもんである。後は霊力の供給。霊力パックみたいなもので間に合わせられなくもない。でもこの本丸の刀剣は別に人間に悪感情はないので、主がいないとモチベが上がらない。政府の方も人間に制御されていない刀剣男士(しかも転神状態のものが半数を越えている)を放置できない。
花鶏も流石にいきなり出陣の指示を出せとか言われても困るので、そういうのはまた慣れてから、ということになった。
【人の子は朝尊に懐いているのだな】
「僕に懐いているというか、一応そろそろ一年くらいの付き合いだから、信用されているという方が正しいのではないかな。僕は危害を加えてこない存在であるとね」
【それは肥前も同じではないのか?】
「肥前くんは全部自分の口で言わせるから」
虐げられて心を閉ざしているのも事実だが、花鶏の状態を説明するには不足がある。花鶏は幼子ではないので単に喋ったり説明したりするのが面倒で黙っていることもある。割と面倒くさがりだし、色々雑なところがある。
「別におれは間違ったことはしてねえだろ」
「間違ってはいないよ」
「……いや。別にベタベタされたいわけじゃねぇから、今の状態でおれは構わねえけどよ」
割と真面目に、肥前がついていないとこのコンビはトラブルに巻き込まれかねないところがあるので、周囲から見てもふたりから見ても肥前は必要な存在である。それはそれとして、花鶏は何も言わずにそっとしておいてほしい時もあるので、その辺読み取ってくれる朝尊にくっつきがち。性欲もなさそうだし。
【父も頼って構わぬぞ?】
「……だっこしてもらうなら、体の大きいひと相手の方がいい」
【おや】
小烏丸は花鶏と身長があまり変わらない小柄な太刀である。
「………まあ主がいいならいいのか」
「そもそも主はスキンシップ自体は嫌いじゃないだろう。過去のトラウマがあるから自分より力の強いものを警戒しているだけで」
「…あー」
この本丸に正式に根付くのであれば所属する刀剣たちと良い関係を築いていかなければならない。変に焦るのもよくないとはいえ、拒絶から入るのもよろしくない。少しずつ慣れていかなければ。とはいえ、花鶏は知り合って一日二日でハグできるほどコミュ力は高くない。必要とあらば接触を受け入れることはするが。
「だがあんま迂闊なこと言うと何かあっても知らねえぞ主。あんたのこと構いたくてうずうずしてる刀が何振りもいるみたいだからな」
「…何故?」
【人の子を愛しく思うのは刀剣男士として、神として当然のことであろう。主であればいくら甘やかしても良いとも言えるしな】
「いや無限に甘やかすのは駄目だろ」