全員敵対レベルというわけではない
いやいや、僕は人身御供の生贄みたいなもんだろうと予想はしていたよ?でも、これはねぇ、うん。フェイントもいいところだよ。というか、ある意味確信犯ってことだよね。誤用の方かも知れないけど。
まあ、最初のあたりが必ずしも悪くなかったからって、油断した俺も迂闊だったかもしれないけどね。
「俺は被虐趣味はないんだがな」
加虐趣味があるわけでもないが。痛いのは嫌いだ。
「俺たちだって被虐趣味はありませんよ」
「代わりに加虐趣味がある、と」
「俺たちはあんたたちのしたことをやり返してるだけだ」
「"俺は"お前たちに危害を加えていないはずだが」
面識もない他人のしたことを持ち出されてもなぁ。
「あんたも人間でしょう」
「じゃあ聞くが」
かくり、と首を傾げてみせる。
「お前は刀剣男士だ」
「…ああ」
「
「なっ…」
「お前が言ったのはそういうことだろう」
ああ、頭がくらくらするなあ。
「違うっ…」
「何が違うんだ?お前たちはやり返してもいいが、僕はやり返してはいけないとでも言うのか?…自分勝手だな」
まあ、俺はやられたらやり返すが、関係のないやつに八つ当たりするつもりはないが。それは、事態が泥沼になるだけだろう。何処かで振り上げた手を下ろさなければならない。
「俺の仲間に手を出すのは許さないぞ!」
先に手を出したのはどっちだっての。…ああ、腹も痛くなってきた。
「…まさか、自分に使うことになるとはなぁ」
回復呪術を殴られた場所と斬られた場所にかけていく。完治はさせない。完治させたら余計に危害を加えてきそうだ。
「…殺したいならさっさと殺せばいいだろうに」
俺を甚振るなど、筋違いの上に時間の無駄だろう。今日も反撃した。…かすり傷程度のダメージも通ったかどうかわからないが。
危害を加えられて大人しくうずくまっているのは俺の流儀じゃない。耐えていればアイツらが改心するだとかお花畑な思考ができるほど俺は楽観的にはなれない。…やり返して状況が改善すると思っているわけでもないが。
「難しい事を考えるのは苦手なんだがなぁ…」
この本丸の刀剣は大きく分けると三パターンいる。
まず、目に見えて俺を敵視しているもの。俺の生傷が消えない元凶だ。基本的に俺が人間だからという理由で危害を加えてくる。
次に俺と関わろうとしない消極的な態度でいるもの。まあ、無害だしどうでもいい。毒にも薬にもならないというやつだ。
そして、俺を生かそうとするもの。これだけ言うと味方のようだが、別に味方ではない。俺を助けているわけではないからだ。っていうか、俺はこいつらが一番性質が悪いと思っている。何をトチ狂ったのか、俺なんかに色欲を向けてくるからだ。身の回りの世話を焼いて、ついでに犯る、って感じ。
各々に意見が違うというのはさして不思議ではないが、もう少し意見を統一させて欲しいものだ。何をどうしたいのかがさっぱりわからん。
俺がこの本丸に来てからした審神者らしい事といえば、最初に来た時に手入れをしたことくらいだ。出陣遠征の指揮はしていないし、鍛刀や顕現もしていない。鍛刀の方は軍の方から禁じられているというのもあるが。本丸がどう、ということではなく、俺自身の問題(?)だ。ノルマとしても免除されている。
出陣遠征自体は刀剣たちが勝手に回している。まあ多分、戦うための存在だから、戦わずに本丸で大人しくしている方がストレスなんだろう。個体差とかもあるんだろうが。
「主、お加減はいかがでしょうか」
「…見ての通りだが」
こいつらは結局、一人として"俺"を見ていない。だから俺もこいつらを個々として見ないことにした。
「そうですか」
常識的に考えて、物理的に椅子に拘束されて気分がいいわけないというのに、そんなこともわからないのか、わざと言っているのか。
「わざわざ主の室に入り込んでまで主に危害を加えようというものはいないのですから、此処で大人しくしていていただきたいのですが」
代わりに性的な悪戯をしてくるのがいるがな。正直どっちも御免だが、確定遭遇よりランダム遭遇の方がマシだと俺は思う。暴力なら反撃できるし。
「室にこもってばかりいるのは息が詰まる」
「主はか弱いのですから、お一人で出歩かれては危険です」
己の本丸が危険って、どういうことだよって話だがな。っていうか、か弱いって…。