刀剣たちと過ごす日々   作:ペンギン隊長

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たぶん顕現から一か月くらいは経ってる 
いうて実休が小鳥の信頼を得てるかというとそうでもない


火刑の魔王6

 

「"魔王の実休光忠"、何故此処にいる。あなたは封印されているはずでは」

「そんなの聞くまでもないだろう。僕は封印されていたから、あの本丸にいたのではなく、"薪"を定期的に寄越すという約定があったから留まっていただけ。新たな"薪"を寄越す気がないなら。自分で探しに行くよ」

「し、しかし、あの本丸には現在人がいるはずっ…」

職員の言葉に実休は微笑む。

「あの子は"薪"にならないからね。でも、もうあの子は僕のだから、余所にはやらない。新しい審神者はあの本丸に送ってこなくていい。普通の本丸として使える状態にすることだ。簡単な話だろう?」

「…色々と、監査部には聞き捨てならない取引がされていたようだね。後で例の本丸も調べさせてもらおうか」

「あの子に余計なちょっかいを出さないなら好きにすればいい。僕は困らないし」

 

「というわけで本日よりこの本丸の担当になりました管狐、こんのすけでございます」

「俺はただの監査のものだ」

「えっどう見ても山姥切…「監査官だ」はーい」

鯰尾と監査官のやり取りに小鳥はきょとんとする。

「うちの姫さんは碌な知識を与えられてないからまずはそこのフォローが必要だと思うぜ」

「ええと…では、聴取からさせていただいても良いでしょうか?まずお名前と就任時期から」

「僕は小鳥だよ。この本丸に来たのは………何日前だっけ。えっと…ん-…薬研くんたちを顕現したのが来て一週間くらいだったと思う」

「えっ。じゃあ、あの時点で主さんと実休さんの付き合いって一週間以下だったってことですか?」

「五日間は日に一時間くらい霊力を受け渡すための操作の練習に付き合ってもらったくらいだったの。配属間違いだろうから、宿代の代わりに霊力もらうねって」

「…で、一週間たっても動きがないから、配属間違いというわけではないだろう、と」

「うん」

 

「蝶姫のことはもうあの男の好きにさせておくしかないと思いますよ。手遅れです」

「…蝶姫、とはこの本丸の審神者のことかな。違う号を名乗っていたけど」

「ええ。魔王が花園に囲い込もうとしているのを気付かず無邪気にふらふらしているんだから丁度いいでしょう」

「…宗三左文字、君はあの(・・)実休光忠を織田信長と同一視しているのか?」

「同一視…ね。まあ、そう思ってもらっても構いませんよ。どちらでも同じことですから。僕はどうするつもりもありませんし」

 

「主ちゃんは良い子だと思うよ?…ちょっと変わったところもあるけど」

「変わっている、とは?」

「…いや。達観しているという方が正しいかな。でも何も知らないからってあの(・・)実休さんを無警戒に信じようというのはちょっと、うん…危ういでしょ」

「…だいぶ執着されてそうだったけれど、実際の接し方としてはどうなんだ?」

「うーん…まあ、溺愛って言っていいんじゃないかな。主ちゃんが朴念仁すぎてかみ合ってないけど」

「溺愛…」

「やたらと物を上げようとしたり、抱っこしたまま過ごそうとしたり、接触過多だったり…ただ、主ちゃんは実休さんに重い執着とか向けられてる自覚があまりなさそうなんだよね。本人曰くご飯扱いされてる、とかで」

「…それは正面から口説き文句を言ってるのに受け取ってもらえないのと、正面から言わないからねじ曲がって伝わってるのとどちらだ?」

「うーん…関係性が変わる前のことで思考をロックしてしまっている、ってところじゃないかな。あの(ひと)がストレートに言ってない可能性もあるけど」

 

「今の審神者に代替わりする前のこの本丸のことを知っているものはいないかい、実休以外で」

「実休しかいないんじゃないか」

「俺たちは主さんが顕現するまで顕現したことありませんでしたからね」

「…ならやはり、あの実休から聞き出すしかないのか……」

「無理だろう」

「あの(ひと)、絶対自分がしたくないことはしないタイプですよね」

 

「小鳥ちゃんは僕のだって言ったよね」

小鳥に政府管轄の病院で検査を受けさせるために本丸から連れ出そうとしたところで、何処からともなく現れた実休がひょいと小鳥を抱えあげた。一応付き添いで薬研が同行することになっていたのだが。

「…あなたは知らないのかもしれないけど、人間が健康に長生きするためには、定期的に検診を受けて身体の不調を見つけて治療するべきなんだよね」

「これに関しては俺も監査の旦那に賛成だぜ、実休の旦那。姫さんは元々躯がそう丈夫ではないそうだし」

「信用できないかな。別に小鳥ちゃんのかかりつけの主治医ではないんだろう?」

「一般人の通う病院と軍の顔が利く病院は違うからそれはそうだろうね」

小鳥が不本意そうな顔で言う。

「いや、そもそも実休さんに僕の外出を制限する権限とかなくない?しかも自分はなんかふらっとどっかに行ってるわけだし。自分は出歩いてるのに僕に出歩くなって言うのは筋が違くない?」

「・・・」

実休が茫然とする。

「…あー、姫さん?」

「管理者登録後はパスの繋がってる相手が本丸内にいるかいないかくらいの把握はできてるんだから。それから、今どき主治医なんて医療用AIなんだからカルテの同期さえちゃんとされてればどこでも同じなの。医療機器とか医薬品とかの在庫が違うだけよ」

「…えっとね、そういう意味じゃないんだ」

「じゃあどういう意味?」

「小鳥ちゃんを政府や余所の本丸に取られるんじゃないかと思って…」

「何で?」

小鳥は首を傾げる。

「僕が何処に連れていかれたところで、実休さんは普通にそこに来るでしょ」

「それは当然そうなんだけど」

「何が問題なの」

「他の男が小鳥ちゃんに手を出すのがすごく嫌」

「そんな物好きそういない気がするけど…僕もそう簡単に手を出されるつもりないんだけど」

 

 

 

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