刀剣たちと過ごす日々   作:ペンギン隊長

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満月庭If 道誉√ 児戯 
恋愛事になるとへたれになるタイプの道誉 囲うのは囲う そもそも妖横町とかのことも教えない 元からブラックだったタイプの本丸 酷使系ブラック 一度は全刀手に入れてる いっぱい折れてる 回想の内容は一部しかやってない
さにーは受容属性なだけでパーソナルスペース自体は滅茶苦茶広い


戯れの時間は二人だけで1

 

 

「もしかして、これって、お化け屋敷ってやつ?」

どんよりと濁った空気のあちこちの隅に瘴気がわだかまっている。建物自体も暫く手入れされていないことを推測される汚さ、荒れ方をしている。明らかにカタギの人間が足を踏み入れるべき場所ではない。自衛手段も碌になさそうな少女ならば尚更である。

迷子でも紛れ込んだかと思うほど無防備で危なっかしい様子の少女がえっちらおっちら荒れた本丸の中をきょろきょろしているので、流石の彼もいきなり脅しにかかることができなかった。せめて刀の一振りも連れていれば斬りかかるふりで追い払うこともできたのだが、顕現した刀どころか本体を身に帯びてすらいないように見える。

「こんにちはー、誰かいませんかー?」

少女が恐々本丸の中に問いかける。答えはない。そもそもこの本丸に人語を話す存在は彼しか残っていないのだから当然なのだが。

無垢な少女というのは、彼が刀剣男士として顕現してから関わったことのない相手である。正直なところ、どのような反応をされるか予想もできない。彼は刀剣男士の中でも厳つくて威圧感のある方だ。現世で並んだら職質されかねない。

ふっと、少女が立ち止まって周囲を見回してきょとんとした。どうやら彼の存在を感知したが見つけることはできなかったらしい。

「…ついたらまず管理者登録を更新してって言われたけど…本当に此処で合ってるのかな。流石にやってける自信ないんだけど」

どうやら迷子ではなく本当に審神者であるらしいと見て、彼は少女に歩み寄る。

「やぁ、お嬢さん。このような所に、何の用事かな?」

「こ、こんにちは。この本丸のひとですか?」

近づいてみれば少女は短刀の大きい方程度の背しかない。彼とはずいぶん体格差があって目を合わせるのも一苦労なくらいだった。

「ああ。君は、迷子か何かか?」

「迷子ではないはずなんですけど…引継ぎだって言われて送り出されたんですけど、行けばわかるって言われて行先がどんな本丸か教えてもらってないんです」

「それは詐欺か何かを疑った方がいいのではないかな?初期刀は連れていないのかい」

「初期刀…ええと、採用試験の時の刀は、試験官の人に還すように言われて、鍛刀も禁止だって言われてるんです。だから引継ぎってことになったらしいんですけど」

「ンー、それは確実に真っ当な扱いじゃないが、君は何の疑いも持たなかったのかな?」

「それは、その…何となくで試験を受けたら何故か合格しちゃって、審神者も刀剣もよく知らないんだもん。自分に霊力があるなんて、昨日まで知らなかったし」

「昨日まで」

「昨日試験に受かった後、呪術の講義を受けて、今日此処に来たの」

「それは運が悪ければ死ぬなぁ」

「えっ」

少女がショックを受けた様子だったので、彼は少女と視線を合わせてしゃがみ込む。

「今の君に自分の身を守る手段はないも同然ということだろう。主を喪って他の審神者を引継ぎに迎える本丸というものは、安全とは限らない。審神者への憎悪を滾らせている刀がいないとは言い切れないからな。円満に退職した本丸であっても、もめる時はもめるそうだからな」

「・・・」

「…まあ、今この本丸に自由に動ける刀剣は俺一振りだけだ。俺は無意味な暴力は好まない。いきなり君に斬りかかったりはしないとも」

「…僕は何の為に此処に送り込まれたんでしょう。死んだ方が都合が良いんでしょうか。僕、一般庶民なんですけど」

「ンー…少なくとも本丸というものは審神者がいなければ正常に稼働させることができない。とにかく生きた人間が本丸にいればいい、とそれくらいの扱いで送り込まれた可能性はあるな」

少女の無垢な目が彼をじっと見る。

「僕は、此処にいたら拙い人間ですか?」

「…どちらにせよ、君を現世に返すことはできないかもしれない。この本丸は出入りを制限されているからな」

「…何故?」

「この本丸には色々と問題があってね」

少女はこてりと首を傾げた。審神者としての知識が碌にない少女には自力で何がどう拙いのか気付くことはできないだろう。自分の刀剣を連れていないから適当に放り出すこともできない。

「一応、転移装置を確認してみよう」

少女と共に門を確認するが、やはり上位権限で凍結されていて、転移が出来ないようになっていた。

「こういうわけだが、君はどうする?」

「どうする、と言われましても…どうもできないのでは?流石に転移装置は専門外ですし…門を使わずに物理的に外に出ても、帰れないんでしょう」

「ああ。君には不本意かもしれないが、政府が何かしら心変わりでもするまで、俺とふたりでこの本丸で過ごすことになる。死にたい、現世に帰りたくないというなら話は別だが」

「ん…普通に家には帰りたいし、積極的に死にたいとは思っていないですよ。うーん…できる範囲で本丸の掃除でもしますかね…住環境は清潔にした方がいいですし」

「なるほど?」

少女は彼に改めて向き直る。

「僕は小鳥です。あなたの名前は何と言うんですか?」

「俺は道誉一文字だ。まあ好きに呼べばいい」

「ドーヨさん?」

「ああ」

少女は彼のことは知らない様子だった。刀にも詳しくないと言っていたからだろう。

「とりあえず、生活できる場所を確保…できるように頑張ってみます」

「手伝いは必要かな?」

「助けてもらえたら助かりますけど、自分でできることは自分で頑張ってみます」

「そうか」

「あ、そういえば、本丸ではこんのすけというものが色々教えてくれると聞いたのですが、何処にいるかわかりますか?」

「残念ながらこの本丸のこんのすけは随分前に壊れてしまっているから、君の助けにはならないだろう」

「そうですか…」

 

少女は並んで立てば頭のてっぺんが彼の胸まで届かないくらいの背しかない。小さくて非力で彼がちょっと力加減を間違えたら簡単に壊れてしまいそうな脆さが見て取れた。それでいて、危機察知能力に欠けているのか、あまり彼を警戒している様子がない。

「俺が言うのもなんだが、俺を信用しすぎではないかな」

「んー…ドーヨさんが敵に回った場合、そもそも僕は詰みだからどうしようもないというか、自分の見る目がなかったって諦めるしかないかなって」

この本丸に逃げ場はないし、そもそも契約しているわけではないから少女は彼に対して何の強制もできない。腕力はないし、術に長けているわけでもないから、戦って勝つこともまずできない。敵対した時点で彼に命を握られている。否、既に握られているのと変わらない。少女の方から喧嘩を売ることはないだろうし、敵対するとすれば彼の意志によるだろうから。

「命乞いはしないのかな」

「差し出せるものもないのに取引は成り立たないでしょ。僕が使えるのってほぼこの身一つと言っていいし、権力も伝手もないし、死んで悲しむのは親兄弟だけだし」

「自分のことだって言うのに随分ドライだな」

「至極現実的な分析だと思うけど」

彼は肩をすくめてみせる。

「俺に雛鳥を嬲って楽しむような趣味はないとも」

「ドーヨさんが僕を殺すのなんて、それこそ、赤子の手をひねるようなもんでしょうしね」

そもそも普通の人間では刀剣男士には敵わない。審神者が刀剣男士と対等に渡り合えるのは、信頼関係かさもなくば呪いの類によるものだ。そのどちらも少女にはない。

管理者登録を更新して本丸に少女の霊力が巡り始めると、それだけで内部の瘴気は少し薄まった。霊力が循環していけば、自然と瘴気が消えていくだろう。少女は霊力特性として浄化に向いているようだ。

「メインコンピューターの使い方はわかるかな」

「独自規格で特殊な動作をするとかでなければ多分概ね…まあ下手に干渉とかはしない方がいいかな…よくわかんない項目とかあるし…」

本丸内部の情報を見ると、この本丸に所属している刀剣は一振りだけではないようだった。

「自由に動けるのがドーヨさんだけってだけで、動けないヒトは他にもいるんですか?」

「…ああ。大半の刀剣は休眠状態になっている。手入れをしないことには自然に起きてくることはないだろう。だが、現在この本丸には手入れに必要な資材がほとんどない」

「行き倒れてるってことですか?」

「いや、顕現が解けてるから、そこらに刀が散らばってる、と思えばいいだろう。折れてしまっているものも混ざっているがね」

「それは、ただの大掃除では終わらなさそうですね…」

なんにせよ、動くしかない。

本来であれば100を越える刀剣が生活することになる本丸はとても広い。ひとまず人間の生存に必要な睡眠と水回りを利用できるスペースを確保することにした。あっちこっち動き回るのも大変なので拠点を作るつもりで近場に集めて。本来居室として使われていた部屋ではないが、少女はあまり気にしなかった。そもそも本丸中が荒れているので使える場所が限られている。

少女はとりあえず元は応接室か何かだったのだろう部屋のソファをベッド代わりにすることにした。少女は小柄なので十分寝床にできる。かけ布団には生成術式で毛布を作った。今この本丸に設定されている景趣は極端な気候のものではないので多分風邪を引いたりはしないだろう。

「♪~」

少女は歌を口ずさみながら掃除している。彼のことはあんまり意識していなさそうだ。

「君は綺麗好きなのか?」

「?んー…汚いのは好きじゃない、かな。後、呼吸器が丈夫じゃないからやっぱり埃まみれのとこは避けたいところですね」

少女はふと彼を改めて見て言う。

「髪の毛埃まみれになってしまいませんか?」

「ん?あー…まあどうとでもなるさ。汚れたら洗えばいい」

「洗うのも大変そうですけど」

彼の髪は長くて量が多いし特にまとめたりはしていない。膝を折ったりすれば地面につく。とはいえ外見を気にするタイプの刀剣なので手入れをおろそかにはしていない。

逆に少女の方はある程度の長さはあるだろう髪を適当に括ってまとめ上げている。うなじも見える。少女がじっと見ているので彼はにやりと笑う。

「よく映える髪だろう?」

「バエという観点で髪の毛を考えたことがないのでよくわかりません。んと…歌舞伎の、何だっけ、連獅子?みたいですね」

「連獅子、ときたか…」

多分少女に貶す意図はない。

 

「人間には食事が必要だろう?まあ今この本丸にはあまり食材が豊かではないんだが」

「僕も料理は最低限くらいしかできませんから、とりあえず食べやすいものがあれば…」

食料庫にあった食材は少ないし偏っているのが見て取れた。

「…ドーヨさんは何を食べて過ごしていたんですか?」

「刀剣男士は必ずしも食事しなくても存在を保てるからな。俺ひとりでいる時に態々食べようとはならなかった」

「…なら、一緒にならご飯食べてくれますか?」

「うん?一人で食事をするのが嫌かい?」

「どちらかと言えば食事している時に食事してない人が同席するのがいたたまれなくて苦手ですね」

「成程、共に食事をしないなら食事をしている間は席を外してほしい、と」

「…そうなりますね」

「ハッハァ!それなら雛鳥の料理の腕次第で決めるとしよう。俺は常に君に付き従わなければならないわけではないしな」

「それはそう」

少女はこの本丸の管理者(さにわ)になっているものの、彼と契約を交わしたわけではない。本丸を通して霊力は供給されているが。こうして共に行動する必要も別にない。彼からすれば、この少女がどのような人間か見極めるためにしていることに近い。

「ただ僕は、料理はそう得意ではないです。あんまり興味がなかったので…」

 

 

 

 

 




審神者が殺されるとそいつが浄化した分が元に戻っちゃう感じかなあ
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