体力が違いすぎて何度も気絶しつつ抱かれて…正確にどれくらい続いたかはわからないが、数日ぶっ続けで抱かれた。ベッドから起き上がれるようになるまで追加で数日かかった。筋肉痛()である。道誉は普通に元気だったので甲斐甲斐しく世話を焼いてくれたが、そもそもこいつが原因なんだよな…。感謝するのも微妙に違う気がする。マッチポンプ?
ベッドから起き上がれなかったので、そのままできることがないかと本丸内の電子ネットワークを探ってみたら一応データーサーバーは稼働していたのでそちらの閲覧などすることにした。まあ、外部ネットワークとは遮断されているようだったけど。
とりあえず適当に情報を閲覧してみたがちょっとすんなり理解することはできなさそう。そもそも俺に基本的な知識が足りなさすぎる。刀剣の名前も全然知らないしな…。俺がちゃんと知ってる刀剣とかそれこそへし切長谷部とか蜻蛉切とかくらいだし。信長公推しだから。あと三河の子だし。
そして多分寝落ちしたんだと思う。体の不調を感じないから夢なんだと思う。俺はあんまり明晰夢とか見ないんだが。予知夢は見るけど。
「しかしなんでこんな虚無なんだこの夢。どうせなら楽しい夢を見ればいいのに」
まあ俺は自分の見る夢を思うようにコントロールできたことなんてないのだが。違和感に気付くとなんか辻褄合わせに変化しちゃったりするしな。
周囲に何かあるようには見えない。なんなら地面があるかすらおぼつかない。ただ空間だけがある。重力があるかもよくわからない。俺は立ってるのか浮いてるのか。まあぼーっとしていてもつまらないので、何かないか探してみることにした。
「…あ」
「…ん。お前、どこからこんなところに迷い込んできたの」
…男の人だな。髪長いから一瞬女性かと思ったが、声が普通に男の人。近づいてみたら普通に背が高いし筋肉ありそうだった。そしてめっちゃ怪我してる。
「何処からと言われても、寝落ちした位しか此処にいる心当たりない。これって何らかの明晰夢じゃないの?」
「…死にかけてるとかじゃなくて?」
「死ぬかも、とは何回か思ったけど物理的には死にかけてない…はず。いやまあ、道誉にその気があったら俺なんて簡単に死んでるんだけど」
「…道誉くんの印がべったりついてるの、気のせいじゃなかったか…」
「知り合い?」
「ん、まあ、そんなとこ。…あんたは何してそんなことになってるの?」
「そんなこと、って?」
「道誉くんにめちゃくちゃ執着されてるでしょ。…てっきり、人間にはそこまで個別の興味がないと思ってたんだけど」
「あー…俺は何もした覚えない」
「は?」
すごまれても心当たりはないんだよマジで。
「いや、だって、遭遇して数分でなんか自己紹介もなしに手籠めにされたし。まあそれ自体は何かの手段だったんだと思うけど…一から本丸作れなそうだから引継ぎしろって言われて送られてきた審神者だって話くらいしかしてなかったから、何を気に入られたのかはさっぱり…実はロリコンの気があったりする?」
「ドン引き。他に味方探した方がいいよ。誰か心当たりないの」
「本丸についてから道誉としか遭遇してない。俺に初期刀?はいないし」
「そのままだと神隠しされるやつじゃん。逃げな?」
「物理的に逃げられない気がする。俺運動苦手だし。全力で押しても全然びくともしてなかったし」
気付かれない内に本丸から出るとか無理では?まあ本丸から出た後のあてもないしな…。
「…もっと危機感持ちなよ、自分のことだよ?」
「ん-…苦しまないなら死ぬのは別にいいんだよね。人間は死ぬものだし、少しでも何かの役に立てたら上等って感じ?寧ろ変に生を引き延ばされる方がやだし」
「神隠しされたら死ねなくなるよ」
「絶対ヤダ」
最悪自害の手段でも確保しておくか?まあそれはともかく。
「でも俺よりあなたの方がヤバい状態に見えるけど。いっぱい怪我してるし」
「おれはいーの。もう折れてる刀だから。まあつまり此処は冥府の一歩手前、って感じなんだけど」
「何も良くないと思うけど。折れてるんだったら逆にそんなボロボロの姿じゃなくて無事だった時の姿になってもいい気がするけど…幽霊だって死んだ時の姿とは限らないし」
気休め程度に回復術式をかけてみる。うーん、あんまり効果がないみたい?
「…あんたのそういうとこが良かったのかもね。でも霊力の浪費はやめな。おれはあんたの刀じゃないし」
「そもそも俺の刀って今の所いないから気にしなくていいと思うし、ただの自己満足だから。目の前に怪我してるやつがいるのに放っておくとか気分悪いし」
「ん……おれを顕現した主がそういう人間だったら、おれも折れずに済んだかもしれないんだけどね」
詳しい事情は深くつっこまない方が良さそう、だけど。
「いいこ、いいこ。よくがんばったね」
傷には触れないように、頭を撫でる。なんとなく、そうした方がいいと思ったから。銀色の髪の毛は汚れているけどサラサラしていた。
「…あんた審神者向いてないよ」
「えっ」
「余所の刀に優しさを安売りするもんじゃないよ。おれみたいなのに優しくしたら、現世に還れなくなる、かも」
「うーん。やらないで後悔するより、やって後悔する方が諦めがつくじゃん。自業自得だし。やってないことで詰むよりはるかにマシというか」
「そういえばあんた道誉くんに手籠めにされてたね…」
目の前の彼がどうこう以前に既に家に帰れるかわかったもんじゃないんだよな。回復したと思ったらまた抱き潰されてベッドに逆戻りパターンとかもないとは言い切れないし。
「そういえば、聞きそびれてたけど、あなたは何という刀なの?俺は小鳥だけど」
「ん…おれは姫鶴一文字。上杉の刀」
「上杉っていうと…上杉謙信とかの上杉?」
「その上杉」
「…一文字は道誉と同じ?」
「まあ、同じ一族の刀鍛冶が打った刀だろうね、って感じではあるけど…うちは兄弟ってより、一家って感じだし…おれは一文字のあれこれとは距離を置きたい感じってーか」
なんか複雑な家庭環境らしい。そういえば寝落ちする前に見てた資料には同じ名前…いや、刀工名、か?のついてる名前がいっぱい並んでたな。それに確か、名簿を見た時に…道誉のステータスはなんかバグっててわからなかったけど、他の刀は軒並み重傷の表示になってたんだっけ。疲労の表示もいっぱいついてたけど。それから…
「…そういえばリストの体力順最下に姫鶴一文字ってあったかも。HP1とかって」
「・・・」
「あなたみたいに大怪我してるってこと、かな?」
「…うわ、ありえないとは言い切れない。かっこわる…」
「?」
姫鶴は何か唸った後、改めて俺を見て言う。
「おれ、まだ折れてないのかもしれない」
「?それって何か悪いの?」
「悪いとかじゃなくて…あんたの言う、あんたの本丸にいる生存が1しか残ってない姫鶴って、おれのことかも、ってこと。それだとあんたが此処にいることにも説明がつくし」
「逆に何の縁もない余所の本丸の審神者が偶然迷い込んだと思ってたの?」
「あんたからする道誉くんの気配、おれの知ってるうちの道誉くんのと微妙に違ったから余所のやつかと思って。うちの道誉くん神寄りだから本当、そんな蛮行するタイプじゃないと思ってたし」
「神寄り」
そういえば、刀剣男士は優しい神さまなんだって、誰かが言ってたな。寄り、って言われるってことは、純粋に神様というわけではないってこと?まあ刀だしな…。
「神としての意識が強めってこと。
「えー…人間だからって見下されてる、とは感じなかったかな…?」
「…まあ主が愚かだから見下されてたのかもしれないけど」
それはそれでどうなんだ。
まあそれはともかく。
「彼に、姫鶴が俺のいる本丸の姫鶴だったとして。それで何か起こるの?」
折れる寸前みたいな相手を酷使するわけにもいかないだろうに。回復するまで休息させるべきだ。…いや、刀剣男士は自然治癒しないんだっけ?
「…道誉くんのこと怒らせるかもしんないし、どちらが怒られるかわかったものじゃないけど」
そう言ってそっと抱き寄せられた。
「小鳥の霊力、おれにくれる?」
「…どうやって?」
渡すこと自体はまあいいんだが、どうすればできるのかよくわからない。
「ん-…夢だし、キスで十分、かな」
「キスで」
「嫌なら他の方法も考えてみるけど」
「だ、大丈夫です…たぶん」
「ん」
夢だからか、口を塞がれても苦しくなかった。キスが終わると、姫鶴の存在感が少し増したような気がした。
「小鳥は何処にいるの?」
「探索中だったから、何処なのかよくわからない。大きいベッドがあって、あんまり日差しとか入らない感じの部屋」
「…あー、たぶん主の私室かな。近づきたくない刀も多いだろうし」
何か不穏なこと言ってる。
「ん、じゃあ、また後でね」
「また後で…?」
道誉が堕ちたのは姫鶴が折れた後なので自分のとこのと思ってなかった 祟刀なので常人なら穢れで死ぬか運が良ければ強制眷属化になるようなことされてるんだが、さにーは一切感知してない 抱きまくったのでだいぶ浄化された