刀剣たちと過ごす日々   作:ペンギン隊長

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僕らの不可知と存在証明4

 

目が覚めたら真正面に道誉の顔が見えたので普通にビビった。夢を見た記憶が大体吹っ飛んでしまった。あと何か布団から出てた右手が道誉と手を繋がれていた。何故。

「そんなに怯えることはないだろう、ハニー」

「俺の名前はハニーじゃないんだよな」

流石に何とも思わないことはできない相手なので距離感を測りかねている。好きとも嫌いともつかないから余計に難しい。俺は俺のことが好きなやつが好きだし、彼は俺が好きであるかのように振る舞っているが、なんというか…胡散臭い。本心なのかわからない。マジでわからん。

物語なんかだと登場人物が眠っている相手に隠している本心を零したりすることがあるが…道誉がやると演技(パフォーマンス)じゃね?感がある。ちなみにナノマシンのログは入れてる人間の意識の有無とは関係ないので聴覚ログを見たら寝てる間に誰か何か話してたとかも普通にわかる。確認したらなので別に確認してないとわからないが。

現在時刻は定かではないが(確認すればすぐわかるが)道誉がいること自体はそこまで不思議はない。俺の世話を焼くと言って入り浸ってるから。なんなら普通に同衾する。寧ろいない時にどこで何やってるかの方がよくわからない。

ビビったのは起きた時向いてたのが外側だったから…道誉がベッド脇になんか跪いてたからである。まあどっちかというと、俺の寝顔を覗き込んでたとかな気はするが。ともかく一緒に寝てたから目が合ったとかではなかったのだ。

「ん、と…ふぁ…16時、は…夕方、かな」

「ああ。よく眠っていたからおやつに起こすのもどうかと思ってね」

三食におやつ付けて寝るだけの生活したら太るんだわ。そもそも僕はそんなに代謝がいいわけでもないし。いやまあ、燃費がいいか悪いかってなると微妙だが。なければないで済ましてしまうから。かといって小食というわけでもないし。いや、刀剣男士(たたかうおとこ)よりは小食くさいが。それは比較対象の問題だし。

「だからって人の寝顔眺めてるのは悪趣味じゃない?面白いこともないでしょ」

「いや、とても有意義だったよ」

「何が???」

人の寝顔から一体何を見出したんだこいつ。正面から聞いてまともに返ってくる気がしない。

「喉は乾いていないかい。つまむものもあるし、お茶をいれてこよう」

「う、うん…?」

ログチェックしておくべきか…?あんまりいい予感はしないけど。変な寝言言ってたりとか。目を閉じてるから当然視覚ログはないしな。そもそも何で手を握られてたかもわからんし。

とりあえずベッドから身を起こす。一応もう全く起きられないというほどではない。大事をとって、という感じで寝かしつけられてただけだ。そろそろ活動しないとかえって足腰が鈍ってしまいそうなところだが。

ストレッチから始めるべきか?

「小鳥」

「ありがとう」

差し出されたカップを受け取って口をつける。正直味音痴みたいなところあるので美味しいかはよくわからない。不味くはないんじゃない?飲めないわけじゃないし。

道誉が隣に座る。近いというか完全に密着されて腰を抱かれている。何が目的でこんな近いのかは正直よくわからない。好かれてるのか、好いてる素振りで誑かそうとしてるのか。まあ力づくで何かさせようとしたらさせられるというか、俺は腕力じゃ敵わないんだよな。

「…道誉は俺に何をさせたいの」

「ンフー?当然俺が君に望むことなどない、なんてことはないが」

「俺は常人にできるようなことしかできないよ」

「ただの人間に可能でないことは求めないとも」

ニュアンスぅ…。顔をじっと見てみても何考えてるのかよくわからない。表情がないわけじゃなくて、にこやかに微笑してるからわからない。愛想笑いなのか本当に笑ってるのかもわからないからな…。

「そんなに俺が信用できないかい?」

「俺は道誉のこと殆ど何も知らないから判断がつかない。そもそも人間同士でもわかりあえないのに、確実に価値観が違うことはわかってる相手だし」

人間じゃないのもそうだが、生育環境が違いすぎる。思想が違う。何に価値を見出すのか。何を大切に思っているのか。何が好きで何が嫌いか。互いのことを何も知らないのに突然距離を突撃の勢いで詰めてきた時点で相容れない気配がする。まずフレンド申請から始めてほしい。端末持ってるかわからないけど。本丸内に個人用端末は全然ないみたいだし。

「人間同士でも、わかりあえないかい」

「わかりあえるなら戦争なんて起きないでしょ。まあ議論するならまず何をもってわかり合ったと見做すかの定義から決める必要があると思うけど。前提が違ったら議論なんて成り立たないし」

まあそんな議論したいわけじゃないけど。

「俺は迂遠な話は得意じゃない。あんまりはぐらかすような言い方はしないでほしいかな」

「はぐらかしているつもりはないが…いや、言葉は足りてない時はあったかもしれないな。君には嫌われたくないんだ」

「嫌われるようなことはしなければいいだけでは」

「これは手厳しい」

なんも厳しくないと思うが。

 

「…いた」

壁に手をついて、部屋の入り口に知らないひとが立っていた。…いや、うっすらと何処かで見た覚えがある気もする。本丸内データの何処かとかか?

「って、めっちゃ怪我してる。だ、大丈夫、じゃないよね?ええと、どうしたらいい?俺に何かできる事ある?」

「警戒心って知ってる?…夢のこと覚えてるわけでもなさそうだしな…」

たぶん刀剣男士、なんだろう。長い銀髪と白い服の青年。当然のように俺より背が高い。道誉よりは低いけど。色んなところに切り傷があるけど、出血はしていない、っぽい?

「その状態だと動くのしんどくない?出血はしてないみたいだけど…と、とりあえず傷口周りの洗浄と保護?ガーゼと包帯で間に合うかな」

「手入れさえ受けれれば全部綺麗に直るから、そういうのはいい。それより、今の内に「お姫?!」げっ」

おひめ…姫…

「…姫鶴一文字?」

「ん」

「お姫、何故此処に?今まで誰が何度呼びかけても反応しなかったのに」

「記憶にない。折れたと思い込んでたから気付かなかったんじゃない?」

「ああ、だがお姫が目を覚ましてくれてダァはとても嬉しいよ」

「キモ。お守り仕込んだの叔父貴だろうけど、その反応マジでキモイからやめてほしい」

ダァって何なんだろ。喜んでること自体は本当なんだろうけど。あと挟まないでほしい。首が痛くなりそうだし。

「道誉くんが何やらかしたのか、小鳥から聞いてるから。ロリコンとか本当どうかと思う」

「ウェイ、ウェイッ、小鳥に手を出したのはロリコンだからじゃない。一目惚れしてどうしても手に入れたくなった相手が偶々基準より小柄だっただけなんだ」

「って言ってるけど」

「惚れた腫れたはよくわからない」

それにまあ、俺は成人してるから正確にはロリじゃないんだけども。

「幼気な雛鳥に何の情報も与えずに囲い込むとか、倫理的にダメでしょ」

「ハッハァ!眷属にしてしまえたら、話は早かったのだがね」

「何かヤバいこと言われてる?」

「神隠しどころじゃなかったか…よく生き残れたね、あんた」

眷属=死なの?

「死なないだろうと思ったから試したんだ。結果、小鳥の魂は欠片も俺の色に染まってくれなかったんだが」

「自我強すぎ…」

何で俺がドン引きされてるの。特に何もした覚えないのに…覚えてないだけかもしれないけど。

「愛おしいだろう?」

「うっわ」

「趣味が悪いのでは?」

あと若干空気がピリピリしてるの何。仲悪いというより道誉が一方的に対応をウザがられてる感じっぽいけど。

「そういうわけだから、お姫にも小鳥は譲れない。俺だって執着はあるからな」

「おれはそういうんじゃないから一緒にしないで。ちゃんと本人に自分で考えて選ばせてあげるべきだと思っただけ」

「ンー…お姫は眠っていたから把握していないんだろうが…この本丸は現在凍結措置を受けている。こちらからの操作では小鳥を現世に返すことはできない」

「…は?」

「俺が審神者を殺して祟りになったから閉じ込められたのさ。関係者にも類が及ぶかもしれない、とね」

「あー、つまり僕は人身御供の生贄かー」

何も教えないまま送られたわけだ。十中八九死ぬだろうからって教育コストを渋られたんだな。

「祟り?道誉くんが?その状態で???」

「小鳥がキュートだったから九割戻った」

「そういうのはいいから」

「嘘は言ってないんだが…」

「…そういえば、最初は道誉のこと真っ黒な人影に見えてたっけ」

「それは逃げなよ」

「黒くて大きかったから距離感がつかめなくて、気付いたらめっちゃ近くまできてた」

「俺が言うのもなんだが、それは言葉を交わす前に逃げるべき場面だ」

「目が合って挨拶しないのは失礼かなって。先住民だろうと思ったし」

それにそれ、普通に殺されるコースでは?

「本当によく生き残ってこれたね…」

「物理的な意味で命の危機を感じるような事態に巻き込まれたのは審神者になってからが初めてだよ」

病気的な意味ではなくもなかったけど。

「しかしアレは真っ黒な人影に話しかけられたり抱え上げられたりした人間の反応ではなかったと思うが」

「合理主義だからね。何の意味もないことはしないよ。それに一応言葉は通じてたし」

「危険察知能力ガバすぎ…」

「でも実際危害は加え…。…危害…危害…?」

まあ最終的にベッドから出られなくなったんだから、ある意味危害かもしれない。

「君を傷つけるつもりはなかったとも。平常でなかったのも事実ではあるが」

「こわ…」

 

姫鶴の手入れをすることになった。姫鶴は嫌がったが、ふたりまとめて道誉に抱っこされて手入れ部屋まで連れていかれることになった。データ上姫鶴のHP3しかなかったし、ちょっとした衝撃で折れてもおかしくない重傷らしい。俺も姫鶴も自分で動けないわけではないのだが、ゆっくりになるだろうし、途中で体力(スタミナ)切れするかも、ということらしい。道誉が俺を片手で軽々抱えられるのは知っていたが、姫鶴とふたり同時でも平気だとは…。

「っていうか、要は道誉くんが暴れてて問題視されたんでしょ?何の怪我もしてないなんてことある?そもそもあの人の下にいた時だって「お姫」…はぁ」

一応、抱かれた時に道誉の裸は見てるはずだが、特に怪我している様子だと思った覚えがない。流血してなければ血臭もしないとか?なんなら姫鶴だって血の臭いが気になるほどするわけではない。

「道誉、過保護じゃない?」

「勝手に特別扱いしてるだけ。他のやつには此処まで手厚くないから」

「そういうことだ、スウィーティ」

特別扱い、ねぇ。そういや結局何を求められてるんだかはっきりしてなかったな。この状態で聞くわけにもいかないけど。

「助けてくれるのは助かるけど、ちゃんとお返しできる自信がない」

「できないことを求めたりしないとも」

「道誉に借りを作りたくない…」

「わかる」

「ハッハァ」

手入れ部屋は狭い和室だった。布団と刀掛けがあって、同じ部屋が四つ並んでいる。しばらく使われていないのか少し埃っぽい。

「どうしたらいい?」

「何処かに手入れの式がいるはずだと思うけど」

姫鶴が刀掛けに刀を置くと、何処からか小人みたいなのが出てきた。埃まみれになってるみたいなので拭ってやる。これでいいのかな?

「君が手入れしてくれるの?お願いしてもいい?」

ガッツポーズを返してくれたので多分引き受けてくれたのだろう。刀の方にぽてぽて歩いていった。

「手伝い札ないと一日とかかかるかも」

「お姫が此処でゆっくりしたいのでなければ此処に札がある」

「使う」

姫鶴が道誉から受け取った札を使うと、魔法みたいにすっかり傷が消えて無くなった。

「で、道誉くんだけど」

「此処にお世話になるほどの状態ではないさ」

姫鶴が式の子を見ると、式の子はふるふると首を振った。

それはどういう否定?怪我してるよってこと?此処の担当じゃないよってこと?

「それに資材がない」

「うぇ…」

あんまり良くない状態らしい。

「…そっか、凍結されてるから政府からの支給もないのか」

「そういうことだ」

 

「小鳥、この本丸の審神者になってないというか、本丸に霊力の供給してないよね?」

「ああ。管理者登録はまだしていないからな」

「…道誉くん邪魔してる?」

「…顕現が解けている状態で長く過ごせば、人の身で過ごした経験を喪っていき、練度も下がってしまうという。…だが、そちらの方がいいだろう?」

「あー…わからなくは、ないけど…」

「皆、あんな人間のことなど忘れてしまえばいい。それで何か不都合が起こることもないし、寧ろ後のことが上手く回るはずだ」

「…忘れてしまう方が楽なことがあるのは否定しないけど」

 

道誉はなんかこわいけど、姫鶴はこわくない。俺より体が大きくて力が強いのは変わんないし、どちらも俺に友好的に振る舞ってるんだけどな。…初日のトラウマかな。姫鶴には特に何もされてないもんな。そもそも俺、人見知りする性質だし。道誉が強引に距離を詰めてきただけで。

あれから、本丸内を掃除したり、審神者がすべきこととか、刀剣男士のこととか色々教えてもらったりしながら過ごしている。普通にやることが色々ある。実際やることになったらもっと細々な事とか出てくるかもとは言われている。今は転移門が凍結されてて現世にも戦場にも出られないから。あと本来なら演習場とか万屋街とかっていう審神者と刀剣男士の関係者しか利用できない施設にも繋がるらしい。現世に行かないまま生活できるというか。

「小鳥は、審神者やってけそ?」

「自分のできることは精一杯務めるつもりではあるけど、俺は人づきあいそんな得意じゃないから、上手くやれる自信とかはそんなにないかな」

助けてくれるひとがいるなら、多分踏ん張れると思う。でも他者の気持ちを察するのとか苦手なんだよね。

「あと刀剣男士みんな姫鶴たちみたいにでかいと首痛くなりそうで…」

「…短刀の子たちは流石に小鳥より小さいから」

つまり短刀以外はでかいんだな…?

「道誉くんとか、特に背が高い方だから平均値じゃないよ」

「あんなでかい必要ある?」

「んー…大太刀とか長物とかは本体もおっきいから」

「道誉は太刀だよね」

「うん、あれは実用じゃなくて威圧用」

「ウェイ、俺はこれでも暴力は好まないんだ。面倒事には巻き込まれやすいが、力任せに推し通ろうとはしないとも」

「相手から引くように差し向けるから威圧用って言われるんじゃなくて?」

「…それはやるな」

やるのか…。

「そもそも好まないって言っても、いざ戦うってなったら自分から突っ込んでくじゃん」

「はっはっは」

まあ、見せ筋じゃなくて実用の筋肉だったよね、あれは。

 

 

 

 




実は道誉にいいこいいこ誤爆している
無意識下に回復術式じゃダメって認識が出来てるので術式を使わない
ビジネスが得意とか言ったので審神者の副業()に連れてかれたりしてた 
ちょもと日光は多分折れてる 元々あんま認めてなかったのと折れた時に縁が希薄になったので主って呼ばない姫鶴 
セックスにあまり意味を見出してないので危害…?ってなる
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