転校とかしたことないので、そういうのは想像の域にしかないのだが、既に関係性が出来上がってるところに新参者が加わって輪に入っていくってのはとても大変なことなのだと思う。良くも悪くも、それは変化を伴うものだし、人は概ね不変を好むものだ。
まあ、要するに、
「解せぬ…」
何故俺なんかを形成されてるらしい各々のグループに引っ張りこもうとするのかがさっぱりわからない。自慢じゃないが、まともに人間関係を構築・維持できたことないぞ、私は。
「主さん、主さん、今日はこっちに来ませんか?」
「えー、今日は俺たちと一緒に食べようよ」
「主様、早く一緒に食べましょう」
「あるじさま、ぼくのとなりがあいてます!」
「騒がしいのがお嫌でしたら、こちらに来ても構いませんが」
別に、食事をわいわい楽しく食べるってのもそれはそれでありだとは思う。思うが、俺は食事中(というか口の中に入ってる時)は食事に集中して黙ってたい。俺は聞き役に徹していいなら別にいいんだが。
「あー…えっと、早いもん勝ち、ってことでいいか?」
「ってことは、僕らですね」
「ちっ」
「じゃあ、おはなしはごはんのあとですね」
「主様がそう言うなら…」
俺を誘って何が楽しいのだかさっぱり理解できない。対人
「あんた、その量で足りるのか?」
「俺は出されたものを食べるだけだが」
適正量というのがどうもわからない。食べようと思えばもっと食べられるし、少なくともそれはそれで大丈夫だ。でも腹八分目がいいらしいので、とりあえず出された量を食べることにしている。
というか、この量が適正だと判断したのでこの量をよそってくれたんじゃないのか?みっちゃんは。
「主は小さいんだから、もっと食べて大きくなった方がいいんじゃないか?」
「今更食事量を増やしても横にしか伸びねぇよ」
成長期などなかった。つぅか、20歳越えて背ぇ伸びるとか都市伝説だろ、絶対。
「それにしたってもうちょっと肉つけた方がいいだろ。手首とか、掴んだら指が余るぞ」
「たっぱが違えば比率も違うんだから仕方ねーだろ。お前の手がでかいだけだ」
そして手首をふにふにするんじゃない。
「兼さん、お茶が入ったよ」
「おう」
「主、俺のこと可愛いって思う?」
「え?…うん、まあ…清光は可愛いと思うけど」
なんというか、わんこっぽいし。
「じゃあ、俺のこと抱いてよ」
「...what?」
「俺、川の下の子だから人を気持ちよくさせる方法とかも色々知ってるよ?」
「…清光の言ってることがさっぱり理解できない」
というかしたくない。えっと、つまり…性的に、って話?僕流石に刀剣の鞘(比喩)になるつもりはないんだけど。そもそもそういう興味はないし。
「俺、精一杯"ご奉仕"するから、ね?」
「いや…んなこと言われても困るんだが」
「俺、主が望むんならどんなことでもするよ?」
そう言って、清光は色々と子供に聞かせられないようなことを言う。
「俺のこと主の手で可愛がってよ」
「とりあえず俺の思う可愛がるとお前の思う可愛がるが全然別物なのはわかった」
性的に可愛がれとか無茶ぶりがすぎる。
「なんというか…俺そっち方面の経験ないし、興味もねぇんだけど」
「俺じゃ、ダメ?」
「清光が、っていうか、そもそも三次元の男に興味はねぇ」
「さんじげん…?」
おっと失言。
「俺、無性愛者だから、男にも女にもムラムラしたことねぇの。生き物として欠けてるっつーか、なんつーか」
恋人がいたこともないし、そもそも欲しいと思ったこともない。尤もそれ以前の問題でもあったのだが。まあ、子供が欲しいとぼんやり考えたことはあるのだが。
「…せめてもうちょい段階踏んでくれ」
頭を撫でてみたら抱きつかれた。
「主は、俺のこと必要じゃないの?」
「刀として部下としてならお前がいて助かるが、俺別に性欲はそもそもねぇから処理とかイラネ」
「――抜けがけ禁止だよ、清光っ」
「俺らを差し置いて主とヤろうってのは見逃せねぇよな?」
「乱交、複数同時もどんとこいです!」
ふ、増えた?!
「夜伽なら、僕だってするよ?主さん」
「俺の方が美人だろ?」
「兼さんと一緒に、僕も抱いてください」
「主に一番に愛されるのは俺だっての」
待て。勝手に話を進めないでくれ。何でやること前提になってんの?やらないよ?っていうか、やれないよ?
「…わけがわからん」
とりあえず避難しよう。えーと…よし、大太刀の所に行こう。腕力的な意味で頼りになりそうだし。
「…おや、主、このような時間に訪れるとは…もしや、夜伽をお望みですか?」
ブルータスお前もか。
「お前には、俺がそんな盛ってる人間に見えるわけ?」
「いえ……私の願望、のようなものですね。私とて、刀です。主には、愛されたい…」
「そこで性的な方向に持っていく必要はないと思うな僕は」
「…しかし、それでは、このような時間に、一体どのような用件でこちらに?」
「…。…なんというか、非常に言いづらいんだが、俺は性欲を持ち合わせていないんだが、性的に迫られたんでとりあえず避難してきた」
「そうですか…」
「なに、つまり僕の前任者は短刀から大太刀まで全員抱いたの?」
しかも調教済みなの?なにそれこわい。そんな甲斐性は俺にはないので、同じものを求められても困るんだが。っていうかまさか、前任の死因って所謂腹上死ってやつ?こわい。
「まあ、そうなるね」
「…流石にそういうのは俺には無理なんだがなぁ」
「君は体力がないしね」
「全力疾走レベルで疲れるっていうから、一回ヤるだけでも体力がもつか…って、メインの理由はそれじゃねぇよ」
ちなみに俺がどんだけ体力ないかっていうと、ちょっと運動したら暫く心臓ばくばくしてヘタれるレベル。洗濯物乾したり取り込んだりの手伝いをしようと思ったらその後三十分ぐらい休憩が必要。そして身体能力そのものも低い。多分、50m/15secとかそういうレベル。
…間違いなく、力づくでかかってこられたら負けるんだよなぁ。そもそも勝てる要素がないし。
「…君が人に触れられるのが苦手だから、かな」
「えっ」
「えっ」
「触れられるのが、苦手…?」
別に、そんなことは、ない…はず。…いや。
「触れられるのが苦手というか、人に触れるのが怖いんだ」
触れることを拒まれ、手酷く拒絶された覚えなら幾つもある。だけど、触れたい、触れて欲しい、と言ってくれたヒトや、俺に触れてくるヒトはいなかったから、他人に触れることに
「私は、私が触れることは、忌避されること、だから」
「そんなことはないよ」
「ふぇ」
「僕たちは寧ろ、君に触れたいし、触れられたいんだ」
「…何故?」
「僕たちは刀だ。主の手で振るわれるということと、触れるということは、"近い"ことだし…こうして人の姿を得たことで相手を傷つけずに触れ合うことができるようになった。愛しいものに触れたいと思うのは変なことかな?」
大きな手が、僕の頬に触れる。
「…その論理はわからなくないけど、俺がその対象になるのはわからない」
触れられることに対する忌避感はない。ただ、理解できない。その理由が。好かれる理由など、ないと思う。嫌われるのなら、(理由は理解できなくても)わかるのだが。
「…ああ、これは問題が違うね」
何かすごい情報広がっててオープンに抱いてって言われるようになった。こわい。何が怖いって、ショタからも迫られるのが怖い。
「俺は、俺が抱く側でも良いぞ」
「俺が良くねぇよ」
別に上下の問題じゃねぇよ。
「そうだな。体を合わせるだけなら、別に…」
「主様は簡単に壊れてしまいそうななりをしていますしね」
反応に困る。
「だが、主は触れること、抱きしめることまでは許してくれるんだろう?」
「…まあ、その辺は」
「何処までならいいんだ?」
「…何処まで、とは?」
「口付けをすることは許されるか?その身を愛撫することは?それから…」
「えっちぃことをするのはよくないとおもう」
「では、その境界は何処だ?」
「…そんなこと言われてもわからない。したことないし。相手次第な気もするし」
「では、試してみるか」
などといって顔を近づけてくるじじいに思わず手で防御する。じじいカルテットはなんというか、年の功なのか余裕が有る感じはするがセクハラも躊躇しないのでプラスマイナスゼロというやつである。
「これこれ、そのようなことをしても愛らしいだけだぞ」
「近い」
「月が嫌なら私と試してみますか?」
「お前ら僕が未だにお前たちの顔を直視して会話できないのわかってて言ってるのか?」
I am 人見知り、OK?
「だから、慣れるように傍にいるのであろう」
「それはおそらくアレルギー体質の人に好き嫌いするなって言いながら無理に食わせるのと同じレベルの鬼の所業だからな」
ちなみに下手するとアナフィラキシーショック的なアレで死ぬこともありうるのでやっちゃいかんやつである。俺もストレスで死ぬかもしれない。
「主がなかなか慣れようとせんのが悪い」
「無茶言うな」
俺は年単位で個人的に鎖国してたんだぞ。その前から内弁慶気味だったし、こんだけ話せてるだけで上出来なんだぞ。コミュ障なめんな。
「俺のことは猫と同じだと思え。猫は適度に放置して適度に構ってくれる人の方が好きなんだぞ」
「俺は猫可愛がり、という言葉もあったと記憶しているが」
構いすぎ、ダメ、絶対。
「しかし…主が猫であれば、
「その可能性は否めないな…」
室内飼いの雑種に無茶を言うな。…いや、まあ昔飼い猫(元野良)がメジロを捕まえてきたことならあったが。つぅか、お前ら大人しく狩られるタマじゃねぇだろうが。
「狐と猫もあまり仲が良いとは言えませぬし…ウサギぐらいにしておきませぬか?」
「…狐はウサギを狩るじゃねぇか」