時間軸的には1のころ
「弟たちが申し訳ありません」
「…ああは言ったが、俺はやってきた奴にその場でやり返す以上のことをするつもりはない。他の者に巻き添えがいくことを危惧しているなら、いらん心配だ」
そうしたところで俺に利はない。寧ろ、敵を増やすだけだろう。かといって、やられっぱなしも性に合わない。マゾじゃないし、耐えてどうなるものでもないだろう。…まあ、俺筋力無いからやり返してもダメージ入らないっぽいが。
「…手当てをいたしましょう。立てますかな」
「…自分でやるから大丈夫だ」
というか、適当に回復呪術使うし。
「そのようなことをおっしゃらず、私にお任せください」
「…位置的に、任せたくないんだが」
腕とかはともかく、腹はな。多少なりとも脱ぐ必要あるからな。
「兄として、弟の不始末の責任を取ります」
「そういうのはいいから」
「主」
「…。…腕だけ頼む」
「お任せください」
新たに主になった審神者、小鳥は儚げな少女である。年の頃は短刀と脇差の間ほどに見える。細く、小さく、清らで、誰かが守ってやらねば簡単に死んでしまいそうに見える。刀を抜くまでもなく、殺すことは容易いだろう。
「ざっくり切れておりますね」
その血と、そこに含まれた霊力に心が波立つ。それを表に出さぬように消毒液を染みこませたガーゼで傷口のあたりを拭う。そして、あたらしいガーゼを当てて包帯を巻いて止血する。
「…手際がいいな」
「弟たちで慣れておりますので」
「…。…そうか」
何を言おうとしてやめたかはわかる。彼女は善良であると同時に頭が回るのだろう。だから口にするのをやめた。
「次はこちらですね」
「後は、自分でやるからいい」
「満足に動けない程に消耗した身で何を言っておられるのですか」
室へ連れてくるのにも立てないようだったので私が抱き上げて運んだ。軽い失血状態ということだろう。
「だからといって、そう簡単に任せられるか」
「…そんなに私は信用なりませんか」
「…お前が、というか、私だって羞恥心はある」
そういえば、女性は肌を見られるのを嫌がるものだった。
「他意はありません。処置は迅速に行うべきでしょう」
「………手早く終わらせてくれ」
「はい」
袴を脱がせ、襦袢をたくしあげて太腿の傷を処置する。帯を緩めて腹を出させると、白い肌に幾つかの打撲痕が見えた。それに、彼女は下履きを付けていなかった。
「・・・」
腹の傷を止血し、打撲に軟膏を塗り込む。
「ふひゃ?!」
「おや、失礼」
よく見れば、腕脚にもぶつけた痣が幾つかあるようだった。
「どうせですから、他の怪我にも処置をいたしましょう」
「かすり傷だ。放っておいてもその内治る」
「女性の躯に傷が残ってはいけないでしょう」
「余計なお世話だ」
「遠慮は要りませんよ」
「…手当ては感謝するが、これ以上は不要だ。もう放っておいてくれ、一期一振」
彼女の唇で紡がれた己の名に、その言霊に含まれた霊力に、歓喜の情が湧き上がる。もっと、名を呼んで欲しい。
「嫌です」
「俺もこれ以上肌をさらすのは「主は美しいのですから、きちんとしないと」
躯に傷を残すなどもってのほかだし無駄毛や爪の処理も必要だろう。身繕いさえ満足に出来ないのであれば、私が代わりにやって差し上げないと。
何なのこれ新手の羞恥プレイか何かなの、どうすればよかったわけ?しにたい。
「はい、綺麗になりましたよ。荒れないように軟膏を塗ってさしあげますね」
行動が意味不明過ぎて如何反応すればいいのかわからない。何で俺、裸に剥かれたあげくに腋毛剃られてるの?いや、脇以外も剃られたけどね。そして何か保湿クリームらしきものを塗られてるんだけどね。なんなの。どういうことなの。
「次は脚ですね。少しこそばゆいかもしれませんが、我慢してくださいね」
何でシェービングクリームなんてものがあるんでしょうねぇ…(白目)。というか、何でやり方完璧なの、こわい。
「爪も後できちんと整えて差し上げますからね」
「…自分で、やれる」
「出来ていらっしゃらないから私がやっているのではありませんか」
無駄毛放置してたのはともかく、爪はちゃんと短く切りそろえてるはずなんだが。
「さて、あと少しなのですから、大人しくしていてくださいますかな、主」
「…っ」
え、ちょっ、待て、そんなとこまで
「動かないでください」
「っ、そんなとこ、さわったら、やだっ」
「大丈夫ですよ、私がちゃんと綺麗にしてさしあげますから」
手ぬぐいで拭ってまたクリームを付け直したりしつつ、丁寧に剃り上げられる。他所よりも念入りに、執拗と言っていいくらいに。
「ほら、綺麗になりましたよ」
とか言いつつ保湿クリーム塗るって、これは新手のセクハラなのか?全く意図がわからないよ?どういうことなの?
「…おや、少し濡れていますな」
「もうやだっ…そんなとこ、触ったらダメだもん…」
「ええ、主はまだ知らなくとも良いことですな。爪の前に衣を整えましょうか」
何でそんな滅茶苦茶満足そうな顔してんのこわい。ていうか、お前俺を何だと思ってるわけ。