「政府の方の万屋、生協、資料室のデバイスでのカタログ通販はカードから直接支払いができる。が、それ以外のところで…妖横町とか、出陣遠征先とかで買い物をしたい場合は、生協にキャッシュディスペンサが設置されてるから、そこで換金して支払うことになる。非番組は後で実際にキャッシュディスペンサを見に行くぞ」
「ちなみに、あんまり金遣いが荒いようだと私の方に知らせが入るようになってるそうだから、計画的に使ってくれ。まあ、多分毎日ちょっとしたおやつを買い食いする程度なら全然大丈夫だろうが」
正直、小鳥は貨幣価値に疎いし購買意欲も薄いのでよくわかっていないのだが。
「主君、質問してもいいですか?」
「ああ、何だ」
「これで買い物ができる、んですよね。具体的には、何が買えるんですか?」
秋田の質問に少し考え、小鳥は言う。
「店ではその場にあるものが相応の対価を払えば買えるだろう。場合によっては取り寄せになるかもしれないが。通販の方は確か、ざっとジャンル分けで家具、衣料品、玩具類、AV機器やCD類、食品類、装身具や化粧品、書籍類、その他、となっていたかな。実際に、商品を見た方が早いんじゃないか。後、通販の方は商品がすぐ手元には届かない」
正直、小鳥はまだ実際狭間の店に行ったことがないので何が売っているのかを知らない。
「まあ、さっきも言ったが、とりあえず狭間で甘味の買い食いはできる」
「主君、甘いものが好きなんですか?」
「甘けりゃいいわけじゃないがな」
「非番でどう過ごしたいか決まっているなら、そうすればいい。だが、どう過ごすか、思い浮かばないのであれば…とりあえず、己の好きなもの、楽しいと思えるものを探すために使って欲しい。無理にとは言わない。けれど、そうやって、好きなもの、楽しいもの、面白いもの、そういうわくわくするものを見つけられたら、私にも教えてくれると嬉しいな」
そう言って、小鳥は微笑した。
非番で生協にやってきたメンバーは江雪、一期、鶴丸、小狐丸、光忠、和泉守、同田貫の七人である。
「…まあ、とりあえず実践練習ってことで財布を買う事にしようか。別に、他に欲しいもん見つけたらそれも買っていいが、どれか一つ、自分が使いやすいと思う財布を探して買ってこい」
そう言って、小鳥は彼らに解散の指示を出した。そして、自身も物珍しそうに商品を見て回り始める。江雪は自然とそれに付き従い、残りの六人は隣と視線を交わした後それぞれに動き始めた。
「…財布を買え、とは?」
「いや、よく考えたら、引き出したお金を入れる財布がないと困るだろ。俺が用意するより自分の気に入ったものを買う方がいいだろうし」
お前もちゃんと自分の分探せよ、と小鳥は付け加えた。
「選んでは、いただけないのですか」
「面倒くさい。聞くなら、候補二つか三つ見つけてどうしても決められない時に意見を求めるくらいにしてくれ」
小鳥はスナック菓子を手に取り、こういうジャンクフードも偶に食いたくなるんだよなぁ、と呟いた。
「…それは、美味しいのですか…?」
「美味しいと思うかは好みだな。僕も別にそんな美味しい!と思ってるわけじゃないし」
買い物籠を取ってきた方が良かったかな、と呟き、小鳥は大袋入りのチョコなんかも手に取る。完全に自分の買い物をする体勢である。移動して中くらいの大きさの籠を手に取り、その中にお菓子を入れ、ヘアアクセコーナーで足を止めた。
「…カチューシャよりヘアピンかな」
後、ゴムかシュシュかなー、と呟き、真面目な顔で商品を吟味している。そして、同じように商品を眺めていた江雪に言う。
「僕は別に財布買わないからお前ちゃんと自分で探しに行けよ。何なら巾着袋とかでもいいし」
「巾着袋」
「妖横町とかで流通してるお金ってごついんだろ」
よく知らないけど、と小鳥は僅かに首を傾げた。
買い物を終えた小鳥は集合場所とした休憩スペースに同田貫と小狐丸がいるのを見つけた。余所の刀剣でないのを確認して歩み寄る。
「たぬきときつねはもう買い物は終わったのか?」
「おう。だが、俺は狸じゃないからな」
「ええ、終わりました」
小狐丸はそう言って買い物袋の中から財布を取り出して見せた。
「二人は決断が早いんだな。んー…他のやつが時間かかりそうなら先にキャッシュディスペンサの方に行ってみるか」
そしたらその後は自由時間にできるしな、と小鳥は付け加えた。
「おー」
「時は金なり、とも言いますからな」
「偶にはゆっくりぼーっとする時間もあっていいがな。此処じゃ落ち着かない上に風情も何もないが」
「風情、ねぇ…」
「どうせ眺めるなら、殺風景なところより花とか小動物とかの方が見てて癒されるだろ」
「大きな獣ではいけませぬか」
「でかいのは身の安全が疑わしい可能性があるからなぁ…嫌いじゃあないんだが」
「金額は、いかほどにすればよいのでしょう」
「うーん…まあ、適当に年齢×5~20くらいでいいんじゃないか。別に使い切る必要はないし」
「ふむ…」
寧ろそのための財布である。
キャッシュディスペンサは三つ設置されており、文字と音声によるガイド機能が付いていた。小鳥も3000円分程換金してみたが、手元のそれの貨幣価値がさっぱりわからない。こればかりは実際使って覚えるしかないだろう。
「…できたぞ」
「…すぐ使わないお金は財布にしまう」
同田貫が大人しく言われたとおりにすると、小鳥は背伸びをしてえらいえらい、と同田貫の頭を撫でた。
「!」
「おや、褒めて欲しかったからわざわざ報告してきたんじゃないのか?」
「・・・」
「私もできましたよ、ぬしさま」
「おう」
いい子いい子、と小鳥は小狐丸の頭を撫で、休憩スペースに目をやる。誰かいるのが見え、そちらに足を向ける。
「弟たちに菓子を買っていきたいのですが…」
「そうだな…茶請けとして誰でも食べていいぞ早い者勝ち、とするなら本丸の予算で買うが、君が個人的に買って渡したいなら君のお金で買えばいいんじゃないか。個人的な交友関係は個人の領分だしな」
「そうですか…」
「でもぶっちゃけ自分のおやつは自分のおこづかいで買えばいいと思う」
一期は苦笑のような表情を浮かべた。
「江雪、貨幣価値がわからないんだが」
「…あなたに分からないことは、私にもわかりませんよ…」
「デスヨネー」
とりあえず茶屋にでも寄っていくかー、と小鳥は呟いた。
「茶屋ですか」
「横町の方の和菓子屋でお茶請けを買うんでもいいんだけどな」
「ぬしさまは菓子が好きなのですか?」
「好きか嫌いかで言えば好きだが、なんでも好きというわけじゃないからなぁ。そうだなぁ、例えば、餡子を使った菓子は大体好きなんだが、粒餡はあんまり好きじゃないなぁ」
聞き返さないのは、碌な答えを返せないだろうことを何となく察しているからだ。
「小狐丸は…三河巻とか好きそう」
「みかわまき、でございますか」
「地元の銘菓なんだけど、こし餡が薄めの生地で三角巻されてる和菓子でね、まあ、饅頭の仲間だね」
「…地元、ということは、主は三河の人間なのですか」
「ああ。父方も母方も近い親戚は三河に住んでる生粋の三河の子だな。生まれてからずっと、同じ家に住んでた」
「そうですか…」
「江雪は羊羹とか好きそう」
「…嫌いでは、ないでしょうが」
「ぬしさまの一番好きな菓子はいずれでございますか?」
「え?うーん…僕、好きなもの羅列することはできても、どれが一番って決めらんないんだよねぇ。…まあ、よく食べるのはアーモンドチョコかな。個包装で大袋で売ってるやつ」
結構カロリーあるから、エネルギー補給できる気がするんだよねぇ。
「私もそれを食べてみたいです」
「んー、じゃあ、本丸に戻ってから一個あげるよ。(二パック買ったから大丈夫だろ多分)」
「約束でございますからね」
「・・・」
「私はもうまっすぐ本丸に戻るつもりだが、君らは好きにしていいぞ。時間を取らせてすまなかったな」
「何か用事でもあるのか?」
「資料室のデバイスのカスタムが終わっていない。それに部隊の様子も一応見ときたいしな」
本日の部隊長は白刃隊が薬研、第二部隊が秋田、第三部隊が五虎退である。自分たちの実力に見合った処に行くように、とは指示したが。
「そういや、今日の部隊長はチビどもばっかりだったな」
「無理な処に突っ込んで行ったりはしなさそうだったからな」
実力不足は周囲のものが補えばいいだけの話である。まあ、薬研はそこそこ練度が高いのだが。
「そういや、お前らもあんましゃかりきになって出陣しなくてもいいんだからな。とりあえず、全体で日課のノルマが達成できてりゃいいんだから。日課こなして遡行軍を適当に蹴散らしとけば上は文句言わないんだし」
「…そんな適当でいいのか?」
「尖兵の潰しあいなんていたちごっこだろ。大本を潰せなきゃ対症療法にしかならねぇんだし、無茶をするこたないだろ。どっちかといえば、有事に備えて全体的な練度を上げておきたいな」
各人のレベル差が激しいから、と付け加える。
「…資材を集めたりは、しなくていいのか?」
「今の量じゃ不安が有るのか?…どの程度あれば安心かの目安が私にはまだよくわからなくてな。暫くは鍛刀をしない予定だし、軍からの支給があるからお前らが無茶して大怪我して帰ってきたりしなければ枯渇することはないんじゃないかと思うんだが」
刀装も所持数一杯になってたからなぁ、と呟いた。
「え、いや…そんなことは…ない」
「大体、資材集めに行って怪我して手入れするんじゃ本末転倒ってやつなんじゃないか?」
「ん?ああ、おかえり、大将」
「ああ、ただいま…って、何で負傷してるんだお前。そんな大変なところに行ってたのか?」
「ちょっとばかししくじっちまってな。やっぱり遠戦を無傷で乗り切るってのは難しいな」
「…ん?刀装は?多少の傷なら肩代わりしてくれるんだろ?」
「短刀の俺たちはどうせ一個しか装備できないし、壊す確率高くて勿体無いって前の大将が」
「アホかー?!そりゃ、毎回壊してくる、なんてことになったら困るだろうが、刀装よりお前らの方が大事に決まってるだろうが!次からはちゃんと、全員自分の使いやすい刀装持ってかなきゃダメだからな。てか、今のところ刀装は余ってるって言っていいぐらいだから、壊しちまっても気にしなくていいんだからな。俺も刀装作る練習とかしたいし」
「お、おう…」
薬研は戸惑ったように目を瞬かせた後、肩をすくめる。
「…でも大将、
「何でそこで資材の心配をするんだ。資材も刀装も減ったら補給すればいいが、お前たちは折れたら取り返しがつかないんだろう。それに、痛いのはよくない」
「…痛いのはよくない」
「よくない」
力説され、薬研は失笑した。そのままツボに入ったらしく、笑い転げる。小鳥はきょとんとした。暫く笑った後、薬研は笑顔を浮かべて言う。
「わかったよ、大将。今度からちゃんと刀装持ってくし、怪我もしないように気をつける」
「うむ。…あ、他のやつにもちゃんと刀装持ってくように言わなきゃいけないのか」
「いや、俺っちがちゃんと言い聞かせておく。それに遠征の方はよっぽど遡行軍と戦うことにはならないからな」
「そうか。じゃあ頼む(とはいえ、次からは出陣前に持ち物チェックした方がいいかな)」
「主様、僕、可愛い服が買いたいんだけど…」
「ん?んー…じゃあ、通販で見てみるか?丁度、デバイスの調整も終わったところだしな」
「うん」
小鳥が少し横にずれ、乱は隣に座る。
「とりあえず、衣料品カテゴリから…女の子の服?」
「うん!」
「えーっと…(俺あんまりファッション詳しくないんだよなぁ)とりあえず、コーディネート見本の方から見ていくか」
「主様はどっちの方が可愛いと思う?」
「うーん…どっちも可愛いんじゃないか?右の方はちょっと動きにくそうだけど」
説明が魔法の呪文みたいでさっぱりわからん。
「…主様って、あんまり服装に興味ないの?」
「自分が着飾るのはあんまり…見苦しくなくて、動きやすければいいかなー、って。女の子っぽいのってあんまり似合う気しないし」
「えー、主様もこういうの似合うと思うんだけどなぁ…」
「正直僕は服より本とかゲームとかにお金を使いたい」
それに君みたいに自分に自信のある子の方が似合うと思うよ。小鳥は苦笑のような表情を浮かべた。
「主君、僕も買い食い、したいです」
「ん、今日はもう日課終わってるみたいだから、出陣も遠征も終わりにして狭間の方に行ってみるか?」
「はいっ」
「主様、僕も一緒に行っても、いいですか?」
「別に構わないぞ。
「はい」
「あ、それ、俺も行きたいです」
「私も同行してよろしいですか?主君」
「何の相談だ?大将」
何やら刀剣たちが集まってきたのを見て、小鳥は少し考えて手を挙げる。
「今から狭間のお店に買い食いに行く人、この指とーまれ!」
「はーい」
「えっ、えっ」
「はーい、ぼくもいきまーす」
カードを手元に持っていなかったものが取りに行っている間に、小鳥は掲示板の隣の伝言板に出かける旨を書いた。
「あれ、主どうしたの?何か買い忘れでもしたの?」
「秋田たちとお菓子の買い食いしてくる」
「…食べ過ぎて夕飯が入らない、なんてことにしないようにね?」
「私はそこまで食べる気はない」
苦笑する光忠に小鳥はジト目を返した。
同行メンバーは短刀が多いが、保護者も数人参加している。まあ、主に一期と江雪である。
「主君のおすすめは何ですか?」
「うーん、好みが同じとは限らないからなぁ。甘いの、辛いの、しょっぱいの、酸っぱいの、どれがいい?」
「えーっと…じゃあ、甘いのがいいです」
「んー…だったら、これとかどうだ?」
コアラのマーチを渡して、きのことたけのこは戦争が起こるからなぁ、と呟いた。
「…って、鯰尾、いくらなんでも多くないか?」
「そうですか?」
「…いや、別に、買い置きにするなら何ら問題ないんだが、買い食いはその日の内に食べきれる程度の量を買うものだろう」
「なんか、色々目移りしちゃって」
「まあそれはわからないではないが」
と言いながらポッキーを自分用に手に取る。
「主様、これって、どういうお菓子ですか?」
「ん?…サクサクのクッキーの片側にチョコを塗って固めたものだな。サクサクで甘い」
「複数人で買い食いする醍醐味は買ったものを一口交換することだろ」
と、小鳥は自分のポッキーと秋田のコアラのマーチを一つずつ交換した。
ちなみに、現在地は生協の休憩スペースである。
「だったら俺とも交換しようぜ、大将」
「あ、僕も、交換、したいです」
「いいぞ」
楽しそうに和気藹々お菓子を食べている短刀たち+αを見て、見た目年上のものたちは羨ましそうにしたり微笑ましそうにしていたりしている。
「…小鳥殿が自分で買う方がいいと言ったのは、こういう意味だったのですな」
「…そうかもしれませんね」
皆同じではないからこそ、このようなやり取りが生まれるし、自分で選ぶという楽しみがある。
「みんな楽しそうだねぇ。ちょっと変わった人だけど、やっぱりいい人だね、彼女は」
「…うん、すごく、いい人だよね」
「君も加わってくればいいんじゃない?」
「えっ、俺は…ああいう感じにはしゃぐのは、ちょっと」
と言いつつ、清光は羨ましそうにしている。青江は僅かに苦笑した。
「買い食い、楽しいですね、主君」
「いや、楽しいのは買い食いそれ自体より、寧ろ他のものと交換したりして共に過ごすことだろう。江雪風に言うと、和睦しているからだな」
「わぼく」
ちょっと遠くで江雪がえっ、とか言ってるが小鳥は気にしない。
「主さんそれもう一個ください」
「気に入ったなら自分で買ってこい」
「えー」
「後、お菓子を食べ過ぎて夕飯が入らなくなったら光忠に怒られるぞ」
「あはは、それは大丈夫ですよ」
「次は、他の人も誘いたいなぁ」
「寧ろ、一兄たちをこっち側に引っ張り込む方が先じゃない?」
「一兄、一緒にお菓子食べてはなかったもんね」
「折角ついてきてくれたのにねー」
「ねー」
秋田と乱が話しているのを薬研が苦笑して見ている。
「主さん、明日からの外出ってどう許可出してくれます?」
「うーん…とりあえず、非番の時は、晩ご飯に間に合うよう帰ってくればいいし、内番の日も内番が終わったら後は自由時間という扱いでいい。出陣遠征の日は昼休みと業後にちょっと散歩してくる位の時間を設ける、ということにしよう。それでどうだ?」
「わあ、何か思ったより自由になる時間があるんですね」
「最低限、という話だから、状況によっては今日のように業務を早めに切り上げるということもするぞ。私はあまり忙しないのは好きじゃないからな」
後で色々掲示物増やした方がいいかなぁ、と小鳥は呟く。
「大将は働き者だな」
「やるべきことはさっさと終わらせとかないと後で余計に苦労するってわかってるだけだ。宿題は先に終わらせて遊ぶに限る」
「…私は、交換する菓子は持っていませんが」
「大袋の菓子は皆で分けて食べるものだろ」
「・・・」
江雪は少し考えた後、チョコの小袋を袂にしまおうとする。
「チョコはあっためると溶けるから気をつけろよ」
「…この場で、食べた方が良さそうですね」
「ゴミはゴミ箱に捨てちゃってね」
小鳥はコーヒーメイカー(前任の遺物)からコーヒーをマグカップに注ぎ、砂糖とミルクを入れる。
「江雪は別にもう休んでもいいんだぜ?どうしても手伝って欲しいことはないし」
「しかし、これから、書類を片付けるのでしょう…?私もお手伝いしますよ」
「…助かるよ」
書類机の上には未処理の書類が積まれている。
小鳥が寝床でまどろみ始めた頃、戸が静かに、ゆっくりと開けられる。
「…主」
小柄な青年がそこにいるということは、わかった。だが、それが誰なのか、何をしに来たのか、ということは小鳥にはよくわからなかったし、眠くて考える気にならなかった。
「…こわいゆめでもみたのか?」
小さくあくびをして、小鳥は目を細める。
「…えっと」
そういうんじゃ、ないけど、と消え入りそうな声で青年は呟く。小鳥はぽんぽん、と自分の横を叩く。
「おいで」
「…いいの?」
「ひとりでねむれないなら、てをにぎってやるくらいならしてやるよ」
「…手を握るだけ、かぁ」
「…ねむくてむずかしいはなしはできん」
「…まあ、いっか。じゃあ、お邪魔します」
青年…清光は小鳥の横に滑り込む。そして、小鳥と手を繋いだ。
「…主、手が小さいね」
「おまえがおれよりでかいだけだ」
そう返して小鳥は目を閉じた。
「…(小さくて、華奢で、柔らかくて…か弱そうな手)」
少なくともそれは、戦う人間の手ではない。握力もあまり強くなさそうだし、目立つタコなんかもない。利き手ではない方の手だからかもしれないが。
「(…本当に、前の主とは全然別の人なんだなぁ)」
一つも重なるところがない。人間で、審神者であるという以外の共通点がない。
「(清らかで、美しくて、俺なんかが傍にいるのは烏滸がましい気分になる)」