刀剣たちと過ごす日々   作:ペンギン隊長

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兎の見る月9

 

 

「監査官に用事、というのは?」

「私物をほとんど持っていないらしい、というのが気になってね。…あの女、個人用のカード渡してなかったんじゃないか」

まあ、渡していたとしても、本丸を移るにあたって管理コードの変更が必要になるはずだが。

うちの連中のカードはスマホレベルまで機能拡張してデザインも各人の好みに合わせて手を加えている。デザインはともかく、機能は同レベルまで拡張する必要があるだろうな。

「成程、うちは物欲の薄い小夜でも気に入りの小物の一つくらいは持っているからな」

 

 

案の定、カードと通帳を預かることになった。まあ、書き換えとかは帰ってからだな。

…あ、倶利伽羅に一期の様子を聞いておこう。

『鶯丸から一期にメールしたらしいが、どうなっている?』

返事は程なくして来た。

『気持ち悪いくらいに張り切っている。どうにかしろ』

どうにかしろと言われても困る。

『無理だろう。一人二人ならまだしも、六人まとめて増えるからな。一応帰ってから声はかけるがそれまでは頑張ってくれ』

今は多分メールとかは反応しないだろうしな。薬研とかが多少抑えてくれるといいんだが。…そういえば、薬研をどう区別しよう。両方を別のあだ名で呼ぶか。

「主」

「ん」

まあ、細かいことは帰ってから考えよう。

 

 

 

小夜に三日月を任せて、厨に向かう。出迎えに来なかったということは調理中だろう。くーと蜻蛉切もそうだろうな。なんだったら誰か手空きのやつを手伝いに命じた方がいいかもしれない。…移動組は若干グロッキーだから休ませておいた方がいいだろうが。

「ただいま、一期、蜻蛉切、くー」

「おかえりなさいませ、主」

「お帰りなさい、主」

「…くーと呼ぶな。…おかえり」

「メニューはどうなっているんだ?」

「ハンバーグカレーとケーキを焼こうかと思っています」

一期がとてもいい笑顔で誉桜を振り撒きながら言う。

「そうか…」

「どうかされましたか?」

「うん、いや…原因は僕ではよくわからなかったんだが、移動組は個人差はあるがグロッキーになっていてな…鶯丸と薬研の見立てでは一時も休めば大丈夫だろう、ということではあったが、夕飯はあまり重すぎない方がいいのではないかと思ってな」

「弟たちが体調を崩しているのですか?!」

「落ち着け一期。見た感じ、乗り物酔いに近い症状だったし、お前が焦って向かったらそれこそ弟たちがたまげるぞ。随分会いたがっているようだったしな」

…可愛らしいエプロン装備・平服(若干ダサい)の一期が突然現れたらすごく驚くだろうな、多分。

「歓迎の馳走は明日にでも回した方が良いということでしょうか」

「どうだろうなぁ。まだ八つ時だろう?一時も休めば大丈夫だと言うなら、夕飯の頃には復活してるんじゃないか。量とかは多少加減した方がいいと思うが」

まあ、僕が先に言い出したんでアレだが。

「そういえば今日のおやつは?」

「…ずんだ餅だ」

くーが答えるってことはくーがメインか。

「だったら、おやつを持って行く時に様子を見て決めたらいいんじゃないか。広間の方にいるように言っておくから」

まあ、俺は作業が終わってなかったら広間にはいかないだろうが。

「わかりました」

 

 

 

連絡網の方におやつは広間で揃って取って欲しい旨を流しておく。

さて。僕はカードの調整変更をするか。所属本丸の変更に伴う管理コードの更新と、通信用その他のアプリの追加、基礎形状の変更、といったところか。デザインは渡す時に希望があれば調整変更すればいいか。管理コードはともかく、他は前作ったマクロ処理でどうにかなるかな。

 

 

…石切丸と小狐丸の分はないみたいだな。本人が持ってるのかな。後で聞いてみるか。

「主、おやつをお持ちしました」

「ありがとう、蜻蛉切」

まあ、くーが来るか蜻蛉切が来るか二択だと思ってたけど…この分じゃくーは来れない状態になってるかな。

「燭台切殿は大倶利伽羅殿と何かあったのでしょうか」

「さあ。少なくとも、前の本丸で面識があった(・・・)そうだから…」

きっと、折れたんだろうなぁ、あの言い方的に。和泉守も。

「何か騒動でも起こったのか?」

「…燭台切殿が大倶利伽羅殿と顔を合わせた途端に泣いて謝りながら抱きつかれまして…大倶利伽羅殿はおやつの載った盆を持っていた為に振り払うこともできずにそのまま暫く抱きつかれていた後、耐えられなくなったのか膝蹴りを入れられました」

「あー…」

想像がつく気がする。そこまで大袈裟じゃないが、鶴丸も似たようなことしてたし。

「一応それで燭台切殿も正気に戻ったようでしたが、その代わりに乱殿と五虎退殿が同じように泣き出してしまいまして、一期殿が抜刀しかける騒動に…」

「何やってるんだあいつは」

その場にいなくて良かったのか、いて止めるべきだったのか、迷うところである。

「今は皆落ち着いておやつをいただいているはずですが」

「そうか…体調の方は大丈夫そうだった?」

「まだ辛そうにしている方もいましたが、おそらくは」

 

 

いつもならおやつを食べながら端末をいじるなんて行儀の悪いことはしないのだが、なんとなくチェックした方がいい気がしたので見てみたら、鶴丸からメールがきていた。

「…ぶっ」

「どうされました、主」

「鶴丸から一連の写メがきてた」

仲良し!じゃねぇだろ。くーは完全に困惑→羞恥→憤慨、って感じになってるじゃないか。面白いから写メは保存するけどな!

『あんまり大倶利伽羅で遊んでやるなよ』

さて。俺もさっさと作業を終わらせて様子を見に行くかな。

「ご馳走様。美味しかったって二人にも伝えておいて」

「はい、わかりました」

 

 

 

結局、全部渡せる状態になるまで、合計で二時間程かかってしまった。

「ん?三日月、小夜、そんなところでどうした?」

「主に会いたくてな」

「主が集中している時は邪魔をしたらダメだから…」

「そうか…ああ、どうせだから今渡しておくか」

「何だ?」

「三日月用のカード。デザインは今から好きなように調整できるけど」

わかりやすいように背面に青地に白い三日月の絵を入れてある。

「好きなように、と言われても俺には良し悪しがわからぬぞ」

「とりあえず、大きさの調整だな。基本的には手に収まる大きさにしているんだが、それでも一人一人手の大きさが違うから違う大きさになるだろう?指で操作する時に押したいキーの隣まで押してしまうようでは使いにくいし。後は画面の大きさも見やすいサイズってあるし。まあ画面をかなり大きくする場合は投影機能をつける方が多いんだが」

鶴丸とか和泉とか一期とかな。太郎と小夜のは確か、カメラ機能に大目に容量が割いてあるし、秋田と厚はゲームアプリを幾つも入れていた。薬研はネット通信を強化してたかな。

三日月にカード端末を持たせて、とりあえず最低限使用に支障のないサイズまで拡張する。

「文字のサイズはこれで見やすいとか見にくいとかある?」

「うむ…少し文字が小さいように感じるな」

「少し?…じゃあ、これくらいでどうかな?」

「うむ、見やすくなったな」

アプリとかは実際に使ってみて判断してもらった方がいいな。

「このアイコンを触ることでアプリが使える。こっちから順番に、通話、メール、通帳、カメラ、連絡網、チャット、インターネット、タイマー、メモ、テトリスになっている。アプリはネットからダウンロードして増やせる。後、此処で設定をいじると表示を変えたりできる」

「うーむ…」

「まあ、使ってりゃその内覚えるだろ。とりあえずメールと通帳と連絡網だけ覚えてくれればいい」

蜻蛉切はそれと通話とカメラをたまに使う程度、くらいしか端末を使わない。まあ別に本人の好みの問題だからそれでいいと思う。

「メールは端末同士で(ふみ)のやり取りをする機能、通帳は買い物の時の支払いとキャッシュディスペンサからお金を出す時と使ったお金とかの記録を見る時に使う機能で、連絡網は同種の端末アプリを持ってる同士でグループを作って文字や絵とか音とか映像とかのデータのやり取りができる機能だ」

「このめぇるで主とやり取りをすることもできるのか?」

「ああ。俺の端末のアドレスは入れてあるからな。…他のやつとはちゃんと交換してもらわなきゃならないが」

ちなみにこの端末、霊力で充電できる。呪術すごい。

「ふむ。それは覚え甲斐があるな」

「とりあえず俺は今から他の子にもカードを渡しに行くから」

「…主は俺との約束を果たそうとは思わぬのか?」

「俺は夏休みの宿題は終わらせられるものは七月中に終わらせておくタイプだ。その方が気兼ねなく遊べるからな」

「…主は今まで、あまり遊んでいなかったよね」

「油断大敵、ってな。これからはもうちょっと気楽に過ごせるようになるだろうから、小夜も偶には付き合えよ」

よしよし、と小夜の頭を撫でると、うん、と小さな返事が聞こえた。

 

 

 

カードを全員に渡し終わったので、石切丸と小狐丸に確認してみることにした。

「石切丸と小狐丸はカードを自分で管理しているのか?」

「一応持ってはいるけれど、ほとんど使ったことはないかな」

「ぬしさまと共にいた時から使っているものですからね…死守いたしました」

「そうか。…とりあえず、管理コードの更新と、できたらアプリの追加をさせてもらいたいんだが」

「私は構わないよ。他の子たちのものと同じようにしてくれて」

「私は…形は変えないでいただきたいのですが」

「わかった。じゃあそうしよう。貸してくれるか?」

 

 

 

「白梅殿は機械に強いんだね」

「専門はソフト方面だからハードがぶっ壊れたりすると自分じゃどうにもできないけどな。自作とかもあんまりやらないし」

理由は興味が湧かないからである。

「これくらいの大きさが使いやすいんじゃないかな、と思うんだけど」

「確かに、私にあった大きさのようだね」

大太刀サイズは俺にはかなり大きい。…いや、蛍丸は大太刀だけど短刀とそうサイズが変わらないけど。

「後のカスタムは自分でやってくれ。まあ、時間のある時なら言ってくれれば手伝うけど」

放っておくのもあれだしな。

 

 

 

 

 

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