刀剣たちと過ごす日々   作:ペンギン隊長

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兎月前提、初期刀三日月別ルートIf 祟り三日月とブラック引き継ぎ
より正確にはbadend√前提平行世界 神隠し√確定済み
そういえば書いてなかったが海軍の方は某艦娘のやつになっている


お月様のいう通り1

 

 

 

「三日月宗近。うちのけが多い故、三日月と呼ばれる。よろしく頼む」

青みがかった長い黒髪を揺らし、その人はそう言って微笑んだ。

「えっと、よろしく」

「そなたは何という名だ?」

「え?えっと、俺、まだ正式には審神者じゃなくて、号は決まってないんだ」

「ほう。…では、俺が決めても良いか?」

「え、う、うん?」

「三十八番!」

試験官の一人が焦ったように俺の割り当てられた番号を叫ぶ。三日月は優雅に、口角を弦月のように吊り上げて笑って言った。

「そなたの名は、ハクトだ。白い兎と書いて、白兎」

「白兎」

悪くない号だと思う。兎は嫌いじゃない。猫の方が好きだけど。

「どうだ」

「悪くない」

そう答えた途端、何故か躯からがくっと力が抜けて、座り込みそうになって慌てて踏み止まる。

「大丈夫か?主」

「…ああ」

三日月が私を支えるように背に腕を回す。

…そういえば、最終試験で使う依代刀は敢えて、長時間の顕現を保てない仕様になってるって話じゃなかったか?

「・・・」

「何だ?」

…何でこいつ顕現が解ける気配がないんだろう。

「俺に見蕩れておるのか?主」

「いや、別に」

「ははは、照れずともよいのだぞ」

「その依代刀、存在が安定しきらない仕様だって聞いた気がするんだけど」

「主との契約がしっかりと結ばれた故、問題はない」

「うん…?」

 

 

結局、三日月の顕現が解かれることはなく、正式に審神者になった俺が講義を受ける間、軍部預かりになる…というのを本人が拒否して一緒に講義を受けることになった。駄々っ子か。

「…審神者の業務(初歩)の講義なんて、君には退屈なだけだろうに」

「俺が傍におればそなたを傷つけられる者はおらぬからな」

何か時々、三日月と絶妙に会話が噛み合ってないな、と思う。電波なんだろうか。

「講義を受けるだけなのに何をそんな心配する必要があるのさ」

「・・・」

三日月は意味ありげに微笑う。なんなんだ。

 

 

 

 

一週間程で試験を突破したが、何故か配属される本丸が決まってないとかで陸軍支部に留められることになった。配属先が決まるまで、先輩に呪術を教わることになっている。先輩と言っても、その人は審神者ではないそうだが。

…長くなるようなら、一回実家に戻って話したいもんである。一度配属されると、あんまり頻繁には帰れなくなるらしいし。

「正直、白兎君は呪術師としても将来有望だと思うから、審神者じゃなく陰陽寮の方に来て欲しいぐらいだけどね」

先輩はそう言ってほけほけと笑う。

「俺は感覚的に適当にやってるだけだし、そういうこと言われても困るんですけど」

「今更、こっちに引き抜けないことは知っているよ。…うん、本当残念だなぁ」

んなこと言われても。

「で、一時帰宅だっけ?呪術も基礎はさくっと習得したわけだし、申請したら一泊くらいまでは許可通させるよ。刀剣は置いて行って欲しいけど…無理だろうねえ、その様子だと」

まあ、下手するとトイレとか風呂とかも一緒に入ろうとするからな、こいつ。

「人間どもが俺から主を奪わん保証がないからな」

「祟り神から奪おうとするとか度胸がある通り越してただの馬鹿だけどね」

人の耳塞いでにこにこ何話してるんですかこの人ら。何かの悪巧み?

「まあ、簡単に刀を抜けないように封印を施した上で、仮免所持してればいけるんじゃないかな。非常に目立つだろうけど」

「…甘んじて受け止めます」

すごく嫌だが。

「ははは、両親への挨拶か。心してゆかねばな」

この人は一体何を言っているんでしょうねぇ…。…ママンたち宛に、名前を呼ばないようにあらかじめメール送っとかないとやばい気がする。

「申請は…事務局の方にすればいいんですか?」

「ああ。日付込で、平日に申請したらいいと思うよ」

「わかりました」

じゃあ、火水くらいで申請するか。

 

 

 

「あまり人がおらぬな」

「田舎の平日通勤ラッシュ後の電車なんてそんなもんだよ」

まあ、その分あんまりジロジロ見られたりしないで済んでるからいいと思う。一応、認識操作系の呪術で三日月に注目が集まりづらいように操作してはみたけど、効果があるのかないのかよくわからないんだよねぇ。

「主、向こうのキラキラしているのは何だ?」

「ん?…ああ、あれは海だよ。後で海岸まで出てみるか?」

「うむ。そなたが親しみを持っている場所を見ておきたいな」

「はは。今の季節じゃ、入るには向かないから、行くとしても砂浜までだけどな。ここ数年は全然行ってないし」

内海だからか、深海棲艦が出たという話はないとはいえ、昨今は海に近づくべきではないとされている。自然と足が遠のいていた。…そもそも引きこもり気味だったということもあるが。

「っていうか、潮風で錆びたりしないのか?」

「少しであれば大丈夫であろう」

 

 

地元の無人駅で電車から降りる。ほんの数週間で変わるはずもない、昔と同じ寂れた駅だ。それだけに、三日月の佇まいが、酷く不釣り合いに見える。…いや、三日月がいて違和感のないところって京都とかの古都然としたところくらいなんだろうけど。

…三日月にその内外出用の現代衣装を用意しようか。こいつが僕が何処に行く時にも同行しようというなら、そうした方がいいだろう。

「…どうした、主よ」

「…いや、何か三日月の格好って不便そうだし、これからも一緒に出かけるなら、何か着替えの洋服とか買った方がいいかな、って」

「…ふふ、そうか」

…美人だし、適当なもん着てもそれなりに見えるんだろうなあ。

 

 

東回りの道を行った方が家に近いのだが、海に寄っていく為に西回りの道へ向かう。踏切を越えて道なりにまっすぐ行けば、すぐ海だ。

「これが海か」

「観光で売ってるわけじゃないし、そこまで綺麗じゃないけどね」

とはいえ、夏になれば海で遊ぶ人もいるくらいには綺麗なのだが。

「…懐かしいなあ。昔は石ひっくり返して魚追っかけたりしてたっけ」

まあ、ゴミになってしまったので申し訳ないのだが。子供だったから考えなしだったんだよな。

「石の下におるのか?」

「潮がちょっと満ちてるくらいの時にあの辺の石とかひっくり返すと偶に…ハゼの仲間かな?小さくてあんま食いでがなさそうだし美味くもなさそうな魚がいたんだ。逃げられると追っかけたくなるだろ。当時はヤドカリとかカニとかも追っかけ回したし、草むらじゃあバッタとかカマキリとか捕まえてたし、用水路のカエルとかオタマジャクシとかも捕まえてたからなぁ。やんちゃだったんだ」

今はそこまででもないが。

「ううむ、想像ができぬなあ」

「昔は髪の毛もショートだったし、そこそこ行動的だったんだよ」

…そろそろまた髪の毛切ってもいいかもなあ。若干鬱陶しくなってきた。三日月の髪も何かすごい長いし。

 

 

暫く海を眺めて、ヤドカリをキャッチアンドリリースしたりした後、家に向かう道をゆく。久しぶりに歩く道は、だからといって然程変わっているわけでもなく、懐かしいと思う。

「…ん?」

「どうした、三日月」

「…いや、何、ということもないのだが」

三日月の視線をたどり、あちらに何があったかを思い出す。あちらの方には、確か公園とお宮さんがあったはずだ。付喪神ということで神社に思うところがあったりするんだろうか。お寺はそうでもないみたいだが。

「気になるなら寄ってく?大したものはないと思うけど」

というか、俺が気になってきた。公園の遊具とかどうなってるだろう。

「、白兎」

お宮さんの方は対して変わってないみたいだな。特に何もない。

「主、一人でゆくでない」

「何もないよ?…ブランコとか使えるかなぁ」

「…そなたも自由だなぁ」

「いっつも自由なのは三日月の方じゃん」

…うーん、相変わらず寂れてるなあ。遊具が撤去されてないだけマシ、って感じ。鉄棒小さくて逆にやりづらい。…いや、こっちの方はそうでもないかも…俺あんま背が伸びてないもんなあ。

何て呼ぶのか知らないが、座って揺らすタイプの遊具の上に乗る。揺らすとギィギィと金属の軋む音がした。うーん、懐かしいなあ、この不協和音。

 

 

「お前、あの子に何をした?」

「何?何故お前に話してやる必要がある。主に背景程度の扱いしかされておらんようなものに」

「あ゙?」

二人が睨み合っているところに、金属の軋む不協和音が響く。思わずそちらを見る。どうやら白兎が遊具で戯れているようだった。

「…あーちゃん可愛い、相変わらずKY可愛い…」

「主は本当に自由だなあ」

飽きたのか、遊具からぴょんと飛び降り、白兎は三日月が社の前に留まっているのを見て首を傾げて駆け寄った。

「どうしたの、三日月。何かあった?」

「…いや、何もないぞ?」

「ふぅん」

白兎は社を見上げる。

「変わってないものばっかだなぁ。俺、小さい時よくこの辺で遊んでたんだ。そこの手すりのとこ登ったりとか」

「それはやんちゃだなぁ。誰ぞに怒られたりはしなかったのか?」

「んー…あんまり大人が来たりとかしないし、特に怒られた覚えはないかなぁ。それに、木のところに登る時はちゃんと靴も脱いでたもん。土足で登ったりはしてないよ」

「そうか、そうか」

三日月は白兎の頭を撫でる。白兎はくすぐったそうにした。

「怒るわけがないだろう。子らの笑顔を見て喜ばぬ神がいるものか」

そう言って青年が白兎を愛おしげに抱きしめる。

「?!」

白兎は反射的に青年に肘鉄をいれ、距離を取る。

「え、何?新手の変態?春の陽気に誘われるにはまだちょっと早いし僕より三日月の方が美人だよ?!」

「はっはっは。よし、俺が斬ってやろう」

「現世での刃傷沙汰は御法度だってば」

 

 

父母の車は両方ともない。まあ、父さんは仕事だろう。母さんも出かけているのか。とすると、家にいるのは祖父母だけ、だろうか。…。…うん。

「ただいまー」

「邪魔をする」

 

 

「…不思議な感じがするな」

「ん、うちの建物のこと?…半端に古いだけだよ。一応、100年くらい前にはリフォームしてるらしいんだけど、その時の家主が建て替えを嫌がったらしいんだよね。まあ、ここ200年くらいの洋風建築は100年もたないらしいから、そういう意味じゃああながち間違った選択でもないのかもしれないけど」

「それでそなたも"れとろ趣味"になったのか」

「かもね」

仏間に仏具があったので、どうせだから線香をあげておく。ちゃんとしたやり方とか知らないから適当だけど。線香の匂いは嫌いじゃない。

「俺もいいか」

「どうぞ」

付喪神はそういう作法を知っているものなのか、三日月の所作に迷いはないし優雅だった。何やっても絵になるとか美人は得だな。

表の方で車の音がする。どうやら、母が帰ってきたようだ。

「何だ?」

「お母さんが帰ってきたみたい」

 

 

「お母さんおかえりー」

「あら、帰ってきてたの。おかえり」

「邪魔をしておる」

「…どちら様?」

「俺の初期刀」

「三日月宗近という」

「美人さんね。私はこの子の母です」

母さんはそう返し、少し心配そうな顔をする。

「…ちゃんとやっていけそうなの?」

「まだ本丸に配属されてないし、なんとも…」

まあ、大丈夫、とは言い切れないよなあ(目逸らし)。

「主の身の安全の話であれば、俺が傍にいる限り心配する必要はない。母御よ、白兎のことは俺に任せるが良い」

「…なんだか、娘を嫁に出す気分だわ」

「縁起でもないこと言わないでよお母さん」

俺は三日月に嫁入りするつもりはないぞ。

「…主は俺の許に嫁入りするのは嫌か?」

「うん」

「・・・」

不満そうな顔をするな。

「恋慕っているわけでもない男の嫁になどなる気はない」

「つまり、そなたが俺を好きになれば良いわけだな?」

「あら」

…性質の悪いのに目をつけられてた…?

「理屈としてはそうなるけど肯定しかねる」

「何故だ」

「手のかかるやつの面倒を見るのは俺の役目じゃない」

というか、神様な時点でアウトである。人間辞める気ないし。

「ほう…」

「あらあら、随分仲良しになってるのねぇ」

「(虚を突かれた顔)」

「お母さん、さらっと爆弾ぶっこむのやめて」

「だって、あーちゃん、本当に嫌な相手には必要最低限にも口を開かないでしょう。一言も口をきかないことだって少なくないし」

「それは…否定しないけど」

友情方面でなら仲良くしたいと思っているし。

 

 

「しゃーっ」

「え」

「…ふむ」

「どうした、みーちゃん」

誰にでも懐きにいくくーちゃんは普通に三日月の足元にまとわりつきに行ったが、みーちゃんは激しく威嚇している。

「…獣にはわかるのだな、俺のことが」

何言ってんだこいつ。中二病か。くーちゃんはどうなるんだ。…いや、くーちゃんは野生の欠片もないからなあ。しっぽ踏まれても反応ないし。撫でなくてもゴロゴロ言うし。

「大丈夫だよ、みーちゃん。三日月だって流石にとって食ったりはしないから」

よしよし

 

 

「…うわあ」

「うわあ、って何。人の初期刀に対して」

「…うん、まあ、あーちゃんは零感だもんね。身の危険とか感じてないならいいんじゃない、多分」

「・・・」

どういうことなの。というか、

「あんた霊感キャラだっけ」

「あーちゃんとかえーちゃんとかが傍にいると大体全く見ないけどね」

私とえーちゃんに何があると言うんだ。そして初耳だ。

 

 

 

「あんた、うちのあーちゃんに何したの」

「何、とは?」

「昔っからあーちゃんに憑いてたもの(・・)が消えて、あんたのまとってるものと似たものが付いてる。何かしたんでしょ」

「…はは。他者の気配(・・)がこびり付いていたのが不快だった故、俺のもので塗りつぶしただけだ。主に害をなすつもりはない」

「あんたたちの基準で、の話でしょ。初期刀だろうが、神様だろうが、あーちゃんを悲しませたらただじゃおかないからな」

「…留意しておこう」

 

 

「なんだか、すごく殴りたい顔してるね」

「えっ」

「ははは、俺はそう簡単に殴られるつもりはないが」

「そっちこそうちのあーちゃんに気軽に手出ししたら生きてることを後悔させるよ?」

「えーちゃん何物騒なこと言ってるの」

というか、何故平然と喧嘩を売った。

「だってあーちゃん、恋人付き合いどころか人付き合いさえほとんどしないのにいきなりこれとか、自殺行為だと思うよ?ただでさえ人付き合い苦手なのに」

「余計なお世話だ」

…間違ってないだろうけども。

 

 

 

「主、手伝ってくれ」

「…お前、いつもはどうしてたの」

「ははは、お洒落は苦手でな。いつも手伝ってもらうことになる」

苦手なら何でそんな格好してるんだ。手を借りる前提なのか。

「俺もお洒落は得意じゃねぇなぁ」

てか、この服何がどうなってるの?

「いつもなら、式がよしなにしてくれるのだが」

「…管理も面倒くさそうだよな」

洗濯機で洗えるのか?これ…。

 

 

 

 

 

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