三月にはなってないくらい
相変わらずなかなか配属先が決まらないので、鍛刀したい旨の要望を出した。このままじゃ三日月が連携できないマンになる。…いや、増えても駄目かもしれないけど。でも真面目な話、太刀一口ってどうなんだろう。武士だって二本差とかにしてたんだろ?
まあ、そんなこんなで、二口分の鍛刀許可(依頼札)をもらって、軍基地内の鍛錬所(主に初期刀用の依代刀を作る為に使われる)に来た。
「…そなたには俺がいるだろう」
「でも、本当は六口一隊の部隊を組むものなんだろ?それに、一人より三人の方が戦う時も死角が減るから怪我もしないで済むだろうし」
刀装を持ってるからって、多勢に無勢って言葉もある。
「…そなたがそう言うのであれば」
「今日はよろしくね」
鍛刀の式神に依頼札を渡す。此処では一度に五つまで作れる仕様になっているようだが、まあ私には関係ないな。
えーと、資材の量は…よくわからないから式神さんにお任せしよう。
「…二十分と一時間半か」
一応、手伝い札もあるので、使ってもいいのだが…うん、短い方はこのまま式神さんを見てよう。で、短い方が終わってから長い方に札を使おう。
「待つのか?」
「俺、刀作るところって見たことなかったんだよね」
二十分で完成したのは短い刀…短刀だった。
「かしこみもうす」
鯉口を切ると、刀剣男士が実体化する。
「俺は愛染国俊。俺には愛染明王の加護がついているんだぜ」
「俺は白兎。よろしく、愛染」
「国俊でいいぜ。それで、俺は何と戦うんだ?それとも、祭りか?」
何故その二択になるのか解せぬ。
「んー…もう一口鍛刀してるから、話すのはそいつが顕現してからでいいか?」
「おう」
まだ一時間程時間が残っている方に手伝い札を渡す。すぐに鍛刀が完了し、打刀が差し出された。国俊の時と同じように刀剣男士を顕現させる。
「…宗三左文字といいます。あなたも、天下人の象徴を侍らせたいのですか?」
「別にそういうのではないが。俺は白兎だ。よろしく、宗三」
「そう…ですか」
宗三は三日月を見て、ああ、と声を漏らす。
「あなたはお飾りの刀が好きなのですね」
「違うけど?…いや、俺刀は詳しくねぇぞ。ちゃんと知ってる刀剣なんてへし切長谷部と蜻蛉切くらいだし。いや、刀剣男士として知ってるわけじゃないが」
「へし切長谷部、ですか」
「黙って聞いていれば俺をお飾り呼ばわりとはな。…主、斬ってよいか?」
「味方を斬るな」
意外と沸点が低いのか、地雷だったのか。というか、知り合いなんだろうか。
「んーと…ちょっと今俺らの扱いは特殊になってるから話がしたいんだが…一旦場所を変えるか。まあ、茶でも飲みながら落ち着いて話をしよう」
寮の方の自室に戻る。
「茶ァ淹れてくるから適当に座っててくれ」
「それ、見てていいか?」
「…面白くはないと思うが別にいいぞ」
…まあ、三日月と宗三は和やかに話をしそうにはないからな…。
キッチンスペース(あまり使わない。基本食事は食堂の方で取る)の方に入って、お茶の用意をする。
「お茶請けは…んー、国俊はどれがいい?」
「どれって言われてもわかんねぇんだけど」
「…あー、刀は食事しねーもんな」
…三日月はあんまりそういう素振りを見せなかったから意識してなかったが。
「うーん、じゃああんまり味の濃すぎない奴の方がいいかな。このお饅頭にしよう」
「それ、美味いんだよな?」
「態々不味いもん食うようなマゾじゃねぇからな。こいつはこし餡の入った標準的なやつだ」
「へー」
四つ分の湯呑を出してお茶を注ぐ。その内専用の食器も用意するか。
「よし。お茶請けの方は運ぶの手伝ってくれるか?」
「いいぜ」
リビングスペースの方には、三日月と宗三が視線を合わせないように、斜め位置で椅子に座っていた。
「…。お茶、淹れてきたぞー」
「(国俊は宗三の隣に座ってくれるか?)」
「(別にいいぜ)」
目線で会話し、俺と国俊も机につく。
「お茶、熱いかもしれないからやけずらないように気ぃつけろよ」
お茶とお茶請けをそれぞれの前に置いて椅子に座る。三日月はさっさとお饅頭を食べ始めた。いや、別にいいのだが。俺も茶を飲む。
「これが甘いってやつか」
「おう。茶は…渋みと苦味、になるのか?」
後、旨み、になるのか?よくわからん。
「それって美味いのか?」
「好みによるんじゃね。俺は嫌いじゃねーけど」
緑茶より麦茶とかほうじ茶の方が好きだが。
「俺は好きだぞ」
「そういえば、あんた誰だ?」
「俺は三日月宗近。主の初期刀だ」
「…初期刀?初期刀とは打刀が務めるものではないのですか?」
「打刀じゃない人も偶にいるらしいぞ。まあ、審神者が何を喚ぶか、って話だしな。俺が何を狙ったというわけでもないが」
「はっはっは」
「この部屋に来るまでで多分わかったと思うんだが、此処は本丸じゃなくて現世だ。一応、俺が審神者になってひと月程になるんだが、未だ配属先が決まらないらしくてな」
「…ってことは、祭りも喧嘩もなしなのか?」
「戦力を遊ばせとくのも惜しい、って陰陽寮の方の任務を手伝ってるな。まあ、平たく言えば妖怪退治ってやつだ」
「ふーん」
…ああ、そうだ。
「一応、刀装を渡しとくか。確か、短刀が装備できるのは歩兵系と遠距離のやつで、打刀は軽騎兵とかだっけ?」
どれがいいかなー、っと。とりあえず、国俊には重歩兵と弓兵渡しとくか。宗三には…投石と軽騎兵と盾兵?
「どれを装備したらいいんだ?俺一個しか装備できないぜ?」
「そうなの?んー…じゃあとりあえず重歩兵かな。弓じゃ装甲薄くなるし」
「…僕も、二つしか装備できませんが」
「じゃあ盾と投石」
「一応、戦に出す気はあるんですね」
「働かざる者食うべからず、ってな。戦わせる為に喚ぶんだ、戦わせないわけがないだろ。残念だが、俺の刀は今此処にいる三口だけだから、遊ばせておく余裕はないぜ?」
といっても、然程忙しくもないのだが。
「おかしな方ですね。戦力としてなら、もっと頼りになる刀があるでしょうに」
「別に誰を狙って鍛刀してるわけでもないし、会ったことないやつは知らないからそんなこと言われても困るんだが」
「主が気に入らんと言うなら俺が折ってやるが?」
「物騒な方ですねぇ、そんなに僕が気に入りませんか」
…もしかして単純に仲悪いんだろうか、こいつら…。
「…あーもう、喧嘩するなとは言わないが、刃傷沙汰とか器物損壊とかは勘弁してくれよ…」
「なあ、このお饅頭、もう一個もらってもいいか?」
「…もう一個な。間食しすぎると夕食が入らなくなるかもしれないからな」
…いや、おやつが終わったらシミュレーターの訓練に行くか。いきなり実戦に行くよりはいいだろうし。
「よっしゃ」
…国俊は素直ないい子だなぁ。
てか、よく考えたら三日月と宗三の間にはそれなりのレベル差があるんだから、戦闘能力的な意味じゃ三日月の圧勝確定みたいなもんなんじゃないか…?
「何だ?これ」
「訓練用のシミュレーターだよ。一定空間を区切って、そこに仮想空間を形成して内部の空間に手を加えることで望む結果を引き起こす、っていう呪術を応用した技術の組み込まれた機械で…」
「…???」
「…まあ、ざっくりいうと、これを作動した状態で内部で戦闘して、終了後に装置を停止した場合、負った傷はなかったことになる。経験は勿論積めるんだけどな」
「…つまり?」
「訓練で負った怪我はなかったことに出来るし、死なない」
「へぇ、そりゃすげーな」
「戦闘中は当然怪我をすれば苦痛を伴うことになるがな。まあ、言葉で言うより使った方がわかるだろ。ぼちぼち始めるぞ」
訓練難度はイージー、形式はサバイバルに設定。エネミーコードは…とりあえず妖メインのランダムでいいか。
「さて、心の準備は出来てるか?訓練を始めるぞ」
今回のフィールドは木々に囲まれた神社の境内、か。背面の警戒も一応必要かな?鳥居側の参道は階段になっているようだけど。まあ、俺はいつも通り安全位置の確保を優先するとしよう。ボスは多分社内に待機しているだろうが、雑魚は周囲の林からも出てきそうだな。
「正面の社への警戒はまずは最低限でいい。敵が姿を現したら速やかに迎撃に移りたい。左右の林に気を配ってくれ。後方の防御は俺が補助する」
「こちらから打って出はしないのか?」
「国俊と宗三がどの程度動けるか、どの間合いが動きやすいか、を確認してからだな」
「つまり、白兎が俺の力を把握したら自由に動いていい、ってことだな?」
「装甲が薄いんだから一人で突出するなよ。無限湧きではないが、ボスを倒すまで敵が出現し続ける仕様になってるから」
「それは、骨が折れそうですね」
「難易度低めにしたからまあ、死ぬような目には合わないはずだ。…多分」
「俺は一人でも切り抜けられる難度だろうしな」
挑発するようなこと言わない。
「さて、敵が姿を現したようだぞ」
「それぞれ己に近い位置の敵を優先して、数を減らすよう動いてくれ」
国俊は他二人より格段に高い機動と手数の多さからの超接近戦タイプ。三日月は全体的に能力が高水準の中距離タイプ。宗三は可もなく不可もなく、やや打たれ弱い近接タイプだが刀装で遠距離の牽制も可能、と。
となると、有効な陣形、戦術は…
「国俊、本陣から離れすぎない程度に自由に突っ込め。宗三は投石で牽制しつつ左翼の対処。三日月は二人のサポートと右翼の警戒を頼む」
とりあえずしばらくは二人の練度をあげないとな。
愛染はALL50で実際出たやつ