刀剣たちと過ごす日々   作:ペンギン隊長

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罪業If いわゆる見習いちゃんによる乗っ取りネタ 我儘お嬢系列JK


強欲の鎖

 

まあ別に、刀剣の注目が俺から離れること自体は望むところである。肉欲なんて向けられたいものじゃないし、過剰に絡まれるのは勘弁してもらいたいもんである。

…しかし、この本丸に見習いの研修を行わせるって、アホなんだろうか。一応、あいつらの所業と前任のやらかしたことはこんのすけを通して報告されてるはずなんだが。本丸は一応正常に戻ったとはいえ、刀剣が正気に戻ったかといえば、そうでもない気がするんだがなぁ。

「…まあ、無理に送り込まれてきたわけじゃないなら自己責任か」

大体、そもそも俺もまだひよっこの域を出てないってのに。

 

 

 

「朝花です、今日からお世話になりますv」

あ、こいつ絶対仲良くなれないタイプだ。

「…小鳥だ」

「折角ですからぁ、刀剣の皆さんに紹介して欲しいんですけどぉ」

「自分で聞け。適当にお目付け役はつける。…こんのすけ、誰が適当だ?」

「………鶴丸国永か、一期一振あたりでは?」

…鶴丸は比較的まとも、一期はスイッチ入るとアレだが普段は面倒見のいいお兄ちゃん、か。んー…とりあえず頼むだけ頼んでくるか。

「何処へ向かわれるのですか?主」

「鶴丸か一期のところに。その間見習いの相手をしてやっていてくれ、長谷部」

「……主命とあらば」

「…こんのすけ」

「いってらっしゃいませ、小鳥様」

「ああ」

 

 

「君の方から訪ねてくるなんて珍しいな。何かあったのか?」

「軍の方から研修に見習いが送られてきてな。俺は絶対仲良くできないタイプだから代わりにお目付け役をしてくれないか」

「…軍は馬鹿なのか?」

「馬鹿なんじゃないか?研修先が此処なのはともかく、研修そのものは本人も希望してやってるようだったがな」

「…君は配属前に何処かの本丸で研修を受けたりはしていないんだよな」

「呪術とかの講習はあったが軍本部だったな。だがまあ、俺は一般採用枠だし、キャリア組とかは別プログラムなんじゃね?多分」

「…。…引き受けよう。他に務まりそうなのもいないだろうしな(…それに、どのような意図を持っているかが気にかかる)」

「こんのすけは一期でも務まるんじゃないか、って言ってたが」

「…こんのすけはあいつの性癖を知らないだろう」

「スイッチが入らなきゃ面倒見のいい兄ちゃんだからねー」

 

 

「おや、小鳥殿、このようなところで一体どうしたのですかな?」

「一期か。いや、用は果たしたところだ。これから執務室に戻る」

「鶴丸殿を連れて、ですか?」

「少し任せたいことがあってな。長谷部を待たせてるし、用がないなら後でいいか?」

「…私もご一緒してもよろしいかな」

「…好きにしろ」

「そういたします」

一期はにこりとロイヤルスマイルを浮かべて二人の後ろに並んだ。

 

 

「見習い殿のお目付け役を頼まれた鶴丸国永だ」

「朝花です。よろしくお願いしますぅ」

媚を売る視線に思わず眉を顰めかけ、鶴丸は何とかそれを思い止まって引きつった笑みを浮かべた。厄介なものを押し付けられたと感じる。

「そちらのかっこいいお兄さんはぁ、何て名前なんですかぁ?」

「…私のことですかな?私は一期一振。藤四郎兄弟の長兄ですな」

一期の表情は完全に営業スマイルである。

「国永さんと一期さんですね。よろしくお願いしますぅ」

「おや、私は主と弟たちの世話で手一杯ですので、見習い殿の世話を請け負った覚えはないのですが」

「…頼んだ覚えはない」

「主の世話をするのは近侍である俺の役目だが」

「主が任命せぬというのに勝手に近侍を名乗っているものが何か言っておりますな」

「おいおい、一応客人の前なんだから変な喧嘩をしてくれるなよ」

「…。…それもそうですな。では、私は弟たちの様子を見てまいります。…ああ、主、そろそろ爪も伸びてまいりましたな。今夜あたり、整えて差し上げましょう」

「自分でやれるからいい」

 

 

「…お前、子供が好きなのではないのか?」

「元服御裳着を終えたものであれば、自分のことは自分でするのが当然のことでしょう。主はまだ幼い方ですから私の助けが必要でしょうが」

「お前は主をなんだと思っているんだ。主は年若いがきちんと自立した方だぞ。あまり大人しくしていただけなくて困るくらいだ」

ふん、と長谷部は鼻を鳴らした。

 

 

 

「…小鳥様」

「…言うな」

「…てっきり、一期一振は正気を保っている方かと思っていたのですが」

「あいつは…スイッチが入らなければ(比較的)まともだ」

「スイッチが入ると駄目なのですねわかります」

「・・・」

小鳥は視線を彷徨わせた。

「…正直、あいつは俺を何だと思っているのかがわからない」

「一体どんな扱いをされているのですか…」

「…黙秘する」

「…言えないようなことをされているのですか?」

「さっきのアレで察してくれ」

小鳥はこんのすけと目を合わせようとしない。

 

 

「誰ですか?あんた。…ああ、わかった、軍の人間ですね。またなんだかんだ言って俺たちから主さんを奪いに来たんだ。俺たちはこんなにも主さんを愛してるっていうのに、余計なお世話…いや、酷い邪魔をするつもりなんですね。主さんは俺たちの、俺たちだけのものなのに。ただでさえ競争率が高いのに」

「えっ、えっとぉ…」

鯰尾はぶつぶつ言いながら腰の刀に手をかける。

「本丸の中が主さんのものでない汚らしい血で汚れるのは嫌だけど、余計なことをしようとする人間はさっさと殺してしまえばいいですね。だって、主さんは一人しかいないけれど、そうじゃないゴミみたいな人間は幾らでもいるんですから」

「おーい、落ち着け、鯰尾」

鶴丸の呼びかけに反応せず、鯰尾は己の脇差を抜く。

「さっさと殺してしまえばいいんですよね」

「鯰尾藤四郎」

もう一度、今度は正式名称(フルネーム)で己の()を呼ばれ、鯰尾は動きを止めて鶴丸を見る。

「こいつは客人だ。殺したら拙い。刀をしまえ」

「…そいつ、俺たちから主さんを奪いに来た人間じゃないんですか?」

「見習い殿は研修に来ただけだ。俺たちから主を奪おうなんて考えちゃいない。…そうだろう?」

「は、はい。小鳥さんに何かしようとは思ってません」

「そうですか」

鯰尾はそれまでの狂気が嘘だったかのように人懐こい笑みを浮かべて刀を鞘に戻した。

「俺はてっきり、この女が何か企んで此処に来たのかと。…主さんを何処かに隠してしまってその後釜に自分が座る気だとか」

「そ、そんなわけぇ、ないじゃないですかぁ…」

「ですよね!でも、主さんの時間をあんたみたいな女に割かせるのも、あんたの糞みたいな霊力がこの本丸に混じるのも不快なのでさっさといなくなって欲しいですね!主さんは優しい人だから言わないでしょうけど」

「そ、そんな酷いこと言わなくてもいいじゃないですかぁ…」

「お前、せめて八橋に包んで言えよ…」

「だって、その女の全てが気に入らないんですもん」

そんなことより、と鯰尾は鶴丸に視線を移す。

「燭台切さんが倶利伽羅さんを巻き込んでおやつ作ってたんですけど、主さんって今何処にいるか知ってます?やっぱり執務室ですか?」

「そりゃ、何もなければまだ執務室にいると思うが…」

「そうですか、じゃあ俺は行きますね」

そう言って鯰尾は颯爽と立ち去ってしまった。

「国永さん、怖かったですぅ…」

「そう思うんだったら、鯰尾じゃないが早く帰った方がいいと思うぞ。此処の連中は概ねあんな感じだからな」

「えっ」

「君が聞いているかは知らないが、つい最近までこの本丸はブラック本丸ってやつでな。先日やっと本丸の正常化は終わったが、刀剣の方はまだ呪詛の影響が抜けてないんだ」

「え、でも、この本丸はもう浄化が終わってるって…」

「本丸は一週間前に正常に、浄化されたよ。だがな、もうずっと、それこそ年単位で呪詛に浸かってた俺らが一週間やそこらでその影響を排除できると思うのかい?」

「っ…」

「…っとまあ、そういうことだ。わかったか?」

 

 

「…おや。鶴、その女は何だ?」

「うちの本丸に研修に来た見習い殿だ」

「えっとぉ、朝花って言いますぅ。よろしくお願いしますねぇ」

「ははは、軍もついに頭が狂ったか。研修をするというなら、もっと適した本丸が他にあるだろうに、よりにもよって、此処を選ぶとは」

「概ね同意するが本人の前で言うならもう少し八橋に包んだらどうなんだ」

「はは、すまんな。俺は嘘がつけんのだ」

「それこそ嘘だろ…」

鶴丸が溜息をつくと、三日月はまた、はははと笑った。

「それと、女、俺は主以外の人間とよろしくする気はないのでな。よろしくしたいのであれば他をあたってくれ」

 

 

「主さん、今日のおやつは俺と一緒に食べましょう。俺、心太に主さんの血をかけて食べたいです」

「痛いのやだから却下」

「鯰尾藤四郎、あなたは小鳥様を何だと思っていらっしゃるのですか」

「俺主さんの血が主さんを構成する全てのものの中で一番好きなんですよ」

「微塵も嬉しくない」

「貴様は何を言っているのだ鯰尾。主の玉の肌に傷をつけずに拘束するために俺がどれだけ工夫を凝らしていると思っている」

「主さんは傷を負って倒れてる位の方が可愛いじゃないですか。殴ったら殴り返されますし」

「お二方共アウトです」

「アウトだがどうしようもないがな」

小鳥がこの本丸を出ない限りどうしようもないだろう。呪詛の影響が抜けたとして、それで性癖がノーマルに変わるかといえば、それはわからないし、他の方法で愛()を表現するようになるだけかもしれない。まあ、小鳥がこの本丸を出た場合、阿鼻叫喚は必死だが。

 

 

 

 

 

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