刀剣たちと過ごす日々   作:ペンギン隊長

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if本編NTRネタ 別分岐 NTR成功 分岐点から
三日月の性格が悪い


本当に悪いのは誰だ?

 

 

「主君の一番の守刀である僕のことを忘れないでいただきたいですね」

「俺も当然行くぜ」

「私も、最後まで離す気はないからね」

「…んぁ?これって立候補しないと置いていかれるのか?」

八口以外に立ち上がる様子はない。奇妙に静まり返っている。

 

 

 

「あるじさま!」

「…今君。…駄目な主でごめんね。…はは」

「そんなことありません。あるじさまはぼくたちのよいあるじです」

「主君に非はありません。…悪いのは、主君への御恩を忘れてしまったあの方たちです」

「大将がいつも俺たちに真摯に接していてくれたこと、俺たちはちゃんとわかってるぜ」

「主、僕たちがいるよ、大丈夫」

歌仙が彼女の小さな躯を抱き上げる。彼女についてきた刀剣は、石切丸を除いて全員が彼女が審神者になった最初の日に鍛刀したものばかりだ。

 

 

「おお、遅かったな、主」

「三日月殿?!」

「みかづき、いったいいつのまに!」

「なに、一振目をお前たちの送った二口目と共に送らせたのだ。今あの本丸に残っておるのは二口目だ。気付かなかったか?」

「…気付かなかった…」

「…三日月さんは、俺と一緒にきて、良かったの?」

「俺は気に入らん者を主とするくらいなら本体を折って本霊に還るぞ。そもそも、主が気に入らねば此処におらん」

「そう…なの?」

「うむ。皆同じであろう?」

「…そうだよ、主。だからあの薄情者たちのことは気にしなくていいからね」

「・・・」

 

 

 

 

数日経って本丸から完全に主の気配、痕跡が失われてから、三日月は問いかける。

「なぁ、小狐丸。我らの主とは、どのような人物だったかな」

「どのような?何を言っておるのじゃ、三日月。ぬしさまは愛らしいおなごに決まっておろう」

「うむ。俺も主が愛らしいということに否やはないのだが…どうにも違和感があってなぁ」

「…?」

三日月は僅かに困ったように眉尻を下げた。

「主は、俺に口吸いを強請るような人間であったか?」

「…何を言っておる。ぬしさまは奥手な方じゃ。自ら口吸いを強請るなど…」

言いかけ、小狐丸は口元を押さえる。

「…そうじゃ。ぬしさまは奥手で、おなご扱いされることを望んでおらなんだはずじゃ。…だというのに、ぬしさまは」

三日月は袖で口元を隠し、小首を傾げる。

「小狐丸?」

「うっうっ…ぬしさま…ぬしさま、わたしは…」

崩れ落ちた小狐丸の目に、己の本体に取り付けられた根付が映る。それは、硬質の素材で作られた白狐と鮮やかな布で作られた花が、小狐丸の瞳と同色の赤い紐に通されたものだ。

『これ、小狐さんに。ランクアップ記念…というには、ちょっとしょぼいかもしれないけど』

「…ぬしさま。そうじゃ、ぬしさまは私に、水蓮をくれたのじゃ」

小狐丸は愛しげに根付に触れる。

「ぬしさまは、私を信頼する、と」

 

 

「僕も少し、違和感があったんだよねぇ。主って、あんなに大きかったかな、って。…背丈の話だよ?」

「…主は、秋田たちよりも小さいかもしれないくらいだった…気がする」

「えっと…主さんは、髪の毛が長かったよね。でも、普段はそういう印象、なかったような…」

「何か最近、主さんの付き合いが悪いな、ってきはしてたんです。前は、誘ったら断られたことなかったのに」

「でも、このところの主さんは不真面目ですよね。あまり執務室にいる印象がないというか」

「二代目の姿も見かけねぇしなぁ」

「そういえば、何人か姿が見当たりませんね」

 

 

「・・・」

「…主は、強く、そして不安定な方です。周りが気をつけてやらねば、道を踏み外してしまうような…」

「あれは察しが良すぎるから駄目なんですよ。もっと愚かな方であれば、ああも厄介ではなかったのでしょうに」

「…僕も、宗三兄様の言う通りだと思う。…だから、僕たちでちゃんと守ってあげなきゃいけなかったのに」

小夜は苦しげな表情で胸元を押さえる。そこには、お守りのように下げられたペンダントがあった。

「小夜…?」

「…あぁ、小夜も思い出してしまったんですね」

「…宗三兄様は、わかってて残ったの?」

「僕は、あの人の籠にだったら、捕らわれていても良かったんです。でも、あの人は、最後に戻ってくるのなら、何処に遊びに行っても構わない、というものだから」

宗三は慈しむように組紐に触れる。

「だから、僕は、随分前に、目印(・・)を本丸ではなくあの人に変えてもらったんです。…まさか、こんな日が来ると思っていたわけでは、ないんですけどね」

「・・・」

江雪は僅かに眉をしかめて頭を押さえる。

「僕も大概ですけど、あなたの方が酷いですよね…いえ、酷いというよりも、狡猾というべきですかね。…三日月殿」

三日月は口元を袖に隠して微笑む。

「…まあ、好奇心というやつだ。捨て置いて終わるのもどうかと思ってな」

「術を破れるのであれば、こんなことになる前にそうすればよかったでしょうに」

「…それができなんだのだよ。主の霊力が我らと共にあった内は」

「・・・」

「何が起こったのかは、お前も大凡把握しているだろう?アレは主の霊力を利用して偽っていた。主の霊力は我らを酔わせる程に良質のものだが、主自身はあまり自覚も制御もできていなかったからなぁ」

「…それがなくなって出来た綻びを、あなたは突いた、と」

「まあ、そういうことだ」

江雪は酷く頭痛のするような顔をして言う。

「…あなたたちは何故、主がいなくなったというような…」

言いかけ、江雪は眉をしかめる。

「…あるじは」

江雪の瞳が揺れる。そして、愕然とした顔で縋るように小夜を抱き寄せる。

「…私は、あの方のためならば、刀を振るおうと思っていたはずなのに」

「…江雪兄様って、意外とあの人のこと大好きだよね」

 

 

「主?見目と違って中身はかっこいいよね。手先が器用で大抵のことはそつなくこなしちゃうし、いつも落ち着いているし、気遣いのできる"いい子"だし…だから、僕らで甘やかしてあげないと」

「…あいつは、引き際が潔いやつだ」

「ああ、確かになぁ。俺としてはもう少し食い下がって…」

言いかけた鶴丸の顔が蒼白になる。

「…?」

「どうしたの、鶴丸さん」

「何で俺はこんなところにいるんだ。主を奪われることを危惧していたはずなのに、俺の方が主ではない人間と共にいる?こんな驚き、俺は求めてないぞ」

「何言ってるの鶴丸さん。主は主でしょう?」

「主はあんな女じゃない!おっぱいじゃなくてちっぱいだ。俺は揉んだことがあるから知っている。服の上からじゃあ殆どないように見えても、ちゃんとあるんだ…」

「…ほう」

「えっ、えっ」

「…何をやっているんだ、あんたは」

「主が、男はおっぱいで元気になるもんだと聞いたから、と、俺が落ち込んでいた時にちっぱいだけど揉む?と聞いてくれたんだ、揉む以外の選択肢はないだろう」

「何をやってるんだあいつは…」

「破廉恥だよ、鶴丸さん!」

「じゃあお前は主が小首を傾げて"おっぱい揉む?"って聞いてきたらどうするんだ?」

「そんなの揉むに決まってるじゃないか!」

「光忠…」

 

 

「どうしたの?蜻蛉切さん」

「…乱殿」

何かを手に呆然と立ち尽くしていた様子だった蜻蛉切は、声をかけられてゆっくりとそちらに視線を移す。乱は蜻蛉切の手の中を覗き込む。それは、彼の槍に付けられていたストラップだった。ビーズで作られた茜色のトンボと、白詰草の花を模した飾りがついている。が、そのトンボも花も、引きちぎれたようになって壊れている。

「それ、確か、主様にもらったものだって、言ってたよね…」

蜻蛉切の表情が悲痛なものになる。

「私は、主に、取り返しのつかないことを…」

「大袈裟だよ、蜻蛉切さん。主様はそれぐらいちゃんと謝れば許して…」

言いかけ、乱も血の気の引いた顔になる。

「謝ることすら、おこがましい。忠節を捧げると決めた相手を見間違うなど、武人としてあるまじき失態にも程がある…」

「…何で、気付かなかったんだろう。主様とあいつと全然違うのに。同じなのなんて、性別と人間で審神者だってことくらいしかないのに」

乱はぎゅっと胸元を押さえる。そこには、桃色の紐に通された指貫があった。

 

 

「…このところ、よく眠れんとは思っておったのです」

一期は目を伏せて頭を押さえる。

「主が傍におられればそんなことにはならないはずであったのに」

「一期は意外と主に精神的に依存しているようなところがあったな」

「…そう、かもしれません。私は、己で思っているより心が弱かったのかもしれませんな」

鶯丸は茶を飲む手を止めて己の刀を見る。柄の部分に鶯と目白の形をした小さな鈴が付けられている。そっとそれに触れて、鶯丸は目を伏せる。

「主が、己を責めていないといいのだが」

 

 

「…そろそろ、かな?」

「皆さん、やっと変やって思い始めたみたいやしねぇ。…まあ、自分はあんま他刃のこと言えないんやけど」

「国行が保護者らしくしてるところ、見たことない気がするんだよなー」

「ぐっ」

「国行が来た時点で俺たち保護者とか必要ないくらい強くなってたしね」

「国行より俺の方が強い」

「ちょおゆっくりしとっただけやないか…かなわんなぁ」

「国行いじりはこれぐらいにして…さて、そろそろ俺たちも動きますかっと。主さんと俺たちを虚仮にしてくれたこと、後悔させてやらなきゃね」

「祭りだな。腕が鳴るぜぇ…」

「…蛍も国俊も、えらい張り切っとるなぁ…」

「そういう国行は何とも思わなかったの?今回の件」

「何にも思わへんとは言わんけど…寧ろさっさと主さんのところに戻りたいなぁ。セクハラも鬱陶しいし」

「…国行まさかすんなり大将のところに帰れると思ってるわけじゃないよな?」

 

 

 

 

「で、一口目の俺は今更主のところにやってきた、と」

「三日月殿は例外にしても、人の子の惑わしなど、主を思うなら防げて当然では?最高練度(99レベル)なのですから」

「防げていたのに残ったものまでいるようだしな」

「この世は、地獄です…」

二口目と相対し、彼らは苦い顔や悲痛な顔をする。

「…主は、腹を立てておいでですか?」

「…その方がマシだったかもな」

二口目の鶴丸が眉をしかめる。

「俺たちは主の強さと脆さについて、見誤っていたのだろうな」

二口目の鶯丸が目を伏せる。

「誰を責めるべきなのか、私にはわからんのです」

二口目の一期は苦い顔をする。

「…主は、責められるべきは己だと思われたようです」

二口目の江雪は目を閉じた。

「…主に会うことはできないか?」

「主は拒まないだろうな。だが、許されると思ってるわけじゃないよな?」

 

 

相対してすぐ、彼らは理解した。彼女が彼らの知る彼女と違ってしまっていることを。

「なんだか今日は騒がしいな。何かあったか」

その瞳に感情の色はない。ただ、彼らを見て僅かに目を細めた。

「黙りこまれても困るのだが」

「…申し訳ございません」

「謝罪を求めた覚えはないが…それは何に対する謝罪だ?」

彼女はゆるりと首を傾げる。淡々としたそれに感情の色は見られない。

「主、詫びることすらおこがましく、許されようとも思ってはいませんが、謝罪はさせてください。主に忠節を捧げる武人として、いたらなかったこと、申し訳ございませんでした」

「…んー?蜻蛉切さんは何をそこまで思いつめたことを言っているんだ?よくわからない」

「っ…」

やはり、彼女の目に感情の色はない。隣で、近侍をしていたらしい薬研が肩をすくめる。

「旦那が言ってるのはあの見習いとかのことだろ?」

「ん……ああ。それは俺がいたらぬ主だったからだろう。あちらの方が主として優れていたというのであれば、仕方のないことだ」

「大将、冗談でもあんな女があんたより優れてたなんて言わないでくれ。それだけはない」

「それ以外にどんな理由があるんだ?主を変えようと思う理由が」

「違うのです、主」

蜻蛉切は悲痛そうに頭を下げたまま言う。

「これももはや言い訳でしかありませんが…主を変えようと思ったわけではないのです。あなたではなく、あの方が己を喚んだ主だと、誤認させられていたのです」

蜻蛉切の言葉に、彼女は目を細める。室温が二、三度下がったような気がする。

「…あなたは、彼女が意図的に僕のもの(・・)に手を出したのだ、と?」

「…それに負けたことは私たちの未熟にも原因があります。三日月殿のように、それを退けられた者もいますので」

「・・・」

彼女は紙にさらさらと筆を走らせる。筆を離すと共に紙は黒い小鳥に変わる。それを、三度繰り返した。小鳥の形をした式が彼女の傍を飛んでいる。

「きらい」

彼女の呟きに反応するように、式は影に消える。

「…主」

「建設的でない話をされてもどうすればいいのかわからない。戻るのであれ、戻らないのであれ…刀解や錬結をするのであれ、好きにしろ。俺はお前たちの選択に口は挟まん」

 

 

 

「…確かに、腹を立てていた方がマシだった」

「・・・」

「…何を選んでも、所詮は自己満足というわけですね」

「俺は俺に連結してもらってくる。二口目の連結終わってるかもしれないけど」

「…主は、どうしてしまったんだい?」

「…主はね、色々なものがわからなくなってしまったみたいなんだ」

「…そいつはどういう意味だ?」

「そのままだ。記憶がなくなったわけじゃないし、知識がなくなったわけでもない。だが、目に見えないこと…主に感情面のことが理解できなくなったらしい。悲しいとか、嬉しいとか、腹が立つとかな」

「快不快はまだ残ってるみたいなんだけど、ご飯の味自体はわかるけどそれが美味しいかの判断はできないみたい。それに、空腹とか眠気とかも自分でちゃんと判断できてないみたいだし…」

「十年前に比べれば知識面の精査の必要がないだけマシだ、と本人は言っていたな」

「それってのは、つまり…」

「どうやら、主のとらうまを直撃してしまったらしいぜ、俺たちは」

彼らは愕然とする。

「…そりゃあ最悪だ」

「許されないし、償えもしないな」

「私たちが、ちゃんとしていたら…」

「…刀解、してもらった方が良さそうだ。穢刀にはなりたくない」

鶴丸は胸を押さえる。

「過去を変えたくなっちまった。ちゃんとあの女の術を退けていれば、そもそもあの女が本丸に来なければ、ってな。くそっ…後悔ばかり沸いてくる」

「鶴丸殿、あまりそういうことは言わんでください。私までそう思えてきてしまうではないですか」

「すまんな」

「…どうするのが、一番良いのでしょうな」

「ぬしさまは、私たちが何を選んでもよい、とおっしゃっていたな」

「本人が判ってないってだけで、感情を無くした、ってわけでもないみたいだから、"何とも思っていない"かどうかはわからないがな」

「突然泣き出したりもしますからね…」

「完全にアウトじゃねぇか」

「本当、なんでこんなことになっちゃったんだろうね…」

「・・・」

 

 

 

 

 

 

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