刀剣たちと過ごす日々   作:ペンギン隊長

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エロパートはR-18の方にある


闇を裂く白刃4

 

 

「…なんじゃ、鶴か」

「審神者にちょっかいをかけたらしいじゃないか」

「耳聡いのぅ」

鶴丸は部屋の隅に放られた紐と小狐丸が手元で遊ばせている面を見る。

「…小狐丸は」

「私は鵺鳥が欲しくなった」

鶴丸は眉をしかめる。小狐丸はそれを鼻で笑った。

「この手で自分好みに染め上げ、手元に囲いたい、と言った方がわかりやすいか?」

「…悪趣味だな」

「そういうそなたは、幾分往時に近づいたのではないか?」

小狐丸は目を細める。

「好奇心が旺盛で細かなことによく気づくのは白鶴の性質じゃろう?黒鶴よ」

「・・・」

「あれが来てからは随分活発に動いておるようではないか。…以前は室に閉じこもって死んだような顔をしておったのにのぅ」

「それは…」

「我は神であり、刀じゃ。人と関わらずにはおれんのじゃ」

 

 

 

「何か腰も腹も痛い。というか、下半身重点で全身痛いし躯が怠い」

三日月と骨喰は無言で目をそらす。

「ところで俺の面が何処にあるか知らない?全然見当たらないんだけど」

「…鶫殿は昨日のことはどの程度覚えておるのだ?」

「昨日?」

ツグミはきょとんとして首を傾げる。そして考え事をするように眉根を寄せた。

「…ええと。もふもふ獣属性の太刀(ひと)に押し倒された、ような…」

「…記憶がさだかではない、と?」

「そもそも俺、過去のこと思い出すの苦手だし…んー…やっぱりよく思い出せない」

「…まあ、そうだろうとは思っていた」

骨喰はツグミを抱き上げる。

「なに?バミ」

「行くぞ。どうせあいつはツグミを連れて行かなければ面を渡さないんだろう」

「名前ぐらいはきちんとわかっておらんと不便だしな」

 

 

 

「小狐丸、ツグミの面を返してもらいにきたぞ」

「朝から騒々しいやつじゃのう」

「ないと困るからな。後、赤紐は何処にやった」

「紐は…これだな?」

三日月が紐を拾い上げる。

「後で付け直すから預かっていてくれ」

「わかった」

骨喰はツグミを抱えたまま小狐丸に一歩近づく。

「時に、何故鵺鳥を抱えておるのじゃ」

「赤疲労状態だ」

「なんか体がだるいから今日は室で大人しくしてようかと思ったんだけど、面がないと色々支障があるから」

「体力がないのじゃな」

小狐丸は懐から面を取り出す。

「どれ、私がつけてやろう」

「自分で付けるからいい」

「やめろ」

骨喰は小狐丸を睨む。小狐丸は目を細めた。三日月は少し困った顔をしている。ツグミは二人を見比べてきょとんとする。

「バミ?」

「こいつは、主に何をするかわからない。殺すことはないだろうが俺から主を奪おうとはするだろう。渡すつもりもないが」

「私が鵺鳥を欲しがっていることは否定せぬが」

小狐丸がツグミに触れようとするのを、骨喰が体をひねって避ける。無言の攻防にツグミが眉をしかめて手を挙げる。

「バミ、きもちわるい」

「む、すまない」

「大人しく鵺鳥を私に預ければよかろうに」

「俺知らん人に身を預けるの嫌なんだけど」

「 」

ショックを受けた様子の小狐丸を三日月は気の毒そうに見るが、骨喰はふんと鼻を鳴らす。

「主にとって己の刀でなく名も知らぬものなど有象無象も同じだからな。当然だ」

「別にそこまでは言わないけど」

とりあえず目が疲れるから面を返して欲しい。

 

 

「私は小狐丸じゃ。よろしく頼むぞ、鵺鳥」

「ん、よろし「くはしなくていい」

「…いい加減鬱陶しいぞ、骨喰藤四郎」

「余計な害虫は追い払うに決まっているだろう」

「誰が害虫じゃ」

「まあまあ、兄上、骨喰、あまり喧嘩をするものではないだろう。鶫殿が呆れているぞ」

「呆れてるっていうか、疲れた」

ツグミは肩をすくめる。

 

 

 

 

「・・・」

「…ん?何か用か?」

ツグミはきょとんと首を傾げる。鶴丸はじーっと見ている。ツグミは書物に栞をはさんで姿勢を正した。

「…君は、何故こんなところにいるんだ?」

「…?質問の意図がよくわからない。この本丸にいる理由は配属されたから、という以外に言いようがないが」

「そもそも何故審神者になった?」

「それ、前言わなかったっけ?興味を持って、話をしてみたいと思ったからだが」

「誰も止めなかったのか」

「…一応成人した大人だし、如何わしいところでもないし、働くと言い出して止められる理由はないぜ?」

「君についてる神は」

「?バミに会ったのは審神者になった時だぜ?」

「・・・」

ツグミは首を傾げる。

「…君は、元々は巫覡なんじゃないのか」

「俺は元々一般人だぜ。霊感とかも特にはなかったし、正直審神者になれるとは思わなかった」

「えっ」

「…君も零感が何やってんだ、ってクチか?いいじゃないか、別に挑戦してみるくらいは。迷惑がかかるわけでもなし」

「そんなことは言ってない。一般人?術師の家系でもなく?」

「審神者になるまで呪術とかファンタジーだと思ってたな」

「…マジかよ」

「マジだが」

「・・・」

 

 

「コトラー、ちょっといいか?」

「何だ、御手杵」

「んー、一応紹介しといた方がいいかなー、ってさ。…あ、鶴丸も来てたのか」

「…小虎じゃ意味が違ってしまうだろう」

「コトラはコトラだろ?」

「あまりにも妙な呼び方をされたら別だが、僕のことだとわかれば別に何でも」

鶴丸は呆れたような顔をした。御手杵の影からひょい、と小柄な少年が顔を出す。

「じゃあ俺は鶉ちゃんって呼ぼうかな。一応昨日顔合わせたけど、名乗ってはなかったよね。俺は大太刀の蛍丸。よろしくね」

「よろしく。…顔、合わせたっけ?」

「覚えてないの?それとも、面を外すと見えないとか?」

「記憶にないなあ。面はグラス入ってるから、俺裸眼だと手に届く程度の距離しかちゃんと見えないし」

「ふぅん。じゃあ覚えてても見えてないかな」

「そういえば昨日は何か大騒ぎしてたな。何かあったのか?」

「小狐丸が鶉ちゃんと二人きりになりたいって言うから骨喰の足止めしてたんだ。彼結構根性あるよね」

「ああ、岩融ともなんかやりあったって言ってたな。まだ練度低いのによくやるよなぁ」

「…バミが無茶するの、本当は止めたいんだけどね」

ツグミは肩をすくめる。

 

 

 

「…霊的なあれこれが大変なことになっているようですが、こんのすけが政府の方に報告に行っていた一日の内に一体何があったんですか?」

「んー、えっとねー、俺は、昨日小狐丸に押し倒されたようなー、ってところまでは覚えてる。正確には多分三日月かバミに聞いた方が早いんじゃないかな」

「あ、完全にアウトですね」

「そんな気はしてた」

ツグミは下腹部を押さえる。

「俺経験ないからよくわかんないんだけどなんか下半身のあらぬところが痛い」

「どのような状況かわかりませんが、女性の同意を得ずにいたすのは男としていかがなものか」

「まあ普通に考えて同意する理由はないからなあ」

 

 

 

「それで、弁明はありますか、骨喰藤四郎」

「俺はちゃんと言質を取ったから問題ない。小狐丸はアウトだが」

「本人は全く覚えていない様子ですが」

「俺としても不本意だ。その内りべんじする」

「しなくてよろしい」

こんのすけは溜息をついた。

「いたしたことは否定しないのですね?」

「ああ」

平然と骨喰は返す。

「マーキングを消すには上から塗り潰すのが一番だろう。主は頓着しないだろうことはわかっていたしな」

というよりも、色々マーキングされてても全くそれを認識していないのである。

「…まあ、小狐丸はかなり厄介な刀剣でしょうが」

「ところで、祟刀は何口いるという話だった?」

「当初は九体でしたが…おや、浄化されていないのは後二体のみのようですね」

「その内一口は鶴丸だろうが…もう一口は誰だ?」

「昨日今日で浄化された二体はどの刀になりますか?…いえ、一体は小狐丸でしょうが」

「…おそらく蛍丸じゃないか?自分から訪ねてきそうなのはそれしか心当たりがないしな」

「となると…鶯丸ですね。現在確認されている中でおそらく最も古い太刀です」

「…心当たりがないな」

「完全にこちらと関わる気がないということでしょう。こちらから接触しなければ膠着状態になるかもしれませんね」

「…正直放置しておきたいんだが」

「それでは問題の先送りにしかなりません。いつかはきちんと向き合わなければならないんですよ。こちらもあちらも」

 

 

「♪~」

片耳ヘッドホンから聞こえてくる歌を口ずさみながらツグミは縁側で庭を眺めていた。リズムを取るように足をぶらぶらと動かしている。

庭は当初より大分綺麗になってきている。ツグミたちや式神が手を入れているというのもあるし、霊力の供給が安定し浄化されていることも大きい。まだ殺風景さを拭いきれていないが、荒れていた名残はもうないと言っていいだろう。

「♪~」

歌い終わったところで、三日月が静かに歩み寄って隣に腰掛ける。

「ほっとしたぞ。暗いだけの歌でなくて」

「歌は歌だろ。僕は歌詞そのものより音律重視だからなー」

そう返し、ツグミはまた歌を口ずさむ。

「♪~」

よく見るとその片手はデバイスを操作している。何をしているのかまでは三日月にはわからなかったが。

「♪~」

三日月はそっと目を伏せた。

 

 

 

 

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