刀剣たちと過ごす日々   作:ペンギン隊長

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疲労組第二陣


闇を裂く白刃8

 

 

「…ドロップで手に入った刀を顕現するのは手入れ部屋に安置されてるやつのことが片付いてからの方がいいかな」

「折れていることが確認されている刀は顕現しても構わないと思われますが。祟りと化している刀剣がいなくなったことで本丸内の刀剣も正確に把握できるようになりましたし」

「あー…確か、今いるのは全部で27口、だっけ。で、目覚めて再契約したのがえっと、13口とバミ。丁度半分、か」

「一番に目覚めたのが短刀だったことから考えて、大型の刀剣程時間がかかると思われます。残っている刀は大きめのものも多いですから…」

「でも急いで数揃えなきゃならない理由もないだろ?日課の消化も…遠征がちょっと少人数で刀種指定に引っかからないところに行けないだけだし」

現在、脇差と打刀がいないという中途半端な状態である。高レベル刀剣が九口いるのでそれで高レベル遠征に向かってもらってもいいのだが、そういう遠征は長時間になるものが多い。例外は高レベル二時間と大太刀三時間遠征くらいか。

「…まあ、虎鶫様の場合、骨喰藤四郎のように刀種が変わってしまう可能性もありますからね」

「…現在確認されてる脇差は四口だけなんだっけか」

その内、堀川のみはっきりしないが、残りの三口は他の刀種から磨り上げて脇差になったという経緯を持っている。骨喰が太刀になった以上、残り二口がそうならない保証はない。…もっとも、その二口は幸か不幸か折れていないのだが。

「現状、演習に参加することは勧められませんし」

せめてもう少しツグミの審神者レベルを上げるか、"普通の刀剣"を増やす必要がある。

「…こうして考えてみると今のメンバーは地味に問題がある…?」

「ないとは言えないでしょうね」

 

 

 

ツグミは骨喰以外の刀剣との距離を測りかねている。食事は共に取るようになったし、顔を合わせれば話もする。しかし、そもそもツグミは人付き合いというものが苦手なのである。刀剣たちの方も、再契約を果たしたとはいえ、どう接するべきか決めかねているものもいる。故に。彼らのやり取りはどこかぎこちなさがある。

「あの、あの、鵺鳥さん」

「なんだ、五虎退」

「鵺鳥さんは、何であんまり出陣をしないんですか?あ、えっと、嫌なわけじゃないんですけど…」

「一つ良いことを教えてやろう」

「え、あ、はい」

「平均すると一回出陣すると一枚、書かなきゃならん書類が増える。出陣先、交戦した敵その他諸々の情報を一定の書式で報告書にあらためる必要がある。一応記録はとってるが、すごく面倒くさい。記憶力でどうにかなる程度の数にしておきたい」

「な、成程…」

「――でも、主さんはそんな頻繁に書類書いてなかったと思いますよ」

「まあぶっちゃけ、形式面が強いし略式に…ざっくりまとめて一つの戦場につき一セットで済ませる人も多いらしい。役に立たない報告書とかただの紙くずだからな。…で、えーと…藤四郎兄弟か?」

「鯰尾藤四郎です。あなたの初期刀は骨喰だそうですね」

「ん?ああ。バミなら遠征に行ってるぞ。…いや、そろそろ戻ってくる頃かな?」

その時、丁度遠征部隊の帰還を知らせる鐘が鳴る。そして、いくらも経たない内に骨喰、小狐丸、三日月がやってくる。

「ただいま、ツグミ」

「ただいま戻りました」

「ははは、戻ったぞ」

骨喰は一直線にツグミを抱きしめにいく。小狐丸はそれに僅かに眉をしかめ、三日月は鯰尾に気付いて声をかける。

「おや、鯰尾ではないか。目が覚めたのか」

「ええ、もうすっかり元気ですよ。ご心配をおかけしました」

「鯰尾?…ああ、鯰尾藤四郎か。久しぶりだな、兄弟」

「!」

「それとも、焼けて覚えていないか」

「…いや、焼けた後にも顔合わせたし、そもそもこの本丸にも骨喰がいたことあるし…っていうか、寧ろ、骨喰が俺のこと覚えてるの?!」

「俺は、大体お前が焼けた火事の少し後くらいまでの記憶がある。それより後は全く記憶にないが」

「そう…なんだ…」

「言っておくが、俺はお前の知る"刀剣男士としての"骨喰藤四郎とは全くの別物だ。別個体だし、俺は太刀だからな」

「え、あ…本当だ」

鯰尾は少し寂しそうにしている。

「…積もる話があるのであれば、あちらでしてきてはどうじゃ?遠征の報告は私と三日月でしておくぞ」

「は?何で「小狐丸さんありがとう。骨喰、少し俺たち(・・)と話をしよう」…」

「話すことがあるなら行ってくればいいんじゃないか。急ぎの用はないし」

「…わかった」

骨喰は不満そうな顔でツグミを抱きしめるのをやめて立ち上がる。

「…なんか、骨喰を見上げるってちょっと変な感じだなあ」

 

 

 

「やあ、君が新しく引継ぎでやってきていたっていう審神者だね」

ツグミは見た目に共通点のない三口の刀剣を見て目を瞬かせた後、こくりと頷く。

「虎鶫あるいは鵺鳥だ。好きに呼べ」

「僕はにっかり青江。変な名前だろう?」

「うん。なんか芸人みたいな名前だね」

「ははは」

ツグミは小首を傾げる。青江はにこにこしている。後ろの二人はあちゃあ、みたいな顔をしている。

「何か用でもあったんじゃないのか?」

「用、というか…九口もの刀剣が祟り化していたのを浄化してしまったというのは、一体どんな人間なんだろうと思ってね」

「はは。…といっても、三日月はバミの力だし、御手杵と蛍丸と小狐丸はあっちから友好的に(?)来てくれたし、江雪と一期と岩融は何で再契約しようと思ったのか俺にはわからないし、僕から動いたのは鶯丸くらいだからなぁ」

「鶴丸さんは?」

「…お互い歩み寄った結果?」

ツグミはこてりと首を傾げた。

「バミのこともあるから、全く普通だ、とまでは言わないけれど、僕はさして特別な人間じゃないぜ」

「――ぬしのような人間がそうそうおってたまるか」

二人分の茶を持ってきた小狐丸がそう言って眉根を寄せる。

「でも俺元々一般人だし」

「ぬしのような人間が世に溢れておったら日の本が滅びる」

「…否定はしないけどさ」

ツグミは肩をすくめた。

「ぬしはもう少し己のことを知るべきじゃぞ」

「魂がどうとかいう話なら専門外だし、見えないもんはわからん」

小狐丸はツグミの頭を指でぐりぐり突く。

「ぬしは見る気がないから見えぬだけじゃろう。それだけ強い霊力があって審神者としても呪術師としても卒なく力を使えるというのに見鬼はできんというのでは道理が通らん」

「そんなこと言われても。っていうか、ちょっと、痛いんだけど」

「痛くしておる」

「うにゃーっ」

ツグミは両腕で小狐丸の手を持ち上げた。

「にっかり、陸奥守、歌仙、お前たちは鵺鳥がどのような人間か見に来たのじゃろう。こやつは基本的に無害じゃぞ。わっぱどもが面の下を見るのは勧めぬが」

にぃ、と小狐丸は笑う。

「私でも参ってしまったからのぅ」

「お前俺の顔を何だと思ってるの。何かの危険物扱いなの」

「ある意味そうじゃな」

陸奥がツグミに歩み寄る。

「なら、見せとうせ」

「え、やだ」

「隠さにゃならんもんかぇ?」

「逆に、何のために面つけてると思うのさ。人が隠してるもんわざわざ暴こうとすんなよ、えっち!」

「え、えっち?!」

「まあ、おなごが顔を隠しておるのを見ようとするのは狼藉のようなものじゃのう」

「…女性なのかい?」

「ひんにゅうでわるかったな」

「…てっきり、少年なのかと」

「私も最初はそう思ったのじゃがなぁ」

「僕は小狐丸に気に入られたって聞いた時にどっちでもありうると思っていたよ。…性別の話だよ?」

「気に入られたっていっても、正直審神者っていうより捕食対象なんだろ、知ってる」

「鵺鳥は遠まわしに誘っても理解せぬからなぁ」

「えっちぃのはよくないとおもいます」

「一度やってしまえば二度も三度も同じじゃろう。生娘でもあるまいに」

「お前の所為でな。っていうか、記憶にないし同じじゃないし俺は遊女じゃねぇ」

「大人しく身を委ねれば優しくしてやるというのに」

「そもそも俺はそっち方面に興味がねぇっての。てめぇの貞操観念どうなってやがる。恋人でも伴侶でもない相手に平気でそういうことしようと思うほど俺は尻軽じゃねぇ」

「という割に気にした様子がなかったようじゃが」

「野干に噛まれたとでも思っとけってバミが。後、契約結んだ以上合意を得ずに無理にいたそうとしたらペナルティくるって三日月が。それに、穢されたのを苦に自害とかバミが泣くじゃん」

「あやつら…」

「おんしたちの方が卑猥じゃあっ!!」

顔を真っ赤にした陸奥の叫びにツグミはジト目を返す。

「俺は健全だもん。不健全なのは小狐丸だけだもん。後強いて言えば薬研と黒鶴」

「なんじゃ、あやつ結局手を出しおったのか」

「あんたに比べりゃ可愛いもんだ」

ツグミは左手で狐の形を作って小狐丸の口元をつついた。

「そういえば口吸いはしておらぬな」

「やらねぇよ?」

「つれないのう」

「…雅じゃない」

歌仙が頭を抱えるような仕草を見せる。

「陸奥守は過剰反応じゃないかな?鵺鳥は直接的な表現はしてなかっただろう?」

「そもそも人前でする話じゃないぜよ」

「すまん。だが、二人の時にそういう話をする方が俺は嫌だ」

「まあ、気まずくなりそうだよねぇ…言い争いになったら、ってことだよ?」

「俺は寧ろ変な言質の取り方されそうで怖い」

「合意は合意じゃろう」

「しねぇよ?」

 

 

 

「あるじあるじあるじあるじ…」

「どうした、バミ」

ツグミは抱きついてきた骨喰に冷静に問いかける。

「俺は絶対、主から離れないからな」

「知ってる」

いい子いい子、とツグミは骨喰の頭を撫でた。骨喰はツグミの肩口に頭を押し付けている。

「ぜったい、ぜったいだ」

「おー」

ツグミはその場にいる他の刀剣たちに目をやる。とりあえず、完全に小狐丸の機嫌が悪くなっている。他は呆れているようにツグミには見えた。

ツグミはよいしょ、と骨喰を抱き上げながら立ち上がる。

「すまない、小狐丸。バミを落ち着かせてくる」

「鵺鳥はそやつに甘い」

「何か問題でもあるか」

「…妬ましい」

「…と言われても、バミは俺にとって特別だからな」

「初期刀だからか」

「ああ」

「・・・」

不満そうな小狐丸の頭をツグミはぽんぽんと撫でて自室に向かう。

「…で、どうしたんだ。兄弟に何か言われたのか」

「…主は、あいつらと会わなくていい」

「そういうわけにもいかないだろう。同じ本丸の刀剣なんだし」

「それでも…」

 

 

 

「…初期刀、か」

「まあ、身の危険があるかもしれないところに、絶対的な味方がいれば、そりゃあ特別な信頼関係にもなるよねぇ。…主みたいにさ」

「…あの子は主と同じことになるだろうか」

「骨喰が折れん限りは大丈夫だろう。あれは、少なくとも刀剣に悪感情は持っておらん。岩融たちにもそうなのだから、まだ(・・)何もしておらんお前たちには何とも思っとらんじゃろう」

「…岩融は何ぞしたのかえ」

「一期一振と江雪左文字と岩融は、鵺鳥と骨喰と直接戦ったようじゃ。江雪は直接鵺鳥に刃を向けたそうじゃし、四人そろって手入れを受ける羽目になった」

「!」

「…それなのにあの子は、大したことはしてないと思っているのかい?」

「さてなぁ。私は実際何があったかまでは把握しておらぬからな。実際、"大したこと"はしておらぬのかもしれぬぞ?」

「祟りを三刃まとめて相手にして、再契約に持ち込んでおいて、"大したこと"をしていないと言うのなら、何をしたら"大したこと"になると言うんだ」

「私に聞かれても答えられんぞ」

「――やや、久しぶりにございます、小狐丸様」

「鳴狐とお供か。なんじゃ?」

「私たちは骨喰殿を追ってまいりました。話の途中で行ってしまわれたものですから」

小狐丸は目を細める。

「骨喰は鵺鳥のところじゃぞ」

「そうですか…では」

「鳴狐」

「…何?」

「あれに危害を加えるようであれば、私の怒り()買う事になると心得ておけ」

「…わかった」

鳴狐はそのまま通り抜ける。

「…も、っちゅーことは、おんし以外もおるのか」

「三日月と一期はわからんが、祟りから戻ったものはそうじゃろうな」

「それは、僕らじゃどうにもならないねぇ」

 

 

 

骨喰はツグミに口付ける。そのまま口付けを深めようとしたところでバチッという音と共にちょっとした痛みを感じ、動きを止めた。

「…ツグミ」

「やらせねぇよ?昼間っから何考えてんの」

骨喰は舌打ちした。

「バミさぁ、俺が何でもかんでも盲目的に従うとか思ってないよね?バミでも許さないよ?」

「ツグミは俺の嫁だろう」

「了承した覚えはない。後、もし夫婦でもこの状況で流されねぇから」

ツグミの周囲で静電気が弾ける。

「俺は恋人でもない相手に簡単に抱かれる程尻軽でも奔放でも欲求不満でもねぇから。つぅか、(記憶にないが)アレも許してないよ?次やったらそれこそ自害するから」

「っ…」

「だってそうだろ。バミを信じられなくなったら他に誰を信じられるっていうの。この本丸に徹頭徹尾俺の刀で、俺を主と呼ぶのはバミしかいないのに」

「…主」

「あの時は自害とか思いつきもしなかったけど…俺はバミを悲しませるのが嫌なだけで死ぬのは嫌じゃないから死ぬしかないと定めれば潔く死ぬよ。どうすれば苦しまずにあっさり死ねるかもわかってるし」

「そんな、死ぬなんて軽はずみに言わないでくれ」

「軽はずみじゃないよ。俺は真剣に言ってるの。お前が俺の信頼を裏切るようなら、お前を殺して俺も死ぬ」

まっすぐに己を見る目が一切の遊びを孕んでいないことを感じ取り、骨喰は目を伏せた。

「――骨喰殿。話の途中で立ち去るのは酷くありませんか。…おや、お取り込み中ですか?」

「…修羅場?」

「わざとだろう叔父上」

「…勝手に室に入るのは礼を失していると思わないのか?」

「あいや、失礼いたしました。何分、骨喰殿が話の途中で突然席を立たれましたので」

「それとこれとはまた別の話だろう。此処はバミの部屋ではなく俺の部屋だ。バミを理由にされるのは理屈が通らん」

ばちり、とまた静電気が弾ける。

「…主?」

「言ってなかったが、今日の俺は機嫌が悪い。地雷にやさしい対応はできん」

いつの間にか、ツグミの頭には渦を巻いてから空へ伸びる角が出現している。バチバチとその角の間で電気が弾けている。

「…お、落ち着け、主」

「平静ではないが俺の頭脳は平時と変わらず明晰だぞ?そちらこそ冷静になったらどうだ」

にこり、とツグミは笑う。その目は多分笑っていない。

「…一人で先走ったのはすまなかった。主の意思を無視しても問題ないと思ったわけではない。ただ、主は俺と同じことを望んでいると思っていたんだ」

「そういう素振りを見せた覚えはないんだが」

ツグミは肩をすくめじろりと骨喰を見た。骨喰も肩をすくめる。

「それで、そちらの二人(・・)は何だ。何か用か」

ツグミはそう言って鳴狐の方を見る。ちなみに、未だ帯電している。

「…ええと、私たちが用があるのは骨喰殿でございます」

「…で?」

「…ええと」

「俺の前ではできないような話か?なら、さっさと連れて行けばいいだろう。まあ、バミの嫌がるようなことをするのであれば俺の敵とみなすが」

「…俺には、話すことはない」

骨喰はツグミの腕を掴む。

「骨喰殿、そのようなことをおっしゃらずに。鯰尾殿は彼なりにあなたを思って…「俺は兄弟よりも主の方が大切だ」っ…」

「主は主一人しかいない。俺には、主の初期刀として、第一の刀として、主を守る権利がある。俺は主を愛している。主を蔑ろにするものに付き合う義理はない」

「・・・」

「よくわからんが兄弟は大切にするもんだぞ、バミ」

「話がややこしくなるからわからない内は黙っていてくれ」

「…骨喰はその人が大切なんだね」

「当然だ」

何か言おうとしたお供の口を鳴狐が塞ぐ。

「鯰尾は不用意なことを言ったけど、悪気があったわけじゃないから」

「俺は、俺はあいつの知る"骨喰藤四郎"とは別物だと初めに言った。それを理解しないやつと話すことなんてない」

「・・・」

 

 

 

「こんのすけ、何か気分が悪いんだが…」

「…虎鶫様、バイタルデータに異常が…いえ、異常ではないといえば異常ではないのですが」

「ん?」

「その…月のものが来ていらっしゃるようですが」

「…ああ」

ツグミは納得した顔をする。

「何かお腹痛いと思った」

「虎鶫様、それは無頓着すぎやしませんか?!」

「先月来なかったからすっかり忘れてた」

「…そういえばそうですね」

納得しかけ、こんのすけはいやいやと首を振る。

「いえ、普通忘れませんし、軽い方にしてもその反応はないでしょう」

「…しかし、月のものとなると無闇に鎮痛剤使うわけにもいかないか。…篭るか」

「…ところでその角は何ですか、虎鶫様」

「スタン装備(雷撃呪術)」

「何故そんなものが必要になるんですか…」

「意見の相違?」

 

 

 

「鵺鳥、何故戻ってこんのじゃ」

「調子が悪い」

「調子が悪い?骨喰が何ぞしたのか?」

「直接的には関係ない」

「ではなんじゃ」

「…放っといてくれ」

「一体、何だというのじゃ」

「…こんのすけー」

「月のものです、小狐丸。虎鶫様も女性ですので」

「…そういえば、おなごは孕まねば月のものがあるのじゃったな。道理でむらむらするはずじゃ」

「…何で俺に月のものが来るとむらむらするってことになるのさ」

「それは当然、月のものは子を孕むためのものであるからに決まっておろう。それに血の匂いがすればなぁ」

「とりあえず三日ぐらい篭ることにするわ」

「そのようにつれないことを言わずともよかろう」

「危ない橋は渡らない主義なので」

「衛生的に問題がありますので月のものの最中の性行為はご遠慮ください。…というか、排卵は月のものの前にあるはずですが」

「まあ狙わずともその気になれば孕ませられるのじゃが」

「おいやめろ」

 

 

 

小狐丸が戸を開けると、ツグミは座椅子にもたれかかるようにして畳に転がっていた。獣の角と尾、微熱があるのか瞳が僅かに潤んでいる。

「呪術の暴走か?」

「暴走はしてない」

小狐丸は歩み寄って尾を撫でる。ツグミはその手を払った。

「変なところを触るな」

「感覚はあるのか」

「大分鈍いがな」

「ならばよいではないか」

「よくない」

小狐丸はツグミの腹を撫でる。

「腹が痛いのか?」

「…それもある」

「おなごとは難儀じゃのう」

「そう思うなら放っておいてくれ」

「それではつまらぬじゃろう」

「・・・」

ツグミは無言で帯電を始める。

「物騒じゃのう」

「生理中の女の子ってそんなもんだぞ」

「小狐丸、虎鶫様は本当に御調子が悪いのですから、あまり余計なちょっかいをかけないようにしてください」

「そう言われてものう」

ばちばちと電気の弾ける音が威嚇のように響く。

「これをほうって置くのが良いとお前は思うのか?」

「…いえ、そうは言いませんが…」

ツグミはとても嫌そうな顔をした。

「とりあえず俺のことは放っておいてくれ」

「堂々巡りじゃな」

「そっちが諦めれば済む問題だろう」

 

 

 

 

 

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