刀剣たちと過ごす日々   作:ペンギン隊長

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一か月後


満たされない月の箱庭3

 

慣れてしまえば、この箱庭(ほんまる)の生活も悪くないと思えた。元々、私の世界は狭い。それが季節のない時の止まった箱庭になったところで、大騒ぎする程のものでもないのだ。

此処には、俺をいじめる人もいないわけだし。

「おや、此処にいたのか、小鳥」

「?何かあったか、三日月」

「いや、何というほどのことでもない。いつもならば居間のあたりにいる時間だろう」

「ん?あぁ、一の丸は概ね綺麗になったし、庭の方に手を入れたいな、と思って。情報構造体は無機物しか作れないし」

本丸の裏手には畑がある。あるが、俺と三日月だけでは手が回らないだろう。式神たちに手伝ってもらうというのもなくはないが、中庭に家庭菜園を作ってしまう位の方が丁度いいんじゃないかと思った。どうせ俺野菜はあんまり好きじゃないし。

「それで何故農具がいるのだ」

「家庭菜園か花壇みたいなものでも作ろうかと思って」

「…城の中庭には不釣り合いだろうなあ」

「別に不釣り合いだから誰が困るってわけでもないだろ。二つも中庭あるんだから、片方魔改造したっていいじゃん」

というか、片方は立派な池と離れ家と木があるので改造するのも手間そうだからあまり極端に手は入れないことにした。

「悪いとは言わぬ。…どれ、俺も付き合ってやろう」

「その格好で汚れ仕事はできないだろ」

三日月はいつものひらひらした和服だ。どう考えても野良仕事とかする格好じゃない。ちなみに俺はジャージに着替えている。

「む…内番衣装に変えて来よう」

「別に手伝ってくれなくていいって。急ぎじゃないし」

植えるものも用意してないしな。というか、種とか苗とか調達しようと思ったら、三日月に頼んで妖横町で手に入れてくるしかない。

「だが、小鳥は非力だからなぁ。力仕事は苦手だろう?」

「三日月だって力はともかく畑仕事が得意な訳じゃないだろ。寧ろ何か良さそうな植えるもん見つくろってきてよ。花でも野菜でもいいけど」

「…ふむ。お前はどれくらい植えるつもりでおるのだ?」

「んー…二尋か三尋を二つ、程度かなあ。最初から沢山やるより、小さめの作って、余裕があったら広げるくらいでいいかなって」

「あいわかった。では、俺は少し出掛けてくるとしよう。大人しく待っておるのだぞ」

「適当に庭の土掘り返してるよ」

囲いとかは構造体でも大丈夫だろう。土は駄目かもしれないが。

 

 

 

本丸には、馬が八頭いる。半分放し飼いのような状態で、式神たちが世話をしてくれているようだ。皆人懐こい良い子である。ただし俺は名前を把握できていない。本丸の外に出る時、三日月が足代わりに使うこともあるようだ。

「…でも、お前らって本当は軍馬なんだよな?」

といっても、馬が直接戦うわけじゃないからそう関係ないのか。肝が据わってるってだけで。

「わ、くすぐったいって」

 

 

「…小鳥は式にも馬にも好かれるのだなぁ」

「式神はともかく馬の方は嘗められてるだけな気がしないではないんだけど。ていうか、これ好かれてるの?」

「好かれておるのではないのか?」

「髪の毛咥えられるのは愛情表現と思いたくないんだけど」

後で洗わないといけなくなるからな。

 

 

 

「小鳥、今日はおむらいすにしよう。新鮮な卵と鶏肉がある」

「鶏肉と卵なら親子丼って手もあると思うけど。…まあ別にいいけどさ」

嫌いじゃないし、こうして提案してくる時は三日月も調理に加わってくれる。お互い料理の腕は可もなく不可もなくくらいだけど、それなりに手先は器用なので余程変なことをしなければ食べられないものが出来る事はない。

「おむらいすの方が見た目が華やかだからな」

うんちょっとその理由はよくわからない。

 

 

 

人の出入りこそないが、鳥や小動物、山の獣なんかが本丸に迷い込んでくることはある。おそらく、裏山か妖横町を介して入ってきているのだろう、と三日月は言う。まあ、触れるほどの距離にはこないのだけれど。この本丸は広義のマヨイガみたいなものなんだろうか。

裏山は一応本丸の内みたいな扱いだが、俺は行ったことがない。特に行く理由もないし。でも、その内行ってみてもいいかな、とは思う。全く気にならないわけじゃないのだ。山も昔から馴染みのある風景(ロケーション)なのである。少なくとも、都会の喧騒よりはずっと。うちの地元の山はそう険しくなくて、子供がハイキング気分で入っていける程度の規模だった。此処の裏山はどうなんだろう。

 

 

 




なお次話はR行きである
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