何人も引き継ぎ失敗している
二月頃 一度刀帳は埋まってる(レアは一振りのみ)ちなみに前任はみんな仲良し大好き花畑系美少女
小鳥の半面付けてる 赤猫先輩、初期刀無し(御大)
「…は?巫戯けるなよ」
その瞳は苛烈な怒りを宿して燃えていた。
「お前たちが前任に拘るのは別にいい。僕が気に入らないというのも別に構わない。で?前任以外と契約を結ぶつもりがないのは、彼女を愛しているからで、現世に留まっているのは彼女に再び会う為?死んだ彼女が転生して再び現れるのを待つ為?」
強烈な浄化の霊力がその怒りに応えるように渦巻く。
「巫戯けるな。
「恋愛ごっこ、だと?」
「悲恋ごっこと言ってやった方が良かったか?悲劇ぶってんじゃねぇよ。こっちは戦争しに来てんだ。本当にそいつと添い遂げたかったなら幾らでもやりようがあっただろう。それを怠っておいて、"待っている"なんてちゃんちゃらおかしいね。そんなもんは結局"愛しい人を亡くした可哀想な自分"ってやつに酔っているだけだろう。自分の望みを叶える為に手を尽くす事もしてない奴が嘗めた事言ってんじゃねぇよ」
何処からともなく取り出した長い棒を構え、その人間は彼らを睨みつける。
「白蓮が忘れられない奴から順番に来いよ、引導を渡してやる」
「雲雀さま、やりすぎではありませんか」
こんのすけに雲雀と呼ばれた少女は、最後の刀を刀解して言う。
「…やり過ぎ?元々、他の審神者と契約を結び直す気のない刀剣は刀解するというルールだろう。そして此処の刀剣は
「…問題行動こそありましたが、この本丸の刀剣は練度が高く、現世に留まることに対して前向きな意思を持っていて…」
「審神者を現世に留まるための使い捨ての道具としか思っていない上に、その目的が前任の転生体を待つ事で、使い潰して用が済めばポイ捨てするつもり満々の相手に尽くしてやれと?」
「・・・」
「別に、使い潰されること自体は受け入れても構わなかった。その目的が、例えば前任を殺した修正主義者を殲滅するためとか、廻り廻って俺の望みにも寄与するものならな。だが、色惚け男どもの恋愛ごっこの
「…雲雀さまの望みとは?」
「俺の望み?そんなもの、決まっているだろう」
憤懣やるかたない様子で雲雀は言う。
「家族の安寧だ。何ら珍しいものでもないだろう」
雲雀は保管されていた刀剣に対してもその意思を問い、前任に思いを残していたものを刀解した。残ったのは、二振り目として振るわれることもなかった刀剣が三振り。太刀の大倶利伽羅と短刀の愛染国俊と秋田藤四郎だった。特に秋田は前任、一振り目の記憶は全く引き継いでいないらしく、雲雀を素直に主として慕っている。愛染は雲雀に悪感情はないようだが、大倶利伽羅はどう考えているのか雲雀にはよくわからない。危害を加えて来ようと言う様子はないが、線を引いている風だった。
「ところで主君、怪我をされている様子ですが、手当はされないんですか?」
「ん?ああ…忘れてた。思い出したら何か痛くなってきた…ちょっと処置してくる」
「お手伝いします」
「気持ちだけ受け取っておく。お前達は戦場に出るための装備の確認でもしていてくれ」
雲雀は秋田の頭を撫でて部屋を出る。大倶利伽羅がそれを何とも言えない目で見送っていた。
「それにしても、妙な組み合わせだよな。そっちの太刀の兄ちゃんが初期刀なのか?」
「…いや。俺はあいつの初期刀じゃない」
短刀二振りに、え、違うの?という目で見られ、大倶利伽羅は目を逸らす。
「…いないんじゃないか、初期刀は」
「初期刀がいないなんてこと、あるんですか?」
「…さあな」
「まあ、保管庫にあった刀一個一個刀解してた時点で変だったかもしれないけどさー」
「雲雀さまは鍛刀ができないのですよ?予備の刀を殆ど全て刀解するというのは、流石に愚行だったのではありませんか」
「やるなら徹底的にするべきだろう。中途半端はどちらにもよくない。それに、普通の審神者は一振りから始めて増やしていくんだろう。そう思えば三振りいれば十分なんじゃないのか」
「一隊あたりの数は六振りです」
「戦場でドロップすることもあるんだろう。焦らなければその内揃うんじゃないか」
そう返しながら雲雀は刀傷に包帯を巻いて打ち身に薬を塗り、
「それはそうかもしれませんが…」
「武道の心得はないが、後方支援ならば俺にもできる。…無茶をしなければ問題はないだろう」
「…三振りともが短刀でない分にはまだ大丈夫なのでしょうが…」
「仕事をさせてやれなくてすまない」
雲雀はそう言って金平糖を鍛刀の式神に渡す。式神はそれを受け取りつつ、気にするな、というような身振り手振りをした。
「…己の職務を果たせないのは、悲しいことだろう」
式神は俺に任せろ、というように胸を叩いてみせる。
「…いや、俺は政府から鍛刀を禁じられてるんだ。その代わり鍛刀に関するノルマは免除されているが」
式神は勝手に少量の資材を使って鍛冶を始めた。
「えっ」
「――愚痴愚痴言うんじゃないよ、鬱陶しい」
突然の声に驚いて雲雀が振り返ると、そこには美しい男性が神棚に供えられた蜜柑を食べながら立っていた。面識はない。が、神棚のものを平然と食べているのだから祀られている神かそれに近しいものだろうと判断し、雲雀は頭を垂れた。
「お前のその頭の巡りの悪くないところは評価してやるよ」
「…付喪神でない神が本丸に降りてくることがあるとは思いませんでしたが」
「審神者と言ってはいるが、力ある神を降ろし対話できる者は少ないからねぇ。降りるにしても巫女に降りる方が楽だし。私は此処が神域の一部と呼べるから巫女がいなくてもその気になれば降りられるけれどね」
男性は機嫌よさそうにからからと笑い、雲雀に顔を上げさせる。
「草薙が目を付けたって言うからお前には皆興味を持ってるんだよ。あの派手な啖呵も、小気味良かったしねぇ」
「…はぁ、光栄です」
「女子供が嫌いな私が褒めてるんだ、もっと喜んだらどうだい」
「自分現在絶賛男性不信中なんで男の方に褒められてもなんら嬉しくないです」
「女神に褒められたかったって?」
「…それはそれで、地雷がきそうですね」
雲雀はすっと目を逸らす。
「大体自分、やれって言われたからやってるだけで信仰心とか時にないんで、捨て置いてくれて構わないですよ」
「天上ってのは娯楽に飢えてるのさ。ちょっと変わったことがあればすぐ広まるしちょっかいをかけたがる者も出てくる。その点、お前はもうとっくに手遅れさ」
男性は雲雀の首に手をかけて耳元に囁きかける。
「鞘当てがどうなるかってんで一部の神の間で持ち切りだよ。アレが当初の狙い通り手に入れる、いや草薙だ、刀剣だ、俺が横から掻っ攫ってやろう、ってね」
男性の長い指が雲雀の頬をなぞる。
「お前に選べるのは誰にその身と魂を委ねるかということだけだよ」
「…自分、人間やめる気ないんですけど」
「やめる前に死ぬ、って?」
「積極的に死のうとまでは思ってませんが」
「自害はやめとくれよ、面白味がない」
「道化は道化らしく精一杯踊れと」
「娯楽は長く楽しめるにこした事はないね」
デコピンをされ、雲雀は額を押さえて後ずさった。
「まあ、直接ちょっかいを出せるのは私の様な例外でなければお前が喚んだものだけだ。長生きしたければよく考えて行動するんだね」
「…御忠告、痛み入ります」
その時丁度、式神が鍛冶の完了を伝える。式神が差し出していたのは、小さな鍋だった。
「え、あ、あー、そういう方向で助けてくれるってこと?…ありがとう」
式神は任せておけ、というような仕草をした。雲雀は受け取った鍋をしげしげと見ている。大きさとしては、ミルクパンの類だろうか。
「お前は誰の味方につく気だい。………ふぅん。まあ、それが自然ではあるのかね。お前たちがつけばそれだけで有利になりそうだものねぇ」
式神と話(?)をした後、男性は雲雀に憐れむような視線を向ける。
「私は、今日はこれくらいにしておくことにするよ。精々長く生きて私たちを楽しませてくれよ、人の子」
「…善処します(神様から見れば人の一生なんてあっという間じゃないですかやだー)」
「…本丸内は後、何処に神棚があったっけ」
確か、台所と道場、祈祷所(?)、刀装を作る所にはあったよな、と思う。但し雲雀は何を祀ってあるのかは知らない。きちんと毎日お供えはしているのだが。特異なものが置かれているのは鍛錬所の蜜柑くらいのものだ。棚に備えられた札を読み解きでもしなければ祀られているのが誰かはわからないだろう。
「…まあ、いいか」
玩具扱いされている以上、ある意味で命の保証はされている。助けが本当に助けになるかはわからないが。そもそも雲雀は誰の助けも期待していない。己で動かなければどうにもならないのだと思っている。
「…そういえば、アレだのクサナギだの言ってたが、誰のことだ…?」
雲雀は首を傾げ、まあ、考えてもわかるもんじゃないか、と早々に思考を放棄した。クサナギはもしかしやら試験で喚んだ刀剣のことかもしれないとは思ったが。喚ばなければ何もしてこないというなら、喚ばないでおこうとも思う。面倒事は出来る限り回避したい。
自分の行動以外で面倒事が起こる可能性もあるのだし。寧ろ、他からもたらされる可能性の方が高い気がする。