現在確認されている戦場の全てを踏破できるだけあって、刀剣たちの練度は相応に高いものも多い。…低いものもいるようだが。
とりあえず、最低限の警邏用の出陣と遠征はするように頼んでおく。それはどの程度のものかは、僕には判断できないのだが…まあ、日々のノルマをクリア出来る程度にしておけば大丈夫だろう、多分。とりあえず彼らに任せた。戦場も、メンバーも。
「…で、今日はあんたが見張り役ってか?」
「見張りじゃなくて近侍と呼んでほしいものだな。まあ、慣例的には近侍は第一部隊の隊長が兼任するものでもあるわけだが」
本日の第一部隊…出陣を行う白刃隊は何やら練度が高いものを中心に構成されていた。それなりに高難度の戦場に行くのだろう。そして、この目の前の白も練度の高い刀ではあるが、白刃隊には入っていないようだった。
「呼び名がどうだろうとすることが変わるわけじゃないだろう。君たちにとって俺は主ではないのだろう?」
「あ、いや…それは…そうかもしれないが」
歯切れの悪い返事だ。言いたいことがあるなら言えばいいのに。
「こんのすけ」
「お呼びですか?」
「俺が処理できる仕事があったら教えてくれるか?」
「…暇だ」
「好きに遊びに行けばいいんじゃないか」
「そういうわけにもいかんだろう。…そうだ、俺も何か手伝おう。どうだ」
「どうだ、と言われても…」
「俺だって書類の整理ぐらいはできるぞ」
基本的に俺は共同作業というものが苦手だ。何でも自分のペースで動きたい。相手に合わせることができない、とは言わないけれど。
「自分のことも覚束無いのに他人に指示なんて出せねぇよ」
「そうか…いい考えだと思ったんだがな」
「…多分あんたができるって言うんならあんたに指示出してもらった方がうまくいくぐらいだと思うんだよな」
「…いや、それは流石にないな。こういうことで俺が主体になるってのはダメだ」
よくわからん話だ。別に実際そうしたいって話じゃないから別にいいのだが。
「…しかし、退屈だ。このままだと俺は退屈で死ぬ」
真面目な顔で何言ってるんだこいつ。
「…遊びに「行くなら君にもついてきてもらうことになるが」…」
どうしてそうなった。大体、私を巻き込んだところでそう楽しくは…あー…そういや見極めるとかなんとか言ってたもんな。何かしら一緒に過ごさなきゃ相手の人柄をわかるも何もないからな…。どうしろという話でもあるが。
「…まあ、ずっと閉じこもってるのも問題か」
「ん?」
「とりあえずキリのいいところまで終わらせる」
「おう」
まあ、かといって何をするという目的があるわけでもないからなぁ。正直、本丸の何処に何があるかも覚えきってないし。
「…そういえば君は、何故新しい本丸ではなく、此処に来ることになったんだ?初期刀もいないようだし」
「何故、と言われても…僕が希望したわけじゃないからな。…まあ、俺に鍛刀させないためなんじゃねぇの」
「君に鍛刀をさせない?」
「初期刀がいないって話にも繋がるんだが…審神者の適性を見極めるための最終試験で俺は何やらヤバいもん喚んだらしくてな。鍛刀禁止令が出ている。…俺は別にヤバいやつだとは感じなかったんだがな」
一応、例の試験では打刀用の依代刀を使用したのだが、それでも太刀を降ろす者ぐらいまではまだ、稀にいるらしい。逆に脇差や短刀を降ろす者も、稀にいるらしい。だが、俺が降ろしかけた奴は、他に例を見ないもの、だったようだ。
「らしい、って何だ。君がやったことだろう」
「名を尋いてないから相手の正体がわからん。少なくともこの本丸にいる刀剣ではないのは確かだが」
「…そりゃおかしくないか?君の口振りじゃ何やら珍しい刀剣を降ろしかけたんだろう?政府は何でそいつを降ろさせないんだ」
「"人の手では到底制御できるはずがない"かららしいぞ。まあ、反逆を恐れているということだろう。俺は特にその必要性は感じていないが」
そもそも興味がない。どちらにしても。…あの剣がどんな人なのかは、全く気にならないわけではないが。
「…気になるな。どうだ、今からそいつを降ろしてみるってのは」
「…また応えてくれるとは限らんし、そもそも最終的にお前たちは俺を殺すことを選ぶかもしれないだろう。そうなった時に大惨事になる気がするから今は遠慮させてもらう」
「・・・」
何故あんたがそんな顔をするんだ。そりゃあ、俺の生死はあんたにも関係のあることだし、興味がないわけじゃないだろうが。何を後悔したって言うんだ?