刀剣たちと過ごす日々   作:ペンギン隊長

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前回から二週間くらい


魔法の呪文がなくたって7

 

 

 

「…おや、主はいずれだ?」

三日月は優雅に首を傾げてみせる。

「…自室にいるはずだが」

「今行って会えるかわからんがな。主の行動は読めんから」

「…気難しいのか?」

「いや…気難しいと言われるとだいぶ意味合いが違うんだ。まあ、難しい相手なのは確かだが」

「主君は、"ちゃんと"話しかければ答えてくださいますよ」

「…こちらから行かなければ顔を合わせることもないな」

「厭われてはいないけれど、好かれてもいない、といったところかな。迷惑そうにされたことはないけれど歓迎もされないし」

蜂須賀の言は割とオブラートに包んだ表現である。特に関心がない、というが一番正しいだろう。

「そうなのですか」

「うん。浦島はよく訪ねているらしいけれどね」

「浦島殿のあぐれっしぶさには僕たちも一目置いています。エゴをエゴと割り切る潔さなども」

などと雑談していると、一の丸の方から浦島が顔を出す。転移門から本丸に続く広場に白刃隊に加えて二振り新しい刀がいるのを見て、外廊下の手すりから身を乗り出して手を振る。

「蜂須賀兄ちゃんたちおかえりー。そこにいるのって長曽祢兄ちゃんだよね、もう一振のヒトは?」

「俺は三日月宗近だ。まあよろしく頼む」

「俺は浦島虎徹、よろしくぅっ!」

そう返した後、室に向かって何言か言葉を交わした後、屋根を伝って下りてきた。

「二刻ぐらいは主さんの部屋に近づくなって歌仙さんが。小狐丸さんの時みたいになったらやなんだって」

「…ってことは、主は今寝てるのか」

「主が寝ていると何かあるのか?」

「いや、寝てると、というか、目を覚ましてすぐにはパニックを起こす事があるらしくてな。それで怪我する事もありえんわけではないから、近付くなと、そういうことだろう」

鶴丸のぼかした言に三日月は目を細めた。

「いやぁ、そもそもタイミング的に主さんが寝ちゃったのが三日月さんたちの所為だってのもあるんじゃないかなぁ。歌仙さん、主さんに過保護だし」

「…え?」

「霊力消費の貧血みたいなので失神しちゃって、眠い、寝る、って」

 

 

 

「主はまだ眠っている。妨げるような真似はしないでいただけるかな」

背後からかけられた言葉に、三日月は戸にかけていた手を引っ込め、ゆったりと振り返った。

「お前が歌仙か」

「歌仙兼定だ。それで、主に何用かな、三日月宗近。暫く近付かないよう浦島に伝えさせたはずだけれど」

「主となった人間と一度も顔を合わせぬままというのは落ち着かなくてな。せめて顔だけでも見ておこうかと」

微笑を浮かべる三日月を歌仙は苦い顔で見る。

「駄目か?」

「…寝ぼけている主に話しかけたり、無理に起こしたりはしないでくれよ」

「あいわかった」

静かに戸を開けて三日月は室に入る。歌仙も続いて室に入った。

室の中には、ピアノの静かな音色が響いていた。いつも小鳥が音楽を聞いている端末から音は出ている。

部屋を見回し、三日月はベッドに歩み寄る。そして、そこで丸くなって眠っている小鳥を見て目を細めた。

「…歌仙、主は"三日月宗近"と契った事があるだろう」

「…君が言っているのがどれ(・・)を指しているか知らないけれど…主が以前受け持っていた本丸には最近顕現されるようになった刀を除く42振りが揃っていたようだから、当然そこにも三日月宗近はいただろうね。そうでなくても三日月先輩も気にかけていただいていたようだし」

「…成程なぁ」

三日月は小鳥の前髪をそっとかきわけた。

「…主に粗相をするようなら、僕は君の首を落とすことも辞さないよ」

「ははは、それは恐ろしいな」

歌仙が本気で刀に手をかけるので、三日月は肩を竦めて小鳥から一歩離れた。歌仙は小鳥の様子を見る。目を覚ました様子はない。歌仙は小さく息を吐いた。

「少々過保護が過ぎるのではないか、歌仙」

「主がこれ以上心を閉ざしてしまったら困る。主は他者の力を必要としない。手を伸ばしてくれないどころか、こっちが伸ばした手も掴んでくれなくなったら、それこそ主は一人きりだ」

「だからといって、今のままでいいのか?」

「こちらの都合で変えさせるのはこちらのエゴだ。主だって現状が良くないと思っていれば変えるだろう」

「そう簡単に変えられるものなのか?」

「主は自分で選んでそうなった。先輩が言うには元は礼儀正しく刀剣と真摯に向き合ってくれそうな子だったというから、主は今そうする価値を感じていないんだろう」

「・・・」

「主は、役目だから此処にいるにすぎない」

三日月が何か言おうとする前に、小鳥が目を覚まそうとしている事に気付いた歌仙が黙らせる。ゆっくりと瞼を開けた小鳥は目元を擦りながら起き上がる。

「…のどかわいた」

呟き、少しふらつきの残る足取りでキッチンに向かった。

 

 

 

 

 

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