49振り揃ってる
「へ?この本丸で見習いの受け入れ、ですか?…ええと、控え目に言っても、うちの主さまは指導者向きではないのですが…」
「…ええ、確かにこの本丸の成績は優秀ですが、新人研修を行うには不適切だと思われます。主さまは後輩の指導などが行える方ではありませんので」
「診断書が出ているはずですが。回復傾向にあるとはいえ、主さまは他者の指導が行える精神状態にはありません。問題が起こるのは自明の理と思われますが」
「…仰せのままに。但し、どうなってもこちらは責任を取れませんからね」
通信を切り、こんのすけは溜息をつく。
「…はあ、今から胃が痛いですね…」
「天岩戸する」
「主さま、せめて相手の顔を見てから決めてください」
「会いたくない」
「そのような事を仰らず」
「僕の時、研修は本部で先輩と一対一だった」
「それが、暫く本丸に見習いの方に住み込みで仕事を見せる形になるそうで」
「岩戸する」
「おやめください」
「そもそも、主に後輩の指導なんてできると思うのかい?」
「私もそう申し上げたのですが…上の意向は変えられず。この本丸が成績優秀かつ、刀剣が揃っているのは確かですから…」
「…きな臭いね」
「疑わしきは罰せず、でよろしくお願いいたします」
「主に危害を加えた場合は容赦しないよ」
「重々承知です」
歌仙は肩をすくめる。
「…で、何時から来るって?」
「三日後から、最低一週間、場合によっては一ヶ月、とのことです」
「他の刀剣への連絡は…君がしてくれるのかな?」
「…連絡して参ります」
「あ、大将、今度見習いが来るって本当なのか?」
「ああ。まあ、多分見習いがいる間俺部屋に籠るけどな」
「ええっ…大将の顔見れないと寂しいだろ。ちゃんと顔出してくれよ」
「そちらが来るのは制限しない」
「そ、そりゃ勿論俺からも行くけど、チビたちが寂しがるだろ?」
「…来るだろう?」
「はい、主君に会いたい時は会いに行きます」
炬燵に収まっている小鳥の背に前田が抱き付く。後藤は僅かに目を泳がせた。
「大将~」
「見習いが嫌いでも苦手でもない、好感が持てる相手なら岩戸しない」
「そもそも何で大将は見習い来たら籠るつもりなんだよ」
「関わりたくない」
「一応、主様に主様に審神者として指導を受けるために見習いさんは来るんじゃないんですか?」
物吉が茶を入れた湯呑を配って炬燵の空いていた席に収まる。
「指導が出来るような審神者に見えるのか?」
「…ええと」
物吉は小鳥の主らしい姿を見た事はない。顕現は手ずからではなかったし、手入れも基本的に式神任せ、出陣遠征の指示も出さない。正直、霊力供給してるだけの人である。
「偶には、式神任せでなく手入れをしてくれてもいいんじゃないか」
「言われればするが」
鶯丸の言葉に小鳥はかくりと首を傾げる。
「多分上手くないぞ」
「練習するなら付き合いますよ、主君」
「んー…岩戸しながら練習するか」
「主様…」
「まあ、慣れない内は短いものから始める方が無難か。誤って主が怪我でもしてしまったら困る」
「じゃ、じゃあ俺も、大将の練習に付き合うよ」
「後藤の兄さんはまず練度を上げることを優先した方が良いのでは?」
「え?そりゃあ、鍛錬はちゃんとやるけどさあ…」
「"チビたち"よりも後藤の方が弱いもんな?」
「それは来た順番の問題だから仕方ないって話になっただろ?!」
「ははは」
薬研は炬燵に置かれていた蜜柑を剥いて一つ後藤の口に放り込んだ。
「守るためには力があるにこしたことはないからな」
薬研のその言葉に後藤は神妙な顔をする。
「――主さん、本丸に見習い受け入れるってマジ?」
「受け入れたくないが来るのを拒否はできないらしい」
浦島は眉をしかめる。
「…主さんが後輩の指導とか無理だよね?」
「無理だ。岩戸する」
「引き籠るなら見習いの受け入れ拒否すればいいじゃん。…っていうか、拒否前提なんだ?」
「仲良くできる人間の方が少ない。ぶつかるのはめんどうだから顔を合わせないに限る」
「…それ、大将が最初籠ってたのと同じ理由ってことだよな」
「人間と"本当に"仲良くできた覚えがない。…先輩はよくしてくれたが」
小鳥は遠い目をする。
「先輩の様なお人好しはそうそういない。見習いがそういう人種の可能性は一割未満だろう」
「根拠は?」
「ない。何となくそう思った」
「主君に危害を加えるようなものであれば、前田が誅を下します」
「歌仙も似たような事言ってた」
「…無暗に危害を加えてはいけないぞ、前田」
「御心配には及びません、鶯丸殿。躯より先に精神を破壊しますので」
「それは普通に斬ったりするより性質が悪いぞ、前田の」
薬研が頭痛がするような顔をした。