小鳥ガチ勢はやっといなくなってくれる…的なアレだけど、大半は純粋に祝ってくれている
小鳥はスルーを覚えた
祝い事はなんであれぱーっと楽しむのがこの本丸の刀剣の流儀である。特に宴会ガチ勢は夕食を宴会にする機会をいつも虎視眈々狙っている。故に、揚羽が試験に合格したと聞いて宴になるのも、また自然なことだった。
「合格おめでとうございます、揚羽さん。新しい本丸でも頑張ってくださいね」
「ありがとうございます」
既に酒の入っているものも何人かいるが、大部分は素面で料理を楽しんでいる。揚羽はちらちらと歌仙に世話を焼かれている小鳥を見る。
試験に合格したということはつまり、研修が終わるということである。つまり、揚羽と小鳥の縁は切れるかもしれないという事でもある。それが嫌で研修期間を引き延ばしてきたが、試験を突破できず、審神者不適格という事になる方が縁という意味では絶望的になるので、泣く泣く一発合格した次第である。
縁を繋ごうと思えば、端末アドレスの交換は必須になる。それを切りだす機会が欲しいと揚羽は切に思う。
場が盛り上がってきて、順に芸を披露する事になった。歌や踊りから手品、物真似などの一発芸などと、色々である。そんな中、小鳥が前田と浦島を引き連れて高座に上がる。
「お、主さんも舞台に上がるのか!」
「…そこはかとなく、嫌な予感がいたしますな」
「あ、浦島君と前田のずるーい」
揚羽はそっと映像記録メディアをスタンバイした。
音楽が流れ始める。
「♪~」
小鳥がメインボーカル、前田と浦島はコーラス兼ダンスという構成だった。三人とも割とノリノリである。何振りかは小鳥は酒が入ってるんじゃないかと思った。残念ながら全く酔っていない。
「♪~」
「祝いというにはささやかかもしれんが、揚羽には俺たちから加護を贈ろうか」
「おお、良いな。私も加わらせてもらおう」
ほろ酔い加減の岩融の言葉に、同じくほろ酔いの小狐丸が乗っかる。
「あまり変な縁を作ったらダメだよ」
「たんとうですぐにあえるかごにしましょう。なかまはおおいほうがこころづよいです」
「ふむ、別の俺たちが助けになれるように、という加護だな」
岩融が揚羽の額に口付けを落とす。
「お前は独りではない。それを忘れぬようにな」
「この私はぬしさまただ一人のものですが、あなたの元に訪れる私はよくあなたを助けてくれるでしょう。可愛がってやってください」
「あなたのぼくをよろしくおねがいしますね」
酔っ払いのノリで皆次々に一言をかけて揚羽の額に口付けを落としたり頭を撫でたりする。揚羽はちょっと照れた様子で彼らの言葉に頷いたりしている。
ふと、小鳥が揚羽に歩み寄る。
「…主?」
「揚羽は良い主になるといい」
小鳥はそう言って揚羽の額に口付けを落とした。
「は、はいっ」
揚羽は真っ赤になって張り子の虎のように何度も頷いた。額を押さえて「浄化されるっ…」とか呟いている。その反応に一部の刀剣たちの揚羽を見る目がぬるくなる。
「いいなー、俺も主さんにちゅーしてほしい」
「ちゅー?」
小鳥は浦島の頬に口付ける。
「へへっ」
「・・・」
歌仙に無言で回収された。
「せんぱぁい、せんぱいと会えなくなるのは、いやですぅ…」
大分酔いが回ってきたらしい揚羽が小鳥に絡みながらべそをかいている。小鳥は平然とおつまみ料理をもぐもぐしている。
「せんぱいぜったいせんぱいから私に連絡してくれないじゃないですかぁ…わたしからでも連絡させてくださいよぅ…」
「友人なら他にもいるだろう。余所へ行け」
「せんぱいじゃなきゃいやですぅ…」
「(…鬱陶しい)」
「せんぱいじゃないと、いみがないんです…」
べそべそしている揚羽を小鳥は胡乱な眼で見る。
「俺が至って普通とは言わないが、他にもっと付き合って楽しかったり頼りになったりする奴はいるだろう。そっちに行け」
「…せんぱいが、はじめてなんです」
小鳥に抱き付いたまま、揚羽は言う。
「このひとのしかいにうつりたい、みとめられたいって、わたしのいしでおもったのは、せんぱいがはじめてなんです…ぎむやつきあいじゃなくて、えんをむすびたいって、そうおもったのは、せんぱいだけなんです…」
「…お前は俺を一体何だと思ってるんだ」