刀剣たちと過ごす日々   作:ペンギン隊長

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別視点


隊長は人の話を聞かない4

 

確かに人間というのは信用ができないかもしれない。だが、それなら逆に、人間…小鳥にとって俺たちはどうだ。極めて誠実に、危害を加えようという素振りも見せなかった彼女を本気で殺そうとした。ただ、人間だから、というだけで。そんな俺たちを彼女は信用できるのか?

できるわけがないに決まっている。だから、彼女は俺たちに彼女を殺すという選択肢を提示したのだ。俺たちが彼女に対して殺意を持っている、と判断して。

それなのに俺たちは、彼女を見極めるなどといって一週間の猶予を求めた。見極める?俺たちは何を勘違いしていたんだ。俺たちはすぐに決断するべきだった。そんな値踏みをされるような真似が心地よいはずがない。そんなものは俺たちと彼女の溝がますます広がるだけだ。

俺たちが主を選べないというのなら、彼女だって部下を選べないっていうのに。

「…どうした」

「…君は」

己が死んだ方がいいと思っているのか、と問いかけて、やめる。そんなことを尋いてどうなるというんだ。

「…いや、なんでもない」

「そうか」

その冷めた瞳が、ある意味で恐ろしくもある。今更間違いに気付いたとして、俺に何ができる?いっそ彼女が己に従えと言ってくれていれば、いや、それはただの甘えと責任転嫁だ。先に彼女に手をあげたのは俺たちなんだ。

「・・・」

結局、俺も彼女を素直に主と呼べない以上、何もいうことはできないのだ。

 

 

小鳥は少なくとも俺たちに悪意を向けはしていない。だが、好意的にも思っていないだろう。当然だ。この状況で好意を持てる方が怖い。…いや、外見だけ好きとかならありうるんだろうか。

「…あ」

「ん?五虎退じゃないか。どうした?」

「虎君が、一匹見当たらなくって…」

確かに、涙を堪えているような顔をしている五虎退の傍にいるのは四匹だけだ。

「…俺も探すの手伝おうか?」

「えっ」

五虎退がまじまじと小鳥を見た。その視線をどう解釈したのか、小鳥は僅かに困ったように肩をすくめた。

「…いや、俺が手を出すべきじゃないか。悪いな、困らせて」

「そっ…そんなこと、ないです」

五虎退が慌てて言い募る。

「主様が手伝ってくれたら、とても助かります」

その言葉に小鳥は僅かに目を見開いて、そして、また少し困ったような顔をした。

「俺に気を使わなくてもいい」

「僕、主様が手伝ってくれるなんて、言ってくれると思わなくて、だから」

「君にとって虎君たちは大切な存在(もの)なんだろう。つい昨日顔を合わせたばかりの人間には任せられないと思っても何らおかしくない」

「そういうことじゃなくて!」

五虎退が、大きな声で主張した。

「前の主様は手伝ってくれるような人じゃなかったから、あなたが手伝ってくれるとは、思わなかったんです」

「…そうか」

小鳥は目を細めた。

「だから、主様、虎君を探すのを手伝ってください」

「ああ、わかった」

戻されかけた手をがっちりと掴んで、小鳥を素直に主と呼べる五虎退が、少し羨ましく思ったし、意外にも思う。気弱で、兄たちの後ろに隠れているような印象があったのだ。五虎退もやはり、藤四郎の刀だということだろう。

 

 

虎はほどなくして見つかった。どうやったものやら、庭の木の上に登っていたのだ。降りる気がないのか、降りられないのか、自分から降りてこようという気配はない。

「虎君!」

「…木登りなど確か小学校以来だが、まあなんとかなるだろう、多分」

ぼそりとひとりごちて、小鳥は躊躇いもなく木に登り始めた。

「主様?!」

「おい、いくら小鳥ったって、無茶はよくないぞ」

「無茶をした覚えはない」

小鳥は少々危なっかしげではあったがすぐに虎のいる枝までたどり着いた。そしてゆっくりと近づき、抱き上げる。

「…怪我等はなさそうだな。…手を貸してくれるか?」

「え?」

小鳥は虎を抱えたまま上体を後ろに倒し、足でぶら下がる姿勢になった。

「ほら」

「あ、ありがとう、ございます…」

「どういたしまして」

虎を五虎退に渡し、小鳥は上体を起こそうとする。そして、体勢が崩れた。

「!」

咄嗟に体が動いた。受け止めた彼女は、見た目通り、短刀たちとそう変わらない程度の重さしかなかった。

「…あり、がとう」

「…言わんこっちゃないな。肝が冷えたぜ」

「主様、大丈夫ですか?!」

「ああ、彼が受け止めてくれたからな」

「良かった…」

小鳥は僅かに苦笑した。

「…これは、格好がつかないな」

その呟きに光忠のことを思い出した。

「そういえば、そろそろ昼餉の時間になるんじゃないか?」

「もう、そんな時間ですか?気がつきませんでした」

太陽の位置からしても、そろそろ(ひる)だろう。

 

 

 

 

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