エピローグ的な
「まあ、そういうわけで、新入りの練度上げが更に厳しくなったわけだ。まあ、古参が大体練度上がりきってるってのもあるがな」
勿論上がり切っていないのもいる。
「ふむ…」
「とりあえず、特がつけばいいのかい?」
髭切がほけほけ笑って言う。
「そこで止まってもらっては困るがな。…ところで主、何故髭切に肩車されているのですか」
「…わからん」
「おや、こうすればいいのかと思ったんだけど違うのかい?」
二人とも本気で言っているらしいので、長谷部は頭を抱えたくなった。ボケ二人を放っておいた結果がこれである。
「兄者、やはり主は女人なのだからその格好は拙いんじゃないか。腕に抱いたらどうだ」
「うーん、でも、主から僕の背に乗って来られたのだけど」
「乗れって意味かと思った」
「(何処から突っ込むべきなのか…)」
何処からでもいいからとにかく突っ込みをいれるべきである。ボケだけで会話させると碌な事にならない。
「そういえば主は、何を見ていたんだい?」
「何も見ていない。鳥の声を聞いていた」
今もまだ、小鳥はどうしても必要にならなければ視力に補正をしない。不確かな視界でうろうろする。不便は感じていないらしい。
「そういえば、何かの声がしていたね」
「ちるちるちるちるちっちっち」
小鳥は鳥の鳴き真似をする。目白らしい。
「主は鳥が好きなのかい?」
「好き?…多分」
小鳥は軽く首を傾げる。
「ちるるるるーちっちっち」
「それで、本丸の庭に鳥が入ってくるようになっているのか」
「…それはどちらかというと短刀が設置した餌台によるものだと思うが…」
余程特殊な本丸でなければ、裏山に棲む鳥獣を防ぐようにはなっていない。その上で来るかどうかは、環境によるものである。実の所、前任の時代は庭も荒れて寄りつく鳥獣はなかった。小鳥は人の出入りは制限しても、それ以外は制限していない。
「餌台?」
「主が資料室に置かれた(と思われる)野鳥図鑑に載っていたものを、粟田口が設置したのです。時々、果物を置いているようですよ」
ちなみに巣箱は設置していない。
「気が付かなかった」
「主が部屋に籠っていらっしゃる事の方が多かった時のことですからね」
「ちるるっちっちっちー」
小鳥は口を尖らせる。
「じゃあ、見に行ってみようか、主」
「ちるる?」
「僕も、気になるな」
「兄者、俺たちはこれから練度上げの出陣に出るんじゃないのか」
「鳥の餌台を見に行くのはそんなに時間のかかることなのかい?」
「兄者はそれが具体的に何処にあってどんな形をしているのかを知らないだろう」
「鳥がいるところを探せばいいんだろう?きっとすぐ見つかるよ」
「…庭の景観を損ねない所だからな。表庭の奥まった所になるぞ。それと、用があるわけでないのなら主を降ろせ」
「えー…」
「ちるるるるー」
「兄者…」
「ただでさえ主は体力がないんだ、抱えて歩いたりなんてしていたら病人のようになってしまうだろう」
「あー」
小鳥は実の所、その経験があるとも言える。青嵐の三日月に助けられた直後は著しく体力が低下していたし、今も普通の人より体力がないかもしれない。
「そうなったら僕が責任を持って世話をするよ」
「兄者に人の世話が出来ると思えないんだが…」
「そういう問題じゃない」
長谷部は溜息をついて小鳥を後ろから抱きあげる。
「確かに主は目を放すと何処へ行かれるかわからない困った方だが、御自分で歩き回られる方が良いのだ」
「困る?」
「主が一人で出歩かれて迷子になられれば俺たちは心配します」
「迷子になったことはそんなにない」
「全くないわけではないでしょう」
「むぅ」
「主さま、こんのすけは懐炉ではございませんが」
「さむい」
「冬ですからね。…ええと、そろそろ本題に入りたいのですが」
「知らん人が来る話はもうやだ」
「一応、強引に主さまに任せようとする方はもういないとは思いますが…いえ、今度は見習いの研修という話ではないのです」
「ちーちるちる」
小鳥は首を傾げる。
「主さまのマイブームか何かですかそれ…元ブラック本丸男士を、浄化していただきたい、ということなのです」
「浄化?」
「主さまにしていただくのは必要があれば手入れをすることくらいで、短期間この本丸で刀剣を預かるという形になると思われるのですが…」
「どうなる?」
「浄化が終われば刀解か他の本丸へ移っていただくそうです」
「何故僕?」
「主さまの浄化能力は群を抜いておられますから…それに、この本丸は現在確認されている刀剣が全て揃っておりますし」
「ちるるー」
小鳥は考え込むように頭を捻る。
「歌仙たちは困らない?」
「刀剣の状態で寄越されるか、顕現した姿で寄越されるかにもよる気がいたしますが…彼らなら、大丈夫ではないでしょうか」
こんのすけは目を逸らす。