似た者同士のような、そうでもないような 半年以上経ってる
「僕には、弟がいるんだ」
「僕には、妹弟がいるんだ」
「名前は…ええと、何だったかな」
「名前は、いーちゃんとまーちゃんとえーちゃんとしーくんとたーくん」
「顔立ちは、然程似ていないかもしれない」
「ええと、どんな顔だったかな」
「「でも、大切な兄弟なんだ」」
「…今は会えないけれど」
「…今此処にはいないけれど」
「妹弟たちは一般人だから連れてくるわけにもいかないし、あまり血生臭いことに関わらせたくもないし。寧ろ、こちらに来てほしくはないな」
「弟も僕と同じく源氏の重宝であり、優れた太刀なんだ。過去にこの本丸にいた事もあるんだけど…折られてしまってね」
「勿論、会いたい気持ちはあるけれど」
「また会いたい気持ちは、あるけれど」
二人は揃って目を伏せる。
「弟は、顔立ちは違ってしまっているけれど、体格は僕と同じくらいなんだ」
「妹弟達は皆、顔立ちは似ていないし、僕より背が高いんだ」
「少し心配性なところもあるけれど、良い子だよ」
「皆僕よりしっかりしていて、自慢の妹弟なんだ」
「「…会いたいな」」
「君にも、会わせてみたい」
「えっ」
小鳥はきょとりと目を瞬かせる。
「きっとね、弟も君の事を気に入ってくれると思うんだ」
「うーん、まあ僕も会ってみたいとは思うけれど、今の状態では無理だろう?この本丸は閉ざされているし、鍛刀することはできない」
「政府の封印を解いてしまえばいい。僕が本気になれば、それくらいの事は出来る。君も、兄弟には会いたいんだろう?」
「会いたいよ。会いたいけど…でも、でも、僕が家族を大切に思っているって当然のことが政府に判らないわけがない。政府の意に沿わない事をしたら、人質にされてしまうかもしれない。だって、僕の家族は普通の、一般人であって、戦いとは関わりのないところで生きているはずなんだ」
「大丈夫、僕は誰にだって負けたりしない。君が望むのなら、君の家族だって守ってあげる」
「一人で守れるものなんて、たかがしれてる。強くても数の暴威はそれ以上だ。個じゃ集団には勝てない」
「…僕は信用ならない?」
「信用とか、そういう話じゃない。有効な手段があるのに、それを使わないのは馬鹿だってことだ」
髭切はすっと目を細める。
「ねえ、小鳥、君は僕が神様だって、知らないのかい?」
「神様だって、出来ない事はあるでしょ」
「君が信じて、願ってくれたら、僕は奇跡だって起こしてみせるよ」
髭切は小鳥の手を取って微笑む。
「願ってはくれないのかい?僕らが兄弟に再会できる未来を」
「…願いたい、けれど」
小鳥は目を伏せる。
「それは、願ってもいいことなの?誰かが困ったりしない?」
「兄弟に会いたいと願う事が、何故悪い事になるんだい?」
「…うん、そうだね。できたら、僕の家族に君も会って欲しいな」
「ふふ、僕みたいなのが突然訪れたら驚かせてしまうかな」
「…驚くだろうなあ。僕、他人を家に連れてきた事ないもの」
「そっかあ」
髭切は、小鳥の手を己の頬に添えさせる。
「ねえ、僕の名前を呼んでくれるかい?」
「…髭切(だっけ?)」
「約束するよ、小鳥。僕のこの
そう言って髭切は蕩けるような笑みを浮かべる。
「だから、小鳥は、ずっとずっと、僕の傍にいてくれるかい?」
「…重い」
小鳥は若干表情を引きつらせる。
「それもう一歩間違えたらプロポーズだよ、わかってる?君」
「ぷろぽおず…ああ、求婚のことか。まあ、あながち間違ってもいないかもね」
「え」
「僕のお嫁さんになってくれる?小鳥」
「えっえっえっ」
「僕は君が気に入ってるんだ。ずっと共にいてほしいと思うくらいにはね。…ダメかい?」
「…ダメとは言わないけれど」
小鳥は目を泳がせる。
「…待ってくれ、思考が追い付かない。僕にとって、君にとって、"それ"はどんな意味があるんだ?だって、だって、だって、僕は人間で、君は刀剣で神様で」
「小鳥は、僕といるのは嫌?」
「…嫌じゃない」
「だったら、それでいいんじゃないかな」
「…いいのかなあ?」
「いいんじゃない」
「…いいのかなあ」
髭切は笑って、小鳥を抱き上げる。
「それじゃあ、行こうか。小鳥の両親とかにも挨拶しなきゃいけないし」
「あ、挨拶?」
「娘さんを僕にください、って挨拶するんだろう?人間が求婚した時には」
「んんん?(あれ、僕了承したことになってる?了承…したっけ…?)」
「ちゃんと掴まっててね。ちょっと衝撃が来るかもしれないし」
「え、う、うん…?」
「いくよ」
髭切は己の本体である太刀を抜く。小鳥にはただの刀にしか見えないが、それはいっそ、禍々しいと言っていい程に苛烈な神気をまとっていた。それが小鳥の霊力に触れた傍から浄化され、純粋に強力な神力へと変わっていく。