ジャパリ・フラグメンツ   作:くにむらせいじ

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 まえがき

 〈 とれる(組み換え版) 〉の元の文章です。短いです。
 


〈 とれる(通常版) 〉

 

 温泉。

 

サーバル  「かばんちゃんも脱ぎなよ!」

かばん   「ふぇ、うあ、うあああ!」

 

 全ての毛皮……ではなく、服を脱いだ、サーバル、かばん、キタキツネ、ギンギツネが、温泉に浸かっていた。

キタキツネ 「しっぽはとらないの?」

ギンギツネ 「あなたなに言ってるのよ。しっぽはとれない…………」

かばん   「どうしたんですか?」

ギンギツネ 「とれた……」

 ギンギツネが腕を上げた。その手は、灰色のしっぽを握っていた。しっぽから、お湯がしたたった。

かばん   「ええー!!」

キタキツネ 「ぼくもとれた」

 キタキツネが腕を上げた。その手は、黄色のしっぽを握っていた。

かばん   「それってとれるの!?」

サーバル  「しっぽもとらなくちゃだね」

かばん 「だめだよサーバルちゃん! ちょっとまってみんな! しっぽはとっちゃだめだよ!」

サーバル  「なんで? かばんちゃんにはないから、とったほうがいいんじゃないの?」

 サーバルも、しっぽを引っ張って外した。そしてそれを、かばんに見せた。

かばん   「ああ! やっちゃった……。痛くないの? みんな」

ギンギツネ 「べつに痛くはないわね。とれるとは思わなかったけど」

キタキツネ 「するっととれた」

サーバル  「みてみてかばんちゃん。おしりもつるつるになったよ!」

 サーバルは、立ち上がって、おしりをかばんに向けた。

かばん   「うわあっ! サーバルちゃん、見せなくていいから!」

 かばんは、両手で顔を覆った。

ギンギツネ 「なにもないと、へんなかんじね」

 ギンギツネも立ち上がって、自分の、しっぽのあったあたりをさわった。

ギンギツネ 「キタキツネ、しっぽは、むこうへおいておきましょう」

 サーバル、キタキツネ、ギンギツネは、しっぽを持って、脱衣所へ向かった。

 かばんが、三人の後ろ姿をちらりと見て、すぐに目をそらした。

 

 

サーバル  「そうだ! みみもとったほうがいいね!」

かばん   「だめ!! やめてよサーバルちゃん!!」

 かばんが立ち上がった。かばんはあわてて前かがみになって、両手で体を隠した。顔は真っ赤だった。

サーバル  「どうしたのかばんちゃん? さっきからなんかへんだよ」

かばん   「へんなのはみんなのほうだよ!」

キタキツネ 「とれた」

 キタキツネは、左手で自分の左耳(けもの耳)を持っていた。左耳が付いていた所は、なんの跡もなく、ヒトの頭と同じで、髪があるだけだった。

かばん   「ええ! つかなくなったらどうするんですか!?」

 かばんが、体にバスタオルを巻いて、三人のもとへやってきた。

 キタキツネが、耳をもとの位置に付けた。付けるというよりも、差し込む感じだった。

キタキツネ 「ついたよ」

かばん   「戻せるんだ……。よかった……のかな?」

ギンギツネ 「ちょっとくすぐったいわね」

 ギンギツネは、両手で自分の両耳を引っ張った。耳は少し形を変えたあと、するりと抜けた。

 キタキツネも両耳を外した。

 サーバルも、自分の両耳を引っ張った。大きな耳は、音もなく、スッと取れた。それは、外すというよりは、引き抜く感じだった。

かばん   「すっごくかんたんにとれるんだね……」

サーバル  「かるくささってただけみたい」

かばん   「ささってたの!?」

ギンギツネ 「意外とおおきいのね」

 三人とも、外した耳は、外から見えていた部分より少し大きく、頭に食い込んでいたものを引き抜いたようだった。だが、耳のなくなった頭には、なんの跡もなかった。

かばん   「そんな大きいものが、あたまにささってたんですか……」

キタキツネ 「あたまの中は、からっぽだからだいじょうぶ」

かばん   「からっぽ!?」

かばん  「ささってたのに、なんにもあとがない……。からっぽなら、穴があくんじゃないの? …………うああ!」

 かばんが頭を抱えた。

サーバル  「なに? 穴なんてないよ?」

 サーバルが、自分の頭をさわった。

かばん   「なかみ想像しちゃった……」

キタキツネ 「みみとあたまは干渉してるんだよ。トリムしてないだけ」

ギンギツネ 「またわけのわからないことを……」

 

 

サーバル  「みんな、かばんちゃんみたいになったね」

かばん   「おみみとしっぽは、あったほうがいいと思うんだけど……」

サーバル  「たまには、さっぱりしてみるのもいいじゃない」

ギンギツネ 「ぬれると、乾かすのがたいへんだから、助かるわ」

キタキツネ 「これも、なかなか乾かない」

 キタキツネが、自分の前髪をさわった。

かばん   「だめですよ」

ギンギツネ 「たしかにそうね」

 ギンギツネは、後ろ髪をさわった。

かばん   「ぜったいにだめですよ」

サーバル  「とれたよ!」

 サーバルは、バナナのようなものを握っていた。

 かばんは、顔を片手で覆って、うつむいた。

 サーバル、キタキツネ、ギンギツネは、髪のパーツを外していった。耳と同様、音も抵抗もほとんどなく、髪のパーツは、スッと外れていった。彼女たちに、痛がる様子はなかった。

かばん   「あ、あ、あああ……」

 後ろ髪の房、前髪の房……。バラバラになった髪のパーツが、かごに入れられていった。

キタキツネ 「まぜちゃだめ」

 三人の、服、しっぽ、耳、髪は、ひとり一つのかごにまとめられた。かごは大きめだったが、山盛りになった。

ギンギツネ 「あたまもつるつるになったわね」

キタキツネ 「さっぱりした」

 サーバル、キタキツネ、ギンギツネの頭には、髪が無くなった。

かばん   「…………ちゃんと、もどしてくださいね……」

 サーバルが、かばんの髪を見た。

サーバル  「かばんちゃんもとりなよ!」

かばん   「ふぇ、うあ、うあああ!」

 

 

 『完全に』はだかになった四人が、温泉に浸かっていた。

かばん   「…………]

 かばんは、困惑した様子で、両手で自分の頭をさわっていた。頭は、ただの肌色だった。

サーバル  「ねえ、みみとか、あとでとりかえっこしようよ!」

かばん   「誰のかわからなくなるから、やめようね……」

サーバル「えー。かばんちゃんにいろいろつけてみたかったのに。きっとすっごくかわいいよ?」

かばん   「ぼくには似合わないよ……」

ギンギツネ 「すごく似合いそうだけど、残念ね」

キタキツネ 「ぼく、しっぽふたつほしい」

ギンギツネ 「だめ。ひとつにしなさい」

サーバル  「ねえ、ほかにはとれるところってないのかな?」

かばん   「これ以上どこをとるのサーバルちゃん……」

ギンギツネ 「さすがに、もうないでしょう」

キタキツネ 「目がとれる、かも」

かばん   「ええ!」

ギンギツネ 「そんなことできるわけないでしょう?」

サーバル  「うーん、むずかしいね……」

 サーバルは、自分の右目の下のあたりを、つまんで引っ張り、目を、シールのようにはがしはじめた。

かばん   「サーバルちゃんやめて!! 目はとっちゃだめ!! 見えなくなっちゃうよ!!」

 サーバルの右目が、完全にはがれた。

サーバル  「とれたけど、見えるよ。ずれちゃってへんなかんじだけど…………ほら、ちょっと持ってみて」

 サーバルが、かばんに、シート状の右目を手渡した。

サーバル  「かばんちゃんが見えるよ」

 かばんが、手に持っているサーバルの右目をみると、その目がまばたきして、かばんと視線を合わせた。

かばん   「うわあっ!!」

 驚いたかばんは、手を離した。サーバルの右目が飛び、ぽちゃん、と温泉に沈んだ。

サーバル  「わたしの目がー!!」

 

 

 サーバルの右目は戻ったが、もとの位置より少しずれていて、不自然になっていた。

キタキツネ 「デカールいじるのは、やめたほうがいいね」

かばん   「ことばはわからないけど、やらなければよかったってことですね……」

ギンギツネ 「目がなくなったら、誰だかわからなくなるじゃない」

サーバル  「こえでわかるよ!」

かばん   「そこまでして、なんでとらなきゃいけないの?」

キタキツネ 「じっけんだから」

かばん   「サーバルちゃんを実験台にしないでください!」

サーバル  「じっけん、たのしいかも!」

かばん   「サーバルちゃん、遊ぶならもっと安全なことをしようよ」

サーバル  「あぶないことしてないよ?」

ギンギツネ 「さっきのはかなりあぶなかったわよ。いろいろな意味で」

キタキツネ 「あぶなくないやつ……。とれそうなところ、みんなでひっぱってみよう」

かばん   「あぶないよ!!」

 

サーバル  「……ここはどうかな?」

 

 サーバルが、両手で自分の頭をつかんで、持ち上げた。

 

かばん   「やめてえーーー!!!」

 

ギンギツネ 「死んじゃうわよ!!」

キタキツネ 「おー」

 

 なにかが温泉に落ちて、バシャンとしぶきがあがった。

 

 

 

 おわり

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 
 あとがき

 読んでいただきありがとうございます。

 これを素材として、「組み換え版」を書いたのですが、もったいないので()のバージョンも投稿しました。「組み換え版」を投稿したあとに、こちらも少しいじったので、「組み換え版」と「通常版」の単語は、完全には一致していません。
 けものプラズムの設定は無視しています。

 「通常版」、「組み換え版」とは別に、「いじわる版」というのも書きました。これは、「通常版」を、わざと読みにくい文章に書き換えたものです。誰も得しないものですし、怒られそうな内容なので、投稿するのはやめました。


 [ 初投稿日時 2018/08/25 22:34 ]
 

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