まえがき
設定が謎です。ラッキーさんが行方不明です。
たくさんの機器が並ぶ、薄暗い部屋。
部屋に、サーバルとかばんが入ってきた。部屋には非常灯がともっていた。
かばん 「なんだろう、ここ……。暗くてよく見えないよ」
サーバル 「これはなにかな?」
サーバルが、操作卓を触った。急に部屋が明るくなった。
かばん 「うわあっ!」
サーバル 「みゃっ。まぶしっ」
かばんが操作卓を見た。それにはたくさんのスイッチやボタン、丸いつまみなどがついていた。
かばん 「ちょっとあぶないかもだけど、出口がわかるかもしれない……」
かばんが、大きいトグルスイッチ(レバー)を上げた。その下には、『制御盤主電源』と書かれていた。操作卓や壁に、いくつかの小さなランプが灯った。
かばんが、『モニタ4』と書かれたスイッチをオンにした。何も起こらなかった。
かばんが、ダイヤルを『17F音声案内』に合わせた。
サーバル 「ぴーって音がするよ」
かばん 「なにもきこえないよ? これはどうかな?」
かばんが、『メインボリューム』と書かれた大きなつまみを回した。
サーバル 「みみがくすぐったい」
かばん 「やっぱりなにもきこえない……」
かばんが、横に並んだスイッチを、順番にオンオフしていった。『高周波試験1』『生体試験2A』『中枢22』『深化・S』『ネコ科用』……。スイッチによって、サーバルが様々な反応を見せた。
サーバル 「ぷつっぷつってきこえる」
サーバル 「きれいな音……。これ好き」
サーバル 「ちょっとうるさい」
サーバル 「みみがピリピリする」
サーバル 「きもちいいかも」
かばん 「これ、きもちいいの?」
かばんが、スイッチの上にある、つまみを回した。
サーバル 「なにこれ……きもちわるいよー」
サーバルが、目を閉じて、上の耳を両手で倒してふさいだ。
かばん 「ごめん!」
かばんが、つまみを戻した。そして、スイッチをオフにした。
サーバル 「なんか、へんなのがきこえる……とめて……」
サーバルの声が暗くなった。
かばん 「どうしたの? これで止まるかな?」
かばんが、『停止』と書かれた赤いボタンを押した。
サーバル 「んー……いい音……」
サーバルは、目を閉じて、少し上を向いた。心地よい何かを感じているようだった。
かばん 「止まってないのかな?」
突然、サーバルが目を見開き、天井に向かって叫んだ。
サーバル 「入ってくる! とめて!! だめ、とめないで……」
サーバルは、ふらついて、混乱した様子だった。
サーバル 「かばんちゃんが、入ってくる……いたいよ……」
サーバルは、頭を抱えた。
かばん 「これ、なんかあぶないよ!」
サーバル 「入っちゃった……もっとおくまでぇ……」
かばんが、慌てて『緊急停止』と書かれた、赤い大きなボタンを押した。
サーバル 「うぎゃっ!! そんなに、入らないよ……あたまが、こわれちゃ……きもちい……」
サーバルは、頭を抱えて、ふらふらとよろけながら苦しんでいた。
かばん 「どうして止まらないの!」
かばんは、『緊急停止』ボタンを、カチカチと何度も押した。
サーバル 「みゃっ! はうっ! あっ! あ゛っ!」
『緊急停止』ボタンが押されるたびに、サーバルがビクンビクンと反応した。
かばん 「だめだ……。サーバルちゃん、部屋から出よう!」
サーバル 「いやあ!! もっとかばんちゃんがほしい!! んんんっ……うみゃぅっ!」
サーバルが床に座り込んだ。その目はうつろで、口は半開きだった。笑っているように見えた。
かばん 「サーバルちゃん!! ここはあぶないよ!! 外に!!」
かばんが、サーバルの手を引いたが、サーバルはその場から全く動かなかった。
サーバル 「ああ、かばんちゃんが、きもちいいとこ、ぜんぶ、はいってくるぅ……うみゃああ …うれしいよぉ、んああっ、かばんちゃん! きもちー、たのしーことしよっ! みゃううぅ」
かばんは、しゃがんで、サーバルの両肩をゆすった。
かばん 「サーバルちゃん!! しっかりして!!」
サーバル「みゃあっ、みゃあっ……かばんちゃんの手、あついい……とけちゃうぅ……ふへへぇ」
サーバルは、顔を赤くして、半開きの目で笑った。
かばん 「だめだ……」
かばんは、立ち上がって、いろいろなスイッチやつまみを操作した。
サーバル 「うみゃあああ……ん、んんん……すごい、かばんちゃんのからだ、すっごい、きもちいい、いっしょに、ひとつになろっ、……ふああん、うううみゃああぁ、あっあっんんんー……」
サーバルは、目を閉じて、自分の体を抱いて、左右に身をよじった。
かばん 「サーバルちゃん!! 戻ってよ!!」
サーバル 「みゃ、みゃああああ、んはあ、……ふわああぁ、からだじゅ、とろけちゃう……かばんちゃん、んんんん、もっと、もっとぉ……みゃっみゃっみゃっ、みゃんっみぃっ! はあ、はあ、んっんっ、んみゃああ、うみゃあああぁ……はあはあ、うっ、うあっ……はあ、はあ、」
サーバルは、涙ぐみ、恍惚とした表情で、上を向いてあえいでいた。
サーバル 「ううみ゛ゃあぁっ!!、み゛ゃっ、あっ、あっ、あ゛あ゛っあ゛あ゛あ゛っ……」
サーバルは、涙を流し、よだれをたらして、ビクビクとけいれんした。
かばん 「サーバルちゃん!! サーバルちゃん!! 死んじゃうよ!! どうしよう……」
かばんの声は震えていた。震える手が、操作卓の上を迷っていた。
サーバル 「けほっけほっ、おえっ、くっ、かばんちゃ、あん、すきいっ! だいすきぃっ!! まざってぇっ、んんっ、きもちっ、きもちいっ、んはあ、うっ、うみゃ、うみゃみゃみゃみゃ、みゃみゃみゃあっ! んはっ、うみゃああんっ、み゛ゃっああっ、み゛いゃあああっ、……み゛ゃうあ゛っ!! げほっ……あ゛っあ゛っあ゛っあ゛っあっあっあっあああっああああああ……」
サーバルは、呼吸もままならず、ガクガクと震えた。
かばんが、操作卓の端を見た。そこには『解除ショック強』というボタンがあり、そのボタンを覆うように、赤い字で『使用禁止』と手書きされた、ラベルが貼られていた。
かばん 「おねがい、止まって!」
かばんが、『使用禁止』のラベルを押し破り『解除ショック強』ボタンを押した。
サーバルが、目を見開いて固まった。一瞬、静かになった。
サーバル 「いやあーーーーーー!!!」
サーバルが激しい叫び声をあげ、上の耳を倒してふさぎ、背中を丸めてうずくまった。
かばん 「サーバルちゃん!!」
かばんが、しゃがんで、サーバルの背中に手をあてた。
かばん 「サーバルちゃん、だいじょうぶ?」
サーバル 「……はあ、はあ、はあ、んはあ……けほっ、けほっ……」
サーバルが、体を起こした。そして、呆然として、ぽろぽろと涙をこぼした。
サーバル 「…………いやなこと、おもいだしちゃった……」
サーバルの声は涙声で、かすれていた。
かばんは、何も言わず、サーバルを抱きしめた。
おわり
あとがき
読んでいただきありがとうございます。
サーバルちゃんは、ヒトよりも聴力が高く、多分可聴域も広い(低音はヒトの方が強いかも)ということから思いついたものです。
「いやなこと」って何でしょうね。
以下は蛇足説明です。
トリップ中のサーバルちゃんは、謎の音声により、大量のマタタビを頭からかぶったみたいな状態になっています。中枢神経が麻痺していて、本能的な何かがあふれ出しています。加えて、『大好きなもの』の記憶が過剰に引き出されて、増幅された状態です。本人にとっては、ものすごく楽しくて、気持ちいい状態ですが、『解除ショック強』ボタンが押されなかったら、呼吸困難になり、死亡する可能性もありました。
こんなことになったのは、かばんちゃんが、状況を悪化させていってしまったためです。
謎の音声は『停止』で止まりましたが、サーバルちゃんの反応は止まらず、気持ちよくなっていきました。『緊急停止』で、瞬間的に強い音声が流れて、サーバルちゃんは更に気持ちよくなってしまいました。そこへ、『大好きなもの』に触られたり、声をかけられたりしたうえに、かばんちゃんが装置をいじったことで、サーバルちゃんは更に更に気持ちよくなってしまいました。
[ 初投稿日時 2018/09/17 12:00 ]