まえがき
2020/02/17 あとがきに追記しました。ネタバラシです。
サーバルとかばんが抱き合っていた。
ふたりの周囲には、おそらく空気があり、どこからでもなくやってくる光があった。時間が流れていた。ここにあるものは、それだけだった。
かばん 「これって、どういう状況?」
サーバル 「ふたりはなかよし、ってことだよ」
かばん 「それはわかってるけど、ここはどこなの?」
サーバル 「どこだろ? わかんないやー」
かばん 「なんだかふわふわしてて……」
サーバル 「きもちいい?」
かばん 「きもちいい、のかなあ? なにも感じない……」
サーバルが、かばんを強く抱きしめた。
サーバル 「これは、感じるよね?」
かばん 「うん。きもちいい。うれしい」
かばんが、サーバルを強く抱きしめた。
サーバル 「うみゃー……うれしいよう」
かばん 「どうしてこうなったんだっけ?」
サーバル 「思い出さなくていいよ」
かばん 「ほんとうにそれでいいの?」
サーバル 「怖い?」
かばん 「……ちょっとだけ、怖い……不安かも」
サーバルが、かばんの手をにぎった。
サーバル 「怖くないよ。わたしがいるから」
……………………。
ふたりはとなり合って、手をつないでいた。立っているのか寝ているのかは分からなかった。
かばん 「なにもすることがないね……」
サーバル 「狩りごっこしよう!」
かばん 「くっついたままじゃ、狩りごっこできないよ?」
サーバル 「じゃあ、いったんはなれるね」
サーバルが、抱いていたかばんから腕をはなして、離れようとした。
かばん 「まってまって! はなれちゃだめ!」
かばんが、サーバルを抱きとめた。
かばん 「だめだよ。はなれたら、もう、会えなくなっちゃう……」
サーバル 「そんなことないよ。また、かばんちゃんをつかまえてみせるから」
かばん 「だめだよ……」
サーバル 「かばんちゃん、泣いてるの? ……わかったよ。じゃあ、べつのことしようか。
かばんちゃんが考えてよ」
かばん 「うーん…………フレンズしりとり、なんてどうかな?」
サーバル 「なにそれ?」
かばん 「ことばの最後の音から、つぎのことばにつなげていくんだけど……。フレンズの名前で……たとえば『サーバル』の『ル』から…………。あれ? 出てこない……」
サーバル 「『かばん』、からはじめたらいいんだよ!」
かばん 「…………」
……………………。
かばん 「くすぐりあって、さきに笑ったほうが負け、っていうのはどうかな?」
サーバル 「それすっごいたのしそー!」
……………………。
かばん 「ここが甘いよ!」
かばんが、サーバルのわきに手を突っ込んだ。
サーバル 「うっ、ずるいずるい! あははっ!」
……………………。
サーバル 「つかれた……」
かばん 「わきは、もうやめようか」
サーバル 「かばんちゃん、どこがよわいの?」
かばん 「さがしてみて」
サーバルが、かばんのふとももの内側を、軽く爪でこすった。
かばん 「く、うう、つめ、つかうなんて……」
サーバル 「ふくがこすれるかんじ、いいでしょ?」
サーバルの爪が、かばんの半ズボンの中へ、おしりのあたりへ滑り込んだ。
かばん 「だめだよ! なんかちがう遊びになってる……う、ふ、ふふっ」
サーバル 「ここだっ! どんどんいくよー」
サーバルの爪が、かばんの半ズボンの中で細かく動いた。
かばん 「あはっ! やめて! もうぼくの負けだから! あはは!」
……………………。
サーバル 「くすぐったいところ、ほかにもあるよね」
かばん 「くつ、ぬいじゃおっか」
サーバル 「そうだね」
サーバルは、握っていたかばんの手をはなそうとして、止まった。そして、かばんの手を強く握った。
かばん 「手、はなさないとぬげないよ」
サーバル 「…………」
かばん 「……怖いの?」
サーバル 「怖くないよ。……ちょっとのあいだ、だけだよ?」
ふたりは手をはなした。
かばんとサーバルは靴を脱いだ。かばんの靴は、脱いだ位置のまま宙に浮いた。
かばん 「浮かぶんだ……ふしぎ……」
サーバルも靴を脱いだ。サーバルの靴も宙に浮いた。
かばん 「てぶくろもじゃまだね」
かばんは、手袋を脱いだ。
……………………。
宙に浮いていた、ふたりの靴と手袋が、ゆっくりと消えていった。
かばん 「きえちゃった……」
サーバル 「これもぬいじゃいなよ!」
かばん 「ふぇ?」
サーバルが、かばんの半ズボンに手をかけた。
かばん 「うわあっ!! だめだよ!」
サーバル 「なんでなんで?」
かばん 「……えっと、……ぬがなくてもくすぐれる、から……」
……………………。
サーバルの靴下が、ゆっくりと消えていった。かばんは、少し悲しそうな目で、それを見つめていた。
かばん 「もう、見られないんだね……」
サーバル 「もようがなくなっちゃったのはさみしいけど、かばんちゃんとわたしがいれば、
それだけで十分だよ。あんなの、おしくないよ……。そうでしょ?」
かばん 「うん。でもぼくはちょっとおしい、かな……」
サーバル 「えー」
かばんが、サーバルの素足を見た。
かばん 「くすぐったいところ、ぜんぶわかっちゃったね」
サーバル 「まだあるよ。もうぜんぶぬいじゃおうよ!」
サーバルは、スカートを脱ごうとした。
かばん 「わああ!! だめだってば! はだかのままになっちゃうよ!」
かばん 「した、はいてないんだし……」
かばんの声が小さくなった。
サーバル 「わたしははだかでもいいんだけど」
かばん 「えっと……ぼく……サーバルちゃんの服、好きだから……だから、まだぬがないでね」
サーバル 「まだ?」
かばん 「え? う、うん……」
かばんは、顔を赤くしてうなずいた。
……………………。
かばんが、サーバルの頭をくしゃくしゃとなでた。
サーバル 「うみゃうみゃ……んんん……おかえしっ」
サーバルが、かばんの頭をなでた。
かばん 「きもちいいね。これ……」
サーバル 「……きもち、いい? きもちが、あるんだね……」
サーバルの声が、少し暗くなった。
かばん 「サーバルちゃん? …………えいっ!」
かばんが、サーバルのけもの耳を引っ張った。
サーバル 「うみゃみゃっ! やめてやめて!」
かばんは、サーバルのけもの耳をやさしくなでた。
サーバル 「うみゃ……みゃ……みゃ……みゃあー……えへへー」
かばん 「ふふっ」
サーバル 「あはっ」
かばん 「あははっ」
ふたりは笑い合った。
かばん 「こんどはこっち!」
かばんが、サーバルのしっぽを軽くつかんで、シュルっと根元から先端へこすった。
サーバル 「うみゃああっ! だめ! しっぽはやめて!」
かばんが、サーバルのしっぽをぎゅっと握った。
サーバル 「うみゃっ! ほんとにやめて!」
かばん 「ごめんごめん。……でも、ほんとは好きなんでしょ」
サーバル 「……そんなこと、ないよっ!」
かばんは、サーバルのスカートに手を突っ込んで、しっぽの付け根、背中の方をくすぐった。
サーバル 「みゃっ! う、うみゃああーん」
サーバルは、体をひねって、恍惚とした表情になり、とても気持ちよさそうだった。
かばんは、しっぽの付け根をくすぐり続けた。
サーバル 「うみゃうみゃうみゃうみゃ……」
かばんが、くすぐるのをやめた。
サーバル 「はっ! …………ううー、わたしばっかりやられてるよ……」
かばん 「じゃあ、サーバルちゃんから」
サーバル 「よーし! みゃああ……んっんんーー……」
サーバルは、やさしく、『みゃああ』と言って、すりすりとかばんに頬ずりした。
サーバル 「ぐるる、ぐるる」
かばん 「ふふっ、なにその音?」
サーバル 「このからだだと、ごろごろがうまく鳴らせないんだよ……」
かばん 「……からだ……あるんだよねっ……」
かばんは、ぎゅっとサーバルの体を抱いた。
サーバル 「あたりま…………ほら、すりすり、ぐるる、ぐるる」
かばん 「その音、ずっと聞いていたいよ……」
サーバルは、頬を離すと、かばんの頬の涙をなめた。
サーバル 「ぺろぺろ……はむっ」
かばん 「ふあっ!」
サーバルは、かばんの耳をあまがみした。
かばん 「みみ、たべないでっ!」
サーバル 「たべちゃうぞー……ぺろぺろ」
サーバルは、とてもやさしい声で『たべちゃうぞー』と言うと、かばんの耳をなめはじめた。
かばん 「ふああっ……」
サーバル 「ぺろぺろ、ぐるる、ぐる、ちゅっ、ちゅっ、じゅぷ、じゅるり……」
かばん 「んっんっ、なにこれ……サーバルちゃ、すごいっ……んんんっ」
サーバルの舌は、耳から下へ移動して、首筋をなめはじめた。
サーバル 「ぺろぺろぺろ、ちゅぷ、ちゅっ、ぐる、ぐるる、ぺろっ、ちろちろちろ……」
サーバルは舌先を使って、かばんの首筋をやさしく細かくなめた。
かばん 「ふあああ……そこ、だめ……んっ、やめ、やめて……んああっ」
サーバルは、かばんの耳元でささやいた。
サーバル 「ほんとは好きなんでしょ」
かばん 「うう……」
サーバル 「ふふふっ……もっとすっごいきもちいいところも知ってるよ」
かばん 「……そういうのは、やめようね……」
かばんは、顔を赤くしてうつむいた。
サーバル 「うわーかわいい、かばんちゃん」
かばん 「まだ、ともだちでいたいから……」
サーバル 「みゃーだー?(まーだー?)」
かばん 「あうぅ……」
サーバル 「いいじゃない。ふたりしか、いないんだし……」
サーバルは、はにかんで、少し悲しそうな顔になった。
……………………。
かばん 「へんなかおして、さきに笑ったほうがまけ、っていうのはどうかな?」
サーバル 「なんかそれ、ちょっと前にもやったような……」
かばん 「え? ちょっと前だっけ? だいぶ前じゃない?」
サーバル 「どのくらい時間がたったのかな?」
かばん 「わからないね。いつまでこうしてるんだろ? ぼくたち」
サーバル 「いつまでも、だよ」
サーバルは、悲しそうに笑った。
……………………。
サーバル 「ぷ、ぷぷっ、ぷはっ!! なにそれー!」
かばん 「ふふっ、まえとおなじだよ」
サーバル 「うみゃー、まけないぞー、もういっかい!」
かばん 「……なんかいめ、なのかな……」
サーバル 「つよいよね、かばんちゃん。くすぐりっこも、しりとりも……」
かばん 「きもちいいことは、サーバルちゃんのほうがうまいよ」
サーバル 「ふっふーん。……してほしいー?」
サーバルは笑顔になった。
かばん 「してほしい」
ふたりの服は、全て失われていた。
……………………。
ふたりは向かい合って、両手をつないでいた。
サーバル 「ううう……。まけちゃったぁー」
かばん 「サーバルちゃん……」
かばんは声が暗く、うつむき加減だった。
サーバル 「えっと、つぎはなにしてあそぼっか?」
サーバルは笑顔だった。少し無理をしている笑顔だった。
かばん 「サーバルちゃん、聞いて」
サーバルの笑顔が消えていった。
サーバル 「いや……」
サーバルは、かばんから目をそらした。
かばん 「ごめん。聞いてよ、サーバルちゃん……」
サーバル 「…………」
かばんが顔を上げて、サーバルの顔を見た。そして、穏やかな表情で言った。
かばん 「もう、おわりにしよう」
サーバルが、かばんの目を見た。
サーバル 「…………なにいってるのかばんちゃん……」
サーバルの声は震えていた。怒りではなく、恐怖がにじみ出ていた。
サーバル 「わかってるよね? おわりにできないって……」
かばん 「でも、はなれれば……」
サーバル 「いやだよ!! なんで、なんでいじわるいうの!?」
かばん 「つぎのため、だよ」
サーバル 「つぎなんてないよっ!! かばんちゃんと、いっしょにいたいよっ!!」
サーバルの叫びは、涙を含んでいた。
かばん 「…………サーバルちゃん。狩りごっこしよう……」
かばんが、少し上を向いて目を閉じると、涙がこぼれた。すぐに目を開けて、サーバルの目をじっと見つめた。
かばん 「……ぼくが……追いかけるほう……だよ……」
サーバル「うう、ぐす……かばんちゃん、つかまえられないよ! わたし、すっごく速いから!」
サーバルは、泣き笑いの表情だった。
かばん 「つかまえて、みせるよ」
かばんは、サーバルに笑い返した。
とても近い距離で、見つめ合うふたり。
ふたりが目を閉じて、自然に、唇が合わさった。
おわり
あとがき
読んでいただきありがとうございます。
『ジャパリ・フラグメンツ』は、このふたりばっかりで書いてしまっています。好きなんです。
ふたりがこの状態になった理由は、三つ考えられます。どれも悲しいものです。これをどう解釈するかによって、「つぎ」の意味するものが変わります。
元々は、お別れではなく、ふたりは永遠にいっしょ、というおはなしでした。そっちのほうが良かったかもしれません。
百合えっちな方向に行かないようにしたかったのですが、例によって、このふたりがくっつくのは止められませんでした。私は、このふたりには友達のままでいてほしい、と思っているんですが……。(それは本心か?)
以下はネタバラシです。
2020/02/17 追記
今さらですが、〈 ふたり 〉は、" アニメ1期と2期の間 ” のおはなしなんです。
「つぎ」とは、アニメ2期のことです。 これはメタ的なおはなしなんです。
つまり、サーバルは世代交代して2期に出演できるけど、かばんは、1期と2期の間に取り残されて(放置されて)しまう、ということです。
このおはなしは、アニメ2期の放送前に投稿したものです。投稿日は、2018/10/19 です。
筆者が、“2期にはかばんちゃんが登場しないかもしれない”と、なげいたものです。
いろいろと不満はありましたが、2期の、かばんさんの登場は嬉しかったです。
別の可能性も二つあります。
・ 何らかの理由で、ふたりいっしょに死亡した。
→「つぎ」とは、生まれ変わった後のこと。
・ ふたりともセルリアンに取り込まれて、脱出不能になった(元の動物にも戻れず)。
→「つぎ」とは、何もない場所からふたりが消えた、その先のこと。
ふたりは、すでに肉体を失っており、何もない場所で、互いの存在を認識することで記憶(自我)を保っていた。だが、それを手放そうとしている。つまりふたりとも消えてしまう。