ジャパリ・フラグメンツ   作:くにむらせいじ

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 まえがき

 所々にある、『ジャンプする伏線のようなもの』に深い意味はないです。



〈 くさり 〉

 【自分語り】

 

 ロッジアリツカ。

 

 タイリクオオカミ(以下オオカミ)が、テーブルに向かって漫画を描いていた。漫画の原稿のわきには、メモ帳や小さなスケッチブックが置いてあった。

 そこへ、アミメキリン(以下キリン)がやってきて、原稿を見た。

キリン  「筆がすすみませんか?」

オオカミ 「そうだね……。いま描いているもの、どこかで見たような気がしないかい?」

キリン  「【アニマガールズ】の新作ですか? あんまり、そんな感じはしない、ですよ」

オオカミ 「これをを見てごらん」

 オオカミが、小さなスケッチブックをキリンに見せた。そこには人物の動作や表情が粗く描かれていた。※1

キリン  「……あれ? わたしが……このまえ、アルパカさんとおはなししたことだわ」

オオカミ 「『あなたの本名はハルカね!』とか言っていたね。……【アニマガールズ】は、わたしたちの身近にあったことをモデルにしているんだよ」

キリン  「ちょっとはずかしい、ですよ」

オオカミ 「そうだね。ネタに困ったときは、自分のことや、身のまわりのことを描く ※2、 というやり方があるんだけど、あんまりそのまま描くのもどうかと思ってね」

キリン  「もしかして、『ウルフィー』って……」

オオカミ 「そう、わたし自身なんだよ」

キリン  「でもでも、ちがうひとになってるわ。先生はこんなことしないですよ」

オオカミ 「そこなんだよ。問題は」

 

 オオカミは【アニマガールズ】という漫画を描いていていた。

 

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 【アニマガールズ】に時折登場するキャラクター、『ウルフィー』※3 は、小説家だった。

 

 『ウルフィー』は、典型的な、締め切りを守らないタイプの作家で、編集者『シバタ』との掛け合いがコメディータッチで描かれているキャラクターだった。だが、遅筆でも作品はきちんと完結させる作家だった。

 

 『ウルフィー』が書いた小説の中に、【まいごのほし】というものがあった。

 

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【まいごのほし】は、宇宙を漂う宇宙船『ヒュウガ』※4 での出来事を書いたSF小説だった。

 

 宇宙船にはたくさんの小型ロボット『シャムウェイ』がいたが、船員はいなかった。

 偶発的に、宇宙船に残されていた、ヒトのDNAから、一人のクローン『ケビン』が作られた。

 『ケビン』は、宇宙船のシステムを操作して、もう一人のクローン『ルルス』を作り出した。

 『ケビン』と『ルルス』は、自分たちの起源を求めて、地球を目指すのだった。

 

 『ケビン』は、自身に植え付けられた【偽物の記憶】に苦しめられていた。

 

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 『ケビン』に植え付けられた【偽物の記憶】は、地球のような世界で『ケビン』が平穏な生活をしていた、という内容だった。

 

 その世界には『ケビン』の恋人の『ルルス(オリジナル)』がいた。

 

 その世界の片隅に、世界の全ての書物(データ)を集めた『木』があった。『木』には『大留(おおとめ)』と『大大留(おおおおとめ)』※5 という番人がいて、書物を管理していた。人々は、そこにある書物の全てを読むことはできなかった。

 ある日『木』が、謎の存在『F・S』からの不正アクセスを受けた。だが、『ルルス(オリジナル)』が、『木』に接続し、自らが回路の一部になることで、書物を守った。

 

 『木』の地下に収蔵され、誰も見ることが出来なかったレーザーディスク ※6 に、【肉まんVSあんまん戦争】というものがあった。

 

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 【肉まんVSあんまん戦争】 ※7 は、大手食品メーカーと、老舗の製菓会社の熾烈な争いを記録したドキュメンタリーだった。

 

 単なる味くらべではなく、製造技術や販売ルートなど、互いの得意分野へ飛び込み、互いに成長していく様を描いていた。ラストは、双方の商品開発責任者(大手が『大原』、老舗が『森本』)が握手するシーンで終わっていた。

 スタッフロールの最後に、「このビデオの販売による収益金の一部は、文化財の修復プロジェクトに寄付されます」、とのメッセージが表示された。

 

 【肉まんVSあんまん戦争】の中に、大手食品メーカーの社員食堂が映るシーンがあった。社員食堂のテレビではドラマをやっていた。そのタイトルは【湖畔にて】だった。

 

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 【湖畔にて】は、刑事もののドラマシリーズのうちの一本だった。※8

 

 湖畔の貸しボート乗り場で『柴田』の溺死体が発見された。中年のさえない感じの刑事『千葉』と、無鉄砲な新人刑事『犬山』のコンビが、意外な犯人を突き止めて、事件を解決…しなかった。

 犯人は元アイドルグループ ※9 の一人『古谷(ふるや)』で、ストーカーまがいの行為を繰り返す『柴田』を突き飛ばして、湖に転落させ、殺してしまったのだった。

 だがなぜか『柴田』がゾンビ化して復活し、『古谷』と仲直りして、その後は幸せに暮らした、というシナリオだった。

 

 【湖畔にて】の犯人『古谷』が声優として出演予定だったアニメ映画に、【五つのアーチ】というものがあった。だが、『古谷』の騒動や、予算や、権利関係の揉め事が原因で、【五つのアーチ】は製作中止になってしまった。

 

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 【五つのアーチ】は、『とある橋』 ※10 を擬人化したアニメ映画で、木製の橋が作られ、川の増水で何度も流され、修復されるのを繰り返して、現在に至るまでを描いた作品だった。

 

 重要な脇役として、天真爛漫ゆえに恐ろしい『川の神』と優しくも厳しい『雨の神』そして、橋のほとりにある茶屋の娘『はるか』が登場する予定だった。

 

 『とある橋』は、自身が壊れていた時に、【夢】を見た。

 

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 『とある橋』が見た【夢】は、『きつねこ(ぼし)』と『あらいぬ(ぼし)』 ※11 が、謎の宇宙船を追いかける話だった。

 

 ふたりは、突如現れた『狩猟船』※12 の妨害を受け、『凍えた星』に墜落した。雪山で遭難したふたりは、『雪女』と、その妹の『雪ん子』 ※13 に助けられた……と見せかけて襲われた。そして、持っていた肉まんとあんまんを奪われてしまった。

 

 『雪ん子』は携帯ゲーム機で遊んでいた。ゲームのソフトは【砂漠の猫作戦】だった。

 

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 【砂漠の猫作戦】は、シューティングと戦略シミュレーションを組み合わせたゲームだった。

 

 ゲームの悪役は、自我を持ったコンピューター『ファット・スネーク』※14 だった。

 【砂漠の猫作戦】には『F-3Aアイビス』というジェット戦闘機が登場した。隠し要素として、赤色の特別塗装のF-3B、通称『レッドアイビス』も使用できた。F-3系の攻撃方法として、低空を超音速で飛行し、衝撃波を使って地上目標を破壊するものがあった。※15

 

 『ファット・スネーク』は、仮想世界【園(SONO)】を作り出した。自律兵器によって誘拐した人々を監禁し、その人々の脳を【園】に接続した。

 

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 仮想世界【園(SONO)】は、洗脳を行うための世界だった。

 

 【園】の中で暮らす人々は、街を歩くなどするだけで、「外からやってくるものは敵だ。排除しなけれなならない」、という考えを植え付けられていった。また、【園】の中の『学校』で、教師役の『モリモト』が、戦い方や兵器の扱い方を教えていた。

 

 ある日、【園】のバグにより、仮想世界の中を走っているバスが、少女の姿になった。その少女の名前は『ばすの』※16 といった。『ばすの』は、純真無垢な存在だった。そして、自由な空想が好きだった。

 

 『ばすの』が、仮想世界の外側に存在する謎のAI『IBIS-R』と共鳴し【空を飛ぶ空想】を始めた。

 

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 【空を飛ぶ空想】の中には、飛行する場(マップ)として、『架空の惑星』、『架空の国』、『架空の町』があった。

 

 夕方、『架空の町』にいる『人物』が、自宅でパソコンに向かって文章を書いていた。

 突然、バリバリバリ、と雷のような爆音が響いた。文章を書いていた『人物』が、慌ててカメラを手に取り、窓の外を見た。一瞬、赤いジェット戦闘機が飛び去っていくのが見えた。『人物』は戦闘機にカメラを向けたが間に合わず、機影は隣家の陰に消えた。※17 『人物』は、落胆した様子で、文章を書く作業に戻った。

 

 『人物』は、『くにむらせいじ』というペンネームを使って【自分語り】というタイトルの短編を書いていた。※18

 

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 【自分語り】は、『けものフレンズ』の二次創作だった。それは、オオカミ(以下タイリクオオカミ)が、漫画のネタで悩んでいる話だった。

 

 

 

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※1 キリンは文字が読めるのでしょうか?

 

※2 それもネタの数には限りがあります。いろいろアレンジして形を変えていけばいいのかもしれません。

 

※3 『ウルフィー』はペンネームで、本名は『マックス』です。

 

※4『ヒュウガ』はカタカナなのがポイントです。実在の艦船やアルペジオとは関係ありません。

 

※5 『大留』は大きくていかついやつで、『大大留』は小さくてかわいいやつです。『大大留』が『大留』の肩に座っています。

 

※6 公立図書館には、LDを置いている所が多いようです。(2018/10/23記)

 

※7 ネーミングセンスが悪いです。【肉まんVSあんまん戦争】は、実際にはドキュメンタリー風のフィクションです。実在の人物や会社とは関係ありません。

 

※8 【湖畔にて】はこの回のサブタイトルです。『刑事カムペンタルズ』シリーズの一本です。

 

※9 『古谷』以外のメンバーも脇役で登場します。全部で6人のグループです。グループ名は、『ALF(アルフ)』です。

 

※10 この橋にはモデルがあります。

 

※11 タヌキの英名は、『raccoon dog』です。         「タヌキじゃないのだぁ!」

 

※12 『狩猟船』は、海賊船のように見せかけていますが、実は太陽系の治安維持を行うための民間宇宙船です。全長23mほどで、乗員は『アカベ』、『ゴードン』、『オオタ』の3名です。船長の『アカベ』は『千葉』の昔の相棒です。

 

※13 『雪ん子』は私の脳内ではものすごくかわいい子になっています。

 

※14 『ファット・スネーク』という名前の由来は、その本体(筐体?)の外観にあります。細長く、中央部がふくれたような形をしています。長さは10mくらいです。『凍えた星』の山岳地帯の地下深くにあります。

 

※15 衝撃波攻撃というより、音波攻撃です。ありえない攻撃方法です。攻撃力は低いですし、そんなことをする前に地対空ミサイルとかで撃墜されます。F-3系は、なんだかとってもうるさそうです。

 

※16 うちの子の、『ばすの』にゲスト出演してもらいました。別作品『もけい』の番宣(番組じゃないけど)です。あれとこっちでは設定が違います。

 

※17 こういうシャッターチャンスを逃すって、すごく悔しいです。ものすごくうるさかったですが、超音速では飛んでいなかったようですし、高度もあったので、ガラスが割れたりはしませんでした。近くの家の車の防犯アラームが作動していましたが……。写真は撮れませんでしたが、久しぶりに爆音浴ができました。

 

※18 自分で書いておいてなんですが、恥ずかしいです。

 




 あとがき

 読んでいただきありがとうございます。

 『階層構造』の世界を書こうとしたら、ただの『鎖構造』(連鎖と言った方が合っているかも)になってしまいました。
 全体的に、タイトルやキャラクター名などのネーミングセンスが悪いです。もうちょっとなんとかならなかったのか、と思います。あとで直すかもしれません。



 以下は、理屈っぽい妄想です。


 映画『マトリックス』に「現実世界へようこそ」というセリフがありますが、「そこは現実世界じゃなくて、映画の中だよ!」と突っ込みたくなります。

 『本当の現実世界』ってどこにあるの? という疑問があります。
 我々のいるこの世界は『本当の現実世界』ではなく、より上の階層(今いる世界の外側)の世界が存在するのではないか? さらにその上は? 無限に続くのか? そうなると『本当の現実世界』なんて存在しないのではないか? あるいは逆に、我々のいるこの世界より下の階層(創作物、夢、仮想現実など)が、実は『本当の現実世界』だったりするのかも? と。
 これは、ある意味危険な考え方です。今いる世界が現実ではないと認識したら、何も信じられなくなったり、ルールや倫理を無視してしまう可能性があります。『下の階層』の世界に引きこもってしまうかもしれません。

 『物語』、『夢』、『仮想現実』、『空想』、『ゲーム』、『記憶』などは、それぞれが『世界』を持っています(例外あり)。そして、『劇中劇』も世界を持っています。世界の中にたくさんの子世界があり、子世界の中にたくさんの孫世界が……と考えると、『ツリー構造』が見えてきます。この『ツリー構造』の枝の数は、無限に近いでしょう。
 しかし、親世界が作り出せる子世界の規模(情報量)には限界があり、親世界よりも子世界は小さく(情報量が少なく)なるはずです。例外もあるかもしれませんが。
 人が想像したりするものは、自分の記憶をもとにしています。その記憶は、自分のいる世界に由来するものです。それなので、自分のいる世界よりも大きい(情報量が多い、想像の範疇外の)世界を作り出すのは困難でしょう。
 つまり、世界の規模は、階層が深くなるほど情報が削られていき、小さくなっていく(進むほど枝が細くなる)と考えられます。最後は消えてしまうのでしょう。それなので、細くなった枝がぐるっと戻って、太い幹になるような、『ループ構造』あるいは『スパイラル構造』は考えにくいです(可能性はゼロではないと思いますが)。
 仮に、我々のいるこの世界よりも上の階層が存在するのならば、想像もつかない巨大な(情報量が多い)世界なのかもしれません。下の階層から上の階層を、内側から外側を見ることはできないので、想像もつかない世界、としか言えません。考えても答えは出ないでしょう。
 ですが、フィクションのネタとしては面白いと思います。『夢オチ』みたいになってしまうかもしれませんが、うまく使えば……って私には高度すぎて無理かも……。

 メタフィクションというものもありますが、その話と上の話を混ぜるとぐちゃぐちゃになりそうですし、私がメタフィクションをちゃんと理解できていないので、言及しません。

 この作品〈 くさり 〉は、タイトルの通り『鎖構造』です。『ツリー構造』をなぞったふりをしていますが、実際には、私の記憶にある『素材』をつなげていっただけです。上の『ツリー構造』の特性である、世界の規模の縮小を無視しています。

 タイリクオオカミが考えたものは【まいごのほし】の概略までで、そこから先は、世界が勝手に次の世界を生み出していったのです。

 『世界の作者(マスター)』のあずかり知らない部分の情報が、自動的に補完される、と考えれば、世界は縮小していかないので、同じような大きさの世界を、鎖のようにつなげられます。
 鎖なので、『素材』があれば、いくらでも伸ばせます。『ループ構造』や、『スパイラル構造』にもできます。ちょっと複雑になりますが、枝分かれさせることもできます。また、世界を飛び越えた伏線も張れます。

 見方によっては、全部が一つの世界、ともとれます。

 アイデアがいっぱい出たので、どれかを膨らませて短編にしてみたいかな、と思いました。どこかで見たようなものばかりですが……。


 [ 初投稿日時 2018/10/25 22:19 ]
 

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