まえがき
このおはなしは、TVアニメ1期のその後っぽいですが、厳密な設定はありません。
昼のジャパリカフェ。
テラスに数人のフレンズがいた。トキとショウジョウトキが歌っていた。アライグマとフェネックが、テーブル席に座って、ふたりの歌を聴いていた。
フェネック 「トキ、歌うまくなったねえ」※1
アライグマ 「きれいな声なのだ……」
フェネック 「んー? みみがむずむずするよー」
フェネックのけもの耳が、ぴくぴくと動いた。
アライグマ 「どうしたのだ?」
フェネックの耳が真横に倒れた。そして、大きくなり始めた。
アライグマ 「フェネック! おみみがへんなのだ!」
フェネック 「うーん……。きもちいー」
フェネックは、目を閉じて、気持ちよさそうな表情だった。声が色っぽかった。
フェネックの耳は、元の倍くらいの大きさになった。鳥のフレンズか飛行機のようだった。※2
ふたりの歌が終わった。トキがフェネックを見た。
ト キ 「みみが大きくなるくらい、気に入ってくれたのね。うれしいわ」
アライグマ 「気に入ると大きくなるのか? アライさんはそのままなのだ」
アライグマは、自分のけもの耳をさわった。
ショウジョウトキ「そんなことあるんですか?」
ショウジョウトキは、いぶかし気だった。
フェネックが立ち上がって、トキとショウジョウトキを見た。
フェネック 「すっごくいい歌だったよー。天にものぼるような……」
フェネックが目を閉じて、上を向いた。
フェネックが、鳥が羽ばたくように、けもの耳をバサッと動かした。耳から、サンドスターがパラパラと飛び散った。
アライグマ 「フェネック! なにしてるのだ!?」
フェネックが、再びけもの耳をバサッと動かした。サンドスターが飛び散った。
フェネック 「なかまをさがしにいくのさー」※3
フェネックが宙に浮いた。そしてゆっくりと上昇を始めた。
アライグマ 「フェネックが飛んでるのだ!!」
ト キ 「すごいわ。そんなに気に入ってくれるなんて。感動だわ」
ショウジョウトキ「明らかにおかしいんですけど!」
フェネックが、自分の身長の倍ほどの高さに上がったところで、目を開けた。
フェネック 「だめだねー。力が抜けちゃうよー……」
フェネックがゆっくりと降下して、ストンと着地した。
ト キ 「あなた、実は鳥だったの?」
アライグマ 「しらなかったのだ……。ずっといっしょにいたのに……」
フェネック 「やだなー。わたしは鳥じゃないよー」
ショウジョウトキ「じゃあなんで飛べるんですか!?」
フェネック 「なんでだろうねえ。からだが軽くなったんだよー」
アライグマ 「アライさんも飛びたいのだ!」
フェネック 「いっしょに飛んでみるー?」
カフェの前の広場(マグカップの地上絵)。
フェネックとアライグマが、互いの体を木のつるで結んだ。
ト キ 「初心者はあまり上がらないほうがいいわよ。気持ちをおちつけて、ちょっとあがったら、すぐにおりるのよ」
ショウジョウトキ「あぶないからやめたほうがいいと思うんですけど」
フェネックがアライグマを抱いて目を閉じ、耳をバサッと動かした。フェネックの耳からサンドスターが飛び散った。
フェネックの足が地面から離れた。だがそれ以上は上がらず、アライグマの足は地面についたままだった。
フェネックが目を開けた。
フェネック 「おもいねー。あがらないよー」
ト キ 「意識を飛ぶことに集中して。はばたいてみて」
フェネックが、けもの耳をぱたぱたと動かした。※4 羽ばたくたびに、その耳からサンドスターがパラパラと飛び散った。
フェネック 「んー。あがれー」
アライグマ 「もうすこしなのだ!」
ト キ 「がんばって!」
アライグマの足が地面から離れた。
アライグマ 「やった!」
フェネックとアライグマは、ゆっくりと上昇していった。
ショウジョウトキ「すごい……。初心者で、フレンズを持ち上げるなんて……」
フェネック 「お? おお?」
ふたりは、10mほど上昇したところで上昇をやめて、ゆっくりとコマのような回転を始めた。
アライグマ 「フェネック! 回ってるのだ!」
ふたりの回転は徐々に速くなっていった。※5-1
フェネック 「わかってるんだけど、止められないんだよー」
回転はさらに速くなり、ふたりはその場でぐるぐると回転し続けた。
アライグマ 「目がまわるのだぁ!」
ショウジョウトキ「あれ、あぶないんですけど!」
ショウジョウトキが飛び立った。追ってトキもが飛び立った。ふたりは、フェネックとアライグマのそばへ寄った。
ショウジョウトキ「逆にまわる感じで、体をひねるんです!」
フェネック 「こーかなー?」
フェネックが軽く体をひねると、回転が遅くなった。だが、今度は横に移動し始めた。※5-2
ト キ 「横すべりしてる! カフェの方を意識して!」
フェネック 「むずかしいねー」
フェネックとアライグマはゆっくりと回転しながらふらふらと移動して、山頂の広場から外れようとしていた。
ショウジョウトキ「ほんとうにあぶないんですけど!」
ト キ 「おりて! 力を抜いて!」
フェネック 「うまくいかないよー」
フェネックとアライグマは、山頂の広場から外れた。アライグマが下を見ると、はるか下に森が見えた。
アライグマ 「高い! 怖いのだ!」
フェネック 「落ちないようにがんばるよー」
トキが、ショウジョウトキを見た。
ト キ 「つかまえるわよ! 両側から!」
ショウジョウトキ「はい!」
トキとショウジョウトキが、フェネックとアライグマを挟むように接近した。
次の瞬間、フェネックとアライグマが、スイーーっと急上昇した。※6
ト キ 「わっ?」
ショウジョウトキ「なんで?!」
トキ&ショウジョウトキ 「ぶへっ!」
トキとショウジョウトキが衝突した。
フェネック 「やりすぎちゃったみたい」
フェネックとアライグマは、上昇を続けた。眼下には、マグカップの地上絵とカフェの建物が見え、小さくなっていった。ふたりの上昇速度は上がっていった。
アライグマ 「フェ、フェネック! もういいのだ! 高すぎるのだ!」
フェネック 「ごめんねーアライさん。うまくコントロールできないんだよー」
アライグマ 「えー!!」
衛星写真を広域へ引いていくような映像。ふたりは薄いまばらな雲を抜けた。雲の間からパークの島々が見え、小さくなっていった。
アライグマ 「さむい……いきが……でき……のだ……」※7
ふたりの体が、白く凍り付き始めた。
フェネック 「あー……。もう、だめかも……」
フェネックが目を閉じた。
途端に、ふたりは急降下し始めた。
アライグマ 「わわわわ!! フェネック! しっかりするのだ!!」
衛星写真を拡大していくような映像。砂漠が近づいてきた。
アライグマ 「フェネックうーーー!!」
砂漠で、ボン!!! と砂煙があがった。砂漠にクレーターができた。※8
島の地下のバイパス(トンネル)。
突然、壁の高い所に穴があき、ボゴン!! と、爆発したような音が響いた。穴からものすごい勢いで何かが飛び出してきた。サンドスターが飛び散り、トンネル内がわずかに明るくなった。砂煙が広がった。※9
飛び出してきたものが、反対側の壁にぶつかり、壁をこすったあと、トンネルの中を高速で飛び始めた。
飛び始めたものは、フェネックとアライグマだった。フェネックのけもの耳から出るサンドスターが、ほんのりとトンネルの中を照らし続けた。
アライグマ 「ぺっ、ぺっ、からだじゅ、すながぁ……」
フェネック 「まー、飛んでるうちにとれるさー」
アライグマ 「なんで平気なのだ、フェネック……」
びゅうびゅうと風切り音を響かせながら、ふたりはトンネルの中を飛んだ。壁のつなぎ目が、前から後ろへ高速で流れていった。
行く先に光の点が見えた。それは急激に大きくなってきた。
ふたりはトンネルを出た。
アライグマ 「まぶしっ!」
トンネルを出た直後に、強い横風が吹いた。
フェネック 「おっと」
アライグマ 「あぶない!」
ふたりは風に流されて、道路わきの崖にぶつかりそうになった。
フェネック 「ほいーっと」
ふたりは再び急上昇して、ギリギリで衝突を回避した。さっきとは違い、垂直ではなく斜めに上昇していった。
フェネック 「つかれたー。もうサンドスターが……」
眼下に針葉樹林が見え始めた。再びふたりの高度が下がっていった。
アライグマ 「フェネック!! 落ちる!! 落ちるのだ!!」
フェネック 「意識がゆるくなってるんだよー」※10
針葉樹が急激に近づいてきた。
アライグマ 「わわ!! のわあ!!」
アライグマだけが、針葉樹の先端にぶつかった。そのあとは、バシバシと、次々に針葉樹の先端にぶつかっていった。
アライグマ「うわっ!! わわっ! いたっ!! フェネッ!! あがっ! 上がるのだっ!!」
フェネック 「あがれー(棒読み)」
ふたりは針葉樹林を抜けた。急に目の前がひらけて、湖の上に出た。
アライグマ 「たすかったのだ……。うわあ!!」
目の前に、ビーバーとプレーリーのログハウスが見えた。それは急激に近づいてきた。
アライグマ 「うわああああ!!」
フェネック 「うわー(棒読み)」
フェネックとアライグマは、ログハウスの床下をすり抜けた。バキン!! っと、はしごが二つに折れて吹っ飛び、破片が飛び散った。
ログハウスの二階。
はしごの破片の一部が、床の穴を抜けて二階まで飛んできた。
ビーバー 「わあっ!」
プレーリー 「いまのなんでありますか!?」
ふたりは、はしごがかかっていた床の穴から下を見た。
ビーバー 「下を通りぬけたッス!」
ふたりが外を見ると、フレンズらしきものが飛び去っていくのが見えた。
プレーリー 「ふたり、いた? どこかで見た気がするであります……」
ビーバー 「あんな速さでぶつかるなんて……。あのひとたち、けがとかしてないッスよね? はしら、折れたりしてないッスよね?」
プレーリーとビーバーは、遠くを見つめた。
プレーリー 「落ちてはいないであります!」
フェネックとアライグマは、湖の上、水面近くを飛んでいた。水面のきらめきが、高速で流れていった。
フェネック 「わるいことしたねー。あやまりにいくよー」
フェネック 「よーいしょっと」
ふたりは湖の上を旋回した。ゆっくりと高度が下がっていき、アライグマが水面についた。※11
アライグマ 「フェネ! ごぼっ……ごぼごぼ……」
アライグマは半分水に沈んだ。水面に波が立ち、半円を描いていった。
フェネック 「あがれー(棒読み)」
ふたりは進路をログハウスに向けて、直線飛行に戻り、水面から離れた。
アライグマ 「ぶはっ! けほっけほっ! はあ、はあ……」
ふたりの高度が少し上昇した。ログハウスが近づいてきた。ふたりの速度が下がっていった。
フェネック 「もーひとがんばりー」
ふたりは、ログハウスの二階へ向かった。
ログハウスの二階。
プレーリー 「戻ってきたであります!」
ビーバー 「フェネックさん……と、アライ……さん?」
プレーリーとビーバーの正面に、フェネックとアライグマが近づいて来た。
フェネック 「ごめんねーはしご……おーっと」
フェネックとアライグマは、減速しきれず、上手くベランダに着地できずに、少し上昇した。アライグマが、ログハウスの屋根のふちに頭をぶつけた。
アライグマ 「げふっ!」
フェネックとアライグマは、ログハウスの屋根より少し上まで上昇して、屋根のてっぺんに、ふわりと着地した。
フェネック 「ふー……つーかれたー」
フェネックの耳が、シュルっと元の大きさに戻った。
アライグマ 「おわった……。たすかったのだ……」
アライグマは濡れていて、服がぼろぼろになっていた。髪や服に砂が付いており、服に、数か所木の枝や木材の破片が引っかかっていた。
フェネック 「すーっ」
フェネックが、大きく息を吸って、一瞬止めた。
フェネック 「わたーしはーフェネーック……なかまーをさがしてるーよー(半分棒読み)」
唐突に、フェネックが歌い始めた。
アライグマ 「フェネック! どうしたのだフェネック!?」
ログハウスの二階。
上から歌が聞こえていた。
フェネック 「どこにいるのかなー……なかまたちー(半分棒読み)」
ビーバー 「へんな歌がきこえるッス……」
ビーバーは戸惑っていた。そして若干おびえていた。
プレーリーのしっぽが、ぴくぴくと動いた。
プレーリー 「なにやら、しっぽがむずむずするであります……」
プレーリーが振り返って、自分のしっぽをさわった。
ビーバー 「どうしたんスか?」
ログハウスの屋根の上。
フェネック 「わたーしのなかまー……さがしーてーほしいーよー(半分棒読み)」
アライグマ 「フェネーック!! なかまならここにいるのだぁ!!」
アライグマは、泣きそうになりながら叫んだ。
フェネック 「ごめんごめん。ちょっとした冗談さー」
アライグマ 「ほぇ?」
フェネックは、アライグマを抱きしめた。
下から声が聞こえてきた。
ビーバー 「プレーリーさん! しっぽがおっきくなって……」
アライグマ 「…………」
アライグマが青ざめた顔で固まった。
フェネック 「あとー」
フェネックは、アライグマの耳元でささやいた。
フェネック 「これ、夢じゃないからねー」
フェネックが、にやりと笑った。
アライグマ 「ひ!」
アライグマは、ゾクっと戦慄した。
おわり
※1 かなり上達しています。でもあんまり歌唱力が上がると、トキのキャラが崩壊します。
※2 大きな(元の倍くらいのサイズ)耳を横に倒して、飛行機の翼のような形にしています。
※3 謎のセリフです。フェネックはトキに感化されてしまったようです。もしかしたら、フェネックがいっぱいいる場所があるのでしょうか……。
※4 耳をぱたぱたするのはかわいいかも。
※5-1 ※5-2 不安定になったヘリコプターみたいな感じです。「コマのような回転」は、ヨー軸(垂直軸)まわりの回転です。
※6 上手くコントロールできないと急上昇することもあります。不安定です。
※7 高度が高すぎて、気圧と気温が低下しています。もっとがんばれば宇宙です。
※8 いくらフレンズが頑丈だからって、これで生きているのはありえないです。
※9 アニメでは、バイパスの中は真っ暗です。これを、フェネックの耳から出たサンドスターがほんのりと照らしています。それでもかなり暗いのですが、アラフェネは夜目が効くので、ある程度見えます。
※10 意識が乱れたり、「上がれ」という意思が弱くなると、高度が下がります。
※11 旋回する時は、直線飛行よりも大きなエネルギーが必要なので、「上がれ」という意思が強くないと、高度が下がります。
あとがき
読んでいただきありがとうございます。
このおはなしは、筆者が見た“空を飛ぶ夢”をもとにしています。ヘリコプターのフライトシミュレーターみたいな感じです。結構スピードも出せるし、いろいろできるのですが、コントロールが難しいです。ただ、その夢の中では痛みや寒さなどは無く、物に衝突してもすり抜けます。
アニメ1期3話のトキの飛行シーンは、この夢にそっくりです。この夢の浮遊感やスピード感を文章にしようと、頑張ってみたのですが、どこまで伝わったでしょうか……。
アライさんがひどい目に遭いすぎて、ちょっとかわいそうです。フェネックがアライさんを振り回す、というのは、原作のふたりの関係とは違いますが、妙にしっくりくる気がします。
2019/02/08 「アイデアノート ジャパリ・フラグメンツ」の初投稿から約1年が経ちました。結構長かったです。別で投稿した、「ひこうじょう」シリーズ、「もけい」「セルヴァルちゃん」「トンネル」も、ここから生まれました。文章は下手なままですが、読みやすくなるように工夫しています。そしてどんどん増える注釈。〈 ヤー・パー・リー 〉なんて、注釈とあとがき(設定)の合計文字数が、本編よりも多いです。「アイデアノート」なので、むしろそっちの方がメインだったりします。
アイデアが頭の中にたまってしまった。けもフレのTVアニメ2期が始まる前に公開しよう、と投稿を始めた「アイデアノート ジャパリ・フラグメンツ」。現在2期が放送中で、始まってからも書いてしまっています。正直、私自身こんなに書くとは思っていませんでした。今後「アイデアノート ジャパリ・フラグメンツ」をどうするのか、転換点に来ているのかもしれません。
TVアニメ2期の放送終了と同時に投稿を打ち切る、というのもありかも? でも2期を見たらまたアイデアが出てくるはずですし……。TVアニメ2期以外にも気になるものがあるし……。悩みます。
とりあえず2期を全話見て、それから決めます。