ジャパリ・フラグメンツ   作:くにむらせいじ

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 まえがき

 奇をてらいすぎた〈 機械猫 〉に対して、これはありがちというか普通なおはなしです。
 キュルルが男の子っぽくなっていますが、性別はどちらでもいいです。

 あとがきが異常に長いのですが、これは本編と直接関係ない、アニメ2期の感想的なものを書いてしまったためです。



〈 こくはく 〉

 

 夕方。ジャパリホテルのそばの海岸。※1

 

 キュルルとカラカルが向かい合い、崩壊したホテルの方に沈んでいく太陽の光をあびていた。

キュルル 「……じつはぼく、カラカルが……すきなんだ」

カラカル 「え?」

キュルル 「よかったら、ぼくと付き合ってください!」

 

カラカル 「つきあう?」

 カラカルは首をかしげた。

カラカル 「今までずっと付き合ってあげてたじゃない」

キュルル 「いや、そうじゃなくて、えっと……その……ずっといっしょにいたいっていうか……できたら、いっしょに住みたいな、とか……」

カラカル 「ん? だったらサーバルもいっしょに……」

キュルル 「だからそうじゃなくて……まだ言わせるの……」

 キュルルは赤くなってうつむいた。ちょっと泣きそうな顔だった。

キュルル 「……ふたりでいっしょに、だよ……」

カラカル 「え? ……それって……まさか!」

キュルル 「…………」

カラカル 「あたしと、つがいになりたいってこと!?」※2

キュルル 「つがい?」

 キュルルが顔を上げて、不思議そうな顔でカラカルを見た。

カラカル 「あんた、そんなことも知らないの? ……つがいっていうのは、オスとメスが……えっと、その、あうぅ……」

 カラカルは、キュルルから目をそらして、言葉を濁した。

キュルル 「よくわからないけど、たぶん、それだと思う……」

 カラカルが、真剣な目でキュルルの顔を見た。

カラカル 「本気なの?」

キュルル 「……うん……」

 

 しばしの間。

 

カラカル 「……だめよ」

キュルル 「え?」

カラカル 「……あたし、そこまでキュルルのこと、好きじゃないから」

キュルル 「う……」

 キュルルは、泣きだしそうな顔になった。

カラカル 「……いや! す、好きだけど! つがいにはなれないの! 今まで通り、おともだちでいようね」

キュルル 「…………そっか。ごめん、へんなこと言って」

 キュルルがうつむいて、カラカルから一歩離れた。

カラカル 「キュルル……」

キュルル 「なにも言わないで。ごめん、ちょっと、ひとりにさせて……」

 キュルルは、カラカルに背を向けて、足早に去って行った。

 

 カラカルのけもの耳がぴくっと動いた。

カラカル 「やっぱり……」

 たったったっ、と足音を立てずに走る誰か。

サーバル 「カラカルぅー!」

 カラカルのもとへ、サーバルが走ってきた。怒っていた。

カラカル 「あんたがけしかけたのね」

 

 

 昨日の午後。

 

サーバル 「なるほどねー」

 スケッチブックに、数ページにわたって、カラカルの絵がたくさん描かれていた。腰に手を当てたポーズ、ジャンプした姿、寝姿、笑顔、怒った顔、落ち込んだ顔、美しい横顔、等々。切り取られて欠けた部分もあった。

 やさしい顔でスケッチブックを見ていたサーバルが、キュルルを見た。

サーバル 「だめだよキュルルちゃん。『ふたりきりで話したい』なんて言うから、わたし、どきどきしちゃったじゃない」

 サーバルは笑顔になった。

キュルル 「ぅえ? ※3 えっと、ごめん」

 サーバルが再びスケッチブックを見た。

サーバル 「そっくりだねー。わたしの絵はないの?」

キュルル 「あ、あるよ……」

 キュルルがパラパラとケッチブックをめくった。

サーバル 「あっ」

 突然、サーバルがスケッチブックに指を突っ込み、広げた。

キュルル 「あ! だめ!」

 サーバルは、スケッチブックに挟まっていたページの切れ端をつまみ上げて、見つめた。

サーバル 「たしかに、カラカルには見せられないね……」

 サーバルは苦笑いした。

キュルル 「…………」

 キュルルは、顔と耳を赤くしてうつむいた

サーバル 「ふふふっ。なんだかたのしそう」

キュルル 「たのしくないよ……。頭の中がカラカルでいっぱいになって、追い出そうと思って絵を描くんだ。その時はちょっと楽になるんだけど、しばらくすると、また頭の中がカラカルでいっぱいになって……」

サーバル 「うーん……くるしいんだねー……。すっきりしたい?」

キュルル 「うん……」

サーバル 「いいやり方があるよ!」

キュルル 「ぅえ?」

サーバル 「だいすきだよー! って言って、カラカルに抱き着いて、押し倒しちゃうんだよ!」

キュルル 「そんなのだめだよ!」

サーバル 「まずはキスからだね。つぎは、むねの、ここをひらくんだよ」

 サーバルは、自分の胸の真ん中を指差した。

キュルル 「ぼく、カラカルに殺されるよ!」

サーバル 「自信ない? そっか、毛皮のとり方わからないよね。わたしで練習してみようか」

※4

キュルル 「ぅええ!? しないよそんなこと!」

サーバル 「……そうだよね、カラカルじゃないとだめだよね」

 サーバルは、キュルルを見て微笑んだ。

キュルル 「そういうことじゃなくて!」

サーバル 「キュルルちゃんならだいじょうぶだよ!」

キュルル 「とにかく、そういうのはしたくないから……」

サーバル 「えー、ほんもの見てみたいでしょ? カラカルおいしいよ?」

キュルル 「食べたことあるの!?」

サーバル 「たべてないよ! あじみしただけだよ!」

 サーバルはちょっとあせった様子だった。

キュルル 「味見もだめだよ! カラカルはぼくのものなの!」

サーバル 「ふふっ」

キュルル 「あ……ち、ちがぅ……」

 キュルルは顔を赤くしてうつむいた。

サーバル 「それ、カラカルの前で言ってみない?」

 

 

 現在。

 

サーバル 「ひどいよカラカル! なんであんなこと言うの!?」

 サーバルは怒っていたが、激怒、というよりは悲しんでいるようだった。

カラカル 「ほかにどう言えって言うのよ!?」

サーバル 「そのまま、思ったまま言えばいいんだよ! なんでうそつくの!?」

カラカル 「……ちがう、けものだから……」

サーバル 「そんなの関係ないでしょ!」

カラカル 「……あんたみたいになったらどうするのよ!」

サーバル 「え? わたし?」

 サーバルは驚いて勢いを失い、気の抜けた声を出した。

カラカル 「みんな忘れちゃって、離れ離れに……」

サーバル 「なに言ってるの? わたしは関係ないよ?」

カラカル 「片方だけおぼえてるなんて……。キュルルは、あのひとほど強くないわよ!」

サーバル 「えっと、よくわかんないけど、キュルルちゃんは、カラカルが思ってるよりも強いよ。なにかあってもがんばれる子だよ」

カラカル 「ぐぬぬぅ……」

サーバル 「そうだ! いいやり方があるよ!」

 サーバルが、明るい顔になった。

 

 ………………。

 

カラカル 「でもあの子、ひとりにしてって……」

サーバル 「もしかして、こわいのー?」

 サーバルはからかうように言った。※5

カラカル 「そんなわけないでしょ!」

サーバル 「わたしで練習してみる?」

カラカル 「はあ!? なに言ってんの!? するわけないでしょ!」

サーバル 「ほら、おいでー」

 サーバルは、笑顔で両腕を広げた。

カラカル 「しないってば!」

 カラカルは、ぷいっと横を向いた。

サーバル 「へへっ、冗談だよ。ちょっと残念だけど。……あとは、ふたりにまかせるよ」

カラカル 「……サーバルぅ」

サーバル 「ん?」

カラカル 「あんたは、それでいいの?」

サーバル 「なにが?」

カラカル 「……なんでもない」

サーバル 「ほーらー、がんばって! キュルルちゃんはこわくないよ!」

カラカル 「こわいわけないでしょっ!」

サーバル 「ふふふっ……先こされちゃったもんねー」

カラカル 「ぐぬぬぅ……」

サーバル 「思い出して。カラカルは、キュルルちゃんに、なにを言われたのかな?」

カラカル 「…………ぅ、ぅぅ……」

 カラカルが、顔を赤くしていった。

カラカル 「……っ!!」

 

 カラカルは走った。

 

 

 傾いたヘリポートの上。

 

 太陽が沈み切り、あたりは暗くなっていった。キュルルは、ヘリポートの端に立って、太陽が沈んだあたりをぼんやりと見ていた。

カラカル 「キュールルー!!」

 突然、カラカルが大ジャンプで現れ、ヘリポートに着地した。※6

キュルル 「ぅえ?」

カラカル 「だいすきっ!!」

キュルル 「うわあっ!」

 カラカルが、キュルルに駆け寄り抱き着いて、押し倒した。

カラカル 「キュルルぅー!」

 カラカルは、笑顔でキュルルを強く抱きしめた。

キュルル 「ちょっとぉ! おちついて!」

カラカル 「だめ! とまんないっ!」

キュルル 「どうしたのカラカル!?」

カラカル 「あんたがあんなこと言うから!」

 カラカルが、キュルルに顔を近づけた。

キュルル 「ぅえぇ!?」

カラカル 「あたし、へんになっちゃったじゃない! どうしてくれんのよっ!」

 カラカルは、乱暴にキュルルにキスをした。

キュルル 「んんー……ぷはっ、はっ、はあっ、心臓が、こわれちゃうよっ!」

カラカル 「あたし、もう壊れちゃったわよ! ちゅっ……んんー」

 カラカルは、再び乱暴にキュルルにキスをした。

カラカル 「ちゅうぅ…………はっ」

 唇が離れ、カラカルが体をおこした。

キュルル 「……カ、カラカルぅ……」

 キュルルは、涙を流して放心していた。

 カラカルが、キュルルのズボンに手をかけた。

カラカル 「これどうやるの!?」

 

 カラカルのけもの耳が、ぴくっと動いた。

カラカル 「え?」

 カラカルが、キュルルのズボンのベルトを緩めたところで、止まった。

 

サーバル 「…………、…………っ!」

 砂浜で、サーバルが何かを叫んだ。

 

キュルル 「カラカル?」

 カラカルは、じっとキュルルの顔を見つめた。

カラカル 「もう一回、ちゃんと言いなさい。あたしと、どうなりたいの?」

キュルル 「…………カラカルと、つがいに、なりたい……」

カラカル 「あたしも、キュルルとつがいになりたい」

 ふたりが目を閉じた。カラカルがゆっくりと顔を近づけていった。

 

 

サーバル 「なんか間違ってるけど、ま、いいや……」

 サーバルは、砂浜歩きながら、上を向いて涙をこぼした。

 

 

 

 おわり

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※1 場所と時間はキュルル自身が決めたものです。サーバルの演出ではありません。第10話ラストの朝日がきれいだったので、飛行機型の遊具(?)の上にしようかな、と思ったのですが、朝はカラカルのごきげんが悪い可能性があった(第2話でそんなことを言っている)ことと、あの場所は足元が崩れやすいのでやめました。

 太陽の方向は、第10話が朝日で、第12話が夕日だから逆方向(海側が西)になるんですが、飛行機型の遊具とホテルの位置関係は……あそこは湾になっていて、遊具は高い場所だから……。いや、考えないことにします。

 

※2 「つがい」だと、いきなりプロポーズになっちゃうんですが、けもの的にはそれが合っていると思います。

 

※3 筆者には、アニメのキュルルのセリフが「え?」ではなく「ぅえ?」って聞こえるんです。

 

※4 サーバルとカラカルの服は、色と模様が違うだけで、つくりはほとんど同じに見えます。練習には最適(?)です。エンディング(『きみは帰る場所』の方)の最後に、普通にレンダリング(シェーディング)をかけた3人が出てきますが、あれ、3Dデータの形がよく分かっておもしろいです。ふたりの服は同じデータをコピーしたもののようです。ボウタイの形が微妙に違いますが。

 

※5 カラカルをからかう……。

 

※6 砂浜から直接ジャンプしたのではなく、建物を伝って来ました。カラカルなら、直接ジャンプしてしまいそうな気もしますが。

 




 あとがき

 読んでいただきありがとうございます。

 筆者は、2期を見ながら、キュルルとカラカルってくっつきそうだなーと思っていて、第9話でごきげんが悪くなっていくカラカルを見てニヤニヤしてしまいました。でも、かわいい嫉妬で終わるかと思ったら、本気で怒ってる……。「カラカルはキュルルが大好きなんだなー」と思いました。でもこれはちょっと間違った解釈だし、恋愛ではないと思いますが。
 心配と不安、その反動で生じた怒り。イエイヌに対する嫉妬。別れの悲しみ。寂しさ。全部、キュルルが好きだから生まれてくる感情です。カラカルはそれを全部キュルルにぶつけてしまう。
 ツンデレのようでツンデレじゃない、でもツンデレになっちゃうカラカル。それでいて無邪気だったり、水場を怖がったり……。ネコっぽい。
 カラカルかわいい。

 2期のメイン3人の中では、サーバルが一番大人な気がします。でもこのおはなしでは大人になりすぎました。私の書く作品のサーバルは、大人っぽくなりすぎる傾向があります。

“2期っぽいセリフ”を書こうとしたのですが、いまいち……。アニメのセリフには、脚本家の癖(やたら「たしかに」が多いとか)が出ていると思うのですが、うまく似せられないです。やっぱり自分の文になっちゃいますね。















 TVアニメ2期について、考えたことを書いておきます。

 本来はこんな所に書くことではないのですが、ごめんなさい、独り言です。私の頭の中を整理するための文章でもあります。ある意味これも「こくはく」です。
 言いたいことを全部書くと、とんでもない長文になる(第9話の感想だけで5000字超えそう)ので、特に気になった部分だけです。それでも長いですが……。

 上の方は2期の問題点です。下の方に、2期の良かった点も書きました。


 以下は、私の勝手な想像が入っています。実際には内部の人間にしか分からないことです。素人がかなり失礼なことを言っています。制作スタッフの方々ごめんなさい。

 2期の問題点を考えてみます。例として、第7話のリレーのシーンを挙げます。

 第7話のリレーのシーンは、コース(フィールド)が、脚本家が考えていたものよりも広くなってしまったんじゃないかと思います。脚本家が考えていたのは、陸上競技場よりちょっと広いくらいだったと思います。木の上から全体が見渡せて、走り終えた選手がすぐに観覧席(木の上)に来られるような広さです。
 でもあの脚本を成立させるには、長いコースが必要です。矛盾しています。狭いつもりで書いた脚本と、あの広大な背景画。場が広いのに、キャラの移動の描写を省略したので、キャラがワープしたみたいに見えます。観覧席と林は、本来はもっと近かったのでしょう。脚本が曖昧な感じで書かれていたうえに、矛盾を含んでいたんだと思います。

 プレーリーとビーバーのような、完全な役割分担は、両方共とんでもない天才でないと成立しません。現実では、ミスや改善できる点が必ず生じます。良いものを作りたいなら、ビーバーは、設計通りものが作られているかチェックしなければいけないし、プレーリーは、ビーバーの設計の問題点を指摘しないといけない。任せきりではだめなんです。
 2期では、そのあたりができていなかったんじゃないかと思います。脚本家の意図と、仕上がった映像がズレている気がします。それに、コンテ等の担当が、脚本の問題点を指摘するどころか、悪化させていると思うんです。

 矛盾して見える部分も、実はちゃんと説明(言い訳)ができることなのかもしれませんが、理屈で正しくても、受け手が違和感を感じたら失敗です。

 矛盾や違和感以前の問題として、脚本の大きな流れ(展開)にも問題がありそうです。大きな流れというのは、1話分の流れについても、2期全体の流れについても言えます。

 たくさんのプロが集まって作っているんだから、誰も問題に気付かないなんてまずありえない。気付いた時には手遅れだったのかもしれない。
 スタッフロールを見ると、1期は監督の担当部分が多く、少人数で作っていたらしいのに対し、2期は大人数で作っていたようです。スタッフ同士のコミュニケーション、情報伝達に問題がありそうです。統率がとれていなかったのかも。いい作品なのに、非常にもったいない。

 曖昧で矛盾を含んだ脚本(細部だけではなく、大きな流れにも問題あり)
    ↓
  (意思疎通ができておらず、脚本からの改善も行われなかった)
    ↓
 脚本家の意図とズレた、いい加減なコンテ(矛盾点が増加)
    ↓
  (ここでも意思疎通の問題が?)
    ↓
 大人数でバラバラに作画
    ↓
 合わせてみたら矛盾や違和感だらけ
    ↓
 修正不能(ここまで作ってしまってから、脚本レベルの修正をするのは不可能に近い)
    ↓
 そのまま放送

 という感じでしょうか。

 綿密な打ち合わせ・検証・リテイク・修正などをする(時間・人手・予算の)余裕が無いなら、監督より上の立場の人達にも問題があるかもしれません。


 第12話に関しては、とりあえず1話分の映像を作るだけで精一杯だった印象です。息切れして余裕が無かったんでしょうね……。

 第11話、第12話は、脚本を削りすぎた(削り間違えた)気がします。
 本当は、描きたかったことがもっとあったと思うんです。伏線などが多すぎて、最終回にしわ寄せが来てパンクしたんでしょう。でも無駄な所が多いような……。ゆっくりしゃべりすぎだし、敵がセリフ待ちで攻撃止めてるし……。やっぱりもったいない。
 細かい所は置いといて、船型の巨大セルリアンどうなったの? という最大の疑問が……。

 “やりたくても出来なかったんだろうなー”という部分が多いのは、(方向は違うけど)1期と2期に共通して言えることだと思います。予算も時間も足りていない気がします。

 以上はあくまでも私の想像です。



 2期の問題点は、おこがましいですが、自分が物語を書く時の注意点・参考になりそうです。反面教師とか言っちゃうとかなり失礼ですが……。

 私は、物語を書く際に、キャラの位置関係や移動を考えるのが苦手です。ホテルのシーンみたいに、多くのキャラ(セルリアンも)が建物内を動き回ったら混乱します。どこまで浸水しているのか? という問題もあります。
 地図(館内図)を描いて、キャラの位置関係や移動を検証すると良いかもしれません。これは第7話のリレーのシーンにも言えます。
 でも私の場合は、キャラの移動無しで、セリフが並んでいるだけの作品ばかりですが……。

 あとは……。
 時間経過や出来事の順序をよく考えて書かなきゃいけない。
 敵(問題)が多く複雑になると、倒す(解決する)プロセスも複雑になる。
 回収できない伏線はいらない。詰め込みすぎに注意。(意図的に回収しない伏線もありだけど)
 余分なものは削るべきだけど、削りすぎちゃだめ。優先順位も大切。
 設定は、緻密である必要はないが、不自然であってはならない。
 戦闘中、緊急事態の時に、長い(ゆるい)会話を挟むのは、どうしても必要な時だけ。戦いながらの会話にするか、会話中に敵の攻撃を受けていない理由を作る。
 説明セリフで流れを止めてはいけない。
 物事が都合よく進みすぎるのは不自然。“あるキャラの話をしていたら、そのキャラが現れる”
とか。
 いないはずのキャラが突然現れるとか、あったはずの物が消えるとかもだめ(超常現象は別)。
 最後まで手を抜かず、最後こそ丁寧に書く。

 私も失敗してしまいそうな(失敗している?)ことなので、気をつけないといけませんね。
 あと、コンパクトにまとめるって本当に難しいですね。
 でも私は、物語を書き始めて1年ちょっとの素人です。こういうことって、プロなら出来なきゃいけないと思うのですが……。
 矛盾や違和感以前の、脚本の大きな流れについては、改善が難しいです。感覚的な部分が大きいからでしょう。第12話がグダグダな理由が上手く説明できないです。緩急? メリハリ?


 その他の残念な点、不満、「私ならこうするのに!」という部分は、挙げたらきりがないし、言っても仕方がないので書きません。






 以下は2期の良かった点です。ほとんどが私の好みの問題です。
 上の方が映像・音声面、下の方が脚本面です。



 ―― 映像・音声について ―― 


 私は素人なので、制作技術的なことは分かりません。「そんなの当たり前だろ!」「簡単にできることだろ!」というものもあると思います。

・私は、2期のキャラクターデザイン結構好きです。目の個性が強めですね。チークが入っているのも、かわいくて好きです。縁皮嚢(袋耳)があるのもポイント。後ろ姿もいい感じ。
 私が見た目(顔)で好きなのは、サーバル、センちゃん、レッサーパンダ、プロングホーン、オオミミギツネ、カンザシフウチョウです。特にレッサーパンダが好きです。しゃべり方もかわいいです。「かわいくないし」って……鏡を見せたい!
 あと、サーバルの後頭部、頭と耳の境目に線が無い(スムーズにつながってる)のが好きです。(後頭部フェチ)

・3Dモデリングやレンダリングが丁寧です。パーツの干渉も少ないです。主線が細く、引いた絵でも繊細な感じです。素人目には2Dのアニメと見分けがつかないカットもあります(2Dで作画した所もあるっぽい)。10話ラストシーンや12話の夕暮れシーンでは、ちょっと変わったレンダリングをしていますね。あれも好きです。

・地面影が落ちているのがすごく良かったです。2Dの背景と3Dのキャラの合成では、地面影を付けるのが面倒なはずなのに。夕暮れの長い影も良いです。

・表情は細かく動かしています。身振り手振りもいい感じです。第5話ラストの表情は素晴らしい。無言の時、口がへの字になっているのが好きです。
 2期は、どちらかと言えば、静かな細かい演技が得意なのかも。

・頭を振った時などに、ワンテンポ遅れて耳や髪が揺れるのが、細かくて良いです。(当たり前だけど)

・カラカルの耳がへにゃって倒れるのが好きです。

・しっぽの動きも良いです。カットにもよりますが、結構動いています。

・水の表現(水面の波やキラキラ)全体的にきれいで良い感じです。水中シーンも凝ってる。

・あのモノレールとトラクターが好きです。かわいいし、メカとしても面白い。3DCGの利点を活かしていると思います。走行中の音も好きです。

・隠し味的に、セリフや動作に合わせて動物の鳴き声(?)が入るのが好きです。

・アラフェネと、アルマー&センちゃんの共演、声優さんすごい。

・第8話のライブシーン良かったです。観客は途中で力尽きた感がありますが、それだけ頑張って作ったってことです。メインはPPPですから。最後のフルルの動きが細かくて良いです。

・第11話のオオミミギツネの踊りもかわいかったです。

・第11話の、連続ぱっかーんが気持ちよかったです。

・2期は戦闘シーンが苦手なようですが、第11話のチーター型セルリアンのジャンプと着地はかっこよかった……。(できるならなぜやらない?)

・オープニング、曲も好きなんですが、やっぱりモノレールに目が行ってしまいます。

・前半のエンディング(「星をつなげて」の方)は、最初のふたりがすっごくかわいいです。“くるん”をコマ送りして見ると面白いです。あれで回転して見えるのが不思議。あと、3人が走るカットの、カラカルの動きとカット切り替えが気持ちいいです。曲とシンクロしてますし。

・後半のエンディング曲、「きみは帰る場所」は、わかりやすい歌詞ですね。エンディングを話数の半分で変えるなら第7話からですが、歌詞の内容的に、第6話で変えて正解です。



 ―― 脚本、作品全体について ―― 


・回を重ねるごとにカラカルが好きになっていくという罠。

・パンダコンビ、チータとプロングホーン、ヒョウとイリエワニ、オオミミギツネとハブ……。良い感じに百合にできそう。他にも仲良しなコンビがいますね。

・非常に真面目な動物解説。実写とフレンズを比較できるのが面白いです。ゲスト解説者には驚かされました。

・予告が好きです。ゆるゆるだけど、ちゃんと次回につながっています。背景の変化も細かい。

・「物に対する、ヒトの思い入れの強さが、強いセルリアンを生む」という設定が好きです。

・2期単体でも見られるように作られていますが、1期を見ていると分かる小ネタなんかがたくさんあります。小ネタではなく、思いっきり被せてくる所もあったりします。

・かばんの登場・活躍は完全に予想外でした。私は、“かばんちゃんは終盤にチラッと登場する程度だろう”、と思っていたので。賛否が分かれそうですが、私は単純に嬉しかったです。

・元の動物に関して、よく調べて作っています。抑え気味の描き方ですが、それが逆に良いかも。視聴者が元の動物を調べて「なるほど」と気づくような。チーターとプロングホーンの関係とか。間違ってるとかもの足りないとか言うときりがないのですが、ここはいい所だけ褒めます。

・第10話ラストの、朝日のシーンがきれいでした。映像もセリフも好きなシーンです。BGMも合っています。丁寧に作られています。

・第12話終盤、サーバルとかばんの会話がなんとも……ずるいです。やっぱりこういうのが好きなんですね私。

・ラストの絵は、ちょっと考え込んでしまいました。言いたいことは分かるんですが、どう受け取るべきか悩みます。この先イエイヌがどうなったのか、過去に何があったのかを二次創作で……。いや私には無理です。
 こういう静かなしめかたは好きです。

・2期は、人間と“けもの”の関わりについて、1期よりも踏み込んで描いています。ゆるい中に重いものが混じっています。1期では裏側に置かれていたものが、2期では表に出ています。やさしい世界を貫いた1期に対し、2期はちょっと手厳しいです。皮肉も込められています。
 これが一番良かった点かもしれません。賛否が分かれそうですが……。

 具体例を挙げると……。

 第1話 コールドスリープっぽい施設からのスタート。これが既に皮肉っぽい。

 第2話 レッサーパンダの『レッサー』は『劣った』という意味もあります。ヒトが勝手につけた名前です。

 第3話 イルカとアシカは、自分たちの芸を褒めてもらうことを求めていますが、これは野生動物としては不自然です。しかも、ヒトはもういなくて、ステージも客席も海の底。これは、第9話のイエイヌのエピソードにも通じるものがあります。

 第4話 アリ塚をヒトの住む町と重ねています。シロアリにとっては、アリ塚は町やビルです。そしてアードウルフとアリツカゲラは、シロアリを餌にする動物です。

 第5話 私は「ひとのちから」というサブタイトルで身構えてしまいました。一歩間違えれば大やけどするテーマじゃないかと。予想と違い、ゆるい内容でしたが、「ヒトは動物を思いのままに操ろうとした」なんて言っています。サーバルの「ヒトは、そんな怖い生きものじゃないよ」というセリフが刺さります。

 第6話 ビースト≒けもの。最初に聞いた時は、そのネーミングはどうなんだって思いましたが、それも計算のうちなんだと思います。

 第7話 チーターの「なわばりなんて、自分がここだと決めた場所を速さで勝ち取るものよ」というセリフが引っかかりました。考えすぎかもしれませんが。

 第8話 キュルルが狭い檻に入れられて連れて行かれる場面で、ドキッとした方もいると思います。立場の逆転です。

 第9話 散歩拒否する犬みたいなキュルルに、「ヒトって生きものは」「ほんと勝手だなー」というセリフが向けられます。ありがちなセリフですが、分かりやすいです。
 そしてイエイヌのエピソード。私は、原発事故の時に置き去りにされたペットの話を思い出しました。ヒトによって作り出され、ヒトに依存(ちょっと違うけど)し、服従する生き物。永遠に続くお留守番。雑種である点もポイントかもしれません。

 第10話 脇役だと思っていたら、重要なキャラだったリョコウバト。調べてみたら驚きました。ある意味、ヒトが絶滅させた動物の代表です。
 そのリョコウバトに、ヒトの代表であるキュルルが、仲間たちの代わりとして絵を渡す。そしてリョコウバトは、ヒトがいた場所なんて知らないと告げる(お返し)。
 ふたりとも、過去に起きたことを知らない。自覚が無い。

 第11話 フウチョウコンビは結構ストレートに言いますね。
「ヒトが不用意に近づいたばかりに、迷惑するけものもいたかもしれんぞ?」とか。

 他にもあると思います。


・もう一つ、賛否が分かれそうなのは、フレンズが1期より人間臭く描かれていること。
 やさしすぎる1期のフレンズに対して、2期のフレンズは怒ります。争うこともあります。険悪になる場面もあります。1期のフレンズが、利他的で(はかせ・助手以外)見返りを求めないのに対して、2期には「お礼」「ごほうび」「出演料」「そのかわりに○○して」などが出てきます。2期のフレンズには、利己的な面もあります。
 加えて、キャラの極端な個性付けを避けている節もあります。それでも十分個性的ですが。
 こう書くと、2期が悪いみたいに見えますが、1期が特殊だったとも言えます。1期は、なんで怒らないの? とか、なんでそこまでしてあげるの? などと思う所がありました。2期のフレンズもいい子たちばかりです。作品の方向性が違うのでしょう。

・2期は、良くも悪くも真面目なつくりだと思います。これは1期が不真面目なのではなく、やはり作品の方向性が違うのでしょう。
 失礼な言い方になりますが、1期が天才肌で革新的なのに対して、2期は不器用で保守的な所があります(逆な部分もありますが)。私は、真面目で不器用な所に、妙に親近感がわくんですよ。

 実は私、2期のセリフをメモしていたんですが、脚本家が悩んで考えて書いているのが、ほんのちょっとだけ分かるんです。頑張って作ったのは間違いないと思います。
 作り手に感情移入してどうする、っていう話ですが……。

 まだまだ良い所があるんですが、書きすぎたので、ここまでにします。(2019/04/03記)


 ― 追記 ― (2019/04/06)

 まだ書くのかよ、という話ですが、もうちょっと自分の頭の中を整理してみたので。
 私が第12話を見た直後は、第9話のカラカルみたいな怒りがありました。でもこれって、2期も含めて、けものフレンズが好きだから生まれてきた感情です。この怒りの裏には、悲しみや、終わってしまった寂しさがあります。認めたくないですが、1期に対する嫉妬も混ざっています。
 カラカルがキュルルを怒鳴りつけても、キュルルを怒らせただけでした(反省を促す効果はあったかもしれませんが)。ですから、怒鳴り散らすよりも、2期の良い所をたくさん思い出して、悪い所は、ちょっと指摘した上で、自分が作品を作る時の注意点にしよう、と考えたのです。喧嘩別れになんてなりたくないですから。
 やっぱり、ここで救いになってくれたのはサーバルですね。本当にすごいですよ彼女。私はあんなふうにはなれないです。

 

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