ジャパリ・フラグメンツ   作:くにむらせいじ

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 まえがき

 長い物語の、断片です。



〈 たからもの(1)(4)(5) 〉

 

 〈 たからもの1 〉

 

 夜。ヒトのいなくなったホテルの、ある部屋のユニットバス。

 

 サーバルが湯舟につかり、かばんが椅子に座っていた。かばんはサーバルに背を向けて体を洗っていた。

サーバル  「いっしょにお風呂入るのって久しぶりだね」

 かばんは振り返った。

かばん   「狭い所ばかりだったからね。温泉の時以来、かな?」

 かばんは、座ったままシャワーをあびて、泡を洗い流し始めた。

サーバル  「かばんちゃん、なんでこっち向いてくれないの?」

かばん   「…………恥ずかしいから、だよ」

サーバル  「そんなのいまさらじゃない」

 急にサーバルが立ち上がり、湯船からあがると、かばんの横に立った。

かばん   「うわっ」

サーバル  「なんでびっくりするの?……あれ?」

 サーバルはしゃがんで、かばんの下半身を覗き込んだ。かばんは慌てて前かがみになり、体を隠した。

 サーバルは楽しげに言った。

サーバル  「なにそれ!……見せてよ!……温泉の時にはなかったよね?」

 

 

 ベッドルーム。服を着たサーバルとかばんが、ベッドの端にに座っていた。

サーバル  「わたし、ヒトの恥ずかしいっていう気持ち、よくわかんないな」

かばん   「ごめんね、ずっと黙ってて」

サーバル  「いいんだよ。実はわたし、そうじゃないかなーって思ってたんだ。かばんちゃん、においが変わったから」

かばん   「ええ!それすっごく恥ずかしいよ!」

サーバル  「やっぱりわかんないな、その気持ち……でもこれって、すっごいことだよ?……わたしとかばんちゃん、つがいになれるんだよ!、赤ちゃんができるんだよ!」

かばん   「…………」

 かばんは顔を赤くしてうつむいた。

かばん   「…………本気で、言ってるの?……」

サーバル  「もちろんだよ。…………かばんちゃん……いやなの?…………ちがう動物…だから?」

かばん   「ちがう、ちがうよ、そうじゃないよ……その、早すぎる……というか…………えっと……嬉しいんだよ、僕は。…………サーバル……ちゃん…………だいすき……だから」

 サーバルはハッとして、目を丸くした。

サーバル  「…………わたし、わかってきたかも……恥ずかしいって気持ち……」

 サーバルは赤くなってうつむいた。

 

 

ののののののののののののののののののののののののののののののののののののののののののの

 

 

 〈 たからもの4 〉

 

 夏の夜。廃墟と化した病院の病室。

 

 ベビーベッドにふたりの赤ちゃんが寝ていた。ひとりは女の子で、黒髪に同じ色の大きなとがったけものみみがあり、黒くて長いしっぽがあった。もうひとりは男の子で、黄色の髪に猫のような耳があり、黄色と茶色の縞のある短いしっぽあった。

 黄色の髪の子が泣いていた。

フェネック 「みらいちゃん、ちょっと待ってねー……アライさん、ミルクを」

アライグマ 「ちょ……ちょっと待つのだあ……」

アライグマが哺乳瓶を持って、ふらつきながらやってきた。※1

 ミルクを飲む黄色の髪の子--みらい。

 今度は黒髪の子が泣き出した。

アライグマ 「かこちゃん……どうすればいいのだ」

フェネック 「なんでだろうねー……おむつ替えたばっかなのに」

かばん   「あの、そういう時は…………」

 かばんが、部屋の反対側にあるベッドから起き、歩いてきた。

かばん   「こうして、こう、ぽんぽんって。ほら、いーこいーこ」

 かばんが黒髪の子--かこを抱き上げてあやす。しばらくすると、かこは泣き止んだ。

フェネック 「それさ、この前やってみたけどうまくいかなかったんだよ」

アライグマ 「すごいのだ、さすがおとうさんなのだ」

 かばんはかこをベッドに寝かせながらつぶやいた。

かばん   「お父さん……」※2

フェネック 「まだ寝てていいのに」

アライグマ 「アライさんとフェネックは夜行性だからだいじょうぶなのだ」

かばん   「ふたりとも疲れてるよね。早めに交代しましょう」

フェネック 「無理しちゃだめだよ、昼間はずっとひとりなんだから」

かばん   「いいんですよ。忙しい方が。何も考えなくて済むので」

 かばんはベビーベッドのそばの椅子に座った。

フェネック 「かばんさん、つらいならさ……」

かばん   「ごめんなさい。全部、僕のせいです。ラッキーさんが、忠告してくれたのに」

ラッキービースト「ボクハ、倫理的・生物学的ナ、問題ガアルト言ッタダケダヨ。コノヨウナ事態ハ、予測デキナカッタンダ」

フェネック 「自分を責めちゃだめ、なんて言えないけどさ、この子たちのお世話は楽しいんだよ。ね、アライさん」

アライグマ 「この子たちすっごくかわいいのだ!」

フェネック 「朝まで3人でお世話しようか」

かばん   「4人だったら、もっと……」

 かばんがうつむいた。

 

 間。

 

フェネック 「あー、次のミルクの準備してくるよー」

フェネック (小声で)「アライさん、あとはまかせたよ」(かばんには聞こえていない)

アライグマ 「へ?」

 フェネックが、ドアを開け部屋から出ていった。

 間。

アライグマ 「えーと」

 間。

アライグマ 「その」

 

 アライグマは、かばんがベビーベッドの柵をを握っていることに気づいた。その手が小刻みに震えていた。

 アライグマはかばんに歩み寄り、かばんの背中に手を置いた。

アライグマ 「かばんさん、かばんさんはなにか、がまんしてるのだ」

 アライグマは、かばんの背中をさすった。

アライグマ 「がまんしちゃだめなのだ」

かばん   「アライさん、やめて、ください」

アライグマ 「ほら、ほら、いーこいーこ」

 アライグマは、かばん背中をさすり・ぽんぽんと優しくたたく。

かばん   「やめて、やめ、僕は、だいじょうぶ……だ…から……この子…たちが…」

 かばんの声が震えた。

アライグマ 「そうなのだ、この子たちがいるのだ」

かばん   「ここに……サーバルちゃんが……いれば…もっと……うう…う…」

アライグマ 「もっと、泣けばいいのだ……ぐす…ぐす…」

 アライグマも泣き出した。

かばん   「う、う、サーバルちゃん……サーバルちゃん…ぐす…あんなこと…僕の……せいで…ぐす……うう……サーバルちゃん……ごめ……ごめんなさい……うううう……」

かばん   「…………ぐしゅ……そんな……アライさん……まで……泣けてくるのだ……うう……うああああ…………」

 

 かこと、みらいも泣き出した。4人の泣き声が部屋に響いた。

 

 ドアが開き、フェネックが入ってきた。

フェネック 「これは、予想以上だねー」

 フェネックがアライグマに歩み寄った。

フェネック 「アライさん、ちょっと落ち着いてくれるかなー、この子たちに泣き止んでもらわないと」

フェネック 「ほい、いーこいーこ」

 フェネックが、かこを抱き上げてあやすと、かこは落ち着きはじめた。

アライグマ 「フェネック、みらいちゃんが泣き止まないのだ」

フェネック 「んー、なんか足音がー」

 

 バタン!と突然、勢い良く部屋のドアが開いた。

 

アライグマ 「のだっ!」

かばん   「わああ、たべな……」

フェネック 「おー」

 

????  「なに!なんかすごい泣き声が……」

 

かばん   「…………え?」

フェネック 「おひめさまー」

 

 

 

 

 

※1 粉ミルクと飲料水は病院の地下の備蓄倉庫にあったものです。廃病院ですが非常電源が生きています。水道は止まっていますが、防災用井戸の水が使えます。

 

※2 かばんちゃんは女の子です。

 

 

 

 

 

 

 おまけ

 

 みらいが泣いている。

サーバル  「ちょっと大きくなったね」

サーバルが、右手でみらいの首の後ろを掴み、持ち上げる。

かばん   「変な持ち方しちゃだめだよ!……あれ?」

 みらいが一瞬で泣き止む。無表情だが苦しそうではない。

かばん   「何、どうやったの?」

フェネック 「こりゃーびっくり」

アライグマ 「まほうみたいなのだ」

 

 

ののののののののののののののののののののののののののののののののののののののののののの

 

 

 〈 たからもの5 〉    注: < たからもの4 >の続編ではありません。

 

 

 夏の午後。屋外。錆びついた焼却炉の前。

 

 かばんとフェネックが立っていた。そばには、ショッピングカートを改造したベビーカーがあり、そこには、ふたりの赤ちゃんが寝ていた。焼却炉の上のふたが開いていた。

フェネックは赤ちゃんの方を見て言った。

フェネック 「おこしちゃかわいそうだねー」

 かばんがフェネックの方を見て言った。

かばん   「寝かせておいてあげましょう」

 アライグマが走ってきた。両手でサンドスター丼を抱えていた。

アライグマ 「おそなえなのだー!」

フェネック 「アライさん、どこからそんなもの持って来たのさ」

かばん   「ありがとう。きっと喜んでくれます」

 かばんはサンドスター丼を受け取ると、焼却炉の中に入れた。焼却炉の中には、体を丸くした大きな猫、サーバルキャットの亡き骸があった。その下には新聞紙が敷き詰められていた。

フェネック 「ほんとにいいの?」

かばん   「はい。さばんなは、遠いから。ですよね、ラッキーさん」

ラッキービースト「賢明ナ判断ダネ」

アライグマ 「サーバル、いい子だったのに、ぐす」

かばん   「ふたりとも、ちょっと離れててね」

 かばんが焼却炉の上のふたを閉じ、しゃがんで、マッチを取り出した。そこで、止まった。

 

 間。

 

 フェネックが目元をこすった。

 

 かばんはマッチをすり、焼却炉の下の穴から火をつけた。新聞紙に火がつき、火が大きくなっていった。

 

 間。

 

 焼却炉の煙突から煙が出始めた。

 

フェネック 「この子たち、むこうへつれてくねー」

 フェネックがベビーカーを押して離れていった。

ガラガラとベビーカーの音が離れていった。

 

 

 ボン!と突然、勢い良く焼却炉の上のふたが開き、炎と火の粉、光の塊が飛び出した。

 

アライグマ 「あつ、あつい、あついのだ!」

かばん   「うわあっ、食べないでください!」

 大量の煙が広がった。

????  「たべない、けほっ、けほっ……あれ?ここどこ?」

 煙の中に、フレンズが座っていた。

かばん   「サーバルちゃん!」

かばんが、煙の中のフレンズに抱き着いた。

サーバル  「わっ、」

 煙が風に流されていった。

かばん   「よかった…………あれ?………サーバルちゃん……は、はだか」

サーバルの毛皮……服が、完全に消失していた。

サーバル  「あれ?毛皮がないよ!…なんでー……それに……」

 

サーバル  「きみは……だれ?……なんていう動物かな?」

 

 間。

 

かばん   「…………僕はかばん。ヒトっていう、動物だよ」

 

アライグマ 「どうなってるのだ……とりあえず、着るものを持ってくるのだっ」

 服がこげたアライグマが、走り去って行った。入れ替わりに、フェネックが戻ってきた。

フェネック 「すごい音がしたね、なにがあったのかなー?……おー」

かばん   「ラッキーさん、これは一体……」

ラッキービースト「サーバルハ、不完全ニ再フレンズ化シタミタイダネ。サンドスター丼ノ影響カモシレナイ…………再フレンズ化、衣服の消失……検索中……検索中…………」

かばん   「材料を入れて、火にかけて…………」

フェネック 「りょうりだねー」

サーバル  「人をりょうり扱いしないで…………りょうりってなに?」

アライグマ 「もってきたのだー」

 アライグマが走ってきた。両手で白い大きなシャツを持っていた。

 

 

 着せてみた。

 かばんは顔を赤くして目をそらした。

かばん   「かわいいけど、なんか、目のやり場に困る服だね……」

 アライグマが持ってきた、白い半袖シャツは、大きすぎてワンピースのようになっていた。だがワンピースとしては丈が短すぎた。首回りが大きすぎて、右肩が出てしまっていた。強い日差しで、サーバルの体のラインが透けて見えていた。

フェネック 「かばんさんはサーバルの裸を見慣れてるじゃないかー」

 かばんはフェネックの方を見た。

かばん   「見慣れてないよ!いつも新鮮だよ!……あれ?」

フェネック 「うらやましいねー」

 かばんはさらに顔と耳を赤くした。

アライグマ 「大きいのがいいと思って…………」

フェネック 「アライさん、下をもってこないと」

サーバル  「暑いから、これでいいや」

 

 廃墟と化した病院の廊下。サーバル、かばん、フェネック、アライグマの4人が歩いていた。

サーバル  「わたしに子供がいるなんて信じられないよ。…………そして、きみが……」

 サーバルは、かばんの方を向いた。

サーバル  「……わたしの……つがい……かばんちゃん」

かばん   「そうだよ。改めて言われると恥ずかしいね。かばんっていう名前も、サーバルちゃんにつけてもらったんだよ」

サーバル  「ごめんね、本当にごめん。わたし、何も思い出せなくて」

かばん   「いいんだよ。僕は、サーバルちゃんが帰ってきてくれただけで十分だよ。……また、最初からやり直そう」

 

 病院の病室。ベビーベッドの周りに4人が立っていた。サーバルが、ベビーベッドを覗き込んだ。

サーバル  「かわいいねー」

フェネック 「ふたりの子だよ。かわいくないわけがないさ」

アライグマ 「この子が、かこちゃんで……こっちが、みらいちゃんなのだ」

サーバル  「……かこ……みらい…………」

かばん   「サーバルちゃん?」

 

 みらいの頬に、数滴のしずくが落ちた。

 




 
 あとがき・設定

 読んでいただきありがとうございます。

「たからもの」というのは子供のことです。かなり恥ずかしい内容です。このシリーズは物語が一本道ではなく枝分かれしており、ifの物語がいくつもあって、私のなかで整理しきれていません。テキストに出力できたのはその一部だけです。話数が飛んでいるのはそのためです。本当はこの間に物語があります。18禁になりそうな部分もあります。
 いつか、足りない部分を書いて、単品として投稿したいです。いつになるか、書けるのかは分かりません。そもそも物語が枝分かれしている、というのはゲームならともかく、SSとしては無理がある気がします。



 以下は私のオリジナル設定です。私はゲームアプリ版をプレイしておらず、アニメ1期から拾える情報を膨らませて設定を作っています。(これの執筆時は、アニメ2期は未放送)


・ アニメ1期の、その後の物語。

・ フレンズは、「サンドスター」と元の動物に由来する「いのち」の2つのエネルギー体?を持ち、「サンドスター」を失うと元の動物に戻り、「サンドスター」と「いのち」の両方を失うと死亡する。

・ フレンズが死亡しても、条件がそろえば体毛などから再度フレンズ化できるが、以前の記憶は消えてしまう。

・ 再フレンズ化の条件は、サンドスターの量や質、気温、湿度、大気中の成分、光線状態、周囲に存在する物質、元の動物由来のもの(体毛など)の状態などがあり、サンドスターが当たれば良いというものではない。

・ フレンズは「サンドスター」と「いのち」の両方を大幅に消耗すると、回復するまで「休眠状態」になる。

・ フレンズは自然の防御反応により、異種交配を防ぐため元の動物の雌雄に関係なく雌になる。ただしヒトの雄との交雑は可能。

・ フレンズに子供ができると、「サンドスター」を子に受け渡すため、「サンドスター」を大幅に消耗する。出産時の体力消耗により、「いのち」を削ってしまうこともある。

・ フレンズの子はフレンズとして産まれる。産まれた時には服(毛皮)が無い。



 〈 たからものシリーズ 〉 オリジナルキャラクター、赤ちゃん二人の設定

 「かこ」と「みらい」はサーバルとかばんの子。双子の姉弟。名前はひらがな。外見と身体能力はサーバルとかばんの影響が大きく、性格はサーバル、かばん、フェネック、アライグマの影響を受けている。

 ---- かこ ----

 姉。サーバルの毛色が黒くなったような外見。しっぽにはうっすら縞模様がある。顔はサーバル寄り。

かこの幼少期
 活発で天真爛漫だが、意外と聡明な所もある。手先が器用で機械いじりが好き。自分の爪の先端を加工して工具代わりにしている。機能停止したラッキービーストを修理してみせ、周囲を驚かせた。五感が優れており身体能力も高いが、サーバルほどではない。将来の夢はロボットを作るエンジニア。


 ---- みらい ----

 弟。毛色はサーバルとほぼ同じだが、耳としっぽが小さい。前髪にM字模様がある。顔はかばん寄り。

みらいの幼少期
 のんびりしているように見えるが頭の回転は速く、かこの暴走を止めることがある。聴覚はかこにやや劣るが視力が高い。身体能力が高く、パワーはそこそこだが、体を素早く正確にコントロールする能力はサーバル以上で、スタミナもある。自転車に乗ると恐ろしく速い。将来の夢は(漠然と)スポーツ選手。


 [ 投稿日時 2018/03/29 01:27 ]
※ 一回削除して再投稿したため、最初の投稿日時はこれよりも前です。正確な日時は不明です。
 
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