ジャパリ・フラグメンツ   作:くにむらせいじ

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 まえがき

 これは、いつの出来事かはっきりしない雑談です。一応2期のその後です。でもそうすると、この6人が一緒にいるのはおかしい気がします。
 言い訳すると、これは、2期最終回の放送前に書いたものがベースなので、無理があるんです。
 3人の旅の途中で、研究所に立ち寄ることもあった、ということにします。

 またあとがきで2期についてごちゃごちゃ言っています。本編よりそっちの方がメインみたいになっています。言いたくないけどやっぱり我慢できないという矛盾……。

2019/04/18 あとがきに追記



第41話~第60話
〈 敵 〉


 

 かばんの研究所。

 

 サーバル、カラカル、キュルル、かばん、はかせ、助手が、テーブルに向かって紅茶を楽しんでいた。

 

 キュルルが、紅茶のカップを置き、少しうつむき加減になった。

サーバル 「キュルルちゃん、どうしたの?」

キュルル 「ちょっと、考えてたんだ」

サーバル 「なにを?」

キュルル 「セルリアンにも、心があるのかな、って」

サーバル 「ええ?」

カラカル 「そんなわけないでしょ!」

 キュルルがカラカルを見た。

キュルル 「でも目を動かして、こっちを見てくるから……」

かばん  「たしかに、生物的な反応はあるよね」

キュルル「それにあの時、リョコウバトさんのセルリアンが、とまどっているように見えたんだ」

カラカル 「ただ止まってただけじゃないの?」

サーバル 「わたしたちは見てなかったからわからないよ」

キュルル 「なにか、考えているのかも……」

カラカル 「なにかってなによ!」

キュルル 「わからないけど……」

サーバル 「そんなこと、考えたことなかったよ」

助手   「セルリアンに心があるかどうかは、わかっていません」

はかせ  「フレンズを見たら襲いかかってくるのです。調べようがないのです」

 かばんが紅茶を一口飲んで、カップを置いてから、顔を上げた。真剣な顔だった。

かばん  「調べる方法はあるよ」

はかせ  「え?」

 皆がかばんに注目した。

かばん  「脱出できない場所にセルリアンを発生させて、その外から、意思の疎通ができるか試みるんだ。話しかけたり、身振り手振りを見せたり、あとは……絵を見せるとか」

キュルル 「なるほど」

はかせ  「あぶないのです! 前にそれで脱出されて、たいへんだったのです!」

サーバル 「おもしろいこと考えるね!」

カラカル 「ヒトって恐ろしいわ……」

 カラカルはちょっと引いていた。

かばん  「いや、やらないよそんなこと」

 かばんは、やわらかい表情になった。

かばん  「セルリアンの行動パターンは単純で、考えて動いているようには見えないね」

サーバル 「たしかに、セルリアンによって決まってるんだよね」

カラカル 「えんえんと追っかけてくるやつもいれば、こっちが攻撃するまでずっと止まってるやつもいる。たくさんいても同じね」

かばん  「セルリアン同士のコミュニケーションは一応とってるみたいだけど、同じ方向に向かうとかだけで、作戦を練って行動しているわけではないみたい」

助手   「ただ……例外もあるのです」

はかせ  「例の事件なのです」

キュルル 「例の事件?」

かばん  「それについては、昔のことで、記録が消失していてよく分からないんだ。……ただ、断片的な記録から察するに、知能を持ったセルリアンが1匹、あるいは数匹いて、たくさんのセルリアンをコントロールしていた、みたい……」

助手   「その、知能を持ったセルリアンは……」

はかせ  「フレンズのような姿だった、とも言われているのです」

カラカル 「まさか!」

サーバル 「そんなセルリアンいたんだ!」

キュルル 「それって、やっぱり心を持っているってことじゃ……」

助手   「あくまでも例外なのです」

はかせ  「それに、その“知能”が、“心”と呼べるものなのかはわからないのです」

かばん  「心とは何か。難問だよね」

 かばんは腕を組んだ。

キュルル 「そうか……まずそれが問題なんだね。うーん……」

カラカル 「むずかしいことじゃないわ。心はみんなの中にあるものよ」

助手   「さすがネコ科」

はかせ  「単純なのです」

カラカル 「なんですって!」

かばん  「いや、いい答えだと思う」

サーバル 「わたし、むずかしいことはわからないけど、そのセルリアンとは友達になれそうな気がするな」

カラカル 「はあ! あんたなに言いだすのよ! どう考えても敵でしょ!」

かばん  「とにかく、今はそんなセルリアンはいないよ」

カラカル 「動かすもとがいないなら、来たやつをぱっかーんって倒しちゃえばいいのよ」

キュルル 「でもやっぱり、セルリアンも、攻撃されたら痛いのかな?」

サーバル 「いきものみたいだから、わたしたちと同じように痛いのかも……」

キュルル 「セルリアンに心があるなら、たぶん、カラカルのことが怖いよね……」

カラカル 「へんなこと言わないでよ! 戦えなくなっちゃうじゃない!」

かばん  「痛みに関しては、動物のような神経組織は無いみたいだから、感じていないんじゃないかな」

カラカル 「ほら、やっぱり痛くないのよ!」

かばん  「ただ、神経組織に代わるなにかを持っているのかもしれない。そうしないと機敏に動けないからね」

キュルル 「結局わからないんだね……」

助手   「心や痛みのあるなしに関わらず、フレンズの敵であることには変わりないのです」

はかせ  「食べられたらもとの姿に戻って、記憶までなくなるのです。会ったら逃げる、逃げられなければ戦う。あとはハンターにまかせるのです」

 かばんがキュルルの顔を見た。

かばん  「もしかしてキュルルちゃん、セルリアンと分かり合えるかも、って考えてる?」※

はかせ  「ぅえ!」

助手   「まさか」

カラカル 「あいつらと!?」

サーバル 「なかよくするの?」

キュルル 「ううん。そんなことできないよね」

 かばんが紅茶を一口飲んで、カップを置いた。そしてキュルルの顔を見た。

かばん  「……キュルルちゃん、ここでいっしょに研究しない?」

キュルル 「ぅえ?」

かばん  「よかったら、だけど……」

はかせ  「この子にはまだ早いのではないですか?」

かばん  「そうだね。でも前に、この子の考えに助けられたし、将来有望かもしれない」

 かばんは、真剣な顔で、キュルルの目を見つめた。

かばん  「それに、勉強になると思う」

 かばんの声のトーンが、少し重いものに変わった。

キュルル 「勉強……」

はかせ  「ここでやっている研究は、大変な仕事なのです」

助手   「やるとなったら、厳しくするのです」

 はかせと助手も、真剣な顔でキュルルを見た。

カラカル 「なんか空気変わったわね……」

 カラカルはちょっと引いていた。

サーバル 「みんな熱心だね!」

キュルル 「……やってみたい、けど……」

 キュルルがうつむいた。

かばん  「すぐに決めなくていいよ。よく考えてね」

 かばんの声と表情は、やさしいものに戻っていた。

サーバル 「いいんじゃない? やってみようよキュルルちゃん!」

カラカル 「そうね。キュルルにはべんきょうが必要だわ」

キュルル 「えーなにそれー」

 

 

 

 カット。

 

 

 

 

 

 

 

 

※ 親しくなった後の、かばんのキュルルの呼び方は(サーバルに合わせて)“ちゃん付け”になるのかな、と考えて書きました。アニメでは「あなた」って呼んでましたね。

 




 あとがき

 読んでいただきありがとうございます。

 キュルルは、まだまだ子供という感じなので、旅も大事ですが、もっとたくさんの経験を積むべきだと思います。ちょっと鼻につく言動や、思慮が浅い所がありますから。(“自分の事は棚に上げて”なんですが、上げる棚ならいくらでもあるので)
 キュルルって何歳なんでしょう? 眠っていた期間は含めないとして、10~12歳くらいかな、と筆者は思っています。そうすると言動は年相応ですね。というかかなりしっかりしていると思います。10~12歳ごろのの筆者は、こんないい子じゃなかったです。
 キュルルが思春期に入ったらどうなるんでしょうね。二次創作で……私には無理です。
 「10~12歳」と書きましたが、もっと低い気もします。キュルルは、とても幼い部分と、ちょっと大人びた部分が同居しているキャラクターだと思うんです。こういうアンバランスさは、キュルルだけではなく、けものフレンズ全体に言えることだと思います。

 2期ラストで、海のごきげん問題は収束したようですが、セルリアンの脅威が無くなったわけではないので、研究と対策は続ける必要があるでしょう。
 本当に収束したのか? あれで解決したのか? という疑問が残っていますが、火山活動のような自然の脅威には、フレンズもヒトも対抗できないので、自然に収束するのを待つしかない、ということなのでしょう。
 噴火によってたくさんのフレンズが生まれていそうですし、悪いことだけではないのでしょう。でもビーストも生まれるかもしれないし……。その辺の対策は、かばんたちに頑張ってもらうしかないですね。とりあえず、キュルルの絵は、セルリウムに触れないように厳重に保管する必要がありそうです。でも、ヒトの思い入れが強いものなんて、そこらじゅうにありそうですが……。

 また、“2期っぽいセリフ”を書こうとしてみたんですが、2期のセリフの単語を拾って挟んだだけでは、自分の文のままで変わらないですね。






 あんまり作品世界の外の話はしたくないのに、言いたくなってしまう矛盾した話です。

 けものフレンズプロジェクトは、自分の首を締めるようなことばっかりやってるんですよね。しかも、そうなるのが分かっていたふしもあります。自分の首を締めることになるのが分かっているのに、誰も止められない、コントロールできていない……。もったいない。
 そしてどんどんファンの目が厳しくなっていく……。
 アニメ2期に関しては、1期を超えるものを作らないと1期と同等の評価は得られない状況だったと思います。“出来が悪かったら許さないぞ”という空気もあったと思います。マイナススタートだったんですよね。ただでさえ人気作の2作目はハードルが上がるのに……。
 この状況で、2期が、雑なつくりで、(1期には無かった)意地悪さや残酷さが混ざったものだったら、叩かれるのは当たり前でしょう。これは、ファンの、けものフレンズが好きな気持ちの裏返しです。プラス方向へ向かえば大成功していただろうに……。本当にもったいない。

 TVアニメ2期ってそんなに悪い作品ではないと思うんです。
 ただ、雑な所が多く、終盤に向かうほど雑になっていった感じがします。各話の質や作風の差も大きいと思うんです。同じスタッフが作ったとは思えないくらいバラバラです。
 そして、あまりにも雑な最終回(“雑”とはちょっと違う気もしますが)。2期は、「終わりよければ全てよし」の逆を行ってしまったんです。多少の事は気にしないから、最後は良いものにしてくれよって思っていたのに……。
 好きな人に裏切られたら怒りますよね。第9話のカラカルみたいに。でも片思いだし、筋違いな怒りなんですが。
 ただ、最終回の最後の方には救いがあったと思います。

 2期の良かった点は〈 こくはく 〉のあとがきに書きました。良い所はたくさんあるのに、非常にもったいない……。ってこればっかりですね。

 これからちょっとずつ、2期をもう一回全話見てみようと思います。最初の方忘れてますし、最終回を見た後にもう一回見ると、発見がありそうですし。




 以下は、2期詰め込みすぎ問題のメモです。

 2期の第11話・第12話で解決すべき・描くべきだったことを挙げます。
 〔 〕内は、優先順位が低いもの、又は、謎のままの方が良いかもしれないものです。

・ キュルルのおうち探し
・ キュルルの成長
・ 海のごきげん問題
・ 【敵1】多数のフレンズ型セルリアンと、キュルルの絵
・ 【敵1‐A】サーバル&カラカル型セルリアン
・ 【敵1‐B】ビースト(アムールトラ)型セルリアン
・ 【敵2】船型の巨大セルリアン
・ 【敵3?】ビースト(アムールトラ)関係 〔 その過去 〕
・ サーバルとかばんの関係
・ イエイヌ関係 〔 その過去 〕
・ リョコウバト関係
・ ホテルの浸水と崩壊(派手にやってほしかった)
・ 〔 キュルルが眠っていた理由 〕
・ 〔 キュルルの過去・親について 〕
・ 〔 サーバルの目が光った件 〕
・ 〔 PPPのディナーショー 〕
・ 〔 各キャラの個性を活かした戦闘 〕
・ 〔 アラフェネの活躍 〕
・ 〔 各キャラのその後 〕
・ 〔 ヒトと動物(けもの)の関係 〕
・ 〔 ヒトがどうなったのか 〕
・ 〔 パークの過去 〕
・ 〔 1期と2期の間の出来事 〕
・ 〔 アムールトラ以外のビーストについて 〕
・ 〔 宇宙ステーションの件 〕
・ 〔 海底火山の噴火の様子 〕
・ 〔 水中での戦闘 〕
・ 〔 ボートの修理 〕
・ 〔 その他、細かな伏線 〕

 これらを(〔 〕以外)全部、視聴者が納得できる形で描くのは、時間(尺)的に無理だったのでしょう。第11話までがスローペースでしたし、私は、エイプリルフールネタで「実は2クールでした!」とか言うんじゃないかと思ったくらいです。
 でも最終回は、セリフを最小限まで削り、戦闘中のセリフを早口にすれば、もっといろいろできたと思います。緊急事態なのにゆっくり会話させた理由は、じっくり見せたかったとか、分かりやすく説明したかったからなのでしょうか……。もしくは、会話を長くして時間稼ぎしたのかもしません(格闘とかの映像を作る余裕がなかったため)。


 詰め込みすぎ問題の改善案を4つ考えてみました。考えても仕方ないですが……。

(A) 敵が3者いるのを一つに絞る。
(B) 終始ゆるい子供番組みたいにして、最終回にちょっと泣けるエピソードを入れる。
(C) セルリアン関係はカットし、イエイヌを中心にして、ヒトと動物の関係をシリアスに描く。
(D) 後半目一杯使って、セルリアンとの戦いを描いたバトルアクションにする。

 (A)と(B)が無難でしょうか。(D)は、作画スタッフから悲鳴があがりそうです。



 追記( 2019/04/18 )

 「けものフレンズのファンであることが恥ずかしい」
 「(アニメ2期に対して)肯定的な意見を言うことすら許されない」
 という状況は、さすがにキツイです。私の勝手な思い込みかもしれませんが。

 「たかが娯楽に目くじら立てたりするのはよそうじゃないか(引用ですが、本来の使い方とは違います)」私も含めて、みんな気軽に行こうよ、と思います。好きならついていけばいいし、嫌なら離れてしまえばいいんです(それができないから困っているんですが)。
 受け手にとっては「たかが娯楽」でも、作り手にとっては死活問題ですけどね。

 第9話の、カラカルが怒る部分は、今のファンと2期スタッフの関係に似ていると思いました。
(あの人の肩を持つわけではありません。あれは許されないことです)
 カラカルのように「攻撃的」ではなく、私のように黙って我慢する「非主張的」でもなく、サーバルみたいに出来たら良かったのに……と思います。

 「攻撃的」な言動は、正論だとしても、相手を怒らせて、事態を悪化されることがあります。
カラカル 「ったく、こっちの気も知らないで、なにが遊ぼうよ……。どんだけ心配したかわかってんの!!」
 ☆ これ、口調をやわらかくするだけで全然違いますよね。怒鳴るのはだめです。発言の前に深呼吸するなどして、気持ちを落ち着けるといいかもしれません。
 あとは、もっとやわらかい言い回しにして、相手の事情を気遣うことができたらベストです。
 「言うは易く行うは難し」ですね。

 おまけにカラカルは嫌みまで言ってしまいます。
カラカル 「でもよかったじゃん。おうちにも帰れたし、これでようやくお別れできるし!」
カラカル 「はーあ、たいへんだったわ。だれかさんのせいで」
 そして相手も激怒……。
キュルル 「ああ、そう。わるかったね! もう迷惑かけないから、さようならっ!」
 好きな相手と喧嘩別れ……。
カラカル 「あんなやつ、もう顔も見たくない」←けもフレのファンもこうなったのでは?

 サーバルの場合は、
サーバル 「急にいなくなって、さみしかったよー」
 と、素直に自分の気持ちを伝えています。この言葉は、“いなくなられたのは、私にとって嫌なことだったんだよ”(今後同じことが起きないようにしてね)という意味を含んでいます。
キュルル 「ぼくもー」
 反省させるのではなく、明るい同意を引き出しています。
 加えて、サーバルは、
サーバル 「ほら、カラカルも!」
 と、一緒に遊ぶ流れを作ろうとしています。考え方もポジティブで、怒ってもいません。サーバルはこれを(おそらく)意識せずに自然にやっているんです。サーバルすごい。

 しかし、カラカルの怒りは大きく、これを台無しにしてしまいました。

 ここでまたサーバルがすごかったんです。カラカルとキュルルを仲直りさせるきっかけを見つけて、カラカルをキュルルのもとへ向かわせているんです。

 けもフレの一部のファンも「攻撃的」になっていたと思うんです。たまりにたまった不満が爆発したのは分かります。でも、それでは作り手は反省するどころか、怒りだしかねません(ここで逆ギレするのは子供のやることですが)。不満を相手にうまく伝えるやり方は無かったのかな、と思います。でもこれって、とっても難しいんですけどね。伝えられたとしても、相手が反省するかは分からないですし。
 残念ながら、現実には、サーバルのような人は滅多にいないでしょう。


 また一緒に遊べたらいいのに。

 けものフレンズが、たのしいコンテンツであり続けることを願っています。




 ☆ この追記部分は「アサーション」の考え方を参考にしましたが、ちょっと違います。
 次の次の話〈 れいだい 〉に、これの詳細と、練習編を書く予定です。


 [ 初投稿日時 2019/04/14 14:14 ]
 

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