まえがき
〈 ふたりふたり 〉もしくは〈 せっきん 〉の続きとも言えますが、設定は曖昧です。
アラフェネが何かをやっちゃった後です。
アライグマとフェネックが裸で抱き合って、ベッド*1 に横になっていた。
アライグマ 「ぃたっ」
アライグマが一瞬眉をよせた。
フェネックが、アライグマを抱いていた手を離し、その手を見た。
フェネック 「え……」
フェネックが見開いた。爪と指に血がついていた。
フェネック 「アライさん、ちょっと背中を見せてね」
アライグマ 「わわっ!」
アライグマはベッドに背中をつけようとした。背中を見られまいと。
フェネックは少し体を起こして、背中を隠そうとするアライグマを手で止め、その背中を覗き込んだ。そしてすぐ苦い顔をした。
アライグマの背中に、線状の爪痕が数本ついていて、出血の跡があった。
フェネック 「この傷、あとが残るかもね……。ごめんねアライさん、ほんとうに……」
フェネックは、憂いを含んだ表情で、アライグマの背中の傷を見つめた。
アライグマ 「フェネック、こういうのはあやまっちゃだめなのだ」
フェネック 「ん、そうだねー」
アライグマ 「フェネック、力が入っちゃうほど気持ちよかったのか?」
フェネック 「すっごーく気持ちいいのがずーっとつづいて、真っ白になって気絶しちゃうかと思ったよー」
アライグマ 「フェネックのあんな声、アライさんしか知らないのだ」
アライグマがフェネックに笑顔を向けた。
フェネック 「ぁう……」
カメラ、フェネックの後頭部ごしにアライグマの顔が見えるアングル。
アライグマ 「その顔も、アライさんしか知らないのだ」
フェネック 「アライさん上手になったよねぇ。もともと器用だしさ」 *2
アライグマ 「アライさんは、フェネックの気持ちいいところ全部知ってるのだ」
アライグマはちょっと自慢気に言った。
フェネック 「んー、ひとつだけ、アライさんの知らないところがあるよー」
アライグマ 「ふぇ? どこなのだ?」
フェネック 「ひみつ」
アライグマ 「フェネック! 教えるのだっ! 正直に答えるのだっ!」
アライグマは、フェネックに覆いかぶさるようにじゃれついた。
フェネック 「ふふふっ、だってそれ教えたら、わたし、アライさんに殺されちゃうからさー」
楽しげにじゃれ合うふたり。
アライグマ 「そんなに気持ちいいのか! どこなのだっ!?」
フェネック 「ふふっ、ひみつだってばー」
アライグマ 「すっごい気になるのだ! やさしくするから教えるのだ!」
フェネック 「……どうしてそんなに、わたしとつながりたいの?」
アライグマ 「だいすきだからなのだ!」
フェネック 「それだけ?」
アライグマ 「…………」
アライグマの笑顔が消えた。
フェネック 「言いにくいなら、言わなくてもいいよー」
アライグマ 「フェネックが、いなくなっちゃう気がして……つなぎ止めたいのだ」
フェネック 「…………」
沈黙があった。
フェネックは無表情で、考えこんでいるようだった。
アライグマ 「フェネック! なんで黙るのだ!」
フェネック 「わたしは、どこにもいかないよー」
アライグマ 「そうじゃないのだ! 近くにいても、遠くなっちゃうって、そんな、怖くて……怖くてたまらないのだ!」
フェネック 「……まいったなー」
フェネック 「アライさん、よーく聴いてねー。わたしとアライさんは、ずっとずっと“ふたり”だよ。これまでも、これからも。なにが起きても、だれがどうやっても、ひとりにはならないよ」
アライグマ 「でも、ふたり、遠くなっちゃうかもしれないのだ……」
フェネック 「いつかはお別れになるねー。……でも、それでも、ふたりはふたりのままだから、きっとまた会えるよ。近づいたり、離れたりしてさ……」
アライグマ 「離れても……なにかが残ってほしいのだ……」
フェネック 「アライさん、わたしにも消えない傷をつけてよ」
アライグマ 「へ?」
間。
アライグマ 「えーー!?」
フェネック 「どこにするー?」
フェネックが微笑んだ。
アライグマ 「フェフェフェフェネック!! なにを言ってるのだ!」
フェネック 「……ここがいいかなー?」
フェネックが、自分のけもの耳をつまんだ。
アライグマ 「そんな大事なとこだめなのだ!!」
フェネック 「じゃ、ここをガブっと」
フェネックが首をかしげて、のばした首すじをさわった。
アライグマ 「そこはあぶないのだ! あと見られたらはずかしいのだ!」*3
フェネック 「じゃあ、ここにするー?」
フェネックが、左手の薬指を立てて、にやりとした。
フェネック 「さきっぽをかじって骨をー」*4
アライグマ 「だめなのだ! すっごく痛そうなのだぁ!」
アライグマは涙目になった。
フェネック 「アライさんの好きなところでいいよー」
フェネックは、アライグマの耳元でやさしくささやいた。
アライグマ 「ぐぬぬぅ……」
アライグマが眉をよせた。
アライグマ 「フェネックのからだは全部好きなのだ! アライさんのものなのだ! 傷つけるなんてできないのだぁ!」
フェネック 「やー、なんともこれは……」
フェネックは顔を赤くして、恥ずかしそうに微笑んだ。
フェネック 「それじゃあ……こんなのはどうかなー?」
フェネックが少し体を起こした。
フェネック 「背中を見せて、じっとしててねー」
そして、アライグマをうつぶせにさせ、アライグマの左側から、傷ついた背中を見下ろした。
アライグマ 「なにをするのだ?」
フェネックは、左手でアライグマの首のあたりを、右手で腰を押さえた。強く押さえつけず、やさしく。そしてその背中に顔を近づけ、傷が無い所に舌で触れた。
アライグマ 「ふぁ!」
フェネックの舌は背中を滑り、傷のわきをなぞっていった。傷口にギリギリ触れない所を、羽毛が触れるようにやさしく、ゆっくりと。
アライグマ 「ふあああ! フェネックやめるのだ! ぞわぞわするのだぁ!」
フェネック 「……んふっ……」
フェネックがかすかに笑った。
フェネックの舌は、動きに変化をつけながら、数本ある傷を渡り歩き、傷に直接触れないようにそばをなぞっていった。
アライグマ 「うわあ! くすぐったっ……あっ! やめ、やぁ……ふああ!」
舌が背中から離れた。
フェネック 「痛い? きもちいーい?」
フェネックの声はやさしく、色っぽかった。
フェネックは再び傷のそばをなめ始めた。今度は濡れた舌が傷の上に乗り、傷をやさしくなぞっていった。
アライグマ 「……いたっ! あぅ! はあ、はぁ、うあぁ!」
フェネックの舌は、傷に軽く触れながら細かく動き、血をなめ取り、唾液を残していった。
アライグマ 「……あっあっあっ! んは、やああ! ぁあああーー!!」
アライグマが甲高い叫び声をあげたところで、フェネックが舌を離した。唾液が糸を引いた。
フェネック 「アライさんのそんな声、わたししか知らないねぇ……」
フェネックは邪悪な笑みを浮かべた。
アライグマ 「フェネック! 降参なのだ! もうやめるのだっ!」
……………………。
アライグマの背中の傷は、濡れてキラキラ光っていた。
フェネックは、それを熱っぽい目で見つめ……
フェネック 「アライさんだけ、ずるいよー」
と、色っぽい声で言って……
フェネック 「……ちゅっ」
傷にキスをした。
アライグマ 「ぴっ!」
アライグマがぴくっと反応した。
アライグマ 「わかった、わかったのだ……」
……………………。
アライグマとフェネックは、向かい合ってベッドに座っていた。ふたりは裸のままだった。
フェネックが頭を下げた。
アライグマが、フェネックの左のけもの耳を両手でつまんで、先端を見つめた。
アライグマ 「ほんとにいいのか?」
フェネック 「いいよー、一気にやってねー」
フェネックは軽い感じで言って、目を閉じた。
少しの間があった。
アライグマ 「んっ!」
アライグマが、カリっとフェネックの耳の先端を噛んだ。
フェネック 「くぅ!」
少しの間があった。
フェネック 「意外と痛くないねぇ……」
フェネックの左のけもの耳が少し欠けていて、切り口がキラキラ光っていた。フェネックがそこをさわった。 *5
フェネック 「っ!」
フェネックがぴくっと震えた。フェネックが指先を見ると血が付いていた。その血はすぐにサンドスターの光に変わって消えた。
アライグマは、自分の手のひらを見つめていた。そこには、血が付いた黄色い小さなかけらがあった。 *6
アライグマ 「ごめんなさ……んむぅ!」
フェネックは、少し乱暴にアライグマにキスをした。
すぐにふたりの唇が離れた。
アライグマ 「ぷは……」
フェネック 「あやまっちゃだめだよ、アライさん」
アライグマ 「ごめ……んっ、ちゅぷ……」
フェネックは、再びアライグマにキスをした。今度は長いキスになった。
……………………。
アライグマ 「わかったのだ……フェネックのいちばん気持ちいいところ」
フェネック 「ありゃー、わかっちゃったかー」
アライグマ 「さわれないのだ……そんなとこ気持ちよくできないのだ!」
フェネック 「アライさん、ときどき、わたしのいちばん弱いところくすぐってるよ?」
アライグマ 「ほえ? 気持ちよかったのか?」
フェネック 「気持ちよかったよー、涙が出るくらい」
おわり
あとがき
読んでいただきありがとうございます。
書きたいものと違う……。いや合ってるのか?
私が半分寝ている時に思いついたものを、文章にすると、えっちな方向に行きがちです。しかもなんか気持ち悪いです。私が書くものはいつもそんな感じですが。
アラフェネがいちゃつくとか今さら感がありますが「思いついたから書いた」だけです。
ふたりの傷は、いつかは無くなるかもしれません。サンドスターの作用によって作られた、かりそめの体ですから。耳はけものプラズムですし。ですが“何か”は残るのではないかと思います。
「ジャパリ・フラグメンツ」の設定(非公式)では、「フレンズの時に受けた傷は、元の動物に戻っても残る」としているので、基本的には傷が消えることはありません。
「フレンズの時に受けた傷は、元の動物に戻っても残る」というのは「寿命が巻き戻る」という設定と矛盾しそうです。精神は元に戻る(記憶が消える)が、肉体は戻らない(傷は消えない)というのは不自然です。でも、足を失うような重傷を負ってもフレンズ化が解ければ元通りになる、というのは都合が良すぎるし、ゲーム的なので私は嫌なんです。
地域猫の耳カットをヒントにして書きましたが、あれって痛いんでしょうか……。切る時は麻酔をかけるそうですが、麻酔が切れたら痛むのかもしれません。耳は神経が少ないから痛くない? 不妊手術の後の痛みの方が大きいから気にならない? ……猫に訊いてみないと分かりませんね。
〈 とれる(通常版) 〉では、みんな痛がっていませんでしたが、あれは設定が変なんです。
アライさん&フェネックは、けものフレンズの複数の作品をまたぐ存在です。
世代交代を繰り返すサーバルと“主人公”そしてパークガイド。それらを見守り、追いかけ、助けるアラフェネ。アラフェネは、スターウォーズのR2-D2とC-3POのような存在でしょうか(ちょっと違うと思いつつ……)。アラフェネが主人公たちとは別で行動しているのもポイントです。
アラフェネが一緒にいない作品もありますが。
ふたりの出会いがどんなだったのかも気になります。二次創作で……私は書けそうにないです。
サーバル&かばんと同じく、けものフレンズの記憶や記録が残っている限り、アラフェネの関係はつながったままでしょう。たとえ、物理的に離れてしまっても、長い長い時間が経っても、元の姿に戻っても、記憶を失っても、世代交代しても、死んでしまっても、世界が変わっても、制作者が変わっても。
アライグマ 「フェネック! 降参なのだ! もうやめるのだっ!」
フェネック 「……やめるのー?」
アライグマ 「ぅ……もーちょ……してもいぃのだ……」
フェネック 「んふふっ」
フェネック 「ぴちゃぴちゃ、ちゅっ、ちゅる、じゅるる……」
フェネックは、たっぷりと唾液を絡ませた舌で、アライグマの傷をなめていった。
アライグマ 「……ひああっ! んはあっ……フェーネッ! うあああっ!」
フェネック 「……つぷ」
アライグマ 「へ?」
フェネックの舌先が、アライグマの傷口に入った。
アライグマ 「あ゛ーー!!」
舌はそのまま傷の中を走った。
アライグマ 「うああああーーーっ!!」
……………………。
アライグマ 「アライさん、痛いのが好きなへんな子になっちゃうのだ……」
アライグマは落ち込んだ様子だった。
フェネック 「おかえし、ちょうだい」
[ 初投稿日時 2019/09/09 09:09 ]