ジャパリ・フラグメンツ   作:くにむらせいじ

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 まえがき

 アニメ1期と2期のクロスオーバー(?)。あまり深く考えて書いていません。



〈 ぽけっと 〉

 

 【 アニメ1期の世界 】

 

 バスが海沿いの道路を走っていた。*1 その後部座席に、サーバルとかばんが座っていた。

 

かばん  「サーバルちゃん、胸……なんかふくらんでる」

 サーバルの左胸、ポケットのあたりに不自然なふくらみがあった。だが、ふくらんでいるだけで、ポケットの口が無かった。

サーバル 「ほんとだ、なんだろこれ」

 サーバルは、左のわきから服の中へ左手をつっこんだ。

サーバル 「あれ? とれない……。毛皮のなかにあるみたい」

かばん  「それ、どうやって入れたの?」

サーバル 「わたしは入れてないよ!」

かばん  「出口がないと、取り出せないよね」

 

サーバル 「えっと、出口?」

 サーバルが左胸の上を指で横になぞった。ジッパーを開くように、胸ポケットの口が現れた。

かばん  「ポケットができた!」

 サーバルが胸ポケットを見つめ、ぽんぽんと叩いた。

サーバル 「これ前からあったような……」

かばん  「なかったよ。自分ではあんまり見ないから、わからなかったんじゃないかな」

 

 サーバルが胸ポケットから何かをつまみ出した。

サーバル 「からからになってる……」

かばん  「おさかな?」

 

 胸ポケットから出てきたのは、“カタクチイワシの煮干し”だった。

 

サーバル 「くんくん……ふぁ……」

 煮干しのにおいを嗅いだサーバルは若干放心し、少しよだれをたらした。

かばん  「サーバルちゃん?」

サーバル 「あむっ」

 サーバルが煮干しを食べ始めた。*2

サーバル 「ぽりぽり……」

かばん  「食べてだいじょうぶな……」

 

サーバル 「うみゃーーい!!(うまーーい!!)」

 

 

 【 アニメ2期の世界 】

 

 ジャパリホテル近くの海岸を、サーバル、カラカル、キュルルが歩いていた。

 

キュルル 「カラカル! ポケットが動いてる!」

 カラカルの左胸のポケットが少しふくらんで、中で何かがうねうねと動いていた。

カラカル 「いやあ! なんなのよこれー!」

サーバル 「わあ! へんなのー!」

 困惑して嫌がるカラカルに対し、サーバルは楽しげだった。

カラカル 「取って! 取ってよぅ!」

キュルル 「カラカル!」

 キュルルが、カラカルの胸ポケットに手をのばした。

キュルル 「は!」

 キュルルの手が、カラカルの胸に触れる寸前で止まった。

サーバル 「こわくないよ。虫かなんかだよ」

 サーバルが、カラカルの胸ポケットに指をつっこみ、ピチピチ動く何かをつまみ出した。

カラカル 「やだなにそれ気持ちわるいー!」

 カラカルは、出てきたそれから顔をそらして、手で遠ざける仕草をした。

キュルル 「なんでそんなものが……」

 

 サーバルがカラカルの胸ポケットからつまみ出したのは、“生きた小さなイワシ”だった。

 

サーバル 「くんくん……ほわあ……」

 イワシのにおいを嗅いだサーバルは、宝物を見つけたような顔になった。

サーバル 「かぷっ」

 サーバルがイワシを口に放り込んだ。

キュルル 「生きたまま!?」

サーバル 「もぐもぐ」

カラカル 「よくそんなもの食べられるわね……」

 

サーバル 「うみゃーーい!!」

 

 

 【 アニメ1期の世界 】

 

サーバル 「ぽりぽり……あむっ……ぽりぽりぽり」

 サーバルがポケットから煮干しを取り出して食べていた。

かばん  「ぽりぽり……あんまりおいしくないかも……」*3

 かばんも煮干しを食べていた。

サーバル 「そんなことないよ。くせになっちゃうおいしさだよ……あ」

かばん  「どうしたの?」

 サーバルが胸ポケットの中でもぞもぞと指を動かした。

サーバル 「もうないみたい……」

 サーバルは残念そうだった。

かばん  「どうしてこんな……」

サーバル 「うーん……」

 サーバルはポケットの中を探っていた。

サーバル 「ん?」

 サーバルが胸ポケットの中に深く指を突っ込んだ。

サーバル 「これ意外と深いんだね」

かばん  「むりに手を入れたらやぶれちゃうよ!」

サーバル 「ちょっときついけど、入りそうだよ」

 “サーバルの手”は、胸ポケットに深く入っていった。だがポケットはあまり大きくふくらんでおらず、腕が胸に入り込んでいくように見えた。

かばん  「手が胸に刺さってるよサーバルちゃん!」

サーバル 「ささってないよ。ちがうところに入ったみたい」

かばん  「ちがうところってどこ!?」

 

 

 【 アニメ2期の世界 】

 

カラカル 「まだなんか入ってる! くすぐったい!」

 カラカルの胸ポケットがふくらみ、中で何かが動いていた。

サーバル 「こんどはキュルルちゃんが取って!」

キュルル 「そんなぁ!」

カラカル 「キュルル! さわっていいから!」

 キュルルが再びカラカルの胸ポケットにゆっくりと手をのばした。顔が赤かった。

キュルル 「カラカル……」

 

カラカル 「んああ!」

 カラカルの胸ポケットから何かがにゅっと飛び出て、キュルルの手に触れた。

キュルル 「え?」

 

 カラカルのポケットから出てきたのは、動物の前足……“黄色いネコの手”だった。

 

キュルル 「わああ!!」

 キュルルが驚いて後ろに数歩下がって、しりもちをついた。

サーバル 「あれ? これって……」

 ポケットから飛び出たネコの手は、ぐーぱーしたりして動いていた。

カラカル 「サーバルの手だわ! もとの姿の!」

キュルル 「うええ!」

カラカル 「どうなってんのよ! サーバルぅ!」

 

サーバル 「…………」

 サーバルの表情が、無表情のような、悲しげなような、薄いものに変わっていた。

カラカル 「サーバル?」

 サーバルが、カラカルの胸ポケットから飛び出した、元の姿のサーバルの手をにぎった。

 

 

 【 アニメ1期の世界 】

 

サーバル 「うみゃっ!」

 サーバルが驚いた。

かばん  「どうしたの?」

サーバル 「さわられた……。むこう、なんかいる」

かばん  「なにがいるの!?」

サーバル 「にくきゅう、ぷにぷにされてる……。きもちいい……」

かばん  「にくきゅう?」

 

 

 【 アニメ2期の世界 】

 

サーバル 「このこに、おかえしをあげようよ!」

 サーバルの表情は、明るいものに戻っていた。

キュルル 「おかえし?」

サーバル 「ほら! これ!」

 サーバルが、自分の胸ポケットをさわった。

キュルル 「なにそれぇ! また気持ちわるいのが!」

 

 サーバルの胸ポケットから、大きめの魚の尾ひれが出ていて、バタバタと暴れていた。

 

サーバル 「よーいしょっと」

 サーバルが尾ひれをつかんで、ポケットからずるずると、“生きたサバ”を取り出した。それはビチビチと動いていて、30cmほどもあり、明らかにポケットに入らないサイズだった。ぬるぬるした粘液が滴った。

 

カラカル 「いやぁ! なに出してんのよぅ!」

サーバル 「これ、スナドリネコにもらったんだ!」*4

キュルル 「どこからツッコんだらいいの!」

サーバル 「カラカルのポケットに突っ込むんだよ!」

 サーバルが、笑顔でサバを片手で高く掲げた。

カラカル 「そんなおっきいの入らないわよっ!」

 カラカルがふたりに背を向けて、軽くジャンプして逃げようとした。

 

 

 【 アニメ1期の世界 】

 

サーバル 「わわっ!」

かばん  「こんどはなに!?」

サーバル 「動いてる……あばれないで! やめ……」

 

 

 【 アニメ2期の世界 】

 

カラカル 「やめ……」

 カラカルの胸ポケットから飛び出した手がバタバタと動き……

カラカル 「んふっ!」

 ……カラカルの鼻に当たった。カラカルは驚いてふらついた。

サーバル 「キュルルちゃん! カラカルをおさえてて!」

キュルル 「う、うん!」

 キュルルが、後ろからカラカルの腰に抱き着いておさえた。

キュルル 「カラカルぅ……」

 キュルルは、頬を赤くして、愛おしそうな感じで背中に頬を押し付けた。

カラカル 「ちょ! キュルル! やめなさい!」

サーバル 「カラカル! あばれるとキュルルちゃんが怪我しちゃうよ!」

カラカル 「ぐぬぬぅ……」

 

サーバル 「とりあえずこのこには戻ってもらおう」

 サーバルが再びネコの手をにぎった。

 

 

 【 アニメ1期の世界 】

 

サーバル 「みゃみゃみゃ! おし返されてる!」

 サーバルが胸ポケットから手を抜いた。

かばん  「むこうのひと?」

サーバル 「『戻って』ってことみたい」

 

 

 【 アニメ2期の世界 】

 

カラカル 「やめ、やめなさい! 入らないって言ってるでしょ!!」

 サーバルがカラカルの胸ポケットに無理やりサバを突っ込んでいた。サバは頭からポケットに突っ込まれていて、激しく暴れていた。

カラカル 「やああ! 裂けちゃうう!」

サーバル 「だいじょうぶだよ! ぬるぬるだし、わたしが入ったんだから!」

 

 サバが、暴れながらも吸い込まれるようにポケットに入っていった。ポケットが大きく広がり、サバが細くなっていくように見えた。*5

 

カラカル 「ふああ! 奥に当たってる! それ以上入らないってば!」

 

 

 【 アニメ1期の世界 】

 

かばん  「またふくらんできたね……」

 サーバルの胸ポケットが丸くふくらんでいた。

サーバル 「うみゃ……けっこうおっきい」

かばん  「ポケットから出せない大きさだね……」

サーバル 「うみゃみゃみゃ……」

 サーバルが、ポケットの中身を引っ張って無理やり取り出そうとした。

かばん  「服がやぶれちゃうよ!」

サーバル 「だいじょうぶ……もーちょっと……ちょっと出た……ううみゃーんんん……」

 ポケットの口が広がり、中身が3分の1ほど出た。

かばん  「出口が広がってる! がんばってサーバルちゃん!」

サーバル 「ううう、うみゃーんぅ……はっ……みゃああ……うみゃああ……」

 苦しそうな顔で、ポケットの中身を出そうとするサーバル。

かばん  「もうちょっと! がんばって! あと少しだよ!」

サーバル 「うみゃあっ!!」

 ポコンと、ポケットの中身が出た。

サーバル 「はあ、はあ……うまれた(?)……」

かばん  「よくがんばったね……」

 

サーバル 「う……まだ出てくる……」

かばん  「ぅええ!」

サーバル 「ふみゃっ!!」

 ポコポコッ! と、サーバルの胸ポケットから丸いものが2個飛び出した。

 

サーバル 「なにこれ……」

かばん  「さば、水煮?」

 

 サーバルの胸ポケットから出てきたのは、3個の“サバ缶”だった。缶は大きめで、大きく『さば水煮』と書かれていた。イラストやマークが無い、素っ気ないデザインだった。

 

サーバル 「これも食べもの?」

かばん  「たぶん……中身は食べものだね」

 

サーバル 「えいっ!」

 サーバルがサバ缶を投げ上げた。コン! と缶がバスの天井に当たった。

かばん  「サーバルちゃ!」

 

サーバル 「うみゃっ!!」

 サーバルは、落ちてきたサバ缶に、ビュン! と爪を振り下ろした。

 サバ缶が縦に切られ、4分割された。それらはバスの床に落ちて、中身が飛び散った。

 

かばん  「食べられなくなっちゃったよ……」

サーバル 「どうして? ふつうに食べられるよ?」

 サーバルがしゃがんで、床に落ちたサバの切り身を、拾って食べ始めた。

かばん  「きたない……あれ? べつにいいのかな?」*6

サーバル 「これもおいしいねー。もぐもぐ」

 かばんも、缶の端にくっついていた切れ端を食べた。

かばん  「ん、おいしいね……これ、料理に使えるかも」

 

サーバル 「いいものもらったし、むこうにおかえしをあげようよ!」     *7

 

 

 【 アニメ2期の世界 】

 

カラカル 「こんどはなによ!? 甘いにおい、棒みたいなの出てくる……」

サーバル 「くだものー?」

 カラカルの胸ポケットから、“大きなバナナ”がにゅっと出てきた。

カラカル 「ふ、太くておいしそうね……」*8

 カラカルは若干引きつつ苦笑いした。

 

キュルル 「ぼく、もうツッコむのあきらめたよ……」

 キュルルはため息をつくように言った。カラカルの腰からは離れていた。

 

サーバル 「あきらめちゃだめだよ!」

 

カラカル 「…………」

キュルル 「…………」

 カラカルとキュルルは、サーバルを見て固まった。

 

サーバル 「ふふん」

 サーバルがドヤ顔をした。

 

 サーバルが両手で掲げていたのは、自分の身長の1.5倍ほどもある、“冷凍マグロ”だった。 *9

 

 

 

 おわり

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
 いつでどこなのかは謎です。

*2
 ネコ科動物は普通魚を食べません(スナドリネコは例外)。日本のイエネコは食べ慣れているから魚を食べますが、本来は肉を好みます。サーバルも、あんまり魚介類を好まないと思います。ネコに煮干しを与えてはいけないという話もありますが、ネコのおやつとして売られている塩分の少ない煮干しを、ちょっと食べるくらいなら問題ないようです。

*3
 味付けされていない煮干しなので、そのままだと生臭いかもしれません。

*4
 スナドリネコがサバを捕まえるのはありえないです。あと『スナドリネコさん』ではありません。

*5
 四次元ポケット……。

*6
 ヒト以外の動物にとっては、皿の上の食べ物も地面に落ちた食べ物も同じだと思います。

*7
 “ジャパリまん”

*8
 サーバルやカラカルなどの肉食動物も、フレンズ化すると果物を食べられます。加えて、ネコ科動物は甘味を感じないとされていますが、フレンズ化すれば甘味を感じると思います。私は、これは “ フレンズ化によって得られたしあわせ ” だと思うのです。

*9
 この冷凍マグロは、尾を切り落とし、エラを外し、内蔵を抜いたものです。これは「船の底にあった」ものです。スナドリネコからもらったものではありません。




 あとがき

 読んでいただきありがとうございます。

 「けもフレ3」を無視してこんなものを書いてしまいました。マイペースです。

 サーバルの左胸のポケットは、公式絵でもあったり無かったりします。これ、アニメ1期では無いですが、2期ではあります(カラカルと共通のデザインにしたせいかも)。サーバルの胸ポケットは無いことが多いですが、カラカルには大抵描かれています。
 サーバルの胸ポケットの有無は、世代による違いや、作画時の省略がありそうです。サーバルの気分によって有ったり無かったりするのではないか、とも考えられます。フレンズが「ポケット」を知っているのか? という疑問もあります。
 こういうディテールに注目してみるのも面白いです。


 魚を食べることについて

 けもフレのアニメ版では、肉を食べる描写を避けている気がします。これは、共食い(友達食い)になるのを避けるためでしょう。私はここで、魚は食べていいのか? という疑問がわきました。
 魚は“けもの”ではないためフレンズ化しませんが、動物です。パークには、海、川、湖があるので、魚がいるはずです。魚を捕まえるのが得意そうなフレンズもたくさんいます。
 魚は食べていいのか? という疑問は、〈 しょくざい 〉で書いたように、食べて良い/悪いの境界線はどこに? という問題です。正解は無いでしょう。
 あと、投稿日が「イワシの日」に近いのは偶然です。意識したわけではありません。



 「けもフレ3」の、漏れ聞こえてくる情報がとっても気になっています(ドールちゃんかわいい)が、私はゲームが苦手です。それにガラケーなんです(これを機にスマホに変えるか、5Gサービス開始まで粘るか……)。舞台版も気になっていますが、多分見ないです。イベントにも行っていません。私は永遠の“にわかファン”です。熱狂的ではなく無知だから、ちょっとズレた、けもフレの二次創作作品を淡々と書き続けられたんだと思います。
 2019/10/20 記

 そろそろネタ切れかも……いやアイデアはあるんですが、メモ程度のものだけです。
 今まで通り、何かを思いついて、書きたくなったら書き、作品として読める形になったら投稿します。投稿せずに放置する可能性もあります。






 ―― おまけその1 ――


 【 アニメ2期の世界 】

サーバル 「カラカル! あばれるとキュルルちゃんを突っ込むよ!」
カラカル 「なによそれ! 意味がわからないわ!」
サーバル 「そのままの……」
 サーバルが、キュルルの腰をつかんで持ち上げ、逆さまにした。
キュルル 「うわあああ!!」
カラカル 「ちょ、ま」
サーバル 「……意味だよっ!!」
キュルル 「ぶっ!!」
 サーバルは、“キュルル”をカラカルの胸ポケットに頭から突っ込んだ。
キュルル 「もごもが……」
 キュルルはバタバタと暴れたが、ポケットに吸い込まれるように入っていった。カラカルの胸ポケットが大きく広がり、キュルルが小さくなっていくように見えた。
カラカル 「いやああ!! キュルルが入ってきゅる!!」
サーバル 「がんばって! 痛いのは最初だけだよ!」


 【 アニメ1期の世界 】

 サーバルの胸ポケットから、“丸められた紙”が出てきた。
サーバル 「なにこれ」
かばん  「ちょっと見せてね」
 かばんが、丸められた紙を広げた。それはスケッチブックの1ページで、白紙だった。




 ―― おまけその2 ――


 【 アニメ2期の世界 】

カラカル 「たしかめてやるわ!」
 カラカルが、自分の胸ポケットに“手”を突っ込んだ。


 【 アニメ1期の世界 】

 シュルシュル! っとサーバルの胸ポケットから、“オレンジ色の細長い触手”が伸びた。
サーバル 「み゛ゃあああ!!」
 触手はかばんに絡みついた。
かばん  「わああ!! なべたべいっ!!」
サーバル 「かばんちゃん! うみゃっ!!」
 サーバルが爪で触手を切断した。


 【 アニメ2期の世界 】

カラカル 「いたっ!!」
 カラカルが胸ポケットから手を抜いた。そしてその手を見て驚いた。
カラカル 「毛皮がないわーー!!」
 カラカルの“手袋の中指部分”だけが無くなり、指がむき出しになっていた。

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