ジャパリ・フラグメンツ   作:くにむらせいじ

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 まえがき

 暴力や流血、グロテスクな表現があります。キャラが死にます。










〈 フェネックやめるのだ! 〉

 

 

 

 

 

 

 

 

 薄暗いコンクリートの壁の汚い地下室。出口にはドアがなく、階段が上へとのびていた。部屋の隅にはガラクタが散乱していた。

 

フェネック 「まずいことになったねー」

アライグマ 「落ち着いてる場合じゃないのだ! ふたりの危機なのだ!」

 フェネックとアライグマは、後ろ手に手錠をかけられ、壁を背にして座っていた。

男C    「黙れ、害獣がっ!」

 男Cはアライグマのおなかを思い切り蹴った。

アライグマ 「ぐっ! は……」

 アライグマは痛みでうずくまった。

フェネック 「ちょっと、やめてもらえるかなー」

 フェネックが足だけで立ち上がろうとした。

 男Aが銃(自動拳銃)を撃った。フェネックは右足を撃たれてうつぶせに倒れた。

アライグマ 「フェネ…ク……」

男A    「気をつけろ。サンドスターが減っていても、こいつらは頑丈だし力も強い」

 男Bがテーブルに置いてあった足枷を手に取った。

男B    「最初からこれを…………。ごめんよお嬢ちゃん」

 男Bはアライグマに歩み寄ると、しゃがんで、アライグマに、両足を鎖で繋ぐ足枷を着けた。

アライグマ 「なんで、なんでこんなことするのだぁ」

男A    「俺の娘はな、フレンズに殺されたんだよ」

アライグマ 「 っ! うそなのだ……。そんなこと……あるわけないのだ!」

男C    「害獣はヒトを殺さないってか?」

男B    「へへへ、ヒトは害獣を殺すけどな。安心しろ、すぐには殺さねーえよっと」

 男Bがアライグマのスカートを掴んで、乱暴にめくりあげた。スカートが裂けた。アライグマは目を閉じて震えた。

男C    「また、こいつは……」

 男Cは、眉をひそめて、少し顔をそらした。

 

フェネック 「きみたち、ねー」

 フェネックの目が光り始めた。フェネックはゆっくりと体を起こした。

 

フェネック 「いい加減に、しないと」

 フェネックの手が光り始めた。光る手から煙がたちのぼった。

 

フェネック 「怒るよー」

 フェネックは両腕を離し、手錠の鎖を引っ張った。手首に手錠が食い込み、血がしたたった。その血は、キラキラした虹色の光を放っていた。四角い泡のようだった。

 

アライグマ 「フェネックやめるのだ!!」

 

男A    「まずい!」

 男Aが銃を構えた。手錠の鎖が切れた。フェネックが駆けた。右足の銃創から血が飛び散った。

 

 4発の銃声が響いた。 ※1

 

 

 男Bは股間を深くえぐられ、あおむけに倒れて失神していた。男Cは壁にもたれて座り、左足の太ももを潰され、ちぎれた足がそばに転がっていた。彼はかろうじて意識があり、呆然と自分のちぎれた足を見ていた。彼のそばのガラクタに銃(リボルバー)が突き刺さっていた。男Aは銃ごと右腕を根本から切断されていて、倒れてのたうち回っていた。

男A    「う、うあああ! ちっくしょ、ばけもの、めええ」

アライグマ 「フェネック、やりすぎなのだ……」

 フェネックはアライグマに向かって歩いてきた。右胸と左の腹を撃たれていた。背中からの出血がひどく、血がキラキラと虹色に光っていた。

アライグマ 「フェネック、血が! サンドスターが!」

フェネック 「ほいっと」

 フェネックは、しゃがんでアライグマの足枷の鎖を掴み、引っ張りながら握りつぶした。

フェネック 「こっち、も」

 フェネックは、手錠の鎖を指でつまみ、プチンと切った。

 目と手の光が消え、フェネックは、あおむけに倒れた。

アライグマ 「フェネック!」

フェネック 「アライさん、あのひとまだやる気みたい」

 男Aは這って、切断された腕のそばにあった銃を拾おうと、左手を伸ばした。

 アライグマは、慌てて走り、銃を拾って、男Aから遠ざかった。ヒトには不可能な速さだった。

男A    「何がフレンズだ、ふざけやがって!」

男Aは鬼のような形相で立ち上がり、左手で上着からナイフを取り出した。右腕の切断面から血が噴き出した。

アライグマ 「これ、どうやって……」

 アライグマはヒトの真似をして、震える両手で銃を構えた。不意に指がトリガーに触れ、弾が発射された。弾は明後日の方向に飛び、ガラクタに当たった。アライグマは反動で後ろに倒れた。

アライさん 「うあ!」

 アライグマは壁に背中を打ち付けた。男Aが低い姿勢で走ってきて、ナイフを突き出した。アライグマは呆けていて動けなかった。

フェネック 「よけて!!」

 

アライグマ 「う」

 

 アライグマのおなかにナイフが深く刺さっていた。男Aはナイフを横に動かして、おなかを切り裂いた。

アライグマ 「うああああ!!」

 アライグマは素早く銃口を男Aの頭に向け、トリガーを引いた。男Aの頭が、スイカを割ったように吹き飛び、アライグマは返り血を浴びた。

 アライグマは銃を落とした。目の前には頭の無くなった男Aが横向きにに倒れていた。頭だけでなく、背中まで大きくえぐれていた。周囲には血と、赤黒いものやピンク色のものが飛び散っていた。アライグマは目をつむり、顔をそむけた。

 アライグマは、おなかにナイフが刺さっていることを思い出し、ナイフを乱暴に引き抜いた。

アライグマ 「うあっ!!」

 血が飛び散り、キラキラと虹色に輝いた。アライグマはナイフを落とし、うずくまった。

アライグマ 「…………く…………は……」

 アライグマはちらりと、そばに落ちていた血まみれの銃と、ナイフを見た。

アライグマ 「……こわい…………」

 アライグマは立ち上がり、よろけながらフェネックのもとへ歩いて行った。

アライグマ 「ううう……フェネックうう……」

フェネック 「やられたねー、助けてあげられなくてごめんよー」

アライグマ 「……ひどいこと……したのだ」

 フェネックは男Aの方を見た。

フェネック 「仕方なかったんだよ。生存本能、かな? アライさんは悪くないよ」

 フェネックの周りには血だまりが出来始めていた。それは虹色に輝いていた。

アライグマ 「フェネック……ひどいけがなのだ! だれかよんでくるのだっ」

 アライグマは走り出した。階段をのぼろうとした。

フェネック 「アライさん、もうちょっとつきあってよー」

 アライグマは転んだ。階段に血が飛び散った。

アライグマ 「ぐはっ!」

フェネック 「あーあー、無理しちゃだめだよー」

アライグマ 「フェネック、なんで止めるのだ」

フェネック 「珍しく引きとめられたねー。……そばにいてほしいんだよ」

 アライグマは、四つん這いでフェネックのもとへ戻った。

 フェネックは、アライグマのおなかを見た。

フェネック 「その怪我ひどいねー、とりあえずふくをやぶいて……」

アライグマ「フェネックのほうがひどいけがなのだ!……だれか……そうだ、かばんさんなら!」

フェネック 「アライさん、お願い、そばにいてよー。…………さいごは……」

アライグマ 「フェネックやめるのだ! そんなこと言うのはやめるのだっ!」

 アライグマはぽろぽろと涙をこぼした。

 

フェネック 「アラーイさん」

 フェネックの声は優しかった。

フェネック 「キス、してよ」

アライグマ 「へ?」

フェネック 「プレーリー式のあいさつだよー」

アライグマ 「いきなりなにを言うのだ!」

フェネック 「わたし、臆病だからさ、一歩引いて、アライさんの後をついていくことしかできなかったんだ。近づけば、受け入れてくれるってわかってたのに…さ」

アライグマ 「いまそれを……いうのは…ぐす…ずるいのだ……」

 フェネックの顔に涙が落ちた。

アライグマ 「フェネック……だいすき……なのだ」

フェネック 「知ってるよー」

 アライグマがフェネックに顔を近づけていき、目を閉じた。フェネックも目を閉じ、涙をこぼした。ふたりの唇が重なった。深いキスになった。

 

 フェネックの右腕が動き、離れられないようにアライグマの頭をおさえつけた。アライグマは、目を見開いた。

アライグマ 「! むー、むー」

 アライグマは離れようとするが、頭をおさえられて離れられない。不意に、フェネックの右腕の力が抜け、床に倒れた。アライグマは唇を、頭を離した。

アライグマ 「ぷはっ」

 ふたりの唇の間に血が飛び散り、虹色の輝きを放って消えた。

アライグマ 「フェネック! サンドスターが! ……ちがう、これは!」

 フェネックはかすかに笑った。次の瞬間、あかりを消すように一瞬で、フェネックの体が消えた。消えたように見えた。※2

 

 フェネックがいた場所には、ボロボロの小さな生き物が倒れていた。元の動物に戻った、フェネックだった。胴体が二つにちぎれていて、右の後ろ足が無くなっていた。

 アライグマは目をつむり、歯を食いしばって顔をそむけた。そしてゆっくりとフェネックの方に向き直った。

 

アライグマ 「フェネック! ひどいのだ! 勝手に満足して! ……いのちを…くれて…ぐす…それはアライさんの役目なのだ! …………さよならも……言えらかったの…だあ……けほっ、けほっ……う、うううう、うああああああああ………………」

 アライグマは泣き続けた。

 

 

 目を泣きはらしたアライグマは、フェネックの亡き骸を持ち上げようとした。フェネックの体から内臓がこぼれ落ちた。

アライグマ 「!」

 アライグマはあたりを見まわした。さっき誤射したガラクタの中に光るものがあった。アライグマは立ち上がり、ガラクタのほうへ歩いた。ガラクタの中に破れたダンボール箱があり、その中には割れたガラス製品がたくさん入っていた。アライグマはその中に、蓋つきの大きな果実酒瓶を見つけた。割れたガラスに埋まっていたそれを掘り出した。

アライグマ 「痛っ」

 アライグマの手袋は傷だらけになっていた。アライグマは果実酒瓶の丸い蓋を無理やり引っ張って開けようとしたが、開かなかった。蓋を見て、気づいた。

アライグマ 「まんまるは、まわるもの……」

 フェネックとの思い出が頭をよぎった。アライグマはぶんぶんと頭を振り、果実酒瓶の蓋を回した。※3

アライグマ 「開いた!」

 アライグマは、果実酒瓶と蓋を持ってフェネックに駆け寄った。

アライグマはフェネックの体毛を数本引き抜き、胸ポケットに突っ込んだ。

アライグマ 「アライさんは、あきらめが悪いのだ」

アライグマは、フェネックの亡き骸とこぼれた内臓を果実酒瓶に入れた。

アライグマ 「せまいけどがまんするのだ」

 蓋を閉めると、アライグマは歩き出し、階段をのぼっていった。階段の上から光が差し込んでいた。

 

アライグマ 「フェネック、さばくへ帰るのだ……」

 

 

 

 おわり

 

 

 

 

 

 

 

 

※1 4発の銃声のうち3発は男Aが、残りの1発は男Cが撃ったものです。

 男Aの撃った3発のうち、2発がフェネックに命中し、1発は右腕を切断されたのとほぼ同時(厳密には切断された直後)に撃ったため、当たりませんでした。男Cはフェネックの動きについていけず、彼が撃った1発は外れました。

 

※2 サンドスターといのちの両方を完全に失ったため、虹色の光の玉にはなりませんでした。

 

※3 アライグマ(元の動物)は手先が器用で、学習能力も高いそうです。

 




 あとがき

 読んでいただきありがとうございます。

 自分でも引くぐらいひどい内容です。いろんな意味で怒られる気がします。ごめんなさい。 〈 よこく 〉 の映画に似ていますが、別物です。「フェネックやめるのだ!」の使い方を自分なりに考えて、「アライさんがフェネックを看取る」と組み合わせて、膨らませていったらこんなことになってしまいました。
 アクションシーンは、文章力の無い私が書くと(読み手も書き手も)混乱しそうなのでカットしました。フェネックが強すぎるのですが、野生開放したフレンズと、丸腰のヒトが戦ったら、ヒトに勝ち目は無いと思います。
 アライさんは「フェネックやめるのだ!」を3回使っています。




 〈 フェネックやめるのだ! 〉 オリジナル設定

 どこかで見たような悪役ばかりです。

 男A(名前をつけたい)

 元刑事。フレンズに娘を殺された。刑事時代にはフレンズ絡みの事件を担当しており、娘の死よりも前からフレンズを快く思っていなかった。娘の死後、別の事件で罪なきフレンズを射殺して懲戒処分を受け、依願退職し、妻とは離婚した。退職してからは「フレンズ狩り」を行っていた。
 射撃が得意。挙手格闘も出来るがフレンズには遠く及ばない。

 使用していた銃は闇ルートで入手したコルト・ガバメント(陸自仕様?)に自ら改造を施したもの。動くものに対して照準が合わせやすい。トリガーが軽いため撃ちやすいが、誤射の危険もある。弾薬は体の頑丈なフレンズに対抗するため、強力なもの(貫通力と破壊力のバランスを取ったもの。ダムダム弾?)を使用している。これをヒトに撃つと、悲惨な事になる。


 男Aの娘

 故人。元気で天真爛漫な女の子だった。顔はかばんに似ていた。白いワンピース(サンドレス)をよく着ていた。
 フレンズと遊んでいた際、けんかになり、相手のフレンズがうっかり力の加減を間違えて、死亡してしまった。

 この子はミライさんの娘で、かばんちゃんのオリジナル、という設定も考えたのですが、原作に食い込みすぎる、というか、あんまりなのでやめました。


 男B

 好色なゲス野郎でロリコン気味。過去にいろいろやらかしている。男Aとはネットで知り合った。ネットなどの闇市場に詳しく、男Aと利害が一致したことから行動を共にしている。男Aと男Cには嫌われている。
 フェネックとの戦いの後生還したが、入院先の病院で自殺した。


 男C

 料理人。フレンズに差別的な考えを持っており、嫌悪しているが、男Aほど激しく憎んでいるわけではない。男Aに同調し、行動を共にしている(密かに憧れている)。フレンズを「害獣」と呼ぶ。銃の扱いは男Aに習って、そこそこの腕前。フェネックとの戦いの後生還し、逮捕され刑務所送りになった。出所後、自らの体験を本に書いた。本は結構売れたが、突飛な内容だった為、あまり信用されなかった。サンドスターをヒト用の料理に使えないか模索中。

 使用していた銃は闇ルートで入手した、.357マグナムのリボルバーで詳細不明。多分粗悪なコピー品。男Aのお下がり。


 [ 投稿日時 2018/03/29 01:32 ]
※ 一回削除して再投稿したため、最初の投稿日時はこれよりも前です。正確な日時は不明です。
 
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