ジャパリ・フラグメンツ   作:くにむらせいじ

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 まえがき

 あけましておめでとうございます。2020年最初の投稿です。

 アニメ2期アフターです。2期のラストから数年が経過しています。
 別のおはなしと微妙にリンクしています(詳しくは後編のあとがきで)。

 例によって、ほとんどセリフが並んでいるだけの、台本風の文章です。でも無駄に長いです。
 ☆ 長いので2話に分割し、前後編にしました。

 セリフの改行位置を調整しました。一行全角44文字とします。
 


〈 ひっつもどるき 前編 〉

 

 サバンナの高台。

 

 サーバルが、眼下に見えるサバンナを眺めていた。

 その視線の先、遠くに一本の木があった。

 サーバルのけもの耳が、くるっと後ろへ動いた。

 サーバルが振り返ると、ジャパリバスが近づいてくるのが見えた。

 

サーバル 「あ! かばんさん!」*1

かばん  「サーバル!」

 かばん(大人)が、バスの運転席からサーバルに声をかけた。

サーバル 「ひさしぶりだねー!」

 たったったっ、と、サーバルがバスに駆け寄った。

サーバル 「でも……」

サーバル 「すっごく、すごくながーいあいだ、会ってなかった気がする……」

かばん  「え?」

サーバル 「ふしぎだなー、びっくりするくらいうれしいんだよ。あなたに会えると。

      何回も会ってるし、そんなに離れてないはずなのに……」

かばん  「それは……気にしなくていいよ」

 かばんは、動揺を隠して微笑んだ。

 

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 サバンナの草むら。

 

 一本の太い木があった。

 その木に、カラカルとキュルルがもたれて、となり合って座っていた。

 

カラカル 「ここ、あたしが住んでた場所に似てるの」

カラカル 「下は草のおふとん、上はお昼寝にちょうどいい木。お日様ぽかぽかで……

     暑くなったら日陰もある……ちょっと離れてるけど水場もあって……最高じゃない?」

 カラカルがキュルルを見て笑った。

カラカル 「おまけに草が高いから、まわりから見えないわっ!」

 カラカルが、楽しげに、キュルルを押し倒した。ふたりは、もつれあうように『草のおふとん』の上に倒れた。

キュルル 「獲物を食べるのに最適だね」

カラカル 「ふふふっ」

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 サバンナの高台。

 

 サーバルとかばんが、眼下のサバンナを見つめていた。目線の先には一本の木があった。

かばん  「ずいぶん遠くまで来たね」

サーバル 「このくらい離れないと、ふたりの声が聞こえちゃうんだよ」

かばん  「サーバルも気をつかうんだね」

 かばんが、サーバルを見て微笑んだ。

サーバル 「ひどいよー! わたしだって考えてるんだよ?」

サーバル 「……ほんとは……逃げてきちゃったんだ。ふたりから」

 サーバルは、遠くの木を見つめたまま、少し憂いを見せた。木のそばにいるふたりの姿は見えなかった。*2

かばん  「気まずい?」

サーバル 「さすがに、わたしでも、ね」

 サーバルは、かばんを見て、少しだけ苦い笑顔を作った。

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 サバンナの草むら。

 

 キュルルが、カラカルの首筋に顔を近づけた。

キュルル 「カラカル、いいにおいがする」

カラカル 「かばんさんに言われたのよ。身だしなみに気を付けなさいって」

 ふたりは、ささやき合うように、やわらかい感じで話していた。

キュルル 「水浴びしたの? カラカル水苦手だよね?」

カラカル 「ネコは、体をなめると、においが消せるのよ」

キュルル 「消えてないよ?」

カラカル 「これは特別なにおいよ。オスは強く感じるはずだわ。くらくらする?」

 カラカルがいたずらっぽく微笑んだ。

キュルル 「ちょっと……へんな気分かも……」

カラカル 「ふふ、あんたは汗っぽいにおいね」

 カラカルはやさしく微笑んだ。

キュルル 「う……ごめん、ぼく……」

カラカル 「いいの。いつものキュルルだわ。……気づいてる? あんたも特別なにおいだって」

キュルル 「ぅえ?」

カラカル「ちょっと大人になった、ってことよ。ほかの子もみんな気づいてるけど、言わないの」

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 サバンナの高台。

 

かばん  「不器用だよね……あのふたり」

 かばんは、いとおしそうな、子供を見るような目をしていた。

サーバル 「だから気が合うんだよ」

 サーバルは明るく返した。

かばん  「そうかもね」

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 サバンナの草むら。

 

カラカル 「キュルルは、なんであたしを選んでくれたの?」

キュルル 「えらんだ?」

カラカル 「あたしよりもずっとかわいい子とか、やさしい子とか、いっぱいいるでしょう?」 *3

キュルル 「それは……その……」

 キュルルは、言いづらそうに口ごもった。

カラカル 「たとえば……サーバルとか」

キュルル 「たしかに、サーバルはいい子だよ。でも、カラカルがいちばんなんだ……。

      いちばんじゃなくて、特別、かな」

カラカル 「なんで特別なのよ?」

キュルル 「……言っていいの?」

カラカル 「言っていいってなによ。すっごい気になるじゃない。言いなさいよ」

 

キュルル 「ぼく、カラカルのこと、だいっきらいだから」

 キュルルは、真面目な顔で言った。

 

カラカル 「え……」

 カラカルは呆然とした。

 

キュルル 「ぼくもふしぎだったけど、やっとわかったんだ。嫌いだって言えるから、

      だから特別なんだよ」

カラカル 「……なにそれ……冗談でしょ……」

 カラカルは、信じられないものを見ているようだった。

キュルル 「ぼく、サーバルには、大嫌いなんて言えない。でもカラカルになら言える」

キュルル 「カラカルのこと、だいっきらい」

カラカル 「……ひどい……」

 カラカルがうつむいた。けもの耳がふにゃっと倒れた。

キュルル 「その、しょんぼりした顔は、だいすき」*4

 キュルルが、カラカルに笑顔を向けた。

カラカル 「ほんとにひどい! あたしも、そんなキュルルが嫌い! だいっきらい!!」

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 サバンナの高台。

 

サーバル 「急に仲直りするんだよ。ふたりにして、って言って」

 サーバルは、お気に入りおもちゃを説明する子供のように、たのしげに話していた。

サーバル 「そのあとは、すっごくなかよしになっちゃう」

かばん  「ありそうだね……あのふたり……」

サーバル 「見てるこっちが恥ずかしくなるよ」

かばん  「たしかに、それは逃げたくなるかも……」

 かばんが苦笑いした。

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 サバンナの草むら。

 

カラカル 「キュルルは無神経なのよ! それに上から目線だし、自分勝手だし、頑固だし!

     みんなに迷惑かけて、甘えてばっかりで……それが当たり前だって思ってるでしょ!」

 カラカルは、強い調子でキュルルを叱りつけた。

キュルル 「ヒトってそういう生き物なんだよ!」

カラカル 「開きなおるの? 最低ね」

 カラカルは冷たい目をした。

キュルル 「上から目線なのはカラカルじゃないか!」

カラカル 「それは、あんたが子供だから、おしえてあげてるの!」

キュルル 「わかってる! 自分のだめなとこくらい、わかってるよっ!」

カラカル 「わかってないわ。いつまでたっても変わろうとしないから言ってるの」

キュルル 「うう……」

 キュルルは、泣きそうな顔になって、うつむいた。

カラカル 「……こんなこと言ってくれるの、あたしだけよ?」

 カラカルは、やさしく声をかけた。

キュルル 「……カラカルのそういうところ、怖いけど、好き」

カラカル 「ふぁ!」

 カラカルが目を見開いた。

カラカル 「……あーもう! いきなりなに言うのよ!」

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 サバンナの高台。

 

サーバル 「なにしてるんだろね? ふたりで」

かばん  「わかってるでしょ?」

サーバル 「なんとなくわかるよ。……でも、約束守ってるんだね。かばんさんとの」

かばん  「最後の一線は超えちゃだめ……」

 かばんは、少しだけ険しい目をした。

サーバル 「そこだけ守ればいいんだっけ?」

かばん  「そう。ふたりともいい子だよ。でも、もう守らなくてもいいのに……」

サーバル 「それ、ちゃんと言ってあげなきゃ。わたし、あのふたりの赤ちゃん見てみたい!」

 サーバルは、かばんに笑顔を向けた。

かばん  「すごいこと言うね……」

 かばんは少し驚いて、苦笑いしながらサーバルを見た。

 そして、ふっと暗い顔になった。

かばん  「つらくないの?」

サーバル 「えっと、なんのことかな?」

 サーバルは、とぼけて微笑んだ。

かばん  「ごめん、なんでもないよ」

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 サバンナの草むら。

 

カラカル 「キュルルは、やさしくて、仲間想いで、意志が強くて、正直で……

      ちょっと天然なところもあるわね」

キュルル 「そうかなぁ?」

カラカル 「自分ではわからないところもあるから」

キュルル 「カラカルもすっごくやさしいよ。いじっぱりで怖いときもあるけど、なんていうか、

      やわらかい……」*5

カラカル 「やわらかい?」

キュルル 「それに、怖がりで、なんか抜けてて、すっごくかわいい」

カラカル 「なによそれ! バカにしてんの?!」

キュルル 「してないしてない! ほめてるんだよ!」

 キュルルはちょっとあせった。

カラカル 「……性格を直せって言われたって、無理よね。そのままでいいのよ。ただ、

      ちょっと良くする努力くらい、していいんじゃない?」*6

 カラカルは、明るくやさしく言った。説教する感じではなかった。

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 サバンナの高台。

 

サーバル 「……ねえ、わたし、カラカルとキュルルちゃんの、どっちが好きなのかな?」

 サーバルは、少し憂いを見せた。

かばん  「わたしに聞かれても……。両方じゃない?」

サーバル 「うれしいんだよ。わたし、あのふたりがなかよくしてると、すっごく、すごく

      うれしいんだよ。でもちょっとだけ痛いんだ。むねになんか刺さったみたいな」

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 サバンナの草むら。

 

カラカル 「あんたって、いじめられるの好きでしょ?」

 カラカルは、にやりと笑った。

キュルル 「そんなことないよ!」

カラカル 「キュルルをいじめていいのはあたしだけよ。あんたはあたしの獲物だから、

      ほかの子には渡さないわ」

キュルル 「……ときどき、すっごくはずかしいこと言うよね……カラカル……」

 キュルルは、顔を赤くして、カラカルから顔をそらした。

カラカル 「ま、まあね……」

キュルル 「じゃあ、カラカルをいじめていいのは、ぼくだけだよっ!」

 がばっ! と、キュルルがカラカルの上にのしかかった。楽しげにじゃれついた。

カラカル 「ちょ、キュルル! やあぁっ!」

 カラカルが、かん高い悲鳴をあげた。

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 サバンナの高台。

 

かばん  「……ずーっと昔、あなたにそっくりな子といっしょに旅をしていたんだ」

 かばんは、遠い目をして話し始めた。

サーバル 「え?」

かばん  「わたしはヒトのフレンズ。それも遺物から生まれた存在。不安定なんだ。

      サンドスターが減ったせいで、一時的に男の子になっちゃった時があって……。

      最初は、すっごくたのしかったけど……」

かばん  「わたしのせいで、その子を傷つけて……お別れになっちゃった」

 かばんがサーバルを見て、ほんの少し笑った。痛々しい笑顔だった。

サーバル 「傷つけた?」

かばん  「わたしは、その子からサンドスターを……」

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 後編へ続く

 

 

 

 

 

 

*1
 アニメ2期で、一度『かばんちゃん』と呼びましたが、あれは一回きりであり、ここではさん付けになっています。

*2
 サーバルの視力では、ふたりの姿は遠すぎて見えませんでした。あと、距離的に見えたとしても、草に隠れてしまいます。

*3
 とんでもないハーレム状態です。これ、キュルルが嫌われる原因の一つだと思うのですが、キュルルがそれを望んだわけではないですし、うらやんで嫌うのもどうかと思います。私は、キュルルは、“ゲームの主人公(プレイヤーの分身)”的な存在だと思っています。つまり視聴者の分身です。あと、私の中では、キュルルはカラカルひとすじです。

*4
 私も、しょんぼりしたカラカルが、かわいくて好きです。

*5
 『やわらかい』というのは、カラカルのイメージとは違う気がしますが、心がやわらかいんです。キュルルは、結構しっかりとカラカルを見ています。

*6
 キュルルくらいの年齢(このおはなしでは、アニメ2期より数年が経過していますが)なら、“性格を直す”のも可能かもしれません。ですが、大人になってから自力で性格を直すのは、ほとんど不可能です。年齢を重ねることで、変わっていくこともありますが。




 あとがき

 読んでいただきありがとうございます。

 大人な感じのサーかばに対して、子供バカップルなカラカル&キュルル。
 後編では、バカップルが暴走します。
 
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